魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第三十一話

「ねぇ、トシアキ。 重くない?」

 

ララを抱えたまましばらく歩いていると、腕の中で俺を見上げているララと視線が合う。

 

「重くないから気にするな」

 

人を抱えてはいるが、俺にとって重さはあまり関係ない。

 

何度も言う形になってしまうが、精霊たちによる恩恵が大きい証拠である。

 

ちなみに飛ぶことも出来るのだが霧が濃く、先が見えにくく危険なため徒歩での移動だ。

 

「・・・・・・ゴメンね、足手まといになっちゃって」

 

「気にするなって言ったろ? 早くラックベリーの実を見つけて帰ろうぜ」

 

「うん、そうだね」

 

そんな会話をしながら歩いているとララが何かを思い出したように声を出した。

 

「小さい頃にね、お城を抜け出して一人で森に行ったことがあるの」

 

小さな頃から城を抜け出していたということは今の家出はもはや癖になっているのかもしれない。

 

「―――迷子になっちゃって、不安で、一人で泣いてたの」

 

こんな元気いっぱいのララも小さい時は不安になって一人で泣いていたと聞くと微笑ましく感じてしまう。

 

「そしたらパパが見つけてくれて、私をおんぶして連れて帰ってくれたの」

 

「あのギドの身体でか?」

 

思わず、何度か目にしたことのある小さい子供のようなギドの姿が頭に浮かぶ。

 

「十年くらい前の銀河統一戦争で力を使い果たしちゃったからあんな姿になってるだけだよ」

 

クスクスと笑いながら俺に教えてくれたララ。

 

しかし、銀河統一戦争か、いくつあるかわからない星々を統一したギドはなかなか凄い奴なんだな。

 

「あの時はおんぶだったけど、トシアキの腕の中も凄く安心する」

 

「・・・・・・そうか」

 

そう言って目を閉じたララは俺の胸に顔を摺り寄せて来る。

 

俺は少し照れくささを感じながらも静かに頷いて足を進めるのであった。

 

「ピィィィ!!」

 

しばらく歩いていると何やら玉ねぎに似た大きな植物がコチラに向かって走ってきた。

 

目と口も付いており、ちゃんとした顔の形になっている。

 

おまけに根が足のようになって走って来る姿はなかなか不気味ではある。

 

「おっと!」

 

なので思わず避けてしまったが、そいつはそのまま倒れてしまい起き上がらなくなってしまった。

 

「ララ、もう立てるか?」

 

「うん、試してみるね」

 

俺の腕から離れたララはどうにか自分の足で立てたようでその場で地面の感触を確かめている。

 

その間に俺はその植物に近寄り、声を掛けてみるがどうやら水分が足りないらしい。

 

「そういや、さっき水場があったな」

 

通り過ぎたときに見た水面は濁っており、飲んだりはできないだろうと思っていたが、植物なら大丈夫だろう。

 

「トシアキ、連れて行くの?」

 

「まぁ、悪い奴じゃなさそうだし。 ラックベリーの情報でも聞けたらいいかと思ってな」

 

今度はララの代わりに倒れている植物を抱えて立ち上がる。

 

ララも歩ける程度には回復したようで俺の隣に並んで一緒に歩き出した。

 

「よっと、こんなもんかな」

 

水場に着いた俺は抱えていた植物をソッとおろして水面に浸けてやる。

 

「おっ? おぉ!?」

 

すると玉ねぎだと思っていた頭上から木が生え、植物の奴も元気に目を覚ました。

 

「なぁ、ラックベリーって実のこと知らないか? この惑星にあるらしいんだが」

 

そう尋ねてみるも、返答は首を傾げられるだけだった。

 

どうやらコイツはラックベリーの存在を知らないらしい。

 

「まぁ、その実の名前も勝手に人間がつけた名前かもしれないしな」

 

「仕方ないね。 じゃあ、次の場所に探しに行こう」

 

俺たちは別の場所を探すために水場に背を向けて歩き始める。

 

「ん?」

 

ふと背後から気配を感じた俺は濁った水場の底から現れた大きな海藻と目が合う。

 

というか、海藻に目があるということは化物であるということなのだが。

 

「危ない、ララ!」

 

「キャッ!?」

 

海藻の化物の攻撃を今のララが受けたらマズいと思い、とっさにララの身体を押しやる。

 

「って!」

 

ララを押しやったため、俺自身避けきることが出来ず、頬に切傷ができてしまう。

 

「このやろう、爆ぜろ!」

 

海藻の化物に小規模な爆発が何度も起こり、爆煙で姿が見えなくなるくらい爆発が続いた。

 

「どうだ? ・・・・・・ぐぁ!?」

 

爆煙から突然、伸びてきた海藻が腹部にあたり、俺は受身を取ることもできずに吹き飛ばされてしまった。

 

どうやら俺が起こした爆発の攻撃は効いていないらしい。

 

「いてて、流石に今のは効いたぞ。 絶対に燃やしてやる」

 

体勢を立て直し、起き上がった俺が見たモノはララが海藻の化物を投げ飛ばした所だった。

 

「・・・・・・・・・俺の出番なしかよ」

 

「あっ、トシアキ。 大丈夫?」

 

思わず呟いてしまった俺の方へと駈け寄ってきたララ。

 

どうやらララはいつもの調子に戻ったらしい。

 

「姉上!」

 

「トシアキさん!」

 

大きな樹の上から声がしたので見上げてみるとナナとモモ、そしてヤミの姿を確認することが出来た。

 

「よかった、トシアキさんもお姉様も無事で・・・・・・」

 

「ペケは相変わらず停止しちゃってるけどね」

 

無事に合流出来た俺たちはお互いの無事を喜び合い、それぞれでの出来事を報告し合う。

 

「マスター、申し訳ありません。 私が傍についていなかったばっかりに・・・・・・」

 

俺の頬に付いた切傷を優しく触れながらそう謝ってきたヤミ。

 

心なしか、俯き加減なので落ち込んでいるようにも見える。

 

「お前は俺の指示通り、二人を守ってくれてたんだろ? それでいいんだ」

 

「あっ・・・・・・はい」

 

俯き加減のヤミの頭を優しく撫でてやりながら俺はララ達の会話に加わる。

 

どうやら、先ほど水場に運んできた玉ねぎの頭から生えた木の実がラックベリーだったらしい。

 

「お前、自分の実のことも知らなかったのか?」

 

そんな名前がついているとは知らなかったらしく、ペコペコと頭を下げる動きをする。

 

「まぁ、いいんだけどな。 一つだけ持って帰ってもいいか?」

 

俺の問いにガサガサと頭上の木を揺らして答える。

 

欲しければいくらでも持って行っていいそうだが、俺たちが欲しいのは一つで充分なのだ。

 

「サンキューな。 よし、ラックベリーの実も手に入ったし帰るか」

 

俺たち五人は再びルナティークに乗り込み、急いで地球へと向かった。

 

 

 

***

 

 

 

ラックベリーを持って帰ってきた俺たちを迎えたのは、いつもの白衣を身に纏っている御門先生と何故かナース服を着ているお静であった。

 

「あれ? 御門先生、なんでここに?」

 

ララが不思議そうな顔をして、御門先生とお静の二人に視線を向けている。

 

「ちょっと、ね」

 

なにやら意味深な笑みを浮かべて答えているが、視線は俺の方へ向けられている。

 

おそらく、惑星ミストアに行く前に連絡をしたことを気にしてくれたのだろう。

 

「セリーヌ! 今、戻ったぞ!!」

 

だがそんなことより、今はセリーヌのことが心配だ。

 

俺は御門先生やお静の間をすり抜けて、セリーヌがいる場所まで駆け寄る。

 

「・・・・・・これは」

 

「そんな! 遅かったのか!?」

 

セリーヌの花が無くなり、蕾とはまた違う、実のような何かになってしまっていた。

 

ナナも声を荒げて間に合わなかったことを悔やんでいる。

 

ただ、モモは何やら考え込むような仕草をしており、俺としては何か方法があるならモモの意見を聞いてみたいが。

 

「ん?」

 

そんなことを考えていると、セリーヌの実に突然、罅が入り始めた。

 

「まうまうー!」

 

「「「は?」」」

 

実が割れたかと思うと、中から小さな女の子が姿を現した。

 

突然のことに俺もナナもモモですらも思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「まうー!」

 

頭に花を咲かせた小さな女の子は俺と目が合ったかと思うと、胸元に飛び込んできた。

 

「おっと、お前は一体・・・・・・」

 

「まうー!!」

 

本人が言うにはどうやらセリーヌが生まれ変わった姿らしい。

 

それでも、花の時のことも覚えているらしいので生まれ変わったというより進化したのかもしれないが。

 

「モモ、お前も聞いたろ? つまり、カレカレ病ってやつじゃなかったらしい」

 

「ご、ごめんなさい。 この子は超希少種でまだまだ謎の部分が多くて・・・・・・」

 

確かに珍しいかもしれないが、俺の今までの苦労はなんだったんだろうか。

 

「まぁ、仕方ないか。 とりあえず、美柑に言ってセリーヌの服でも用意してもらうか」

 

元々は植物だったとはいえ、流石に生まれたままの姿でいるわけにもいかない。

 

それに動けるようになったセリーヌには教えとかないといけないこともたくさんありそうだ。

 

「とりあえず、一件落着でいいかしら?」

 

御門先生が俺の方へ向かいながらそう尋ねてきたので静かに頷いておく。

 

彼女も植物から人型の生き物が生まれてきたことに興味があるだろうが、表面上はそういった様子は見られない。

 

「なら、今日はもう帰るわね。 また何かあれば連絡して」

 

「それではトシアキさん、皆さん、失礼します!」

 

俺の頷きを確認した御門先生は踵を返して、お静とともに帰って行った。

 

俺が電話した時に起きたのだとすれば帰ってまた眠るのだろう。

 

「・・・・・・悪いことしたかな」

 

「まう?」

 

セリーヌが俺の呟きを聞いて首を傾げている。

 

こうして、新しい家族が誕生したことによって俺の周りはまた一段と賑やかになるだろう。

 

「まぁ、面倒事じゃなければ大歓迎なんだけどな」

 

「まうー!」

 

俺はセリーヌを抱きながら微笑みかける。

 

セリーヌも俺の表情を見て、同じく笑顔で返してくれる。

 

それから美柑にも事情を説明し、ララたち三人姉妹はとりあえず自分たちの家に戻って行った。

 

戻ったと言っても、この家の屋根裏のスペースになるのだが。

 

「じゃあ、行くか」

 

「まうまう!!」

 

セリーヌに服を着せた後は、彼女に街の中を見せて回るため散歩に出かけることにした。

 

「まう?」

 

「アレは自動車って言ってな・・・・・・」

 

あれこれと質問してくるセリーヌに説明しながら街を散策する俺とセリーヌ。

 

今のところ、セリーヌの言葉がわかるのは俺かモモしかいない。

 

そのため、説明してやれるところは説明しているのだが。

 

「まうー!」

 

返事はいいのだが本当に分かっているのか怪しいところだ。

 

「喉が渇いたな・・・・・・何か炭酸でも飲むか」

 

公園にある水道水でも構わないのだが、近くに自販機があったのでコーラを買って喉を潤す。

 

「まうまう!!」

 

「ん? お前も飲むのか?」

 

俺が飲んでいる姿を見て、興味を持ったのかコーラを催促するセリーヌ。

 

缶に残っているコーラも大した量ではないので、そのまま渡して飲ませてやる。

 

「さて、次は何処に行くかな」

 

「まうぅ、まうぅ?」

 

俺の言葉に返事をしたセリーヌだが、微妙に話しがかみ合っていない。

 

「・・・・・・」

 

抱いているセリーヌを見てみると、心なしか頬が赤くなっており目も虚ろな状態であった。

 

「お前、コーラで酔ったのか?」

 

「まうぅぅ?」

 

酔っぱらってはいるが、俺がしっかりと抱いててやれば自動車に轢かれることもないだろうし、大丈夫だろう。

 

「しかし、このままじゃ意味がないな。 今日は帰るか」

 

酔っぱらったままのセリーヌを家に連れて帰った俺は家の中なら大丈夫だろうと思い、セリーヌを廊下に下ろす。

 

「あっ、トシ兄ぃ、おかえり」

 

「まうー!!」

 

出迎えてくれた美柑に飛び付いたセリーヌは頭に咲かせている花から花粉のようなものを撒き散らした。

 

「おいおい。 美柑、大丈夫か?」

 

顔にセリーヌの花粉が直接掛ってしまった美柑だが、何やら様子がおかしい。

 

「トシ兄ぃ。 大好き!!」

 

「お、おい? 美柑?」

 

なんだかよくわからないが、目の色を変えた美柑に突然正面から抱きつかれて困惑してしまう。

 

と、その時に気付いたのだが、美柑の頭の上に小さな花が咲いているようだ。

 

「セリーヌの花粉の影響か?」

 

「トシ兄ぃ、好き。 大好きなの。 兄妹のことなんか関係ないくらい好き」

 

酔ったセリーヌの影響で美柑がおかしなことになってしまった。

 

義理とはいえ、妹に好きと言われるのは嫌ではないが、本心かどうかわからないので素直に喜べない。

 

「とりあえず、お休み、美柑」

 

俺は抱き付いている美柑を眠らせてからソファへと運んだ。

 

「さて、酔っぱらいにはお仕置きが必要だな」

 

その後、家にいたデビルーク三姉妹も酔っぱらいのセリーヌの花粉に掛ってしまい後処理が大変だったのは余談である。

 

 

 

~おまけ~

 

 

「あれ? 私、なんで寝てるんだろ?」

 

目が覚めたらソファで横になっていた私は眠る前の記憶がないことに首を傾げる。

 

「確か、トシ兄ぃを玄関まで迎えに行って、それから・・・・・・」

 

「おう、美柑。 起きたか? 飯はもう少しで出来るから待ってな」

 

そう言えば夕飯の支度をしている最中だったということを思い出した。

 

その証拠に私はエプロンを付けたままの状態である。

 

「ご、ごめんねトシ兄ぃ。 なんか寝ちゃってたみたいで」

 

「気にするな。 いつも大変だろ? 疲れが溜まってたんだよ」

 

どうやらトシ兄ぃは私が作っていた料理の続きをしてくれたようで、後は並べるだけで良いようだった。

 

ララさんたち三人も一緒にご飯を食べることになっているのだけど。

 

「あれ? ララさんたちは?」

 

「ん? あぁ、ちょっとあって、後で良いってさ」

 

よくわからないけど、ララさんたちは一緒に食べないらしい。

 

新しい家族の一員になったセリーヌの姿も見えないし何かあったのかな。

 

「まぁ、いいかな。 トシ兄ぃがそう言うんなら間違いないだろうし」

 

トシ兄ぃがここにいるということは何も問題ないということである。

 

だって、何かあるなら一番に駆けつけて解決するために頑張ってるはずだもん。

 

「「いただきます」」

 

久しぶりに兄妹だけで食べるご飯はやっぱりトシ兄ぃの味付けでとても美味しく感じられた。

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