魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第三十三話

俺はいつも通りに学校へ向かう道を歩いていた。

 

いつも隣に居るララは何やら用事があるとかで先に学校へ行ってしまったのだ。

 

「よぉ! トシアキ!」

 

「どうしたんだよ、朝からテンション高いな」

 

教室に入った途端に猿山から声を掛けられたのだが、いつも以上に声が大きい。

 

「あったりめぇだろ!? 周りを見てみろよ」

 

「ん?」

 

猿山に言われて周りを見てみるといつも以上に教室の空気がピリピリとしていた。

 

特に男子たちの視線がいつも以上にギラ付いているような気がする。

 

「今日はどいつもこいつもチョコがもらえるかどうかでギラギラしてんだよ」

 

「たかがチョコくらいで?」

 

チョコレートなど、来る途中のコンビニでも買えるような代物でなぜこんなに空気が悪くなるのだろうか。

 

「おいおい、トシアキ。 だって今日は・・・・・・」

 

「猿山! 結城!」

 

何かを言おうとした猿山の声を遮って声を掛けてきたのは籾岡と沢田である。

 

振り返ると二人とも大きめの箱を持っており、それぞれこちらに差し出してきた。

 

「ほら、コレあげる」

 

「チョコだよ」

 

「おっ、サンキュー」

 

籾岡と沢田の箱からそれぞれ一つずつ取って口に放り込む。

 

普通に売っているチョコレートだが、甘くてとても美味しかった。

 

「あと、コレもあげるね」

 

籾岡はポケットから取り出した別の小さい箱を猿山や沢田に気付かれないようにこっそりと俺の制服のポケットに入れていた。

 

「ん? あぁ・・・・・・」

 

「じゃね♪」

 

そして二人はそのまま大きめの箱を持って教室の男子たちのもとへ駆けて行く。

 

去り際にウインクを残して行った籾岡が可愛く見えたのは余談である。

 

「皆、チョコもらえてるじゃねぇか」

 

「いや、そういうのじゃなくてだな・・・・・・」

 

俺の言葉にどこか諦めたような声で言った猿山であったが途中でチャイムが鳴ったので席へ戻って行くのであった。

 

「トシアキ君! 見つけた!」

 

時は変わって休み時間。

 

俺は飲み物を買いに校舎の外にある自販機の傍に来ていた。

 

「ルンか? どうかしたのか?」

 

「トシアキ君にチョコをあげようと思って・・・・・・はいっ!」

 

キレイな紙で包装された箱を差し出され、俺はそれを受け取る。

 

「おう、サンキューな。 でも、なんで皆、今日に限ってチョコをくれるんだ?」

 

「えっ? だって今日は地球で言う・・・・・・」

 

「「ルンちゃーん! 俺たちにも!!」」

 

アイドルRUNの追っかけである学生たちがルンのもとへ走ってきたため、それを見たルンはそのまま走り去って行ってしまった。

 

「・・・・・・結局、最後まで聞けなかったな」

 

「マスター」

 

走り去ったルンの後ろ姿を眺めていると上からスタッと降り立ったのはヤミであった。

 

ヤミは惑星ミストアに行ってから態度が少し変わってしまったような気がする。

 

「よっ、ヤミ。 何かあったのか?」

 

「これをマスターに」

 

だが、俺からのプレゼントもつけてくれているようだし、呼び方が変わっただけなのであまり気にしないようにしている。

 

「ん? たい焼きか?」

 

「はい、いつものお店で特別にチョコ味を作ってもらいました。 美味しかったのでぜひ食べてください」

 

いつもの店ということはあのたい焼き屋だろうか。

 

あんこやカスタード以外にチーズ味やカレー味があるたい焼き屋ならチョコ味があっても不思議ではない。

 

「おう、ありがとな」

 

「いえ、それでは失礼します」

 

突然現れたように、俺にたい焼きを渡すと忽然と去ってしまったヤミ。

 

「・・・・・・とりあえず、教室に戻るか」

 

無事に飲み物を購入した俺はルンやヤミからのチョコレートを持って教室へ戻るのであった。

 

さらに時は進んで昼休み。

 

俺は校内放送で呼び出されたので保健室の御門先生のもとへと足を進めていた。

 

「トシアキ!」

 

保健室へと続く廊下を歩いていると後ろから声を掛けられた。

 

振り向くとララと西連寺が二人揃ってこちらへ向かって来ていた。

 

「はい、コレ。 私と春菜で作ったスペシャルチョコだよ!」

 

「受けとってくれると嬉しいな」

 

ララと西連寺が二人で作ってくれたチョコを受け取る俺。

 

今朝からララの姿が見えなかったのは西連寺のところへ寄っていたからなのか。

 

「ありがとな。 ララ、西連寺」

 

「それじゃあ、あたしたちはご飯食べてくるね」

 

「結城君は確か保健室に呼ばれてたよね?」

 

どうやら俺を捜してチョコを渡すためにご飯を食べていなかったらしい。

 

「そうなんだよ。 理由はよくわからないんだが、とりあえず行ってくるわ」

 

そういうわけで保健室へとたどり着いたのだが御門先生の姿はなく、代わりにお静が俺を出迎えてくれた。

 

「御門先生は?」

 

「えっと、ちょっと用事で出てますが、すぐに戻ってくるので待っててください」

 

俺は言われた通り待っているため椅子へと座ったのだが、お静が何やらソワソワしている姿が気になってしまう。

 

「どうかしたか?」

 

「はぅ!? いえ、あの、その・・・・・・」

 

「あら? ごめんなさいね。 待たせてしまったかしら」

 

お静がキョロキョロと視線を泳がせていると御門先生が扉を開けて戻ってきた。

 

「いえ、俺もつい先ほど来たとこです。 なにか用ですか?」

 

「そうね、用と言えば用なんだけど・・・・・・」

 

そう言ってお静の方へと視線を向ける御門先生。

 

「えっと、あの・・・・・・トシアキさん、受け取ってください!」

 

御門先生からの視線を受けたお静は後ろ手に持っていたものを俺へと差し出した。

 

「お、おう、ありがとう」

 

どうやらお静はコレを俺に渡すかどうかでソワソワしていたらしい。

 

「ふふふ、よかったわね。 受け取ってもらえて」

 

「はわわ、み、御門先生!!」

 

頬を赤く染めながらパタパタと手を振るお静を横目に御門先生もポケットから小さな箱を取り出して俺へと差し出してくれた。

 

「ご主人様のことだからもうたくさん貰ってるだろうけど、わたしからもね」

 

「ありがとうございます。 確かに今日はチョコをたくさんもらいましたが・・・・・・」

 

そこまで俺が言ったところで今度は校内放送で御門先生が呼ばれてしまった。

 

そのため、御門先生は職員室へ向かい、お静も御門先生と一緒に出て行ってしまい俺一人が残ってしまう。

 

「・・・・・・とりあえず、教室に戻るか」

 

またさらに時は進んで放課後。

 

俺は帰宅するため鞄に教科書を詰めようと思っていたのだが。

 

「皆からのチョコで鞄に教科書が入らねぇ・・・・・・」

 

仕方がないので教科書類をすべて机の中に戻し、チョコが入った鞄を手に教室を出ようとしたところでまた呼びとめられてしまった。

 

「ゆ、結城君! あの・・・・・・」

 

「白雪か。 どうした?」

 

何度か日直を共にしたクラスメイトであり、誕生日プレゼントをもらったこともある相手である。

 

「これ、よかったら・・・・・・」

 

可愛らしいリボンが付いた紙袋を俺に差し出した白雪は何故か俺と視線を合わせてくれない。

 

「んと、俺が貰ってもいいのか?」

 

「うん。 結城君じゃなきゃ、ダメなの」

 

そう言って潤んだ目で視線を合わされたら受け取らないとは言えなかった。

 

「ありがとな、白雪。 また明日」

 

「う、うん! また明日ね。 結城君」

 

最後には微笑んでくれた白雪に見送られ、俺は自分の鞄と白雪からの紙袋を手に下駄箱まで向かって歩いてきた。

 

「結城くん!」

 

「ん?」

 

「こ、これ、あげる」

 

再び呼びとめられた相手は古手川であり、手には小さな包が添えられていた。

 

「もしかしてチョコか? 俺に?」

 

「言っとくけど、あくまで友達としてなんだからね!」

 

さすがに何度も貰っていたらこれがチョコレートであることの予測は付く。

 

古手川からの言葉を聞く限り、友達にお菓子を配る日であったらしい。

 

「おう! ありがとな、古手川!」

 

「うっ、そ、それじゃあね」

 

そう言ってまだ学校でやることがあるのか、古手川はそのまま階段を上って行ってしまった。

 

「・・・・・・とりあえず、家に帰るか」

 

またまたさらに時は進んで夕方。

 

家に戻ってきた俺はリビングのテーブルに貰ったチョコレートを鞄から取り出していた。

 

「まうまう!!」

 

後ろから抱きついてきたセリーヌを腕に抱えていると美柑が冷蔵庫から取り出した箱を渡してくれる。

 

「はい、トシ兄ぃ。 チョコレート、私とセリーヌからね」

 

「サンキュ、美柑。 セリーヌもな」

 

「まう!」

 

美柑とセリーヌからのチョコも一緒に机の上に置いておく。

 

さすがに俺一人で全部食べるのは不可能だからだ。

 

「わっ、チョコだ! しかもこんなにたくさん」

 

「あぁ、学校で皆から貰ったんだ」

 

そんな話をしていると呼び鈴が鳴るのが聞こえてきた。

 

どうやら宅配便が届いたらしい。

 

「トシ兄ぃへの荷物だよ。 結構大きいけど、なにかな?」

 

「俺への? 心当たりはないんだが・・・・・・送り主は天条院沙姫。 沙姫先輩から?」

 

大きめの箱を開けるとそこにはさらに箱が三つ入っていた。

 

「えっと、沙姫先輩と凛先輩に綾先輩? なんで一つの箱に入ってんだ?」

 

いつも一緒に行動しているからって箱まで一つにしなくてもいいと思うんだが。

 

そう言えば、前に貰った時もこんな感じだったと思い出しながらそれぞれの箱を開ける。

 

「チョコだ。 しかも三つともチョコ」

 

「トシ兄ぃ、モテモテだね」

 

「まうまう!」

 

美柑の言葉を聞き流しながら俺はその三つもテーブルの上に並べておく。

 

よく考えると知り合いの女の子みんなからチョコレートを貰った気がする。

 

「・・・・・・とりあえず、寝るか」

 

またまたさらにさらに時は進んで就寝前。

 

今日の出来事を色々と考えながら俺は自室への扉を開けた。

 

「「ハッピーバレンタイン!!」」

 

扉を開けると、ララの妹であるナナとモモが二人でお揃いの衣装で出迎えてくれた。

 

その時の言葉を聞いて、ようやくチョコレートを貰っていた理由がわかった。

 

「「「・・・・・・」」」

 

バレンタインの季節だと忘れていたこともそうだが、二人の衣装にも驚いていたりする。

 

黒の衣装でヘソの部分は露出しており背中には黒い翼も生えてたりする。

 

頭には角の飾りが付いており、尻尾と相まって可愛らしい悪魔に見えたのだ。

 

「や、やっぱりこんな格好するんじゃなかった!」

 

「あ、あの、トシアキさん?」

 

ナナは羞恥のあまり、顔を赤くしながらそっぽを向き、モモは不安げな様子で俺に声を掛けてきた。

 

「あぁ、悪い。 突然だったからビックリしてな。 二人とも可愛いよ」

 

「そうだったんですね! ほら、ナナ! トシアキさんもこう言ってるじゃない!」

 

「ふ、ふんっ!」

 

相変わらずそっぽを向いているナナだが、気分を良くしたのか尻尾がフリフリと左右に揺れていたりする。

 

「それでですね。 コレは私たちからです!」

 

「か、感謝しろよな!」

 

二人からのということで包を受け取った俺はソッと二人の傍によって頭を撫でてやった。

 

「ありがとな。 わざわざこんな格好までしてくれて」

 

「えへへ」

 

「ッッ!!?」

 

喜んでくれるモモと少し戸惑っているようなナナの二人の反応は双子なのに全然違っていた。

 

「もしよかったら、一緒に添い寝もしますよ?」

 

「なっ!?」

 

「はいはい、そういうのは本当に好きな人に言ってやれ。 じゃあ、お休み」

 

俺はモモの言葉を軽く流して、頬を赤くしながらドギマギしているナナとそのまま部屋の外へ押しやって扉を閉めた。

 

「まったく、なんで今日は皆してチョコを渡してくるのかと思ったが」

 

この世界にもバレンタインデーというイベントがあるということを理解した。

 

前に行ったことがある世界と類似しているということだろう。

 

「ん? ってことは・・・・・・」

 

俺は気になって部屋にあるカレンダーを一枚ペラリと捲ってみた。

 

「やっぱりか」

 

そう、バレンタインデーがあるならホワイトデーというイベントもあるのだ。

 

今日、俺が貰ったチョコレートは十三個。

 

来月に来るであろうホワイトデーのことを考えて俺は深くため息を吐くのであった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

部屋から追い出されたあたしたちはそのままの姿で自分の部屋に戻る。

 

「もう、ナナの所為で追い出されちゃったじゃない」

 

「あ、あたしの所為じゃないだろ!」

 

多分、あいつに追い出されたのはモモの発言が原因だとあたしは考えていた。

 

「せっかく、誘惑できそうな格好までしたのに、トシアキさんってば素気ないんだから」

 

「それにあたしまで巻き込むなよ」

 

あたしはモモに巻き込まれてこんな格好をしているのだ。

 

別に、あいつの喜ぶ顔が見たかったとか、頭を撫でて欲しかったとかいうわけじゃない。

 

「あら? でも、トシアキさんに頭を撫でて貰った時は嬉しそうだったわよね?」

 

「っ!? べ、べつにそんなんじゃ・・・・・・」

 

「はいはい、それじゃ、お休み」

 

あたしの言葉を最後まで聞かずに、モモは自分の部屋へと戻って行った。

 

あたしも自分の部屋に戻り、服を寝間着へと着替える。

 

「・・・・・・」

 

着替え終わったあと、今まで着ていた服をモモに返そうかと思ったが、さっきのあいつの笑顔が頭に浮かんできた。

 

「まぁ、モモも持ってるし、あたしが持っててもいいよな」

 

そう誰に言うでもなく、一人で呟いたあたしはベッドに入るのだった。

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