魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第六話

「暑いぃ・・・・・・」

 

登校中のララは汗をかきながらトボトボと俺の隣を歩いていた。

 

「なんで朝からこんなに暑いの? トシアキ」

 

「そりゃ、夏だからな」

 

この世界にも四季があったようで、今は四季の中で一番暑い夏であった。

 

もっとも、俺自身はそんなに暑さを感じていない。

 

風の『精霊』たちが俺の周りをクルクルと飛んでくれているので心地いい風が終始吹いている状態なのだ。

 

「ちなみに午後からもっと暑くなるんだけどな」

 

「デビルークにはナツなんてないもん・・・・・・」

 

確かに俺が今まで行ったことある世界でも四季があるのは珍しいほうだった。

 

他の星にはもっと厳しい環境で生活している人たちがいるのだろうか。

 

「もう今日はずっと裸のままで過ごそうかな」

 

暑さで頭がおかしくなったのか、ララがとんでもないことを言い始めた。

 

「ララがそうしたいなら別に止めはしないが、襲われてもしらねぇぞ」

 

「冗談だよ、いくら私でも知らない人に裸を見せたりしないって」

 

笑顔でそう言ったララだが、俺と初めて会ったときは全裸だったような気がする。

 

それに宇宙人の考えなんて俺にはわからないので、もしかしたら全裸で過ごしている人もいるかもしれない。

 

「それにしても、なんでトシアキは涼しい顔してられるの?」

 

冗談を言った後、ララは俺の表情に変化がないことや、汗が出ていないことに気付いたのか、そう尋ねてくる。

 

「俺は別に暑くないからな」

 

「えぇ!? そんなのウソだよ。 こんなに暑いのに・・・・・・」

 

驚いた様子を見せたララはそう言って俺の身体に触れてくる。

 

「あれ? トシアキの周り、なんだか涼しい」

 

俺と身体を引っ付けたことによって『精霊』たちが俺とララの周囲を回り出したのだ。

 

「あはっ、トシアキに引っ付いてると涼しいし、嬉しいし、いいかも」

 

「俺は歩きにくいし、暑苦しいから嫌だ」

 

そう言ってララを振りほどこうとするが、右手にギュッと抱き付いたララは離れようとはしない。

 

その時、電柱の後ろに怪しい人物がいるのを見つけた。

 

怪しい人物はこの暑さの中、真っ黒なフード付きの服を着てサングラスとマスクを装着しており、デジカメを持ってこちらの様子を窺っていたのだ。

 

「おい、お前。 なにしてんだ?」

 

カメラは俺に向いていたのかララに向いていたのかわからなかったが、友好的ではないと判断し、俺は怒気を含ませて声を掛ける。

 

「っ!?」

 

しかし、怪しい人物はすぐさま踵を返し、俺たちに背を向けて走り去っていった。

 

俺も追いかけようとしたが、ララに腕をしっかりと掴まれていたので走ることが出来ず、結局見失う形になってしまった。

 

学校に着いて授業を受けているときに、再びその怪しい人物が現れた。

 

「今度は逃がすか!」

 

俺の言葉に驚いたのか、怪しい人物は素早く反転して廊下を走り去る。

 

だが、先ほどとは違い自由になった俺は授業中であるにも関わらず、席を立って廊下に飛び出し、奴の背中を追いかけた。

 

途中、授業終了のチャイムが鳴ったため、他の生徒も出てきたのでなかなか追いつけなかった。

 

『魔法』でスピードが上がった俺はようやく階段付近で奴に追いつき始めた。

 

「あっ!?」

 

ところが、階段を上っていった奴が上から下りて来ていた一般生徒を付き落としたのだ。

 

「流石に無視は出来ないな」

 

落ちて来る一般生徒を風の『精霊』に力を借りて受け止め、時間をロスした俺も階段を上って追いかける。

 

「チッ、見失ったか。 仕方ない、また『精霊』に力を借りて・・・・・・」

 

「ふっふっふっ、全く、素晴らしい女だ」

 

この前の西連寺を探した時のように『精霊』に力を借りようと考えていた俺の耳に怪しげな男の声が聴こえてきた。

 

「見てるだけで胸が高鳴ってくるぜ」

 

どうやら今朝の登校時に撮っていたのは俺ではなく、ララの方であったらしい。

 

俺自身じゃなければ別に構わないか、と考えたのだが、先ほどから聴こえてくる言葉を聞いていると放っておくわけにはいかないようだ。

 

「趣味は人それぞれだが、キチンと相手の許可は取ろうな!」

 

そう言いながら、声が聴こえてきた部屋の扉を開けた俺。

 

予想では隠し撮りした写真を眺めながら不穏な言葉発している男がいると思っていたのだが。

 

「へっ?」

 

そこにいたのは派手な服を着て、ニヤニヤと笑みを浮かべながらエロ本を読んでいるおじさんであった。

 

「・・・・・・」

 

しかもおじさんが座っている椅子は見るからに立派な造りで、机には校長というネームプレートが見える。

 

「イヤン」

 

「イヤンじゃねぇよ!!」

 

ドアを開けた俺に対する言葉が思ってもいなかった発言だったので、つい俺も突っ込みを入れてドアを閉めてしまった。

 

というか、アレがウチの学校の校長なのか。

 

「やっぱ、心配した通りだったぜ・・・・・・」

 

ララの転校を許可した理由もそうだが、本当にあんなのが校長でいいのだろうか。

 

「もう、仕方ない。 屋上にでも行くか」

 

『精霊』に尋ねてもよかったが、怪しい人物を見失い、走ったり怒鳴ったりで疲れた俺はもう怪しい男を探すのは諦めて後の授業をサボることにした。

 

校長があんな奴なら大抵のことをしても退学や停学にはならないだろう。

 

「さすがセンパイ! 女子更衣室だけじゃなく水中にカメラを仕掛けるあたりがマニアックだぜ!」

 

屋上へ出る扉を俺が開くと同時にそんな複数の声が聴こえてきた。

 

俺が屋上へ出てみると先ほどまで追いかけていた怪しい男が他の男子生徒たちの先頭に立って、何やら言っているようだった。

 

「お前らも欲しけりゃ売ってやるぜ? 何なら・・・・・・」

 

「へぇ、何を売ってくれるって?」

 

今まで散々振り回された相手を見つけて俺は嬉しくなり、相手の言葉を遮って話しに入っていった。

 

「ん? 何だ、お前は」

 

「あっ!? 弄光先輩! ソイツ、一年の結城です」

 

怪しい男の正体は弄光という先輩だったらしい。

 

俺のことを一年と呼び、弄光のことを先輩と呼んだ男子生徒は二年なのだろう。

 

つまり弄光は必然的に三年になり、年齢は本当の俺と同じというわけだ。

 

「なるほど、お前があの結城か」

 

そして、一年として彩南高校に入ったはずの俺が何故か二年と三年に顔が広まっているようだった。

 

「『あの』が『どの』かはわからないが、俺は結城だが?」

 

俺が結城であると言った途端、集まっていた二年の男子生徒たちがザワザワと騒ぎ出した。

 

「あいつが、最近入った・・・・・・」

 

「一年のくせに態度が・・・・・・」

 

「女子からの人気が・・・・・・」

 

小さい声で殆ど聞き取れなかったが、俺の頭の中では振り回してくれた弄光をどう処理するかを考えていて特に気にはしなかった。

 

「ふっ、お前もこの写真が欲しくて俺を追ってたんだろ?」

 

そう言って懐から数枚の写真を取りだす弄光。

 

そこには女子更衣室の盗撮写真や階段下から撮影したであろう写真があった。

 

「いや、俺はお前にO・HA・NA・SHIをしに来たんだが?」

 

以前別の世界で出会い、世話になった白い悪魔のように感情を込めて言ってみた。

 

「お話? ふん、なんと言われようと安くはしないぞ」

 

どうやら俺の感情は弄光には伝わらなかったらしい。

 

こうなったら実力行使をするかと考え、弄光に近づいていく。

 

「一枚三千円で・・・・・・な、なにをっ!?」

 

ごちゃごちゃとうるさい弄光を掴み上げた俺はそのまま女子が楽しそうに遊んでいるプールへ投げ飛ばしてやった。

 

「そんなに好きなら直接見て来い!」

 

「う、うわぁあぁあぁ!!?」

 

「「「セ、センパイッ!?」」」

 

投げ飛ばした後は『精霊』に乱暴でも構わないので死なないように着地させてくれと頼んだ。

 

そして、二年の男子生徒がいる屋上でサボる気にはなれなかった俺はその場を立ち去る。

 

その後、弄光の盗撮事件が発覚して二週間の停学になったらしいが、俺は特に気にはしなかった。

 

 

 

***

 

 

 

俺は非常に困っている。

 

何を困っているかというと、ララが俺の部屋で荷物の準備をしているからだ。

 

「・・・・・・」

 

明日から臨海学校という行事があり、その準備を何故だかララが俺の部屋でしているのだ。

 

別に準備をするのは悪くないが、こんなに散らかして誰が片付けるというのだ。

 

「まぁ、俺か美柑だよな」

 

ララはなんでもかんでも持って行こうとしているらしく、旅行鞄が既に膨れあがっているのに、まだ入れようと頑張っている。

 

それと大変言い辛いのだが、明日辺りに台風が直撃しそうなのだ。

 

そんなことになれば臨海学校は延期か中止になる。

 

「俺はどっちでもいいんだけどな・・・・・・」

 

俺は別にそんな行事あってもなくても構わないのだが、ララはあって欲しいのだろう。

 

しかし、こんなに楽しみにしているララにそんなことを言えるわけがない。

 

まぁ、方法は一応考えてはいるのだが。

 

「ララさん、楽しみにしているところ悪いんだけど、中止になるかもよ? 臨海学校」

 

俺の代わりに大好きなアイスを食べながらそう言ったのは美柑であった。

 

というか美柑よ、暑いのはわかるが男の俺の前でそんな格好はやめろ。

 

美柑は膝上までしかないズボンとブカブカのランニングシャツを着ていたのだ。

 

「へっ?」

 

まさかの中止発言に素っ頓狂な声を出したララ。

 

俺は最初から知っていたので特に驚きはしなかったが。

 

「台風が近づいてるんだって。 しかも、明日辺り直撃って言ってるよ?」

 

俺の部屋からリビングに移動した三人でテレビの前へ集まる。

 

そこでは丁度天気予報が映し出されており、台風が直撃すると言っていた。

 

「えー!? そんなのヤダよ! せっかく色々準備したのに」

 

「私としては中止の方がいいかな、トシ兄ぃが家にいるし」

 

美柑の呟きはララの大声でかき消され、ララには聴こえていなかったようだが、近くにいた俺には聴こえていた。

 

そんな美柑には悪いがあんなに楽しみにしているララの為に俺は『魔法』を使っているのだった。

 

「ってなわけで、頼むな」

 

俺が事前に台風が来るとわかっていたのも『精霊』から聞いていたからだ。

 

そしてそのときからお願いして、当日までに台風を日本から逸らしてもらうように言っていたのだ。

 

今、言ったのも最終確認であり、このまま朝になれば台風は日本を逸れていることだろう。

 

「心配するな、ララ。 寝て起きたら行けるようになってるから」

 

「ホントに?」

 

美柑の中止発言が効いたのか、目に涙を浮かべ俺にそう尋ねてくるララ。

 

そんなララの表情に一瞬ドキリとしたが、俺は顔には出さず頷いてやる。

 

「あぁ、大丈夫だ。 俺を信じろ」

 

俺はララの目を見つめて、真剣な表情でそう言ってやる。

 

もっとも、絶対に台風が逸れるという自信があったから言えたのだが。

 

「・・・・・・うん、わかった。 トシアキのこと信じる」

 

そして、俺の言葉を信じてくれたのか、涙を拭き取ってしっかり頷いたララ。

 

「それじゃあ、風呂に入って早く寝ろ。 明日は早いんだから」

 

「うん、わかった! それじゃ、行ってくるね!」

 

元気になったララは俺の言った通り、明日に備えて早く風呂に入って、寝るようだ。

 

まだ昼間なのだが、ララには丁度いいだろう。

 

どうせ、興奮して早く寝られないだろうから。

 

「・・・・・・いいの? トシ兄ぃ。 あんなこと言って」

 

アイスを食べ終えた美柑はそう言いながら俺を見つめてくる。

 

どうやら俺が根拠のないことを言ったのが気になっているらしい。

 

「いいんだよ。 どうせ台風は逸れる、美柑には悪いけどな」

 

「私?」

 

「さっき言ってたろ? しばらく一人になるけど泣くなよ」

 

俺の言葉を聞いてキョトンとしていた表情が、俺に聴こえていたという驚きに変わる。

 

そして恥ずかしくなってきたのか、顔を赤らめてそっぽを向く。

 

「な、泣かないよ、トシ兄ぃのバカ」

 

そんな様子を見せる美柑が可愛く思えてきたので、ポンポンと頭を撫でて微笑む。

 

「寂しくないように今日はなんでも一つだけ、望みを叶えてやるよ」

 

ララにばかりでは流石にズルいので、美柑も一つ願いを叶えてやることにする。

 

もっとも、お金が欲しいとか、家が欲しいとかは流石に無理だが。

 

「・・・・・・じゃあ、一緒にお風呂に入ろ?」

 

「なん、だとっ!?」

 

まさかの願い事に俺は驚いてしまった。

 

確かにまだ小学生な美柑だが、そろそろ男という存在が気になり始め、たとえ兄でも一緒に行動したく無くなる歳だと思っていたのだが。

 

「・・・・・・ダメ?」

 

顔を赤くしながらも俺から視線を外さず、答えが返ってくるのを待つ美柑。

 

「わかったよ。 けど、美柑もそろそろ兄から卒業しような?」

 

「・・・・・・うん、わかった」

 

俺は美柑のお願いを叶えてやるために今日は一緒に風呂に入ることになった。

 

ちなみに、裸で入ろうとしていたのでマナー違反だがタオルを付けさせた。

 

もちろん、俺もタオルを付けていたのは言うまでもない。

 

 

 

~おまけ~

 

 

私はお風呂に入りながら、つい先ほどの真剣な表情をしたトシアキを思い出していた。

 

「トシアキ・・・・・・」

 

始めて通った学校という場所の友達と一緒にお泊りが出来る臨海学校。

 

どうしても行きたかったけど、タイフウとかいうのに邪魔されて行けなくなるところだった。

 

でも、トシアキが俺を信じろって言ってくれて、その時のトシアキの表情が。

 

「カッコ良かったなぁ・・・・・・」

 

今まで人を好きになったことがなかったので、色々と戸惑うことも多いけど、これが人を好きになること。

 

ドキドキして、楽しくて、でも不安で寂しく感じるときもあるけど、初めて好きになったのがトシアキでよかった。

 

私は明日の臨海学校を楽しみにしながら大好きなトシアキのことを思い、お風呂から出て明日に備えて早くベッドで横になった。

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