ご都合主義の裏側で   作:蕎麦饂飩

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卑屈で低能力なスペックの主人公が、異世界では一変して成功者と扱われる。
そんな世界の裏側。


裏側

この世界は、神が言った通り神が娯楽を愉しむ為に在る世界(・・・・・・・・・・・・・・)である。

どうもこうも無く、ただ神にとって娯楽の為の道具であり、

用が済んで、飽きられて、忘れられたら、

それ以降は手入れされる事無く世界へと注がれるエネルギーが停止し朽ちていく観葉植物、

充電される事無く放置される充電式駆動機器と同じである。

 

今、神様の世界では従来のその世界の英雄(プロ)ではなく、

余所の世界の廃棄物である一般人の底辺(アマチュア)のリアクションを愉しむ、ヤラセやドッキリが流行している。

もはや英雄を作って世界の危機を救うマッチポンプの物語に神々が飽きたのである。

 

 

故に、嘗て英雄が存在した所謂ファンタジーな世界の多くは神々に忘れられ、

その多くが枯れ果てて、そこに住まう命全てが消滅した。

 

しかし、その全てが全滅したわけでは無い。

その一部をリサイクルする事で、その世界に再び脚光が当たり、注目を浴びる存在になったが故に、

その世界である持ち主である神が、他の神に見せる所謂見栄えの為に栄養や水に当たる世界へのエネルギーを供給した。

そしてその世界の復活は他の世界へも伝搬した。

 

よし、うちの世界でも同じやり方、つまりパクリをやって流れに乗っかろう。

そう言う風潮がここ最近で見られるようになった。そしてその情報はその世界に住まう住人たちにも伝わっていた。

 

では、世界に住まう命たちはどうしたか?

見栄えするために神が異物である余所者を埋め込む。そしてその余所者が何かをしている間は恐らく神が興味を持ってくれる。

そして少なくともその間だけは世界に栄養が補給されて存続が為される。

 

 

だからその世界に住む全ての魂はあらゆる形で引き立て役と言う犠牲になった。それは、ただ世界存続の為に。

ある者は文章にすれば1000文字にもならない過程でオチるヒロインという役を演じ、

ある者は馬鹿を装って、異物をまるで賢者の様だと持ち上げたり、

ある者は武具に魂を奉げて、必死で無能な持ち主の能力を引き上げたり、

ある者は敵役として主人公(お客さん)が気持ちよくなれる為の障害を演じたりもした。

 

その中には当然苦痛も存在した。

引き立て役で主人公に逆上して打ち倒される無能なイケメンを演じた男は、かつてはヒロインを演じた美しい少女の婚約者だった。

だが、世界存続の為に周囲の者達にも設定の変更(役柄の説明)を行って、

ヒロインにはしつこく付きまとって嫌われているという設定になった。

 

そのヒロインも引き立て役を愛していた。イケメンに与えられた浮ついた安い愛のセリフを囁く役柄に、嬉しさと苦しさを感じていた。

その役柄の中でしか彼の愛を伝えられる事が許されなかったからだ。

それでも世界を救うと言う崇高な使命は貴族の娘として全うしなければならなかった。

故に、その役を演じきった。愛する者を罵倒して、その敵対者に売春婦の様に媚びる。

引き立て役が死んだときには、一人で隠れて泣き続けた。その間、建前として周囲の者が様々な理由で主人公から彼女を引き離していた。

 

国でも有数の賢者がいた。

彼は自身の著書を全て掻き集めて焼き払う様に命じると、誰でもおかしいとわかるほどバカげた間違いだらけの本を出版した。

この回収と出版の為に、多くの弟子たちが過労死したが、彼等は不満一つ洩らさなかった。

他にも、主人公が好きそうな魔法や技術が再現できる仕組みを皆で考えて、無能でも再現できる方法で実現する方法をも考えた。

それには、犠牲となる魂が必要だったが、皮肉な事にそれには事欠かなかった。

結局、賢者の妹のような存在であった少女が立候補の末に選ばれた。

 

また、彼の兄もまた国で有数の魔導師であり、かつて英雄と呼ばれる役柄を負っていた一人であり、

人々の幸せの為に日夜活動していた。

だが、主人公の引き立て役が死ぬ事を計画した時に、姿を永久に変える呪文を自身へと行使して、世界の敵役の一つとなった。

つまり魔王である。

 

他にも生まれもって魔族と呼ばれる人々がいた。

彼等は他の種族とも友好的であったが、その高い能力と、人と違う姿、住む地域が離れていることから、

人々の敵役を拝する事となった。

彼らの長も魔王の一人であり、種族を纏め上げて平和な世界を作っていたが、

盛り上げ役が必要であると理解したが故に、種族そのものを世界の敵側と設定する事に参加した。

勿論、反論は無かった。

魔族も、モンスターとされた生き物も、世界そのものが滅びて愛する家族全てが絶対の無に還される位なら、

自分や妻、又は夫、若しくは兄弟姉妹たちと共に殺される覚悟を決めていた。

 

 

 

つまり、主人公以外の全ての存在が、主人公一人の為に引き立てる演技をしていた。

それはひとえに世界を護る為に。

それに気が付くことなく、剣を振れば躱しきれなかった敵があっさりと倒れ、

策とも呼べない作戦に見事に騙された敵が憤慨と驚愕の演技をしながら倒れ、

そしてヒロインという役割を負った少女たちが人身御供として、魅力の無い男にキャバクラ嬢の様に無理に褒め上げながら、

娼婦の様に身体を明け渡した。

 

 

主人公に魅力がある人間なら、まだそこに救いはあった。

だが、以前の世界でイジめられて陰気で卑屈で自分が勝てる相手には強く出る性格になったのか、

その様な性格だからイジめられたのかはわからないが、何の対価も無しには人様に好かれる性格もしていないし、

常に失敗ばかりをしてきた為に、成功に対する距離感が遠く、諦めが良すぎる事も内心では周囲に見下されてきた。

 

大抵の場合、陰キャというのは、能力が高く容姿端麗でも性格が暗いというよりも、

底辺故に目立とうとすれば、図に乗るなと睨まれて容易に潰されるから、目立たない様にしているだけなのだ。

二次元だけが好きな男性よりも、二次元にしか愛して貰えない男性が多いのと同じことだ。ただの強がりに過ぎない。

これは、今回の主人公サマにも当て嵌まった。

 

何か病状にはならない程度に、環境適応か、学習能力、若しくは咄嗟の事を対処する根本的なステータスが足りていないのか、

裸の王様の物語の様に、誰も指摘をしないものの、主人公の行動には非効率的で無駄な事が多い。

つまり作業効率が悪い。どんくさい。鬱陶しい。頼りない。

それでも、主人公であるからには、それを褒め称えて、周囲の者はそれよりも無能に見せなければならない。

その演技に騙されるのは主人公だけだが。

 

挙句に容姿が悪かった。以前の世界では正直に遠ざけられてきたが、やたらと主人公に気を使うこの世界では、

まあ悪くは無いが目立ちはしない容姿という名目で持ち上げて表現されてきた。

挙句にこの世界では本来金髪碧眼が美しい条件になっていたが、主人公に気を使って、

黒目黒髪の人間は滅多にあらわれないが、極めてこの世界では重宝されるという設定を作って気遣った。

この世界の女性達からすれば、本心では異性としては近くにいるのも気持ち悪くて、

何かの引き立て役や共通の嫌われ役程度にしかならない男性でも、主人公という肩書が付けば、それでも持ち上げなければならない。

 

何をやっても駄目という、ある意味ファンタジーの様な男は、何をやっても成功扱いされるファンタジーの主人公とする為に。

 

 

 

 

何時の日か、この異世界転生・転移系主人公に神々が飽きるかもしれない。

その時まで世界全ての命を護る為に、全ての者が主人公を欺き続ける。

これは、ご都合主義の裏側で行われている出来事である。




此処で完結です。先ずはお読み頂き有難う御座いました。
ウケなさそうなテーマの毒たっぷりの内容でしたが、
若し宜しければ感想等頂けると大変喜びます。
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