<Infinite Dendrogram>~王国の双獣~   作:烏妣 揺

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第10話「ローグ・フェネクスⅡ」

第10話「ローグ・フェネクスⅡ」

 

□<イースター平原> 【疾風騎兵】セブン

 

「―――【ローグ・フェネクスⅡ】だと?」

 

 仮にも一度倒した<UBM>が目の前で新生したことに驚きを禁じ得ない。

 

「あのほら吹き怪盗が!」

 

 どこが楽に討伐できるだ!

 連戦が前提の<UBM>とか辛いにもほどがあるだろうが!

 

「ど、どうするセブン?」

 

「・・・倒す」

 

「けど、《聖なる焔よ、魔を照らせ(セイクリット・フレア)》は・・・」

 

「ポーションは?」

 

「一回分くらいならある」

 

 《聖なる焔よ、魔を照らせ(セイクリット・フレア)》はあと一回分。切り札として温存するべきか・・・。

 ならダメージソースは俺のネメアー依存か。

 そこまで考えたとき、奴が動き出した。

 

『GyuAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』

 

 突如奇声を発し、コルヴァス目掛け低空飛行で突進を仕掛けた。

 

「ちょ、なんでオレぇ!?」

 

「決まってんだろ馬鹿が!」

 

 前回のコイツの主な死因がアタランテだ。そして知能が高いモンスターは知ってる、ガードナーを倒す一番手っ取り早いやり方は、<マスター>を仕留めることだってな!

 

「《キャスリング》!」

 

 コルヴァスは【従魔師】のスキル《キャスリング》を使用して、咄嗟に自分とアタランテの位置を入れ替える。

 そして入れ替わりに【ローグ・フェネクスⅡ】の突進先に現れたアタランテはそのまま突進を喰らう。

 ―――が、そのまま【ローグ・フェネクスⅡ】の身体に組み付き、地面に叩き伏せる。

 

「アタランテさん!!」

 

『大丈夫です! それよりも早く追撃を、長くはもちません!!』

 

「了解だ! ネメアー!!」

 

 俺は紋章からネメアーを召喚して搭乗し、即座にスキルを使用して突進する!

 

「《風より速く弾丸のように(ハイマット・フルバースト)》!!」

 

 そして最大加速に乗って突っ込む。

 《風より速く弾丸のように(ハイマット・フルバースト)》で《ランウェイ・ブースト》を最大倍率で使用する、これが現状の俺たちにできる最大火力での攻撃だ。

 

「喰らいやがれ、このくそ怪鳥が!!」

 

 そういってネメアーが【ローグ・フェネクスⅡ】と接触―――いや、衝突した瞬間・・・。

 

 

 接触面が、俺と【ローグ・フェネクスⅡ】はもちろんアタランテを巻き込んで大爆発を引き起こした(・・・・・・・・・・)

 

 

「―――――――!」

 

 声が出せないほどの光と衝撃を受け、俺は一時意識を失った―――。

 

 

□<イースター平原> 【従魔師】コルヴァス

 

「―――せ、セブン!!!!」

 

 セブンがネメアーで突っ込んだ瞬間、大量の炎が噴き出した―――いや、爆発した。

 その衝撃で、三者がそれぞれの方向に吹き飛んだ。

 一瞬アタランテさんの安否も気になったが、《ライフリンク》でHPを共有していたことを思い出す。ウインドウに表示されたオレのHPはまだ半分も切ってない。つまりアタランテさんは大丈夫だ。

 急いでセブンに駆け寄る。

 

「大丈夫か!?」

 

 パーティーウインドウに表視されたセブンのHPはまだ3分の1は残っていたものの、意識がない!

 

「《ヒー―――」

 

 急いで《ヒール》を掛けようとしたところで、ふと背後に動く気配を感じ振り向く。

 そこでは【ローグ・フェネクスⅡ】が姿勢を直し、起き上ろうとしていた!

 

「アタランテさん、時間稼ぎを!!」

 

『り、了解ですわ!』

 

 起き上った【ローグ・フェネクスⅡ】に別方向から駆けてきたアタランテさんがとびかかる。

 アタランテさんがそうして時間を稼いでくれているスキに、オレはセブンを背負い手近な岩の影に隠れる。

 

「よし、ここならひとまず大丈夫だろ。《ヒール》!」

 

 そしてしばらく連続で《ヒール》をかけ、HPがほぼ回復させたがセブンは目を覚まさない。

 

「こ、こういう時はどうするんだっけ?」

 

 取りあえず、叩いてみるか?気つけ的に?

 そう思って拳を握りしめ、大きく振りかぶったその時。

 

「・・・・・・いや、グーはねぇよグーは。とどめ刺す気か?」

 

 あ、起きた。

 

「大丈夫でしょ、HPは回復させたし」

 

「そういう問題じゃねぇよ・・・」

 

 そう言ってセブンは頭を掻きながら起き上る。

 

「状況は? ドンくらい寝てた?」

 

「さっきからあまり時間は立ってない。今アタランテさんが時間稼ぎしてる」

 

 ふたりで岩陰からそっと身を乗り出してみてみると、依然として激しい戦闘がくり広げられていた。

 ただ、ひとつ気になるのはその戦闘の端々でアタランテさんのとは違う、真紅の炎がほとばしってることだろうか?

 

「・・・なるほど、そういうことか」

 

「なにが?」

 

「あの爆発の理由が分かった」

 

 セブンは神妙な顔でこう続けた。

 

「アレは、ダメージを受けるとカウンターとして身体から炎を出すんだ。多分自分で制御できてないからパッシブ」

 

「え、じゃあさっきのは?」

 

「爆発に思えるほどの勢いで炎が噴き出したんだろ? 奴にとってアレは大ダメージだったんだ」

 

 ”つまりちゃんと効いてる、奴は倒せる”―――そうセブンは口にする。

 

「じゃあやることは決まったな」

 

「え?」

 

 そう言うと、セブンは当たり前のことのようにこう言った。

 

あと2~3発(・・・・・・)今のをぶち込んでくる(・・・・・・・・・・)

 

「―――え?」

 

「お前の《ヒール》込みなら十分いける」

 

「―――いや、待てよ」

 

「ネメアーの無事が心配だが、まぁ《インパクト・レジスター》があるから無事だろ」

 

「―――だから、待てって」

 

「よし、このままじゃアタランテもじり貧だし、さっそk―――」

 

「―――セブン!!!!」

 

「―――!」

 

 そこでセブンは驚いたような顔でオレを見る。

 こんな大声を出すとは思っていなかったんだろう。

 

「セブン、お前痛覚切ってないだろ(・・・・・・・・・)

 

「あ、あぁ」

 

「あぁじゃないだろ!!」

 

 デンドロには痛覚を遮断するシステムがある。

 痛覚を遮断すると他の感覚もある程度鈍化してしまうが、戦闘する<マスター>たちの中では痛みを恐れてこの機能を使う日知たちが一定層いる。

 オレは一緒に戦うアタランテさんだけ痛覚を感じさせるのが申し訳なくて、セブンは感覚の鈍化が気に食わなくてこの機能を使っていなかった。

 

「ってことは、あの痛みをちゃんと感じてるんだろ!?」

 

「―――あぁ」

 

「なのになんで自分が犠牲になること前提の戦略立ててんだよ!」

 

 そう言って目を反らすセブンの胸倉を掴んで詰め寄る。

 

ソフィ(あの)事件の時だってそうだ!いや、その前のきよひー(あの)時だってそうだ、なんでお前はいつも率先して自己犠牲をしに行くんだ!!」

 

「―――それは」

 

「―――頼むから今回は、やめてくれ。・・・俺が傷つく」

 

 セブンーーーいや、七崎は昔から自己評価が低すぎる。だから、何かを解決する際に安易に”自己犠牲”に走ってしまう傾向が以前からあったが、デンドロではそれが如実に現れた気がする。それが周りから孤立しがちな原因の一つであることは本人もわかっているはずなんだが・・・。

 

「だから、今回はオレもお前も犠牲にならない方法で戦ってくれ、頼む」

 

 オレにそう頼まれたセブンは、少し気まずそうにしながらもはっきり答えた。

 

「―――わかった、考えてみる」

 

 

 

□<イースター平原> 【疾風騎兵】セブン

 

 コルヴァスに怒られて、仕方なく代行案を実行に移すことにした。

 成功率が微妙だから、やりたくはなかったが、仕方ない。

 アタランテと【ローグ・フェネクスⅡ】の戦闘のころ合いを見計らってネメアーの回収に向かう。

 

「・・・・・・よし、大丈夫だ」

 

 爆発を受けてもなおねめネメアーは大丈夫だった。《インパクト・レジスター》がしっかりと発動したらしい。

 まぁ、俺に対しても発動してなかったら、死んでたかもしれないが。

 

「よし、準備完了だ! アタランテを引っ込めろ!」

 

 そして物陰に潜むコルヴァスにアタランテを紋章の中に戻すように指示を出す。

 

「了解!」

 

 アタランテが紋章に収納されると、今まで戦っていた相手が突如消失したことのに驚く【ローグ・フェネクスⅡ】。

 その視線が、少し遠くでエンジンをふかす俺にむく。

 そう、先ほどの攻撃で大ダメージを与えた俺に。

 

『Giiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiieeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!』

 

 案の定、奴は俺に向かって奇声を上げて、低空で突っ込んできた。

 そして俺もネメアーを奴に向かって走らせる。

 距離がどんどん縮まり、衝突する寸前のタイミングで俺は方向を少し変え奴の横を素通りする。

 そして通り過ぎた直後に後ろの奴の右足に向かって、《瞬間装備》で装備した『ハーフマンティス』の鎌の方を投擲する。

 ソレは見事命中し、奴の足に絡みつく!

 

「よし、成功!《風より速く弾丸のように(ハイマット・フルバースト)》!!」

 

 成功した瞬間に俺は《風より速く弾丸のように(ハイマット・フルバースト)》を発動、急加速する。

 そして奴は急に反対側に足を一気に引っ張られた形になり、姿勢を崩し地面に叩きつけられ、そのまま俺に引きずられる。

 

「モンスターといえど生物由来の身体構造してんだから、足引っ張られたら姿勢直せないよな(・・・・・・・・・・・・・・・・・)!!」

 

 そして引きずりながらその場を離脱する。

 奴が暴れてスピードが落ちる度《風より速く弾丸のように(ハイマット・フルバースト)》をこまめに発動させ、最高時速の維持と奴が姿勢を直す隙を削る。

 目指す先はさっきコルヴァスがしゃべっていたアレ(・・)

 アレにさえたどり着ければ、多分勝てる!

 

 ぎしり

 

「!」

 

 過度の酷使でネメアーから、フレームが軋む音が聞こえ始めた。どうやらネメアーの限界値も近いらしい。

 

「・・・頼むから耐えてくれよ」

 

 そう言った時、アレが―――目指していた大岩が見えてきた。

 その岩場まで直進し、その3m手前で急ブレーキ、急旋回をする。

 もともとその手のことが苦手なネメアーは旋回し終えると同時にバキリとフレームのどこかで致命的な音が鳴り、急な旋回の遠心力で俺はあらぬ方向に投げ飛ばされそうになる。

 そして俺に引きずられていた【ローグ・フェネクスⅡ】もそれは同じで、遠心力で吹っ飛ばされ大岩に激突し少量の炎が噴き出す。

 

『Gua!!』

 

 しかし、引きずり回したスリップダメージも、岩に叩きつけたダメージも大したことなかったようで、奴はすぐに起き上った。

 それを見て俺は、急いで『ハーフマンティス』の短剣の方を地面にできるだけ深く突き刺した。

 

 ―――奴が逃げられないように(・・・・・・・・・)

 

 奴の視線が俺を捉える。そして無防備な俺に近づこうとして―――。

 

「お前の相手は俺じゃねぇ(・・・・・)

 

 奴はようやく背後の異常に―――その大岩に何があったのかに気付く。

 そこにあったのは巨大なハチの巣。

 ―――そう、俺たちが最初のころさんざんお世話になった【グリーン・ワスプ】の巣だ。

 

 この世界のモンスターは、基本<墓標迷宮>のような神造ダンジョンにポップするもの以外は生態系に組み込まれている。

 つまり、元となった生物に由来する生態を持つ。それはこの【グリーン・ワスプ】も例外ではない。

 

 現実世界でスズメバチの巣にちょっかいを掛けるとどうなるか、それは―――

 

『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』『Kikikiki・・・』―――

 

『Guaaa!!』

 

 巣から出てきた大量の【グリーン・ワスプ】が【ローグ・フェネクスⅡ】を襲う。

 

「さて<UBM>のお前にどれだけの麻痺耐性があるかは知らんが、何十何百発も受ければどうなるかな?」

 

 耐性は所詮耐性だ、無効化じゃない。

 大ダメージを与えると爆発するなら、対策は二つ。

 一つは少ダメージを与え続けること。

 そして二つ目は、麻痺などで動けなくなったところを、首や脳などの急所を狙って一撃で仕留めること。

 【グリーン・ワスプ】にぶつけることはどちらに利にもかなっている。

 

 

 

 

「さぁ、俺たちがさんざん煮え湯を飲まされた麻痺針だ、骨の髄まで味わいな!!」

 

 

 

 

・・・to be continued

 

 




次回、第一章”始まり”編 最終話「ネクストストーリー」(2/4 12:00更新予定)

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