<Infinite Dendrogram>~王国の双獣~ 作:烏妣 揺
第12話「クラン」
第12話「クラン」
□王都アルテア 商業区 【疾風騎兵】セブン
このデンドロには、クランというシステムがある。
従来のゲームのギルドやサークルに近いシステムで、気の合う仲間たちとチームを組んで遊べるのだ。
今まではコルヴァスしかリアルでの友達がデンドロ内にいなかったせいもあり、クランへの加入はしなかったのだが、先日入学予定の大学の先輩からお誘いがあった。
高校の先輩でもある藤村先輩曰く、「今、自分たちは”デンドロ愛好会”立ち上げてるんだけど良かったらはいらない?」だそうで、ゲーム内では王国所属のクランとしても活動しているらしい。
せっかくお話をいただいたのだから、話だけでも聞こうということになって、コルヴァスを誘ってデンドロ内で顔合わせをすることとなった。
待ち合わせ場所は、なんと商業区にある―――
「まさか、ここだとは思わなかったけどな」
「世の中って狭いなー」
―――「スバル百貨店」。ようは毎度おなじみスバルさんの店だった。
「じゃあ、さっそく。・・・お邪魔しまーす」
「しまーす」
そうやって店の扉を開けると、見慣れたスバルさんときよひーの姿があった。
「あ、いらっしゃいませお二人とも」
「サフィラさんたちなら奥で待ってるわ」
藤村先輩のデンドロでの名前であるサフィラの名前が出たので、スバルさんの案内で奥へ進む。
「それにしてもスバルさん知り合いだったんですね?」
「リアルでは面識ないですが、ここではとても大事な取引先です」
取引先?顧客ではないのか。
実はクランの実態についてはこれから話を聞く手はずになっているので知らなかったりする。
そんなことを話してると、奥の応接間にたどり着いた。
ノックをして入室する。
「サフィラさん、HEROさん、お二人を連れてきました」
そういってスバルさんに続いて中に入ると二人の女性がいた。
一人は青いストレートショートに船乗りのような恰好をした、少年のような風貌の少女。
もう一人は白いポニーテールに額に黒い鬼のような黒い角を生やした、和風の甲冑を着た細身の女性。
青髪の少女が俺たちを見てこう話しかける。
「おっす、初めまして・・・かな?」
「じゃあ初めまして、サフィラ先輩」
そういって俺は青髪の少女―――藤村先輩=サフィラに返答する。
「いや、ここじゃ先輩後輩関係ないからサフィラでいいよ! あと隣は―――KJ君だね、うん」
「ども、ここではコルヴァスと名乗ってます」
「じゃあここで改めまして自己紹介を」
こほんとサフィラは咳払いをするとこう続けた。
「クラン”クイーンホーネッツ”のオーナーのサフィラです。メインジョブは【大船長】やってます」
―――『クイーンホーネッツ』だと?
そして続いて今まで沈黙していた鬼女が口を開く。
「おれはサブオーナーのHEROだ。【大狩人】をしている」
「あ、ちなみにHEROはリアルは男な?」
「「!?」」
俺とコルヴァスが思わずのけぞる。
確かにゲーム開始時に性別から選べたはずだが、このデンドロではあまりのリアルさから現実と同じ性別でスタートする人が多い。従来のネカマとは根本的に違い、異性でのプレイのハードルが高い。
ぶっちゃけ、そっちの趣味かと疑ってしまう。
「いや、そこまで引くなよ!?軽い気持ちでやってみてやり直せないことも知らなくて今も後悔してんだから!」
―――なるほど、どうやらHEROさんのキャラクリ担当はコルヴァスのウサギより杜撰だったらしい。俺はチェシャでほんとによかった。
「それじゃあ、俺たちも自己紹介を」
そういってコルヴァスに先を促す。
「オレはコルヴァス。【高位従魔師】をしてます。で、となりが―――」
「【疾風騎兵】のセブンです。改めてよろしく」
「おう、よろしくー」
こうして自己紹介が済んだ俺たちはソファーに座って話をすることにした。
「改めて先輩方のクランってどういうことしてるクランなんですか?」
コルヴァスのその問いにHEROはこう答える。
「
特にない、だと?
『クイーンホーネッツ』の名前を聞いた時、実はその名前に思い当る節があった。
それは、ランキング。『クイーンホーネッツ』は
彼らを有名にしているのは、それだけではない。この場にいないメンバーの一人、デンドロ内で一時争奪戦が起きかけた有名な<マスター>、【養蜂王】の存在だ。
そう、以前スバルさんから貰ったあの経験値の得られる蜂蜜の製造主である。
現在、『クイーンホーネッツ』はその【養蜂王】の蜂蜜の売買で巨万の富を築いているという。
そんな世間一般で商業クランと思われてる『クイーンホーネッツ』の活動が「
「ひーちゃん、ソレ誤解を招く」
「ん、そう? てかひーちゃんやめい」
「正しくは、具体的な活動指針は設定していないって感じかな?」
「というと?」
「基本的にみんな自由に遊んでるのさ。で、何かやりたいことや、困ったことがあったら助け合う的な集まりなの」
「え、じゃああの蜂蜜は?」
「資金作りの一環で、本業ではないよ」
「そっかー」
―――つまり、相互寄り合い所みたいなもので、所属するメリットはあれどデメリットは少ない、ということか。
それなら入っても問題なさそうだな。
「それじゃあ、俺たちも入って大丈夫ですか?」
「もちろん!」
サフィラが二つ返事で了承する。
「じゃあ改めてよろしくおね―――」
「―――よし、殺ろうか」
「「「え?」」」
HEROのその発言にその場の全員が困惑した。
□<ノズ森林> 【疾風騎兵】セブン
「ねぇ、ひーちゃんほんとにやるの? 相手はルーキー上がりだよ?」
「ほんとにやるよ、あとひーちゃんやめい」
あの後、俺たちは<ノズ森林>へ移動していた。
理由は、一つ。
「ハンデつけるし、2対1でいいって言ってんだから。これで負けるなら論外でしょ」
HEROとの模擬試合の為だ。
HERO曰く「クランの質が下がるのは嫌だ」「ハンデ付きのおれに負ける様なら来るな」「あと純粋に戦いたい」だそうで。
「ふ、二人ともごめんね。うちの戦闘狂が・・・」
「いえいえ、オレらも足手まといにはなりたくないんで大丈夫ですよ」
「二人がルーキー時点で<UBM>倒したって聞いた時から興味津々だったから、連れてきたけどまさかこんなことになるとは・・・」
サフィラが言うには、HEROは典型的なバトルジャンキーで決闘ランカーでもあるらしい。<UBM>を倒しただけでそんなのに目を付けられるとか、やはり<UBM>討伐は相当に難易度の高い―――奇跡的な所業だったらしい。
コルヴァスはあっさりこなしやがったけど。
「今回の結果に関係なく入れてあげるからね! 取りあえず付き合ってあげて!」
こういう会話をしつつ、適度に離れた定位置に俺たち三人が付く。
「じゃあ、不肖私サフィラがルールの確認をします!」
「応!」
「勝利条件はお互いにさっき渡した【救命ブローチ】の破壊で、ひーちゃんはハンデとして”特典武具”と必殺スキルの使用禁止、セブン・コルヴァス組はなんでもありで」
「だからひーちゃんやめいって」
「お互い<エンブリオ>を出したところからスタートです」
「了解、じゃあ早速―――」
そういってHEROが左手の紋章をかざす。
「いでよ【轟天戦斧テセウス】!!」
そういって現れたのは、華美な装飾もなくただ実用性のみを考慮したような機能美がある武骨な双斧。
「これがおれのエンブリオ、TYPEはエルダーウエポンだ! さぁお前らも出せい!」
その声に応じてコルヴァスが自身の紋章に呼びかける。
「じゃあ、来てくれアタランテさん」
「了解ですわ」
そういっていつものように現れたアタランテを見てHEROの表情が驚愕に染まる。
「・・・え、なにその美少女」
「ん? うちのアタランテさんがどうかしました?」
「・・・・・・え、お前のエンブリオなの?」
「エンブリオですわ」
「・・・・・・―――」
唖然とした表情がみるみる能面のような無表情に変わっていく・・・。
「―――よし、殺そう」
「何故!?」
「なんだそれうらやましけしからん!!」
わかる。
「おれのなんてただの斧なのになんでお前だけ美少女なんだよ不公平だろ!?」
わかる。
「お前マジでこの野郎!!」
わかる。
HEROとはいい酒が飲めそうだ―――俺まだ未成年だけど。
そんなやり取りを見つつ、俺は無言でネメアーを召喚する。
「お、セブンはチャリオッツか」
「―――いや、違う」
「・・・ほう?」
「俺のネメアーは、いや俺たちのエンブリオは少し前に
先日の【ローグ・フェネクス】との戦闘のあとで俺たちの<エンブリオ>は上級に進化しカテゴリーが変わった。
この戦いはHEROがやりたいがためかもしれないが、俺たちにとってもチャンスだ。
進化したエンブリオの力を試すのに、そしてランカーといわれるベテラン<マスター>相手にどれだけ実力が通用するかを調べるのに。
「・・・・・・おもしれぇ、かかって来いよ!」
そういって構えるHEROに対し、先手を打つため、俺はネメアーに搭乗し新たに取得したアクティブスキルを唱える。
「ネメアー、《チェンジ:ビースト》!!」
・・・to be continued
次回、第13話「ビーストモード」(2/19 12:00更新予定)
ちなみに【大船長】は船乗り系超級職、【大狩人】は狩人系上級職です。