<Infinite Dendrogram>~王国の双獣~   作:烏妣 揺

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【装甲車騎ネメアー】
TYPE:チャリオッツ 到達形態:Ⅰ
紋章:星座と獅子
能力特性:一点突破
固有スキル
《インパクト・レジスター》Lv1:パッシブ
 自身が受ける衝撃ダメージを軽減する。

《ランウェイ・ブースト》Lv1:パッシブ
 自身の攻撃時、その時の最高速度の分だけ与えるダメージを上乗せする。



第2話「ボーイズミーツガール」

第2話「ボーイズミーツガール」

 

◻︎〈イースター平原〉 【斥候】セブン

 

「あはっ、あははははははははは!」

 

「お、おいセブン・・・?」

 

「ひき逃げ超楽しい!!」

 

「・・・それ、結構ギリギリの発言だぞ?」

 そんなことは重々承知しているが、事実なんだからしょうがない。

 いやはや、<エンブリオ>がいるだけでこうも変わるとは思わなかった。

 あれからしばらくして俺たちは初心者向けの狩場として有名な(今度はwikiでちゃんと調べた)〈イースター平原〉にいた。

 目的は前回に引き続きレベル上げ、そして俺の<エンブリオ>―――【装甲車騎ネメアー】の試運転だ。

 最初はその性能にやや不安を感じていた俺たちだったものの、いざ使ってみると<エンブリオ>の有用さには舌を巻いた。

 俺の【装甲車騎ネメアー】の攻撃手段は基本的に突進(ひき逃げ)しかないわけだが、その分スキルの効果がすごかった。

 一つ目の《インパクト・レジスター》。これのおかげで衝突した時にダメージを喰らわなかった。そして何より衝突の衝撃自体を和らげるので、衝突の衝撃で止まったり速度が落ちたりしないのが大きい。

 そして最重要スキル《ランウェイ・ブースト》。ネメアーに乗ってみて初めて分かったことだが、コイツは加速度が非常に速い。トップスピードに乗るまでの時間が短いため、最大火力をたたき出すのが非常に容易だった。

 

 デンドロ時間で二時間の試行錯誤の結果、俺達の基本戦術はこうなった。

 

 1.ネメアーに乗った俺がモンスターの群れに突っ込む。

 2.ボーリングのようにぶっ飛ぶモンスターたち(この時点であらかた死んでる)。

 3.瀕死の生き残りをコルヴァスがメイス(初期装備)で殴りとどめを刺す。

 

 これの繰り返しでこの二時間の間で俺たちのレベルは4も上がった。

 

「この前のは何だったのかと言いたくなるほど快適なレベル上げだな」

 

 ただし、ネメアーの有用性が確認できたのと同時にいくつかの致命的な弱点も見つかった。

 まず、旋回能力が低い。DEX(器用)補正が低かったことからも想像できたことだが、旋回能力がとても低く、無理矢理曲がろうとして何度か転倒した。そこをモンスターにたかられた時は死ぬかと思った。

 更にいうと転倒した時の立て直しも非常に遅い。致命的な隙となった。

 おまけにどうやらコイツはオンロードバイクらしく、複雑な地形の走破能力は皆無だった。

 極めつけは、ステータス補正が搭乗時のみということだ。これだけ使いどころが限られているくせに、俺自身の強化は全くしてくれない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)という。

 つまりネメアーが力を発揮できるのは『広くて拓けていて地面がなだらかな場所』という〈イースター平原〉(ココ)以外にどこか探せといわんばかりの範囲の狭さだった。

 

「まぁ、その分強いから仕方ないっちゃしかたないんだがな」

 

「なぁ、ところでさ」

 

「ん、なんだ?」

 

「俺の<エンブリオ>はいつになったら孵化するんだろう?」

 

 そう、コルヴァスの<エンブリオ>は今だ孵化の兆しがない。

 デスペナ前も含めてかれこれ三時間はプレイしているのにだ。これが前衛と後衛の違いなのか、それとも個人差なのか、はたまた生まれてくる<エンブリオ>(・・・・・・・・・・・・・)の差なのかはわからないが。

 

「もしかしたら、時間かかった分どえらい<エンブリオ>が出てくるかもよ?」

 

「う~ん、どんなのでもいいから早く会いたいんだけどな」

 

 そう思い悩むコルヴァスに一つ提案をしてみる。

 

「じゃあ次、試しに一人で戦ってみたら?」

 

「ええ~」

 

「案外それでサクっと孵化するかmっ!?!?」

 

 突然、背中に刺されたような痛みが走る。

 そして迫る地面。いや違う、迫ってるのは地面じゃなくて俺だ。俺が倒れたんだ。

 何故か痺れたように動かない身体。眼だけを動かして自分の簡易ステータスを見るとそこには【麻痺】の文字。

 

「セブン!?」

 

 まさかと思い、無理矢理に振り向くとそこにいたのは体長1mないくらいの緑色の蜂型モンスターがいた。

 

「逃げろ!【グリーン・ワスプ】だ!!」

 

 【グリーン・ワスプ】。初心者狩場の〈イースター平原〉での最重要危険モンスター。

 単体のステータスは弱いものの、強力な【麻痺】攻撃をしてくる上に、移動時の羽音がほとんどしない別名”サイレントキラー”。更に厄介なことに群れで行動する習性がある。

 つまり、一匹いたら他にもいる(・・・・・・・・・・)!!

 

「え、でもお前は!?」

 

「俺はもうダメだ! だけどお前までデスペナなることはない!」

 

「でも・・・でも!?」

 

「いいからいけ!」

 

 コルヴァスはさんざん迷うそぶりをした挙句、結局、メイスを握りしめて前に出た(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「・・・馬鹿野郎が」

 

「死んだらまたリアルで反省会しよう」

 

 コルヴァスが覚悟を決めて一歩踏み出したその瞬間。

 

『良い覚悟です。 それでこそ(ワタクシ)の<マスター>です』

 

 どこからか高貴な少女の声がした。

 

「「!?」」

 

 コルヴァスの左手が発光し、まばゆい光の中大型の獣が現れた。

 それは光が収まる前に【グリーン・ワスプ】を前足でぐしゃりと地にたたき伏せ絶命させる。

 光がやっと収まり、そこにたたずむ獣の威容がはっきりとわかるようになる。

 そこにいたのは、蒼い焔を纏った純白の雌獅子だった。

 

『初陣の相手にしては、少し骨がないですね。蜂だけに』

 

「・・・え、これがオレの<エンブリオ>!? このかっこいいのが!?」

 

『おほめにあずかり光栄ですが、それはまた後で』

 

「・・・・・・あぁ、そうだな。増援がきたぞ」

 

 俺と<エンブリオ>の視線の先には、仲間の死に興奮した【グリーン・ワスプ】が6匹、こちらに向かってくるのが見えた。

 

「えぇっと、お願いしますオレの<エンブリオ>」

 

『そこは命令してくださって結構ですよ、<マスター>』

 

 そういって<エンブリオ>は【グリーン・ワスプ】の群れに向かって駆け出す。

 しかし【グリーン・ワスプ】は、<エンブリオ>の突進を避け、、前後左右から必殺の毒針を突き刺してきた。

 <エンブリオ>はぞの攻撃を、躱さない(・・・・)!!

 

 「「!?」」

 

 そして不可思議なことが起こった。

 その即効性の麻痺針を受け、地に伏したのは<エンブリオ>ではなく(・・・・)、【グリーン・ワスプ】たちの方であった。

 針で刺した端からまるで【麻痺】したようにボトボトと地面に落ちて動かなくなる【グリーン・ワスプ】。

 

『たわいもないですわね』

 

 そういって<エンブリオ>は一匹ずつ【グリーン・ワスプ】を潰していき、あっという間に殲滅した。

 

「つえぇ」

 

「え、どうなってんの!?」

 

『私のパッシブスキル《カースド・リフレクション》は受けた状態異常を反射します(・・・・・)

 

 なるほど、だから【グリーン・ワスプ】が【麻痺】を跳ね返されて動けなくなったのか。

 

「え、でも強すぎね? オレの<エンブリオ>孵化したてだよ?」

 

 そういうコルヴァスには俺も同じ思いだ。

 状態異常反射なんて無効化や耐性と比べて破格だ。到達形態:Ⅰの<エンブリオ>には似つかわしくない強スキル。

 

「あ、もしかして、お前も特化型なのか?」

『ええ、私は<マスター>を守る”守護”に特化したメイデンwithガードナーの<エンブリオ>ですわ』

 

 ・・・ん?メイデンwith?なんだそのカテゴリー?

 

「そっか~、何はともわれお疲れ様。こっちきて、ゴロゴロしたい」

 

『・・・・・・』

 

 コルヴァスに手招きされて黙って近づく白ライオン。そして喉の下をゴロゴロさせて気持ちよさそうに目を細める姿は、猛獣というよりでかい猫だ。

 

「お~よしよし、よくやったな~(わしゃわしゃ)」

 

『・・・・・・ふにゃ~』

 

 おい、最初の高貴さどこ行った。何猫並みにデレデレしてんだよ。

 

「・・・お、【麻痺】が治った」

 

 そんなやり取りをしてる間に俺の【麻痺】が取れたらしく、身体が自由に動かせるようになった。

 やっぱり即効性だと抜けるのも早いらしい。

 

「おいコルヴァス、そろそろ一旦街に帰って休憩しないか?」

 

「あ、うんそうだね」

 

 俺は自分の紋章にネメアーをしまって歩き出す。

 

「ん?お前は仕舞わないのか?」

 

「いや、だってかっこいいし仕舞うのもったいなくてさ」

 

「だからって街中で猛獣連れまわすのは、どうかと思うけど?」

 

 いくら半身たる<エンブリオ>でもTPOをわきまえるべきだろう。・・・いや、この世界にTPOはないかもしれないが。

 

『わかりましたわ。街中に相応しい姿になればいいのですわね?』

 

 そういうと白ライオンが出てきた時のように光り輝く。

 一瞬、自発的に紋章の中に戻るのかと思ったが、どうやら違うらしい。

 その光が収まるとそこにいたのは、白ライオン・・・ではなかった。

 

 そこにいたのは、俺達と同年代の絶世の美少女(・・・・・・)だった。

 

「「!?」」

 

 青のメッシュの入った黒く長い髪。金の装飾が入った白い軍服の様な衣装。ミニスカートの間から除く白い足。ロングブーツ。ぱっちりとした青い瞳、白い肌、薄い唇。現実ではまずお目にかかれない、アイドルを越えた美少女がそこにいた。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「改めましてこんにちは。私の名前は【聖獣乙女アタランテ】、以後良しなに」

 

 ・・・・・・・・・・・あ、なるほど、乙女(メイデン)

 俺が遅まきながらカテゴリの意味を理解したとき、傍らではそのメイデンの<マスター>であるコルヴァスはというと。

 

「あ、あばばばばばばば。お、オレこんな美少女をなでなでしたりワシャワシャしたりしてた・・・・・・・のっ!?」

 

 ものすごく狼狽していた。

 そういえば俺と違って、リアルでは女の子に対する耐性がゼロだったっけコイツ。

 

 ニコリとほほ笑む、<エンブリオ>(ビショウジョ)、慌てふためく<マスター>(コルヴァス)

 その二人に挟まれた俺は小さくため息をついて空を見上げてこう思うのだった。

 

 

 

 

 

 コイツ(コルヴァス)、百万回くらい苦しんで死なねぇかな・・・。

 

 

 

 

 

 

・・・to be continued

 




次回、第3話「トーキングタイム」(1/19 0:00~更新予定)
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