<Infinite Dendrogram>~王国の双獣~   作:烏妣 揺

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ギャグ話、誰が何と言おうとギャグ話。
だからか知らないが、全話の約三倍の分量があるヨ。


第4話「すきすきだいすきちょうあいしてる」

第4話「すきすきだいすきちょうあいしてる」

 

□王都アルテラ 商業区画 【騎兵】セブン

 

 今日は、王都の商業区画にいつものメンツ(コルヴァス・アタランテ)と共に来ていた。

 正直レベルが上がって、初期装備じゃ物足りなくなったので装備と武器の新調に訪れたのだ。

 

「いや〜、いい買い物したねアタランテさん」

 

 コルヴァスは【基本HP上昇】と【MP消費軽減】の効果の付いた白いローブを、俺は【ダメージ軽減】と【ダメージ減少】の効果の付いた黒の軽鎧を新しく買った。

 

「そうですね、どのお店も安かったです」

 

 武器はお互い初期装備を脱却し、コルヴァスは『ヒール』の効果範囲を拡張する効果のある(スタッフ)を、俺はより高性能なナイフにした。

 本来なら、ビギナー(しかも一個10万リルする【墓標迷宮探索許可証】を買った直後)の俺たちに全装備の新調なんて無理な話だったのだが、そんなことが出来たのには二つの理由がある。

 一つが、<墓標迷宮>のドロップが思いのほかおいしかったこと。

 そしてもう一つが・・・。

 

「・・・まぁ、どの店も”閉店セール”ってのは悲しいけどな」

 

 そう”閉店セール”である。

 実は俺たちが初ログインするほんの少し前に、ここアルター王国ではある大規模イベントがあった。

 それは、”戦争”イベント。のちに”第一次騎鋼戦争”と呼ばれるこの戦争に、(首都陥落まではいかなかったものの)この国は大敗。国の根幹をさせる主要NPC(ティアン)たちも軒並み戦死という大事件が起こったのだ。

 そんな沈没寸前の(クニ)から多くの国民が流出するのは当然といえた。それが、国が潰えたときのリスクが一番デカイ商人たちならなおのこと。

 

「それを狙ってきてる俺たちも俺たちだけどな」

 

「ん? なんらいっら(なんかいった)?」

 

「いや、何でもない。独り言」

 

 いつの間にか露店で買った肉まんのようなものを咥えていたコルヴァスに適当に返事をして、俺たちは歩みを進める。

 この先に特殊効果付きのアクセサリーやアミュレットを売ってる店(無論閉店セール)があるのはリサーチ済みだった。

 その時だった。

 

「はぁはぁはぁ、・・・うぁ!?」

 

「うが!?」

 

 突如路地裏から飛び出してきた影がコルヴァスにぶつかった。

 その衝撃でぼとりと落ちる肉まん。

 

「あぁ、オレの肉まん・・・」

 

「あ! す、すいません。何分いそいでいたもので!」

 

 飛び出してきたのは、いかにも真面目そうな面構えの少年だった。

 その少年はコルヴァスに何度も頭を下げたあと、俺たちの格好を見てこう言った。

 

「あの、つかぬ事お聞きしますが、あなた方は戦闘職の<マスター>ですか?」

 

「ん、あぁそうだが? 失礼だがあんたは?」

 

「こ、こちらこそ失礼しました! 私はこのあたりで商売をしてます【大商人】のスバルです」

 

 そういってぺこりと頭を下げるスバル。商人ゆえかだいぶ腰が低いらしい。

 

「お願いです!私を助けてください!」

 

「「は?」」

 

 肉まんショックから立ち直ったコルヴァスと声が重なった。

 いきなり何を言ってるんだコイツは?そんなこといきなり言われてもどうしようも・・・

 

「謝礼はします」

 

「よし話を聞こうか」

 

「セブン!?」

 

「ここでじっとしてると追いつかれる(・・・・・・)ので、取りあえず一緒に逃げてください! そうすればあの子も匂いを追いづらくなるはずなので?」

 

「ん?」

 追いつかれる?これはまずい案件か?

 この少年、こう見えてあくどい商売でもしたのか?

 

「あ~、いや流石に悪事とかに手を貸すのは―――」

 

「―――取りあえずこれを受け取ってください」

 

 そういってスバルは、アイテムボックスから何かを出して俺に握らせた。

 よく見るとそれは手のひらサイズの小瓶だった。中にはドロッとした琥珀色の液体が入っている。

 もしかして、と思い栓を外して舐めてみる。

 

「・・・蜂蜜か」

 

「えぇ、蜂蜜です。おいしいでしょ?」

 

 いや、美味いけど、美味いけどさ!今まで食べた蜂蜜のなかで一番だけどさ!

 

「これ【養蜂王】の蜂蜜なんです。私の店で卸売しているんですが―――」

 

 【養蜂王】?字面だけみると養蜂家系超級職かなんかかな?

 

「―――一本で1万リル以上します」

 

「ふぁ!?」

 

 コルヴァスが驚いて奇声を上げる。

 だが確かに驚きだ、これが1万リル? 現実の高級蜂蜜なんかより高いじゃん!

 やっべ、うかつに舐めちゃったよ!

 

「なんでそんなに高いの!?」

 

「これ、食べると経験値が入るんですよ」

 

「え、マジ?」

 

「一本でだいたい1レベル分くらいかな?」

 

 何それ凄い!そりゃ高額になるわ!

 金の有り余ってる低レベルマスターは喉から手が出るほど欲しいだろうな。

 

「この依頼を受けてくれたら1ダース差し上げます(・・・・・・・・・・)

 

「よっしゃ乗った!!」

 

「あの、セブンさん? そんな安請け合いして大丈夫なんですか?」

 

「馬鹿野郎! こんなうまい話そうそうあるわけないじゃん!乗るしかないじゃん!」

 

「・・・・・・蜂蜜だけに?」

 

「アタランテさん上手い! 座布団一枚!」

 

「コントしてねぇでさっさと行くぞ馬鹿主従! ほらスバルさんも!」

 

 そういって俺らは依頼人であるスバルさんの手を引いて走り出した。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・これが、俺たちのデンドロ史上最悪の日の始まりだった。

 

 

 

 

 

□王都アルテラ 工業区・路地裏 【騎兵】セブン

 

「・・・・・・さすがにここまでくればひと先ずは安心ですわよね?」

 

「ぜぇぜぇ、は、はい。しばらくは大丈夫かと」

 

 一時間後、俺たちは隣の工業区の路地裏に来ていた。

 ここ工業区は生産職のティアンや<マスター>などの工房が立ち並ぶ地区で、さっきまでいた商業区とは違い静かで時たま遠くから鉄を打つ音が聞こえてくるようなところだ。

 

「ところで、結局何から逃げてるの?」

 

 そのコルヴァスからの問いの答えは、驚くべきものだった。

 

「じ、自分の<エンブリオ>です」

 

「「「はい?」」」

 

 思わず三人の声が重なった。自分の<エンブリオ>から逃げる?

 

「そ、それはガードナーの<エンブリオ>から逃げてるって認識であってる?」

 

「は、はい」

 

 スバルさんは消え入りそうな声でそう答える。

 

「いったい何があったんですか?」

 

「・・・・・・始まりは突然でした―――」

 

 そこからスバルさんはことの顛末をぽつりぽつりと話し始めた・・・。

 スバルさんの<エンブリオ>、【淫靡蛇身キヨヒメ】とはそのスキルも相まって商売をするうえで欠かせないパートナーであった。美しい少女の姿をしたキヨヒメをスバルさんは決して邪険に扱わず、良好な関係を築いてきたそうな。

 しかし、スバルさんには少し不安に思う部分があった。

 それは、キヨヒメのスバルさんに対する態度がちょっと好感度高すぎるんじゃないか(・・・・・・・・・・・・・・)ということだった。

 

「え、それってなんかまずいの?」

 

「コルヴァス、話の腰を折るな。黙って聞け」

 

「それがその―――」

 

 元から「<ますたぁ>、愛してます♡」とか「キヨヒメと<ますたぁ>は前世から結ばれる運命だったのです」とか言っちゃう系のアブナイ子ではあったものの、実害はなかったし、何より甲斐甲斐しく仕事を手伝ってくれたりしてたので、スルーないし「はいはいそーだねー」くらいの返事はしていたそうな。

 しかし、ここ数日彼女の様子が加速度的におかしくなっていった。具体的にはより過激になっていった。もうシステムからピー音の規制が入るレベルで。

 段々危機感を募らせていったスバルさん。そして本日、とうとう悲劇が起こった。

 

「え、何が起こったんです?」

 

「・・・・・・そ、それがその」

 

「・・・・・・あ~、話の流れで何となくわかった」

 

「え、マジで? セブンわかったの?」

 

 察しの悪い主従の代わりに、俺はこう問う。

 

「スバルさん、あんた今日誕生日だろ(・・・・・・・)?」

 

「・・・・・・はい」

 

 スバルさんは消え入りそうな声でそう答える。

 

「へ~、おめでとう! 何歳になったんですか?」

 

「・・・・・・」

 

「・・・18、だろ?」

 

「・・・・・・はい」

 

「え、なんでセブン知ってるの!?」

 

 驚愕するコルヴァス。そのコルヴァスに仕方なくネタ晴らし―――というか解説をする。

 

「このデンドロ(ゲーム)には年齢制限があるのは知ってるか?」

 

「うん。要するに”お酒は二十歳になってから”だよね?」

 

「そうだ。・・・で、18歳になったら何が解禁される(・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「それは、確かタバコと・・・・・・あ」

 

 コルヴァスも遅まきながらそのことに思い至ったらしい。

 <マスター>の思考を読み取ったアタランテの顔がほんのり赤くなってるのがその証拠だろう。

 

「つ、つまり・・・」

 

食べられそうになったんだろ(・・・・・・・・・・・・・)?それも性的に(・・・)

 

「う、うぅぅぅ」

 

 頭を抱えてうずくまるスバルさん。

 

「あたりか」

 

 このゲームには各種年齢制限がある。さっきコルヴァスがいった”お酒は二十歳になってから”的なものだ。その中で世の男子垂涎のモノが18歳から解禁になる性交渉だ。ぶっちゃけエロ解禁である。

 ちなみにコルヴァスがはまだだが、俺は解禁済みである。今度一人でログインした時に・・・ぐへへへ。

 

 閑話休題。

 

 ようやくすると、スバルさんは「プレゼントは、わ・た・し♡(強制)」をされたわけだ。

 

「いや、この問題オレたちじゃどうしようもないんじゃ・・・」

 

「ないな。逃げ回るだけじゃ解決しない」

 

「で、でも・・・!」

 

「いっそ受けちまえば?」

 

「ちょ!?」

 

「何かダメな理由でもあるの?」

 

 見た目好みじゃないとか、幼すぎて倫理観的にアウトとか。

 

「いやぁ、その・・・」

 

 少し言いよどんだあと、スバルさんはこう答えた。

 

「私、現実に彼女がいるので(・・・・・・・・・・)・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・―――。

 

「よし、見捨てよう」

 

「ちょ、セブン!?」

 

いや、別に嫉妬とかじゃないからね(リア充死すべし、慈悲はない)!」

 

「逆! 建前と本音逆になってる!?」

 

 そんな感じでギャーギャーとコントの様なことをしていると・・・。

 ふと、路地の奥から異音がすることに気付いた。

 

 ずる・・・ずる・・・ずる・・・っと何かが這いずり回るような音が。

 

「皆さん落ち着いてください! 何かきますわ!」

 

「・・・あぁ、俺も今気づいた。これは―――」

 

「・・・・・・キヨヒメだ、キヨヒメが来た!」

 

 ぶるぶると震えだすスバルさん。そのスバルさんをかばいながら路地裏の物陰に身を潜める。

 隙をみてそっと影から身を乗り出し、音のする方を隠れ見ると、そこには一人の少女がいた。

 品のいい黒髪と清楚な顔立ち、綺麗な白い着物を着た15歳くらいの少女ーーー否、ただの少女ではなかった(・・・・・・・・・・・)

 そのずるずるという異音の正体、その少女の下半身は白蛇のモノになっていた。

 

「・・・ラミア型のガードナーか」

 

「綺麗顔をしている分、謎の恐ろしさというか、迫力がありますね」

 

 そして何よりも目が怖い。

 そう”目”だ。あの目はまさしく獲物を追い詰める蛇の目だ。

 

「<ますたぁ>♡、そこにいるのはわかってるんですよぉ、出てきてくださぁい。貴方のきよひーがきましたよぉ♡」

 

 ものすごく甘ったるい猫なで声に背筋が泡立つ。

 

「・・・・・・おかしいな、<ますたぁ>の匂いはこっちからのはずなのにぃ」

 

「(え、蛇って匂いわかるの!?)」

 

「(ピット器官って機能がある。あとでググれ)」

 

 シュルシュルと蛇独特の音をさせて近づくキヨヒメ。

 しかし、一定の距離でパタリと動きを止める。

 

「・・・なに、この匂い。私以外の女の匂いがする」

 

「(なん、だと―――!?)」

 

 キヨヒメの表情が憤怒に染まる。それと同時にスバルさんの顔色が青を通り越して土気色になる。

 いや、でもここにいるのは三人とも男・・・。

 そこまで考えたところでふと目が合う。

 人数に本来カウントされない、コルヴァスの<エンブリオ>と。

 

「(お、お前かぁぁぁぁぁぁあああああ!?)」

 

「(はッ、私女性型でした!?)」

 

 そうだよ乙女(メイデン)だよ!すっかり忘れてた!

 

「(コルヴァス!)」

 

「(わかってる!)」

 

 そういって急いで紋章にアタランテをしまうコルヴァス。

 だが、一度匂いが付いてしまったモノはどうしようもない。

 

「「「・・・・・・」」」

 

 野郎三人で顔を見合わせる。

 死人のような顔をしてるスバルさん。

 ゲームなのに嫌な汗をだらだらと滝のように流すコルヴァス。

 

 どうしてこうなった。

 

 スキルの【殺気感知】とは違う、本能が”あ、これやばい”と告げる。

 ”今すぐスバルさんを見捨てろ、そうすれば命は助かる”と魂が叫ぶ。

 

 祈るように―――いや、腕を組んで本当に祈り始めたスバルさん。

 ・・・何にいのってるんだろうか。神か、キヨヒメか、それとも俺たちか(・・・・)

 

「・・・ほんと、どうしてこうなったんだろうなぁ」

 

 そう言って俺は立ち上がった。

 

「せ、セブン?」

 

「セブンさん?」

 

 そして俺は路地裏から出た。

 

「「!?」」

 

「おい、そこの蛇女! こんなところで何してる!」

 

 意を決してキヨヒメに話しかけた!

 

「はぃ? 貴方はどちら様ですか?」

 

「ただの通りすがりのマスターだ!」

 

「貴方から〈ますたぁ〉の匂いがしますね」

 

 そりゃそうだろうな。ついさっきまで一緒にいたからな。

 さて、ここからだ!

 

「お前の<マスター>かどうかは知らんが、それらしい男は見た」

 

「ど、どちらへ向かいましたか!?」

 

「あっち」

 

 そういって、スバルさんたちの隠れている方とは逆の方向を指さす。

 ・・・ぶっちゃけ、こういう時の常套手段だが、うまく騙されてくれるといいんだがな。

 

「あ、まずい!」

 

 その時、路地裏でスバルさんが思わず声を上げた。

 そして俺の目の前で蛇女(キヨヒメ)が、ニィタリと笑った。

 

 【殺気感知】が反応したのはその時だった!

 

「っ!?」

 

 急いで距離をとるために後方へ飛ぶが、遅い。

 俺の身体を蛇の尾がぐるりと巻き取った。

 

「ぐぅっ!?」

 

貴方、今嘘を吐きましたね(・・・・・・・・・・・・)?」

 

「なぁっ!?」

 

 何故こうもあっさり!?

 常套手段だとしてもこうも簡単に看破されるのはおかしいだろ!?

 

「私、こう見えてスキルで《真偽判定》Lv.EXを持っていますの。だぁかぁら、嘘を見抜くのは大得意♡」

 

 それ、やばくね!?

 何言ってもダメじゃん!もう黙ってるしかないじゃん!

 

「くっ・・・」

 

「あ、別に黙ってても大丈夫ですよ?」

 

「なん、だと?」

 

「私は半分蛇なので、貴方の体温とか、発汗量とかから何を考えているのかもだぁいたぁい分かるので♡」

 

 あ、詰んだ。

 もうどないせゆーんじゃコレ!?こんな強力な<エンブリオ>だとか聞いてないんだけど!?

 

「だ・か・ら・あとは貴方が死ぬまでゆ~~っくり締め上げるだけです。蛇だけに♡」

 

「う、上手い座布団一まぐふぅ!?」

 

 万力のようにどんどん締め付けが強くなる。

 【殺気感知】がビンビンに反応する。ついでに俺の第六感もかつてないほどにやばいと告げる。

 けどもうどうしようもなくね?

 もういっそ何もかも吐いてデスペナを逃れるか?

 それとも依頼人を最後まで守ってかっこよく散るか?

 この二つのどっちがマシかを割と真剣に考え始めたその時!

 

「き、きよひー!その人をはなすんだ!!」

 

 路地裏の影から件の張本人が飛び出した。ついでにコルヴァスも。

 

「あ、<ますたぁ>ようやく出てきてくださったんですね♡」

 

「あ、あぁお前と話をつける為にな」

 

 おい大丈夫か?ここからでもわかるくらい脚が震えてるぞ?

 

「話?話ってなんですか?」

 

 こてんとかわいらしく小首をかしげる蛇女。いや、可愛いけど可愛くないからな!

 

「ぐぇッ!?」

 

 しまった!考えてることわかるんだった!

 迂闊なことを考えたせいで締め付けが強まる。

 

「その人をはなせ! さ、さもなくば・・・」

 

「さもなくば?」

 

「わ、私は金輪際デンドロにログインしない(・・・・・・・・・・・・・・・)!!」

 

「なぁ!?」

 

 蛇女が驚愕し、のけぞる。

 それもそうだろう。なんてったってそれは切り札だ。なんせ、彼女との絆の全否定に他ならない。

 

「なぜですか!?」

 

「ほかの人にこんなに迷惑をかけるなら、そんなきよひーは大っ嫌いだ!見たくもない!」

 

「そ、そんなぁ・・・」

 

 いや、巻き込んだのお前だからな? 

 しかしその言葉の効果は絶大で、その場にへたり込む蛇女。

 尻尾の拘束も外れる。

 

「なら、私は―――きよひーはどうすればいいのですか?」

 

「・・・いままでどーりでいいんじゃないかな?」

 

 そこでいままで事の成り行きを見守っていたコルヴァスが口を開く。

 

「いままで二人三脚で楽しんできたんでしょ?ならそのままでいいじゃん。キヨヒメさん、君たちの絆ってソンナコト抜きでは成立しないほどの弱いモノかな?」

 

「い、いえそんなわけがございません!」

 

「そ、そうだよなきよひー!」

 

「えぇ、もちろんです<ますたぁ>!」

 

 そうして見つめあう主従。

 これは、いい雰囲気。

 こっそりコルヴァスの隣に移動して耳打ちする。

 

「(よくやった。うまい具合に誘導したな!)」

 

「え、誘導?」

 

「・・・いや、何でもない」

 

 まさかの天然だった。いやはや、おそるべし。

 何はともあれ、これで事件解決かな?

 

「やれやれ、とんだ災難だったな」

 

「そうでもないんじゃないかな?」

 

「ん?」

 

「<マスター>と<エンブリオ>の美しい主従愛が見れたし」

 

「・・・・・・それもそうか」

 

 そう嘆息して、その主従を見る。

 

「きよひー」

 

「<ますたぁ>」

 

「きよひー!」

 

「<ますたぁ>!」

 

 何かハグしそうな雰囲気。

 なんか徐々に近づいて行ってるし・・・。

 ん、いや違う。近づいて行ってるのは蛇女の方だけだ。

 そして、その眼はまだ死んでいなかった―――。

 

「あ、まずい」

 

 俺がそう漏らした瞬間。

 

「ま、<ますたぁ>!!!!!!!」

 

「ぎゃああああああああ!!」

 

 襲われた。

 スバルさんが、襲われた。

 

「あああああ!<ますたぁ>!<ますたぁ>!?なんと愛おしいんでしょう♡ああんもう食べちゃいたいくらいに、ああん××××を××××して、ここをこうしてぇぇぇぇぇえええええッ!××××××××を××××××××に×××××××××××、<ますたぁ>×××××ぐて××××××××ぅぅぅぅぅぅぅぅううう♡♡はぁはぁはぁ、<ますたぁ><ますたぁ>!<ますたぁ>!!<ますたぁ>ぁぁぁぁぁァぁぁぁあああああああああああ♡♡♡」

 

 ――――――――――――うぁあ。

 

「え、何!?何がどうなったの!?変なエフェクトかかってってわかんないんだけど!?」

 

「―――わからなくていい」

 

「音も不自然に聞こえないんだけど!?」

 

「―――きかなくていい」

 

「ねえほんとどうなってんの!?」

 

「―――しらなくていい」

 

 ―――それは、”捕食”だったとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日から当分の間、デンドロでスバルさんを見ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、俺はデンドロ内で”そういうこと”をしようとすることは金輪際ないだろう、てかできねぇよって思った実に嫌な事件だった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・to be continued

 




次回、第5話「ボーダーライン(前)」
・・・今回ふざけすぎたので反動で一気にシリアス行きます。
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