一から始めるカオスウォーズ   作:Salvo11y

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チュートリアル(あとで知ったがあれば初等のチュートリアルらしい)を終えての翌々日。

 

姉さんが突然

 

「さぁ、蒼。ゲームするわよ。」

 

と声をかけてきた。

 

昨日は、課題やら何やらでゲームをプレイ出来なかった。

内心、ゲームを楽しみにしていたので、下校時の電車の中でも『war all grands』について、スマホで調べたりしていた俺は、その誘いに乗って言われるがままにパソコンを起動してゲームをプレイする。

 

楓姉さんの言う通りに、パソコンの操作を行い、いざプレイ開始!

 

 

………そして、撃墜したり追い回されたりし、NPCらしい整備員キャラに追いやられ、推定楓姉さんらしいヘルメットの女性に声をかけられている訳だ。

 

いや、このゲームに知人は他に居ないので十中八九姉さんだろうけど。

 

しかし…

 

「姉さん、その格好は………」

 

「ああ、これね?新規プレイヤーに運営会社からプレゼントされるアクセサリーよ。あなたのアイテムインベントリにも同じものが入ってるはずよ?」

 

「………待って、アイテムインベントリってどこにあるの?」

 

「………そうね、海外のゲームは不親切だものね………視界の左下に赤く光ってる小さなARアイコンが有るでしょう?それをタッチして。」

 

姉さんの言う通り、確かに視界の左下で赤いアイコンが明滅している。

 

ARアイコンにクリック…要するに見えているアイコンに触れるだけなのだが………それを行うと、視界いっぱいにウィンドウが表示された。

 

確かに、一件の新着アイテムがある。

 

『ユーザー三億突破記念:新規ユーザープレゼント』

『アバター用アクセサリー:フライトヘルメット(米空軍風)』

『装備可能』

 

それをクリックすると受け取りのyes /noを選択するウィンドウが現れる。

 

yesをクリックすれば、目の前に楓姉さんが着けてるのと同じヘルメットが3Dプリンターよろしく造成された。

 

これで受け取りが完了したのだろうか。

空中に浮かぶヘルメットに触れてみれば

 

「あ。」

 

ストンとヘルメットが落下した。

 

地面にあたりコンコンと軽い音を立てて、小さくバウンドしたそれは、誰かの足に当たって動きを止めた。

 

「おっと。」

 

声を上げたのは、浅黒い肌の男の人だった。

立派な髭を蓄え、濃いめのカーキ色をした飛行服に身を包んでいる。

肩には旭日旗のワッペンが貼ってあるが、どう見ても日本人とは思えない。

 

………e-Sporsがメジャーになってからというもの、ゲームやネット上では現実の顔の情報を使うのが一般的になっている。

プロの人たちは、顔を売るのも一つの仕事なんだろうし。

とは言え、現実の顔の情報をスキャンできるゲームや機材は少ないので、人種に国籍や性別、髪型なんかを現実のそれに寄せるのが精一杯だ。

学校の先生たちが子供の頃に比べると、ネットへの個人情報の露出何かは随分リスクが減ったのだとか。

道徳の授業で先生が言っていた気がする。

 

 

「す、すみません!」

 

「あぁ、気にすんな新人さん。受け取ったアイテム落っことすのはまぁ、このゲームの通過儀礼みたいなもんだ。このゲーム、割りと不親切だからなぁ。そら。」

 

その人は、そういって拾い上げたヘルメットを投げ渡してきた。

 

「ど、どうも。」

 

「俺は、まぁ『アリー』とでも呼んでくれ。ほら、さっきのプレイで声かけたろ?」

 

「あ、あぁ。あの時の。その節はどうも。えっと俺の事は『アオ』とでも呼んでください。」

 

「おう『アオ』だな。礼に関してだかな、このゲームはさっきも言ったが、割りと初心者に不親切な所があるんだ。経験者にレクチャー受けるのも皆通る道さ。」

 

「いえ、それでも助けてもらったし。ありがとうございます。」

 

「…日本人(アリヤバニーェトゥ)ってのはどうにも堅苦しいんだなぁ。とはいえ、アオみたいな礼儀の正しさは良いと思うがね。んで、そっちのお嬢さんは何て呼べば良いんだい?」

 

「私は…そうね、『カエデ』とでも。あぁ、弟の手助けをしてくれてありがとう。私からもお礼を言うわ。」

 

「何、気にしなさんな。兎に角、よろしくな。『カエデ』。さてと、お前さんたちはさっきのが初陣、しかもアオに関しちゃチュートリアルも終わりきっちゃ居ないと見える。」

 

「は、はい。まぁ。」

 

確かに、戦闘に関するチュートリアルはまだプレイしてない。

さっきのはぶっつけ本番だった。

 

「そこでだ。他のセットアップなんかを教えるから、このゲームの一番ホットな場所で叔父さんと遊ばないか?」

 

「ほ、ホットな?でもでも、さっきも助けてもらったのに、これ以上お世話になるのは………」

 

「気にすんな、こっちにもしっかり得るものがあるんだ。それに日本(アリヤバン)には、一期一会何て言う諺もあるんだろ?」

 

な、何というか、グイグイくる人だなぁ。

 

このゲームについてはまだまだ分からないことだらけだし、俺としては別に問題ないかとも思う。

 

だが、今俺は楓姉さんと一緒に居るわけでして…流石に独断で決めるのは憚られる。

 

ふと、姉さんに視線をやれば………駄目だ、ヘルメットで表情が判んない。

 

「…別に私は構わないわよ。」

 

「よし、じゃあ決まりだな。カエデの方は粗方このゲームの情報を持ってんだよな?」

 

「ええ、基本的なことは。」

 

「よし、じゃあアオのデータを主体にツアーと行くか。着いてきてくれ。」

 

そう言うと、アリーさんは僕たち二人を引き連れて外へと向かう。

 

相変わらずだだっ広い滑走路が司会を埋める。

 

「先ずはあの格納庫に向かう。」

 

そう言って彼が指さす先には大きなかまぼこ型の建物がある。

門の外の衛兵(?)のNPCに軽く敬礼しつつ歩く彼に、僕達は着いていった。

 

建物まで四、五分はかかっただろうか。

その間僕達は別に無言と言うわけではない。

とは言え重要な話をする間柄でもない。

 

簡単な日本語を教えたり、アラビア語を教えてもらったりと、真っ当かつ細やかな異文化交流を楽しんでいた。

 

「到着だ。ここが格納庫になる。先ずは、アオがここから入ってくれ。直ぐに俺達も向かう。入ったら、俺達の入室を許可してくれ。やり方は…」

 

かまぼこの断面中央にあるばかでかい入り口…の脇の人間サイズの入り口。これに入るらしい。

 

入った後の操作を聞き終え、俺は建物の内部へと足を踏み入れた。

広い建物の中は、大きな工具箱やよく分からないホースなどがポツリポツリと配置されているが決して乱雑な様子はない。

そして、建物の一角には黄色い迷彩の複葉機『ファルコ』が鎮座している。

 

おっと、いけない。さっきいわれた操作をしなくては…

 

 

操作を終えると、姉さんとアリーさんが入ってくる。

 

「よし、じゃあここについて説明しよう。ここが『アオ』のハンガーだ。購入した機体はここに並べられる。外から見ると建物の一つだけだが、内部は各プレイヤー毎に用意されている。キャパは120機まで。他人をここに入れるには、さっきお前さんがやった感じで許可を与える必要がある訳だ。」

 

「成る程。」

 

「んで、あっちにカウンターがあるんだ。あそこで機体の購入が出来るわけだ。ちょっと行ってみようか。」

 

アリーの指さす先には、簡素な長机に書類が積み上げられている。

近寄ってみれば、何冊かの本が目立つように置かれていた。

 

「か、かたろぐ。かすたむ。」

 

「そうだ。その目立つように置いてある本から、航空機の購入や、カスタマイズなんかを行うわけだ。さて、説明しようか。」

 

そう言って、アリーは蒼へと説明を始める。

本を手に取れば、それぞれ飛行機を買ったり、飛行機をペイントしたりする画面に飛べるらしい。

 

試しにカタログと銘打たれた本を手に取れば、眼前一杯に無数の飛行機のサムネイルが表示される。

そんなページが数十並んでいた。

更にアリーの説明を聞けば、このゲームでは運営が設定している強さで飛行機がランク分けされているらしい。

第一次大戦から第二次大戦への過渡期である戦間期。

そこから冷戦の前期まで。

使用可能機は千に届くほど。

 

「で、だ。アオが今買えるのはレベル1の航空機な訳だ。上の方の伏せんの『1』のページ内のが購入可能機体となってる。ストーリーモードや対人戦で手に入る経験値で、お前さん自信の…というか、アカウントのレベルを上げていくわけだ。」

 

「こ、これだけ多いとどれを選んでいいやら……」

 

カタログにところ狭しと並ぶ航空機たち。

それに対して、俺は戸惑いと、それと同じくらいの期待をいつの間にか感じていた。

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