NT-D・・それはニュータイプや強化人間が発する感脳波に反応して発動するシステムである。発動すると、一時的に爆発的な推進力などが得られるらしいとフェネクスはいう。
それだけであればただの強化モードで済むが問題があった。
制御に失敗すると、システムに飲み込まれ、感じた敵意を徹底的に破壊する獣になってしまうらしい。
つまり、如月から聞いていた『暴走』というのはこのNT-Dのシステムによるものだろう。
そこまで理解がついたところでアムロは疑問が湧き出た。
「そのNT-Dが原因なのは分かったが、それが作動する要因になったのはなんなんだ?」
「えっと、あまり覚えていないのではっきりとはいえませんが・・。おそらく深海棲艦の放った恨みやらにあてられたからかと・・・あの時、ニュータイプでもない私が分かってしまうぐらいでしたし。それをNT-Dが勘違いを起こしたからだと・・。」
「つまりは誤作動か?」
「おそらく・・。」
アムロはそうか、と呟くと、フェネクスにこう語りかける。
「フェネクスはそのシステムを制御できる自信はないのか?」
フェネクスは暗く、諦めの表情をしたまま答える。
「そう・・ですね。はっきり言ってしまえば、ないです。事実、そのせいで私は出撃を自粛しています。みんなに迷惑かけられませんし・・。それに、怖いんです。もし、あんなことの繰り返しになったら、私は・・。」
そこまて言って、俯いたフェネクスを見たアムロは一つ、ため息を吐いた。
「・・・確かに怖いかもしれない。だが、いつまでもそうやって目を背けたままでは、気づけることも気づけなくなるぞ?すまないが、出てきてくれないか?」
「えっ・・・?」
アムロが声をかけると、隠れていたらしい如月が出てきた。
「き、如月ちゃん!?どうして・・!?」
「盗み聞きするつもりはなかったんだろう?」
アムロがそういうと、如月は驚いた表情をしながら頷いた。
しかし、何か意を決した表情すると、
「あ、あの!!さっきフェネクスさんが言ってたことなんですけど・・確かに最初は怖かったです・・。暴走していたって言うのも納得してました・・。」
言われた言葉にフェネクスは悲しい顔をする。事実は時に残酷である、だが。
「でも、貴方はそんな状態だったのに、如月を助けてくれました。特攻してきた戦闘機を身を挺して。だから、詳しいことは分からないけど・・」
「貴方なら絶対できると思っています。如月はそう信じています。」
如月は最後にありがとうと言い残して、恥ずかしそうに工廠を後にした。
フェネクスは信じられないと言った表情のまま固まっている。
「彼女の艦隊は君が仕掛けてきたと勘違いをして迎撃をしたそうだが、彼女を守ることを優先したそうだ。つまり、君は無意識だったとはいえ、NT-Dに打ち勝っていたんだ。」
補足のような説明を聞いたフェネクスは自分がNT-Dを使って人を守れていた事実に自然と涙を流していた。
「私は・・・・変わることができるでしょうか?」
「・・・それは私が言えることじゃない。だが、やってもいないのにできるできないを決めるのは考えが早急すぎだと思う。まずは何事もやってみなければわからんと思うぞ?」
「そう、ですね。 できるだけやってみようと思います。」
「人は、無限の可能性を秘めている。それは艦娘だって私たちだって例外ではない。私はその人の可能性を信じている。
「人の・・可能性・・・。」
「おーい・・なんかいい雰囲気になってるのはいいんだけどよ・・作業、終わってんのか?」
『あ。』
和やかなムードになっているところにガロードの一声で現実に引き戻される。
思わず間の抜けた声をあげるアムロとフェネクス。
「こちらはもう終わっているのだが・・・。」
「ご、ごめんなさい!!すぐ取り掛かりますので・・。」
「おいおい、私達には頼んでおいて自分たちはやってねぇとか、ちょっと納得行かねぇんだけど?」
「・・・ぐうの音も出ないな。」
「ま、手伝うから別にいいけどな。これでチャラだぜ?あの後大変だったんだからな。」
「あの後・・・? ああ、青葉からの取材を押し付けた件か。」
「まったく、飯が食えねぇって言われた時は焦ったぜ。」
「・・・あの後どうしたんだ?私達が食べ終わってからかなり後に戻ってきた気もするが・・。」
「あれ、言ってなかったけ?」
「部屋に入ってくるなり、すぐにベットに入ってたからな。不貞寝したのだな、と思ったのだが・・。」
自分の記憶を確認したが、まぁいっか、と思考を止め、刹那の疑問に鳳翔という軽空母に作ってもらったと答えた。
「ああ、鳳翔さんですか。それなら良かったですね。あの人の作る料理も美味しいですからね。」
「つってもなんかお酒のつまみみたいなものが多かったけどな。」
それを皮切りに装備の点検に移るアムロ達、次々と装備を手に取り、確認してゆく。壊れている備品があれば予備のパーツと交換をしてゆく。微妙な部分は明石や夕張に聞くなどをして、万全の状態へと整える。作業は円滑に進んでいき、30分程ですべての装備のメンテナンスを終わらせることが出来た。
「ふぅ、やっと終わったー・・・。」
フェネクスは肩が凝ったのか腕を伸ばして軽く伸びをする。
「ふぅ、アストナージの気持ちが少し分かった気がするな・・。刹那、ガロード、すまないな。こっちの不手際で余計な手を煩わせてしまった。」
「いいって、いいって。えっと、フェネクスだったな?」
「え、はい。そうですけど・・?」
ガロードはフェネクスに笑顔を向け、刹那は柔らかな視線で見ると、
「まぁ、頑張れよ。アンタにとってそれはかなりきついことなのかもしれないけど、中には散々、貴方は死ぬ運命だっていわれて、それを全部乗り越えてきた男もいるからよ。」
「人は、簡単に変わることができる。だが、変わろうとする意志がなければ、それを成し得ることができないのも事実だ。」
「もしかして、聞いてたんですか?」
「まぁ、な。でも、これ以上は何も聞かねぇよ。アンタが自分自身の力で乗り越えなくちゃならないことだからな。」
「・・・はい。ありがとうございます。」
ガロードと刹那からの声援にフェネクスは感謝の言葉を送る。
「あ、そうだ。これから食堂に行かねえか?ヒイロが手伝っているらしいぜ?」
「え?ヒイロさんがですか?できたんですね・・。」
「ああ、そのようだ。どうする?そろそろ昼過ぎになるが・・。」
「それじゃあ、ご一緒させてもらいますね。」
フェネクスの顔には笑顔が浮かんでいた。
アムロはその様子を見ると、
(この調子だと、それほど遠くない未来かもしれないな。あとはきっかけ、か。)
そして、3日後、ついに出撃の時がやってくる。トラック泊地への侵攻ルートが確立され、横須賀鎮守府に出撃命令が下った。
ハッチから第1、第2艦隊が出撃し、伊勢が威勢のいい声をあげる。
「第1、第2艦隊、出撃します!!みんな、行くよ!!」
その様子を埠頭から見ていたヒイロたち、
「みなさん、準備はいいですか?」
ヒイロがそう聞くと、ほかの5人はいつでもいける、と答える。
「ではこちらも出撃します!!伊勢さん、MS隊、これよりそちらに合流します!!」
『はいは〜い。よろしく頼むわね。』
ブースターを蒸し、伊勢たちと合流する。
「うっわ、本当に早いわね・・。」
「これでも遅い方ですよ?」
「え、それ、ホント?」
伊勢から大分驚かれたが、問題なく艦隊に合流したヒイロ達はトラック泊地へと進路をとる。
余談だが、フェネクスは今回の出撃は見送った。理由として、NT-Dに向き合うことは決めたが、まだそれをする決心はつかないとのこと。
「それじゃあ、まずはトラック泊地の近海まで行こうか。」
『了解!!!』
ヒイロ達含めた17人の声がこだまする。
(・・・誰かしらまだ生きているといいのですが・・・)