「これは、本当なのかね?元木くん。」
トラック泊地攻略作戦から数日後、横須賀鎮守府の提督ーー元木は大本営に出向していた。
「はい。全て事実です。彼女たちの戦果は眼を見張るものでした。正しく、別次元と言っても過言ではありません。」
元木の言葉に他鎮守府の面々は怪訝な表情を浮かべる。
「しかし・・艦娘たちでも手を焼く鬼級、および姫級がたった5人に、ましてや二隻も撃沈したとは・・。」
「これは私の推測ですが、彼女らは未だ本気を出していないと思います。」
元木の言葉に提督たちのあいだにざわめきが起こる。
「ば、馬鹿な!?これほどの戦果をあげていながら未だ本気を出していないだと!?馬鹿馬鹿しいにも、ほどがある!!」
いきりたちながら、元木に対して怒声を浴びせる一人の提督だが、それは用意された椅子の中心に座っている男のひと睨みで止められ、すごすごと元の席に座る。その男は日本帝国のトップ、元帥である。
顎に生えた白い髭をさすりながら元帥は元木に聞く。
「元木くん、その、確かモビルスーツと言ったかな?その者達は今、どうしている?」
「・・・今のところは横須賀鎮守府に所属しています。しかしそれは普通の艦娘であればの話です。彼女らにとっては客将程度の感覚でいるでしょう。」
「・・つまり、こちらが気に入らなければ、裏切ると?」
「・・・おそらくはその可能性が高いと。彼女らは普通の艦娘とは違い、自我が強い。私が彼女らに出撃を命じた時、すぐには承諾しなかったのが、その印でしょう。」
その言葉に会議が再び紛糾する。
「そんな危険分子、即刻切り捨てるべきだ!!廃棄しろ!!!」
「だが、廃棄しようにも途中で勘付かれたら我々にはどうしようもないぞ!!
報告書にはたった一発で敵艦載機を100近く撃ち落としたともあるのだぞ!?」
「静かにせんかっ!!!」
「っ!?」
そこらでヒイロ達に対する処遇を言い争っているところに元帥が鬨の声をあげ、会議の場が静まり返る。ごほん、と咳払いを一つすると、
「元木くん、君はどうする?一応は君の所属になっているのだろう?」
「私は・・・・」
元木が自分の考えを打ち明けると、元帥を除いた提督は驚きの声を上げる。
「なるほど、そこで、彼女らを利用するのか?」
「はい、彼女らには楔になってもらいましょう。」
「うむ。では彼女らの処遇はこれで進めるとしよう。君たちも異論はないな?」
元帥の鋭い視線に他の提督たちもうなづくしかなかった。
「では、次の議論に移るとしよう。とはいえ、ほぼ最終確認のようなものだがな。」
提督たちは手元に配布されていたプリントを見る。そこにはとある作戦についてだった。
その名も、『AL/MI作戦』
ところ変わって、ヒイロ達は大本営の付近にある天龍達の入院している病院に来ていた。
「あ、ヒイロさん!おはようございますなのです!」
病室に入って最初に出迎えたのは電だ。体についていた痛々しい痣はほぼ消えかけており、元気そうだ。
「おはよう。怪我は快方に向かっているようですね。よかったです。」
「他のみんなもどんどん良くなっているのです。特に暁ちゃんの骨折も三角巾がとれて、あと数週間すればギプスも取れるそうなのです!」
そういうと、電はさながら自分のことように笑顔を浮かべた。
「そりゃあ良かった。これも大人しくしていたおかげかね?」
「ふ、ふん。これぐらいどうってことないし。私はレディーなんだからね!」
「あ、僕たち、果物買ってきたんだけど、食べる?」
「食べる!!・・・あ。」
ハイネの言葉に大人ぶった態度をとった暁だが、キラの一言で化けの皮は剥がされ、顔を真っ赤にする。
その様子をみて、微笑んでいたアムロはズボンを引っ張られる感覚を受ける。
下を見るとアムロのズボンを引っ張っているのは響だった。
「アムロ、僕にもくれるかい?」
「ああ、勿論だ。ヒイロ、まだか?」
「はいはい。少し待っててください。」
ヒイロは持っていたりんごを手早く切り分け、わざと残していた皮を少しりんごの身から離し、ウサギの形にする。
「はい、出来ましたよ。」
「うわ〜可愛い〜!!」
雷がいの一番にりんごを手にとり、口に入れる。りんごの瑞々しさが口中に広がり、ほっぺたが落ちそうだ。暁たちも同様の反応を見せている。
「ん〜♥︎美味しい♥︎」
「ハラショー。こいつは力を感じる。」
「すごく美味しいのです!!」
「ほら、暁、口開けろ。」
「こ、このくらいできるし!!子供じゃないから!!」
と、言いながらも素直に口を開ける。
「ふふ、すっかり懐かれたわね〜。」
ハイネに食べさせられる暁の様子をみた龍田がヒイロ達に微笑む。
「別にこちらは懐かれるようなことはしてないんですけどね。あ、龍田さんもどうぞ。」
「あら〜、ありがと。・・・うん、美味しいわー♡」
差し出されたりんごを食べ、暁達と似たような反応を見せる。
それを尻目に天龍がヒイロ達に話かける。
「そういえば、トラック泊地から比叡達を救出してくれたんだってな。アンタらにはつくづく、世話かけてばっかだな。」
「気にしないで下さい。私たちはあなたの独り言を聞いて、勝手に実行しただけですから。」
「へへっ、言ってくれるじゃねぇか。アンタら。そういえば、ガロードと刹那が見当たんねえが?」
「あいつらなら比叡達のところにいるぜ。」
「どうも。見舞いに来ました。」
「あ、アリスさんに、あの時の・・えぇっと、お名前、聞いてませんでしたよね?」
出迎えてくれた比叡に名乗ってなかったことを思い出し、軽く自己紹介を済ませるガロードと刹那。
「ガロードさんと刹那さん、ですか。改めて金剛型二番艦の比叡です。この度は助けていただきありがとうございました。何もお礼を返せないのは申し訳ないんですけど・・。」
「気にすんなよ。こっちが好きでやったことだ。」
ベットに座ったまま、お礼を述べる比叡に気を使わせないようにするガロード。
「体調はどうだ?入院してまだ日も浅いからそれほど治っていないのだろうが。」
「はい、そうですね。艤装と違ってすぐ効果が出てくるわけではないですからね。」
比叡はそういい自分に付けられた痣を見せる。刹那の言う通りまだ傷はそれほど癒えてはいない。
「無理に見せる必要はなかったんだがな・・。果物を買って来たんだが、食うか?」
「え!?頂いていいんですか!?」
刹那はああ、と軽く返事をして、取り出したりんごを刃渡りの小さい包丁で切り始める。
「包丁、上手なんですね。」
「ナイフと然程扱いは変わらないからな。」
うまく六等分にし、比叡たちに配る。
「ほらよ。食えよ、島風。」
「ん・・・。」
ガロードから手渡されたりんごを齧る島風、しかし、その顔に笑顔が浮かぶことはなかった。
「どうした?どっか調子悪いのか?」
気になったガロードが聞くと、島風がううん、と首を振る。
「私たち、これからどうすればいいのかな、って思ってて・・。連装砲ちゃんもいなくなっちゃったし・・。」
その言葉に比叡たちの顔が暗くなる。艤装がない以上、艦娘としては生きてはいけない。かといって、現代社会に突然放り込まれたって生きていけるわけがない。
「だよなぁ・・。どうしたらいいんだよ・・・。もう死んだようなもんだぜ・・。」
島風の向かい側で寝ていた深雪がボソッと呟く。
病室にどんよりとした空気が立ち込め始めた時、刹那が口を開く。
「なら今から探せばいい。まだ、お前たちは終わったわけではない。」
比叡たちがキョトンした顔をする。
「確かに艦娘としては死んだかもしれない。だが、人間としてのお前たちは現にここで生きている。艦娘としてではなく、一人の人間として生きていくのを考えたらどうだ?」
「一人の人間として・・・?」
「生きていく・・?」
神通と古鷹が刹那の言葉を反芻するように言う。刹那は続けて言った。
「現状に嘆くより、新たな視線を持って生きていくんだ。チャンスは少ないかもしれない。だから、チャンスを無下にするような表情だけはやめておいた方がいい。」
「でもよぉ・・。」
深雪が戸惑いの視線を刹那に向ける。
「無論、すぐできるとは言ってはいない。何事も変わるには時間がかかる。だが、お前が変わろうとすれば必ず機会はやってくる。」
刹那は深雪に近づき、語りかける。
「これはアムロの受け売りだが、人には無限の可能性を秘めている。それは艦娘だって例外ではないはずだ。」
「無限の可能性・・・。私にもあるのかよ。」
「ある。後はお前自身がどう向き合うかだ。」
「へへっ、なんか、そう言われっと照れるな・・。」
軽く顔を赤くする深雪。どうやら少し笑顔が戻ったようだ。
(人の可能性、か・・・・)
アリスも刹那の言葉に思うところがあったようだ。
(私もやってみようかな・・・。表情筋の練習。)
若干ズレてる気がするのは気にしてはいけない。(戒め)
病院からの帰り道、ヒイロたちは談笑しながら帰っていた。
「比叡さん達の様子はどうでしたか?」
「身体的には時間が過ぎればなくなると思うが、精神的にはかなり厳しかったようだ。」
「艤装を破壊されて、艦娘としての存在意義っていうか、なんていうか。とりあえず精神的に参ってたようだ。まぁ、そこは刹那が演説かましてなんとかなったけどな。」
「演説をしたつもりはなかったのだが・・・。」
刹那は恥ずかしそうに顔を晒す。その様子を見たヒイロ達は軽く笑いながら鎮守府へと戻っていった。
今回も楽しんでいただけたのなら幸いです^_^