天龍達の見舞いから帰ってきたヒイロ達。
談笑しながら帰り道を歩いているが、ヒイロは黙っている。
「う〜ん・・・。」
「・・・何を唸っているんだ?」
「・・・比叡さん達のことについて、です。彼女たちは仮に傷が完治しても艤装が既に破壊されていて、艦娘として戻ってくる可能性は限りなく低いです。」
気になった刹那が聞くとヒイロは比叡たちについて語る。それを聞いたガロードはやるせない顔をする。
「っても、私たちがどうこうできることじゃないぜ。・・・情け無ぇけどな。」
「彼女たち、本当にどうなっちゃうんでしょう・・?」
「・・・ヒイロ、ゼロではないんだな?彼女たちが艦娘として帰ってくる確率は。」
キラが不安気な顔をするが、アムロの言葉で驚いた顔に変わる。
「えっ!?本当なの、それ!?」
キラから嬉々とした表情に圧されながらもヒイロは首を振った。
「確かにあるにはあります。でも・・あまりにも都合が良すぎる考えです。叶うことは、おそらく、ありません。」
「でも、聞くだけならダメ?」
キラの眼差しにたじろいだヒイロは自分で浅はかだと思っている考えを口にする。
「それは、他の鎮守府に余っている艤装を譲り受けることです。」
それを聞いたアムロたちは揃って、難しい顔をする。
「確かに、それは難しいな・・・。」
「ふぅ・・どうしたらいいんでしょう・・」
若干気を落としながら鎮守府の門を潜ると、元木提督と鉢合わせる。その様子はどこか忙しない。
「ん?ああ、帰ってきたのか。もう良かったのか?」
「ええ、彼女たちも大分快方に向かっているようです。であれば長居は無用です。」
「そういえば、どこか忙しない様子のようだが、何かあったのか?」
アムロにそう問われると、元木はちょうどいいと言いながら、
「講堂に集まってくれないか?少し、艦娘の皆に伝えなければならないことがある。」
「・・・わかりました。」
それだけ伝えると、元木はいそいそと鎮守府の建物に入っていた。
「・・・なんでしょうね?」
「分からない。だが、あまりいい知らせではないようだ。」
「同感だ。・・・また作戦なのか?まだ一週間程しか経っていないというのに。全く・・。」
アムロはため息をつく。様々な予想が頭の中をいくつもよぎるがやはり一番可能性が高いのは新たな作戦だろう。
「ま、百聞は一見にしかずって言うしな。行ってみようぜ。」
ハイネの言葉を皮切りにヒイロ達は講堂へ向かう。
講堂では既に艦娘分の椅子が用意されていた。
適当な椅子に腰掛けると、全艦娘への招集がかかる。聞き流しながら待っているとぞろぞろと入ってくる中にフェネクスを見つける。向こうもヒイロ達に気付くと、駆け寄り、同じように腰掛ける。
「皆さん、早いですね。」
「たまたま提督に直接声をかけられたからな。ところでフェネクス、この招集について何か知らないか?」
アムロがそう聞くと、フェネクスは少し考え込んだあと、
「えっと、おそらく作戦の指令が来たんだと思います。」
「また作戦かよ!?この前やったばかりじゃねぇか!?」
「この前のは緊急指令です。おそらく、今回のは元々この時期にやるつもりだった作戦でしょう。」
「元々やるつもりだった作戦?なんなんだ?それは。」
「私も夕張さん達の噂でしか聞いていませんが、その作戦とは、AL/MI作戦。」
ヒイロ達の頭の中で疑問符が上がる。そこでフェネクスが簡単な解説をつける。
「私も資料を少しかじった程度しか知りませんが、メインの作戦海域はミッドウェーだそうです。」
「ミッドウェー・・?どこだ?それ。」
「北太平洋ハワイ諸島北西部にある無人島、というより環礁ですね。」
ヒイロの手早い解説にガロードは舌を巻く。
「よく分かるな・・。」
「地球の大体の地図は頭の中に入ってますしね。」
そこまで言ったところで提督が講堂に入ってくる。やはり先頭にいる長門の号令で一斉に立ち上がる。ヒイロ達もまちまちの速度でつられて立ち上がる。
「全員、敬礼ッ!!」
提督が机について艦娘達の方向を見たと同時に長門の号令で敬礼をする。
敬礼についてはよくわからないので適当にした。
アムロとアリスはみょうに様になっていたが。
「今回、集まってもらったのはかねてより調整されて来た作戦がついに発令されたからだ。その作戦は、AL/MI作戦だ。」
その言葉に艦娘達はトラック泊地が占領された時とは打って変わって険しい顔をする。特に一航戦の赤城と加賀はその最たる例だ。
「この作戦に思い入れのある艦娘は多いと思う。特に赤城、加賀達、南雲機動部隊の面々は人一倍、その思いが強いだろう。」
提督は力強い口調で言葉を続ける。
「昔、まだ君たちが物言わぬ艦艇だったころ、この戦いで多くの船が沈んでしまった。そして、戦争に負けてしまった。」
「だが、今、君たちにはこの過去を乗り越えられるチャンスがある。俺はこの君たちは乗り越えることができる、いや、絶対に乗り越えられる。そう信じている。」
提督の言葉に艦娘達の目に熱意が宿る。それを確認した提督は最後に声を張り上げる。
「この運命、絶対に乗り越えるぞ!!」
『はいっ!!』
「よし、では編成を伝える。当然選ばれない者もいる。しかし、他のものも選ばれなかったと言って、自分にできることを最大限尽くしてほしい。」
提督は編成の書かれた紙を読み上げる。
編成は連合艦隊を組むとして第1艦隊は旗艦を赤城として、加賀、飛龍、蒼龍、榛名、霧島、利根、筑摩、舞風、巻雲、秋雲、そして吹雪。
第2艦隊は旗艦を金剛として、榛名、北上、大井、最上、三隈、夕張、五月雨、春雨、村雨、夕立。
計24名がミッドウェーに向かうこととなった。
そして、その艦隊にヒイロ達も編入されることが伝えられた。とは言うもののフェネクスは編入されていないが。
「まだ、決心が付かないか・・。」
アムロからの確認にフェネクスが顔をうつむかせながらすみません、と小さく答える。
「前も行ったが、人は変わるには時間がかかる。お前に合ったスピードでいいんだ。」
「うう・・。申し訳ないです・・。」
「そういえば、フェネクスさんも戦えるんですか?」
「え、ええ。そういえばおはなししてませんでしたね。」
ヒイロから問われたフェネクスは自分のことを話した。皆から驚かれたが一番驚いたのはアリスだ。
「わ、私やアムロさんと同郷だったんですか!?それにU.C0096ってアムロさんより後の時代ですか・・!?」
「ええ、まあそうですね。」
「そういえば、吹雪ちゃん、呼ばれてましたね。」
「ああ、これは彼女の努力が実った結果だろう。」
ヒイロとアムロは微笑みながら吹雪の頑張りを讃える。
「では、最後に作戦決行の日だがについてだが、6月5日に決まった。」
(・・・なんか具体的ですね・・。)
ヒイロは元木の言葉に何か引っかかりを覚えた。
「では、決行日まで出撃する艦娘は準備しておくように。解散!!」
「さて、どうしましょうか?」
会議から解放され、どうするか考えていたところ、
「ヒイロさん!!」
ヒイロ達が振り向くと吹雪が駆け寄ってきた。それについで赤い目に犬のような癖っ毛のついた艦娘と茶髪をショートカットにした艦娘もついてきた
「私、やりました!!」
「おめでとう、吹雪さん。貴方の頑張りが評価された証です。」
「て、あれ?お前さん服変わってねえか?」
ガロードの指摘の通り、吹雪の服は最初に会った時とは変わっていた。セーラー服なのは変わりはないが色が青から黒に一新されている。
「あ、これは改造して改二になったからです。性能も前よりぐんっと上がってますよ!!」
「・・・貝に?」
「キラ、貝ではないぞ。改造を二回したという意味で改二だ。」
「で、お前は時雨の妹か?」
「そうだよ。白露型四番艦、夕立よ。よろしくね。」
ハイネがそう聞くと夕立は無邪気な笑顔を浮かべながら自己紹介をした。天真爛漫、そんな言葉が彼女には似合うだろう。
「それで、貴方達も一緒に出撃するっぽい?」
「まぁ、今のところ、ですね。」
「今のところってことは変わったりするんですか?」
「君は・・如月の姉妹か?」
服からそう判断したアムロからそう聞かれると茶髪の艦娘、睦月は慌てて自己紹介をする。
「む、睦月型一番艦の睦月です!!よ、よろしくおねg(ガチッふぎゃあ!?」
「おい、落ち着け。そんなに固くならなくてもいいんだぞ?」
ガッチガチの挨拶をして舌を噛んだ睦月を見かねてリラックスさせるアムロ、
睦月は一度深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。
「落ち着いたか?」
「は、はい。」
「大丈夫?思いっきり舌噛んだみたいだけど・・。」
「はうぅ・・面目無いですぅ・・。」
「あらあら、睦月ちゃんったら、せっかちなんだがら。フェネクスさん、ごめんなさいね。」
如月がどうも、とアムロ達に軽く会釈しながら、睦月に近寄る。
「いいえ、大丈夫ですよ。」
フェネクスは如月に微笑みかけた。
講堂を出ると、ヒイロはアムロ達と別れて資料を漁っていた。
内容はミッドウェー海戦について。
(ミッドウェー海戦、ミッドウェー諸島沖で勃発した日本軍とアメリカ軍の戦い。日本はこの戦いで赤城、加賀等の南雲機動部隊が全滅。要因は多説あるけど、一番有力なのは日本軍の航空機の装備換装中にアメリカ軍の航空機に襲撃され、誘爆。当時の軍の幹部は後、五分あれば間に合ったとされ、この五分間のことを『魔の五分間』と呼ばれている。)
資料を頭の中で整理しながら視線を落として行くと、資料のある部分で目が止まった。それは海戦日時。
「日時を指定したのはこの日に合わせるため・・?」
その日は6月5日。作戦開始の日と被る。だが、理由は分かったが、未だにヒイロの中ではもやがかかったかのように晴れることはなかった。
頭を抱えているとたまたま引っ張り出した深海棲艦の資料が目にとまる。
(・・・確か深海棲艦は戦争で亡くなった人達の怨念で形成されている。)
戦争というのは、かなり広範囲に当てはまるだろう。第一次世界大戦、そして第二次世界大戦も。
そこまで思考が届いた時、ヒイロはある可能性にたどり着く。
(これは、不味いかもしれません・・!!このままじゃあ・・。)
ヒイロは頭の中で最悪の事態を想定してしまった。
(このままじゃ、この鎮守府がやられてしまう・・・!!)
ヒイロは部屋から飛び出し、元木提督のところへ駆け出した。
今回も楽しんで読んでいただければ幸いです^_^