「それでは行ってきますね。アムロ、留守を頼みます。」
「ああ、任せてくれ。アリスは初めての長距離移動で慣れないと思うが気をつけてくれ。」
「はい。気遣い、ありがとうございます。」
「ヒイロ、そろそろ時間だそうだ。赤城達が呼んでいる。」
「刹那も気をつけろよ。提督曰く、かなりの激戦区になるらしいからよ。」
「問題ない。どちらかと言えば、ガロード達の方が危険だろう。そちらこそ、気をつけてくれ。」
「・・・ああ、わかってる。」
ガロードの反応に刹那は違和感を覚えたが、時間が押していたので特に言及はしないことにした。
「それじゃあ、3人とも気をつけてね。」
「こっちは任せてくれ。その代わり絶対生きて帰ってこいよ。」
キラの笑顔とハイネの親指を上に立てたハンドサインを見届け、ヒイロ達は赤城達の艦隊に合流した。その時、編成変更を聞かされていない赤城と加賀以外の艦娘から質問責めにあったが、赤城がうまくさばいてくれたため、事なきを得た。
ミッドウェーへの航海はまさしく順風満帆であった。特に深海棲艦と鉢合わせることもなくミッドウェー海域へと近づくことができた。途中、トラック泊地からの救援物資というわけでタンカーを引き連れた艦隊にヒイロ達は納得しながらだったが。
誰もがこのまま順調に行けばいいと思ったが、やはり、そう簡単にはいかなかった。
状況はおおよそ、深海棲艦の泊地に近づいた時の天候である曇天。
「アリスさん!!5時の方角、上空400m!!撃って!!」
「確認しました。撃墜します。」
空を飛んで辺りを警戒していたヒイロがアリスに指示を飛ばす。
直ちにアリスのビームスマートガンから放たれたビームは一つの花火を作った。
「くっ!!警戒網を潜り抜けられていたの!?」
「ヒイロさん、どうかしましたか!?」
「敵の偵察機を確認しました!!すぐさま撃ち落としましたが、おそらく手遅れです!!すぐさま艦載機を・・・来た!!」
ヒイロの声が途中で途切れたため、前を見据えた赤城。そこには空に群れを成す敵艦載機の姿だった。すぐさま艦載機を出撃させようとするが、ヒイロに待ったの声がかかる。
「この状況で艦載機を出しても無駄に数を減らすだけです。ここは私に任せてください。」
ヒイロはそういい、バスターライフルを構える。標準はなるべく爆弾を積んでいる艦載機だ。
「ターゲット・ロックオン。まずは敵の出鼻を挫きます!!」
放たれた爆光は多くの敵艦載機を消しとばした。だが、敵艦載機の進軍は止まらずどんどん有効射程距離に近づく。
「金剛さん、榛名さん。三式弾、撃って!!」
「YES!!ワタシ達の実力、見せてあげるネ!!」
「勝手は、榛名が、許しません!!」
赤城が比叡の姉妹である金剛と榛名に指示を出す。すぐさま主砲が火を噴く。
放たれた先端が丸く、オレンジ色をしている砲弾、『三式弾』は敵艦載機群の中で爆発し、花火のように火花が広がる。それに触れた敵艦載機は主翼が溶断されたりするなどで墜落して行く。だが、それでも進軍してくる。中にはすでに雷撃態勢や爆撃態勢に入っている。そこまで入られたら敵の攻撃は避けることしか方法がなくなる。しかし、それは艦娘には、の話である。
「刹那は雷撃機を、アリスは爆撃機を!!私はこのまま艦戦の殲滅に入ります!!」
アリスはすぐさま射撃態勢に入り、急降下してくる爆撃機にスコープを合わせる。
「一発で仕留めます!!ファイア!!」
トリガーを引き、ビームスマートガンからビームが放たれる。
ビームは何機もの艦載機を巻き込んだ。だが、いくつか生き残った艦載機もいる。が、その艦載機も突然反射してきたビームに消滅した。
アリスは先に膝のニーバックルからリフレクターインコムを射出しており、反射角度などを計算していたのだ。
「爆撃機の殲滅、完了。」
アリスが目を向けると、艦娘達に一直線に海中を進む魚雷が見えた。
が、アリスが手を下すことはなかった。
「目標を駆逐する!!」
GNソードIIIで魚雷を真っ二つに斬る。その勢いは全ての魚雷を叩き斬る程だったが、あくまで刹那が斬っているのは艦娘への直撃コースに入っている魚雷のみだ。
魚雷が全て外されたことに驚いたのか慌てたように逃げようとするが、刹那のスピードが圧倒的に早いため、瞬時に追いつく。
そのまま刹那の肩部に付けられてある『GNビームマシンガン』で撃ち落とした。
「す、すごい・・。あれ程の数の艦載機をほとんど3人だけで・・。」
「赤城さん!!すぐさま艦載機の発艦を!!第二陣、第三陣がいつくるかわかりません!!」
ヒイロの言葉に直ぐに弓を引く赤城。ほかの加賀、蒼龍、飛龍も同じように弓を引く。
「第一次攻撃隊、発艦!!」
放たれた矢は『烈風』、『流星』などに姿を変え、ヒイロ達が切り開いた空を進んで行く。
「制空権、確保しました!!」
榛名が叫んだと同時に、流星が魚雷を、爆戦バージョンの零式艦爆52型が爆弾を投下し、たくさんの水柱が上がる。
それでも、まだ深海棲艦の数は多い。だがーー
(妙ですね・・・。確かに数は多いけど、想定内で収まっているーー)
(このまま行けば、多分、勝てる。損害は出るだろうけど、誰も沈みはしないはず・・。)
ヒイロは敵の数を見て、そう感じた。頭の中で嫌な予感が巡り始めたが、アムロ達を信じて、思考を目の前の敵に集中させる。
敵の司令官は情報によれば飛行場姫、この前アムロが単独で倒した空母棲鬼の飛行場バージョンのようだ。飛行場ということは搭載している艦載機の数は空母棲鬼より多いだろう。おそらく、まだ出していない艦載機もあるだろう。
しかし、ここで問題点が生じる。今までヒイロ達が戦った鬼級は戦艦棲鬼と空母棲鬼の二人。これらは海に浮いていたが、今回の飛行場姫は陸上にいる。
つまり、北上や大井の十八番の魚雷攻撃が届かない。
赤城が考えに耽っているとヒイロから声がかかる。
「赤城さん、AL方面の艦隊から連絡は?」
「まだ、ですね。そろそろ連絡が来てもおかしくはないんですが・・・。」
「そうですか・・。ひとまず、私達は前に出ます。何か、指示はありますか?」
赤城は少しの間、考えるとヒイロに空母を狙って欲しいと伝えた。
「了解です。刹那、アリス、空母を狙ってください!!」
「了解した!!」「了解です!」
ヒイロ達は艦隊から離脱し、空母を叩きに向かった。
当然空母を守ろうと駆逐艦や軽巡による対空砲火が飛ぶが、糸を縫うように切り抜ける。
「刹那!!」
「了解!援護する!」
刹那がGNマイクロミサイルで目くらましを行う。爆発による煙で視界を塞がれ、咄嗟に煙から離れようとする空母ヲ級。
しかし、すでに時遅し、最期に見たのは緑色と水色の光の剣が振り下ろされる瞬間であった。
ヲ級を沈んだことを確認した刹那はGNソードIIIから出した身の丈ほどのビームサーベルでそばにいた駆逐艦と軽巡を一閃した。
「次の目標は!?」
「2時の方角、空母1、軽空母2です!!」
すぐさま向かったが、随伴艦にいた戦艦ル級の主砲に刹那が吹っ飛ばされた。
「刹那!?」「刹那さんっ!?」
が、刹那が飛ばされたのは2時の方角、つまりーー空母のいる方角。
刹那は回転しながら腰に下げられてあった『GNソードII』を空母ヲ級に投合する。ヲ級は反応出来ず、頭に突き刺さる。
そのまま吹き飛ばされた勢いを利用し、GNソードIIIでヲ級に意識を取られたル級を縦に真っ二つにした。
続けざまにヲ級に突き刺さったGNソードIIを左手で引き抜き、軽空母ヌ級を同時に斬り裂いた。
「怪我はないんですか!?」
「問題ない。爆風を利用しただけだ。」
ヒイロが赤城達の様子を見ると、飛行場姫に攻撃を仕掛けていた。
雨霰のごとく降りかかる爆弾や砲弾に飛行場姫の艤装はボロボロになっていく。
どうやら微妙に再生しているようだが、このまま行けば飛行場姫を倒せるだろう。
爆煙に包まれ、姿が見えなくなった飛行場姫、一応警戒のために上空に艦戦を旋回させているが、刹那が叫んだ。
「まだだ!!まだ奴は生きている!!」
驚いたヒイロ達が赤城達を見たのと、爆煙の中から爆弾を積んだ艦載機を出たのは同時だった。
(不味い・・・。この距離じゃ・・間に合わない・・!!)
ヒイロは悟ってしまった。赤城達が思った以上に飛行場姫に近づいていて、かつ自分たちが赤城達から離れすぎてしまった。その赤城も突然のことに呆然としている。
完全に自分のミスだ。心の中で悪態をついていると、
「トランザムシステム、発動!!」
その声が聞こえた瞬間、刹那から緑色の粒子が溢れ出した。
一瞬、視界が潰されたが、目を開けるとーー
「トランザムライザー、目標へ飛翔するッ!!」
刹那の躰が紅く輝き、その様子はさながら陽の光のようだった。
今回も楽しんで頂ければ幸いです