大本営の元帥達をお願い(恐喝)で攻め落とした後、ヒイロは別室へと案内された。ヒイロをその部屋に案内した女性の秘書官らしき人物は初期艦と呼ばれる、いわゆるポ○モンの最初の三匹のような感じで、艦娘を一人、同伴させるシステムと説明した。
ヒイロがその部屋に入ると、中に四人の艦娘が待っていた。その中に吹雪がいたが、あくまで顔が似ているだけの別人とのことだったため、特にこれといった反応はしなかった。
四人の艦娘がヒイロを見るなり敬礼をしてきたが、まだ慣れていないのかヒイロはぎこちない敬礼で返すしかなかった。
「えっと、一応、名前を名乗ってくれますか?」
ヒイロがそうたずねると、吹雪がいの一番に自己紹介を始める。それに続けて、ほかの3人が自己紹介をした。
それぞれ、
吹雪型五番艦 『叢雲』
白露型五番艦 『五月雨』
綾波型九番艦 『漣』
と名乗った。
「佐世保鎮守府の提督(を押し付けられた)、ヒイロ・ユイです。よろしく。」
ヒイロが自身の名前を名乗ったところである事に気付いた。彼女たちの目になんとなくであるが、不安気なものが入っていることだ。
「では、皆さんの特技を提督に説明してください。」
秘書官がそう言うと吹雪たちは自分の得意範囲など説明し始めた。その姿はさながら面接を行なっているようだ。
その間にヒイロは彼女たちの声色に違和感を覚えた。何か、不安気なものが入っていると感じた。何か、早く自分を選んでほしい。そんな感じの雰囲気が出ていた。何故なのかと考えた時に、そもそも選ばれなかった艦娘はどうなる?
気になったヒイロは秘書官に聞いてみた。
「あの、彼女たちって、ここで選ばれなかった場合、どうなるんですか?」
「そうですね。基本的には次の提督が現れるまで待機ですね。」
秘書官の言葉には軽い反応を返しておいた。
「では、ヒイロさん、どちらの艦娘にいたしますか?」
秘書官にそう言われ、ヒイロは吹雪達を見る。答えは、もう決めていた。
「悪いけど、私に君たちを選ぶ資格はないよ。」
あっけらかんとした、それでいて予想外の答えに彼女達の間で沈黙が走る。誰も何も言葉が続かなかった。
「そもそも、このシステム、色々履き違えてる気がします。」
今度は唐突なことを言い始めたため秘書官含め全員が目を丸くする。
「艦娘って、深海棲艦と戦うんですよね?それで提督はその艦娘達を統率し、指揮を行う。平たく言えばそうですよね?」
「え、えぇ、そうですね・・。」
ヒイロの言葉に気圧されているのか、驚きの表情が入ったままで答える秘書官を一瞥しつつ話を続ける。
「あくまで戦うのは艦娘の皆さんです。であれば、提督は艦娘からの信頼を得なければならないのが必然です。」
「そして、艦娘は提督が信頼に足る人物がどうかを見定めなければならない。」
「で、でも、艦娘にそういうのはいるんでしょうか・・・?私達はどうしようもなく、兵器なんですよ?」
若干透明感のある水色の髪を長めに伸ばしている艦娘、五月雨がオドオドしながら言う。するとヒイロは五月雨に向けて歩き始め、彼女の目の前まで迫った。
少し身長差があったためヒイロが見下ろす形になる。そのため何となく威圧感を感じてしまい、五月雨は内心アワアワしていた。
しかし、ヒイロは五月雨と目線を合わせるために軽く身を屈めた。そして、五月雨の人としての心臓がある場所、つまるところ、胸に手を当てた。
『!?』
突然のことに部屋の中にいた全員の表情が固まる。あまりに自然過ぎかつ下心が一切感じられなかったため、どうすればいいのかわからなかった。それは五月雨も例外ではなかったが、彼女はどちらかというと羞恥心から来るパニックで動けなかった。顔は真っ赤になり、心臓はバクバクと警鐘を鳴らしていた。
「君にも分かってると思うけど、艦娘だって生きているんです。だからあまり自分のことを兵器だとは思って欲しくない。とはいえ、これはただの自論だけどね。君がどう思うかは任せますよ。」
「ひゃ・・ひゃい・・」
ヒイロが微笑みながらそう言うと、五月雨は口をパクパクさせながらそう答えた。
ヒイロのぶっ飛んだ行動に五月雨以外の面々は皆してこう思った。
『何なの・・・この人・・・!?』
「だから、私は君たちに選んで欲しいんです。私が君たちの提督として信頼に足る人物かどうかを。」
そうは言ったものの、先ほどの五月雨に対する対応で正直に言ってどうしようか悩んでた。しかし、背に腹は変えられないし、次の機会がいつ来るか本当にわからなかったため、とりあえず、連いていくことにした。その間も五月雨は顔が真っ赤にしていた。
その後、佐世保行きの船に乗った時、彼女たちを紹介し、事のあらすじを説明したら、冷えた目で見られたり、眉間に指を当てるなど、散々な反応を受けた。
理由を聞けば、
「それは、一般的に言えばセクハラじゃないのか?」」
「セクハラ・・・?セクシャルハラスメントですか?」
アムロに言われ、意味を確認すると、一同にしてうなづれた。一気に血の気が引いたヒイロは急いで五月雨に謝りにいった。ちなみにその時、吹雪達から
「無自覚ってのが、余計にタチ悪いわね。」
「い、いや〜、新しい提督さんは大胆だね〜・・・」
「ふ、吹雪、頑張りますっ!?」
吹雪に至っては、何を頑張るのかわからなかったが、叢雲と漣の引いた視線で、
身から出た錆とはいえ、大きく心を抉られたヒイロはしばらくうなだれていたそうな。
船に揺られることおよそ半日、船員さん曰くそろそろ佐世保に着くそうだ。
「へぇ〜、あれが佐世保鎮守府か。」
ハイネがそう言ったため、皆をして甲板の端によると、そこには横須賀鎮守府程広さではないが、かなりの広さを有していた。
船は波止場に停泊し、乗客を陸地にあげるため橋がかけられる。
ヒイロ達はこれを渡り、佐世保鎮守府に降り立った。
「これで着いた訳だが、これからどうするんだ?」
「特に何かしろと言われた訳ではないので、ざっと施設内を見ておきましょうか。」
ヒイロの言葉に皆が賛同したため集団で鎮守府を見て回り、どこに何があるのか把握しておいた。
「それで、ここが司令室・・・ですか・・・。」
閉じられた扉に手をかけ、ガチャリと音を立てて開ける。そこには横須賀鎮守府にもいた軽巡洋艦『大淀』がフリップボードに手をかけ、待っていた。
「あ、もしかして待ってました?」
「いえ、お気になさらず。大方、鎮守府の中を見て回っていたんですよね?必要書類などがありますので、どうぞこちらへ。」
大淀に案内され、用意されていた椅子に腰掛ける。そして、目の前にある机に書類が乗っかっていた。内容は同意書と大差はなかった。一通り呼んだ後、ヒイロは大淀からペンを受け取るとスラスラと名前を書き始めた。ただし、英語で、それも筆記体。
「あ、これって、日本語じゃないと不味かったですよね・・?」
「え、えぇと・・どうでしょうか・・。私自身、まさか英語で書かれるとは思ってなかったですけど、大丈夫だと思いますよ?私が艦船時代の頃だったら不味いですけど。」
だったら直さなくていいか、と訂正も特にせずに大淀に渡す。
「英語をお書きになられるってことは提督は外国出身なのですか?」
「外国っていうか・・。そもそもが・・。」
大淀からそう聞かれたヒイロは回答に困った。宇宙で生まれたと言っても冗談で済まされるのがオチだからだ。
「ごめんね、ちょっと話せない。あぁ、そうだ。私と話す時だけど、フランクに接してくれて構わないよ。堅苦しいのはあまり好きではないんだ。」
「そうですか・・。分かりました。まぁ、提督がどこ出身であろうと、さほど気にはしませんが。我々艦娘はそもそも、出生の部分すら分かりませんから。」
大淀が出生という言葉を出したところでヒイロがふっと気になったためついでに聞くことにした。
「そういえば、艦娘はいつから発見されるように?」
「そうですね・・。提督はイージス艦はご存知ですよね?」
「・・・実物は見たことはないですね。ですが、知識としては、それなりに。」
「深海棲艦の存在が世界中で公になり出した時、おおよそ、三年程前でしょうか。その時はイージス艦でまだ深海棲艦と戦うことはできていたらしいです。ですが、その半年後、その戦局は大きく崩れてしまうんです。ここからの話は私も小耳に挟んだだけですけど・・。」
「続けていいよ。どんなに確証がなくとも情報は情報だからね。聞いておきたいんです。」
ヒイロがそういうと大淀はでしたら・・と言い、話を続けた。
「突如として、霧が発生したんです。」
「霧?どこでなんです?」
「場所は・・・よくわかりませんでしたが少なくとも太平洋かと・・。」
予想に反した大淀の言葉に思わず質問をしたが満足な解答は得られなかった。
「それでその時に起こった戦闘でほとんどのイージス艦が沈没、かろうじて戻ってきたイージス艦ものちに沈んだそうです。結果として人類は深海棲艦に対抗する手段を失い、各国とのシーレーンなど滅茶苦茶にされました。その時ですね。艦娘が確認されたのは。」
「それで、日本は艦娘に目をつけ、鎮守府などの艦娘専用の施設を作ったと、そういうわけですね?」
「そうですね。大雑把にいうとそのような感じです。」
大淀の説明にとりあえずお礼をいい、ほかにやることはないかと尋ねた。
「いえ、初日というのもあってこれ以上は特にないですね。」
「それじゃあ、私はもう少し鎮守府を見て回ってくるよ。あ、後一つ聞いていい?」
「はい。どうかしましたか?」
「あれ、絶対着ないと駄目?」
ヒイロが指をさした先にはほかの提督達が着ていた白い軍服。大淀はそれを見るとクスクスと軽く笑った。
「提督は珍しい方ですね。普通の提督は否応がなしに着るんですけど。」
「さっきも言ったけど、私は堅苦しいのは好きではないので。できれば艦娘のみんなとは提督としてではなく、仲間として接していきたいんだ。」
ヒイロがそういうと大淀は少し間を空けて答えた。
「一応、提督にとっての制服ですので、着るのが当たり前ですが、そう言われるのならせめて他の提督の訪問の時とかは着てください。」
「分かりました。それで手を打ちます。では、おつかれ様です。」
そういい、ヒイロは部屋から出て言った。残された大淀はヒイロに対する感情を述べた。
「不思議なかたですね・・。提督は。」
今回も楽しんで頂ければ幸いです^_^