自我を手に入れた少女達の翼   作:わんたんめん

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第29話 始動、佐世保鎮守府

司令室を出たヒイロ。誰かいないかな〜と、ほっつき歩いていると、話し声が聞こえた。向かってみると、アムロ達全員が揃って何かを話していた。

気づいたアムロがヒイロに声をかけた。

 

「ん?ヒイロか?もういいのか?」

「ええ。初日というのもあって特にこれといったことは無いようです。」

「そうか、ヒイロは部屋はどうするんだ?ちょうど皆でそれを話しているのだが・・。」

 

ヒイロが話の輪に加わるとまず目に入ったのはお手製の地図だ。描かれているのはざっと見たところ佐世保鎮守府の全体図のようだ。

 

「もうおおよその地図が出来たんですか?」

「ああ。記憶が新しい内に書いてしまおうと思ってな。それで部屋はどうするんだ?」

「んー、私は司令室の隣に専用の寝室があるみたいなんですけど・・。」

「マジか。まぁ、元々提督ってのは男が大半だったらしいから当然ちゃあ当然か。」

 

ヒイロが申し訳なさげに話すと、ハイネが残念そうにしながらも納得した反応をする。

 

「それじゃあ、ヒイロは仕方ないとして。だいたい決まったかな?」

 

どうやらほとんど決まっていたようだ。

キラの言葉に皆が揃って頷く。

 

「まぁ、希望があればいつでも聞いてほしい。できるだけ要望には答えるつもりだ。」

「なんか、申し訳ないですね・・。任せっきりで。」

「ヒイロにばかり任せる訳にはいかないからな。鎮守府内の雑事は私達でなんとかするさ。だが、他のことはよろしく頼むぞ?提督。」

「か、からかわないでくださいっ!!まぁ、自分でやると言った以上、全力を尽くしますけど。」

 

ヒイロの言葉に皆に笑顔が宿る。

 

「あ、そういえば、間宮さんが着任祝いってことで料理を振舞ってくれるらしいぜ。時間も時間だし、食べに行こうぜ。」

 

ガロードにそう言われた通り、気づけば時間はすでに6時を回っており日がオレンジ色に彩られていた。

 

「あ、でしたら大淀さん呼んできます。先に行っててくれませんか?」

「ああ、それなら明石も呼んだ方がいいな。私も少し遅れる。先に準備を頼めるか?」

「ああ、了解した。」

 

その後、明石と大淀を交えて、ヒイロの提督着任祝いで横須賀鎮守府の時の宴程の豪勢にはならなかったが、楽しく出された料理を食べた。

 

次の日、ヒイロは朝早くから併走していた。

目的は人探し。

 

「あ、いた!!アムロー!!」

「ん?ヒイロ?朝からどうしたのか?」

 

探していたのはアムロだ。まだ朝が上がり切ってもいない時間なのにどうしたのだろう?と、内心、アムロは思っていた。

 

(ま、起きてる私も私だがな・・)

 

若干、遠い目をしていると再びヒイロから声をかけられ、我に帰る。

 

「すまない。それで、どうかしたのか?」

「今日から私達佐世保鎮守府は本格稼働な訳なのですが・・。どうやら艦娘には練度というものがあるようでして・・。」

「練度って、いわゆる熟練度だな?それがどうかしたのか?」

「実は、比叡さんや天龍さん達と吹雪ちゃんたちの練度に差があるんです・・。」

 

アムロはヒイロの言葉に納得をする。比叡や天龍達はトラック泊地、つまりほぼ最前線にいた艦娘だ。練度もそれなりあるだろう。それに対し、吹雪達はほぼ新兵の状態で引き渡された艦娘だ。練度に差があるのは明白だろう。

 

「それで、お願いがあるんですが・・。」

「私にか?」

 

思わず聞き返すアムロ、それに対し、ヒイロは笑顔で答え、説明をした。

 

「ふむ・・。わかった。任せてくれ。」

「ありがとうございます。」

 

ヒイロがお礼を言うところで、アムロはふっと気になったことを尋ねてみた。

 

「そういえば、ヒイロはやらないのか?提督自身がやってくれるなら彼女達もやる気を出すんじゃないか?」

「それでもいいんですけど、ごあいにく、予定が入ってまして・・。」

 

用事があるなら仕方ないと、アムロはそこで結論づけた。

 

「それじゃあ、あとは頼みますね。」

 

時刻はおおよそ9時を回った頃、吹雪、叢雲、五月雨、漣の四人は艤装を背負い、鎮守府湾内に来ていていた。

 

「提督に対空射撃演習を命令されて来たけど・・。まだ鎮守府には空母はいなかったよね?」

「そうね。基本的に随伴に空母が必要なんだけど・・。何を士官学校で教わったのかしら、あの提督。」

 

吹雪の問いにむすっとした表情で答える叢雲。そもそも、ヒイロは士官学校を出てない。それを知るのはこの演習が終わった後である。

 

「で、でも、やれって言われた以上、やるしかーー」

 

ない、と五月雨がいいかけた瞬間、ちょうど彼女達の真上を何か高速で通り抜けた。

その風に煽られてスカートを抑えていると、上空から声がかけられる。

 

「よし、全員いるな?これから対空射撃演習を始めるぞ。」

 

ブースターを蒸して上空に浮かんでいるアムロだ。アムロの見慣れない姿にしばらく固まっている四人。

 

「お・・おお・・かっ、かっけぇ・・!!」

 

硬直から最初に戻ったのは漣だ。感嘆の声を出しながらアムロを見つめる。

 

「あ、アムロさん?そ、その姿は一体・・?!」

「そうだな・・。詳しくは語ることはできないが、簡単に言えば私達も君たちと同じように戦える。」

「な、なんで平然と空に浮かんでいるのよ・・!?」

「元々、そう言う()()なんだ。私達はな。」

 

兵器。そして、私達。その言葉に吹雪達の顔に驚愕の表情が映る。アムロは若干、やってしまったという表情をあげるが、時すでに遅し。案の定、吹雪達から追及の質問が挙げられる。

 

「へ、兵器!?それに私達って・・・?!」

「・・・・私も含め、ヒイロやキラ、刹那もそうだ。私達8人はみんな君達、艦娘と同じ元々兵器だった者達だ。」

 

吹雪達の間に沈黙が走る。そこで吹雪が恐る恐る、アムロに質問をする。

 

「あの・・。アムロさん達はやっぱり、戦争を体験しているんですか?」

「兵器だったからな。それは戦ったさ。・・・これは君たちに失礼かもしれないが、二つの世界大戦より、自分の感覚だが倍以上に凄惨なものだった。犠牲も、規模もな・・・」

 

吹雪達は絶句するしかなかった。その様子をみたアムロは雰囲気を切り替えるように、さて、と前置きを置いて訓練の内容を話し始める。

 

「訓練の内容だが、ヒイロから聞かされた通り、対空射撃演習だが、知っての通りまだここには空母はいない。だから君たちの相手はこれだ。」

 

アムロはそう言い、ファンネルラックからフィン・ファンネルを6機全てを射出する。それはアムロの周囲に滞空すると吹雪達から珍しいものをみる目で見られる。

 

「そ、それは?」

「これはフィン・ファンネルと言うものだ。そうだな。君たちにわかりやすく言うと、自分の思い通りに動く浮遊砲台だ。」

 

そういい、アムロはフィン・ファンネルを吹雪達の周囲を包囲するように飛び回る。一機ずつ別々の動きをしていることに気づく。

 

「これ、どうやって動かしているんですか?」

「悪いが、企業秘密にしておいてくれ。話しの続きだが、このフィン・ファンネルを使って艦載機の動きを真似る。具体的に言うと、艦爆と艦攻の動きだ。君たちにはこれを撃ち落としてもらう。」

 

アムロの言葉に吹雪は真剣な表情で聞き入る。

 

「とはいえ、所詮は真似事だ。実際のものとは程遠いと思うが、感覚だけでもつかんでくれたらこちらとしては万々歳だ。よろしく頼むよ。」

 

そう言うと吹雪達は威勢良く返事をしながら敬礼を返した。

 

「・・・別段、それほど畏まらなくてもいいのだが・・・。」

 

こうして、約2時間、艦娘達の訓練が始まった。アムロが動かす艦載機(フィン・ファンネル)に頑張って演習用の弾を当てようとするが、中々当たらない。

そのせいで、雷撃コースに入られたり、急降下爆撃のコースに入られたりして、散々であった。

 

そして、2時間後、

 

「よし、大体時間か。訓練終了だ。」

 

アムロがそう言うと、吹雪達は汗をダラダラに書きながら水面に座り込んだ。

 

「つ、疲れた・・・。」

「ま・・マジ卍ですわ・・。アムロさん・・・。」

「きっつ・・!!ホントにそれしか出てこないわ・・。」

「め、目が回ってます〜」

 

「そろそろ昼だが、その前に風呂かシャワーでも浴びてきた方がいいな。」

 

『は〜い・・・』

 

精魂尽き果てた吹雪達は鎮守府で風呂を浴びるのであった。

 

「あ〜、疲れた〜。」

 

こちらでも吹雪達と似たような表情をしているものがいた。

 

「はぁ、権力って持つものじゃないなー・・。」

 

ヒイロはある建物に来ていた。その建物とはーー

 

「提督、市役所への挨拶、おつかれ様です。」

「ああ、大淀さん。迎えに来てくれたんですか。」

「はい。どうでしたか?」

 

大淀の問いに歩きながら愛想笑いを浮かべる。

 

「まぁ、大丈夫だったかな・・。色々聞かれたけど・・。」

 

市役所に行くについでに市長に会って来た。初老の男性であったが、幸い気前の良い人でヒイロもさほど気を張らずに対面することができた。さらに市長自身が淹れてくれたコーヒーも絶品であった。どうやらコーヒーが趣味のようだった。

しかし、やけにケバブについてうるさかったが。特にチリソースをかける派かヨーグルトソースをかける派かどうかと問われた時は目に凄みがあった。

 

「ただ、やはりというかなんというか、私の着任については大分急だったようで、大変だったと言われてしまいました・・。あの人、笑い飛ばしてましたけど。」

「それは・・、災難でしたね・・。」

「・・・市長さんの声、何故か聞き覚えがあるんですよね・・。」

 

鎮守府はあくまで土地を借りて建てられているため、必然的に市長と顔を合わす機会は多いだろう。これから会うたびに頭にモヤモヤがかかった状態になるのか・・。そう思うとなんとなく気苦労が多くなりそうだと感じた。余談だが、のちにキラにも似たような症状が出ることになる。

 

 




今回も楽しんで頂ければ幸いです^_^
後、今更ながら気づいたら一万UA超えていました!!
この場を借りて、お礼を申し上げます。ありがとうございます!!
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