市役所への挨拶から帰ってきたヒイロと大淀。時間も時間だったため、そのまま食堂へ行って昼食をとることにした。
「間宮さーん、定食、二つくださーい。」
「あ、提督。お疲れ様です。定食二つですね?少々お待ちください。」
間宮はそういうと作り置きしておいた料理を手早く盛り付けた。
「ありがとう。はい、大淀さん。」
「あ、どうも。」
定食を手に取ったヒイロと大淀は席に着く。ただ、すぐに手をつけなかった。
視界にグロッキーな状態になりながら少しずつ食べている吹雪達四人と申し訳なさげな表情をしていているアムロが入ったからだ。
「えっと・・・。どうしたんですか?」
「いや・・少し訓練の調節をしくじったかもしれない。」
「そんなに本気でやったんですか?」
「いや、加減はしたのだが・・。」
「提督、アムロさんには対空射撃演習を任せていましたが、内容とかはどうしていたんです?」
ヒイロとアムロの会話を聞いてた大淀から質問が入ると、ヒイロはあー、そうか。と納得した声を上げる。
「大淀さん、もしかして私達に関して何も聞かされてない?」
「そう、ですね。急だったというのもあったからかもしれませんが、特にこれと言ったことは・・。何かあるんですか?」
大淀にそう聞かれていると、食べることに集中していたのか吹雪がヒイロに対し、驚きの声を上げる。
「え、えぇっ!?て、提督!?す、すみません、見苦しいところを見せて!?」
「ん?あぁ、気にしないで自分のペースで食べてていいよ。変にかきこんで、吐かれると後が大変だから。」
「は、はい・・。だったらそうします・・。あ、提督、一つ聞いてもいいですか?」
「はい。構いませんけど?」
ヒイロがそう答えると、吹雪含め、飯を食べていた3人が一度食べるのをやめ、ヒイロに向き直る。
「提督は・・、もとい刹那さんやハイネさん達は私達と同じように元々兵器だったんですか?」
そういうと大淀は驚愕の顔をしながらアムロとヒイロを見る。
「ええ。事実です。私達8人は皆、元兵器です。」
「まさか本当だったとはね・・。っていうことは、アンタもアムロと同じような艤装を持っているのね?」
叢雲に言われるとヒイロは兵装を展開する。まさか瞬時に出てくるとは思っていなかった吹雪達は大淀と同じように驚愕の顔に染まる。
「い、一瞬で出てきましたっ!?」
「ど、どいうこと!?」
ヒイロは自分達自身のことについて説明をした。MSのこと。それぞれの戦争のこと。様々なことを話すたびに驚かれた。
ある程度話していると天龍が入ってきた。
「おう、提督、ここにいたか。って、何やってんだ?」
「あれ、天龍さん?今ちょうど私達のことについて説明をしていたんですが・・。どうかしましたか?」
「いや、暇だから遠征でも出させてくんねぇかなって頼もうとしたんだが・・。」
「遠征・・。あ〜そういえば天龍さん達と会った時も遠征の後でしたね。」
「天龍さんは提督といつから知り合いに?」
吹雪がそう尋ねると、話の内容がわからなかった天龍はヒイロに『何やってるんだ?』みたいな視線を向ける。
ヒイロがその意図を察して説明をする。
天龍はヒイロから説明を受けると納得した表情をし、話し始めた。
「つまり、提督は一兵卒から提督に大抜擢を受け、佐世保に着任したというわけなんですか!?」
「抜擢というか、責任を取らされたというか・・。まぁ、うん。そうなるね。だから士官学校なんて出てませんよ。」
「そうだな。ヒイロが提督に抜擢された理由というか原因だが、AL/MI作戦は知っているか?この前発令されたものだが。」
「え、ええ。知っています。それで横須賀鎮守府に深海棲艦の大規模な反撃艦隊が襲来しましたが、それを予想していた者がいて、損害が抑えられたとーーってまさかっ!?」
大淀が結論に至ったのか、ヒイロの顔を見つめる。
「提督・・。あなたなんですか?予想していた者というのは。」
「まぁ、そうですね。横須賀の提督の言葉に妙な引っかかりを覚えて軽く調べ物をしただけです。しかし、敵の戦力を見間違えて、被害を被らせてしましたが。」
『ええーーーーっ!!?』
ヒイロの言葉に吹雪達も驚いた顔をする。どうやら吹雪達もAL/MI作戦のことは耳に入っていたようだ。
「ま、結論から言っちまえば、提督達が戦えるってのは事実だ。それにかなり強いぜ?兵装的にも技術的ににもな。」
「強いなんて・・。そんなわけありませんよ。」
「おいおい、冗談はやめてくれよ、提督。あれほどとんでもねぇことやっておいて強くねぇて言われたらこっちの立つ瀬がなくなるだろーが。」
「あれほどって・・?何をしたんですか?」
「確か・・、戦艦とかが混じってた三十隻ほどの艦隊を秒殺してたな。」
「そ、そんなすごい人が私達の提督なんですか・・・?じゃあ、提督達が出撃して貰えば、深海棲艦との闘いも早く終わるんじゃ・・・?」
五月雨がヒイロとアムロに憧れの目を向ける。しかし、ヒイロと、アムロはこれに対し、申し訳なさげな表情をする。
「ごめんね。それは、できない。」
「ど、どうしてですか!?」
五月雨がヒイロに詰め寄って、理由を聞く。ヒイロから飛び出た理由は至ってシンプル。
「し、資材が吹っ飛ぶんですよね・・・。私達が出ると。」
ヒイロの言葉にその場の全員が『あー・・・・』という顔をする。
「た、確かにそれはどうしようもないですね・・・。」
「そんなの貯めればいいじゃない。」
叢雲がため息をつきながらいう。しかし、それでもヒイロとアムロは遠い目をする。
「私達、ブースターを蒸すのに推進剤を用いているんですが・・。」
「・・・どうやらそれがかなりの厄介者でな。燃料に換算すると使用量が数千はくだらないようだ。」
「え、それって一回の出撃で?」
漣の青い顔をしながらの質問に無言でうなづくアムロ。ちなみにソースは横須賀鎮守府の提督である。
「マジパネェ・・・!!?」
「と、言うわけで私達、しばらく出撃は自粛です。それと、昼食、ちゃんと食べてね。冷めちゃうよ?」
あ、と素っ頓狂な声が響いた後、吹雪達が冷めかけているご飯をかきこんでいると、食堂に誰かが駆け込んできた。
「お、ヒイロ!!やっぱ帰ってきてたかっ!!ラッキー!!」
「ハイネ?どうかしました?」
「いやよ。ガロードと一緒に工廠で開発してきたんだけどよ。」
「いや何勝手にしてるんですか。」
今度はなんだろうと思っていたら中々とんでもないことを言ったため思わずツッコミを入れる。
「まぁまぁ、話しは落ち着いて聞いてくれよ。」
ハイネにそう促され、はぁ・・・とため息を吐くヒイロ。
「で、何やらかしたんですか?」
「やらかしてねぇつーの。適当に回したら、こんなんできた。」
そういい、ハイネが取り出したのは艦載機であった。しかし、横須賀鎮守府で赤城や加賀が使っていた艦載機とは大きく形状や兵装が異なっていた。
まずプロペラのように回転しそうな箇所が見当たらない。代わりに機体の胴体側面に合計四つほどエンジンノズルが確認できる。見たところ、そのエンジンノズルはある程度の角度調整ができそうだ。つまり真下に向けることも可能。
つまりこれはーー
「これ、なんですか?」
吹雪が見たこともない代物に疑問の声しか上がらない。
「これ、VTOLじゃないですか。しかもこれ多分ですけど、『AV-8B、ハリアーⅡ』だと思いますよ?」
「はぁ!?VTOLかよ!?」
「VTOLか。使うにも普通の空母では運用は難しいぞ。」
アムロ達の会話に全くついていけない吹雪達、疑問符をあげたままヒイロに聞いた。
「あの、ぶいてぃーおーえる?ですか?それってなんなんですか?」
「えーっと、VTOLというのは垂直離発着機の略称で、簡単に言えば、滑走路がいらない艦載機です。」
「滑走路がいらない艦載機ねぇ〜・・。いまいちパッとしねぇな。」
「まぁ・・・そうですね。軽く詳しい説明をするとーー」
ヒイロがVTOLについて軽い説明を行うと 、あまりの高スペックさに大淀が進言を行う。
「あの・・。提督その、ハリアー・・でしたよね?多分ですが、その代物、本来、開発からは絶対でない兵装だと思うんですが・・。」
その言葉にヒイロ達は顔を見合わせる。
「え、マジ?」
「はい・・。工廠で行う開発は基本的には第二次世界大戦時のものしか出ないはずなんですが・・。提督、その兵装がいつ公表されたか、知ってますか?」
「えっと、うろ覚えですが。1985年かと・・・。うわー・・。」
ヒイロは引きつった笑みを浮かべるしかなかった。
「そういえば、ガロードは?工廠にいるのか?」
「ああ、工廠にいるぜ。実は向こうでも一悶着あってよ。」
「今度は何作ったんですか・・・?」
呆れ顔をするヒイロを尻目に悪気が大して感じられないハイネはあっけらかんと答えた。
「ミサイル。確かありゃあイージス艦に搭載されてるタイプだった。」
「うわぁ・・・。ハープーンですか?シースパローですか?それともトマホーク?」
「い、イージス艦の兵装まで・・・!?一体どういうことなんでしょうか・・・?こんなこと、今まで一例もなかったのに・・。」
「これはあくまで仮説なんですけど・・・。」
工廠へと向かう道で大淀が頭を抱えているとヒイロが困った顔をしながら今立てた仮説を述べる。
「多分、開発に携わった人の年代が原因だと思うんです。」
ヒイロの言葉に全員が疑問符をあげる。
「大淀さん、開発というのは第二次世界大戦時の代物しかでないんですよね?」
「は、はい。確かその通りです。」
「その理由を私は艦娘の方にあると推測します。」
「艦娘の方にか?・・・成る程な。だから携わった人の年代か。」
アムロは合点がいったような表情をするが、周りは変わらず疑問の表情をあげたままだ。
「艦娘はほとんどが第二次世界大戦時の艦艇だろう?必然的に、装備の技術もその当時の代物しか知らない、というわけだ。」
「あー、なんとなく話しの骨子が掴めてきた・・・。」
アムロの言葉にハイネも徐々に理解してきた。
「まぁ、つまるところ。俺たちって、この世界の技術体系から大きく外れたんじゃん?それはヒイロから聞いてるだろ?」
「はい・・。聞いています。凄い未来的な兵器なんだなって・・・。あっ!!」
どうやら吹雪が何かに勘付いたようだ。
「そっか!!提督やアムロさん達は技術体系が今の世の中より既におっきく上回っているからそのVTOLとかも過去のものなんですよね!!」
「まぁ、言い方にちょっと語弊があるけど、とりあえず、それで通しておきましょう。つまりーー」
ヒイロはハイネやガロードが本来作れないものを作れたのは、技術の発展を一本の線とした時、艦娘達は彼女たちが生きていた時代、つまり第二次世界大戦時の代物までしか開発できない。それに対して、ヒイロ達MSは少なくともイージス艦が活躍していた時代より後に開発されている。つまり、艦娘より開発できる兵装の範囲が広いのだ。
「はぁ・・・ほんとにめちゃくちゃね。アンタら。」
「私に言わないでくださーい・・・。」
叢雲にそう言われ、乾いた笑いしか出てこない。
「あれ、ちょっと待てよ・・・。開発でできるってんなら・・。建造でもチャンスあるんじゃねぇか・・?」
ハイネがそう呟いた瞬間、その場の空気が変わった。
「・・・やってみるか?」
アムロが軽く口角を上げながら言った。一番止めてくれそうな人物が一番に賛同の声を上げてしまったため、一同に驚愕の顔が走る。
「資材は各五万あります。大型建造を二回程度なら目を瞑りましょう。」
さらに本来は止めるべきであろう立場のヒイロからも賛同する声が上がる。
「いやいや、無理っすよ。流石にっ!?」
「やってみなければ分からん!!」
「ちょっとどうしたのよいきなり!?」
「・・・単純に好奇心・・ですね。」
「好奇心で、んなことやるなよ・・・。」
天龍に呆れられながらもヒイロ達は工廠へと足を踏み入れた。
今回も楽しんで頂ければ幸いです。うん。