自我を手に入れた少女達の翼   作:わんたんめん

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第32話 鎮守府での日常

アイオワとイントレピッドを建造してしまったヒイロ。これ以上何が起こるかわかったもんじゃないので、明石から建造および装備開発に関わることを禁じられてしまった。それはアムロ達も例外ではなかった。率直に言うとやることがなくなってしまった。しかし、ヒイロの仕事は提督。やることはたくさんある。

遠征部隊の編成、開発及び建造の指示、演習内容の説明、そして、積み重なる書類との格闘・・etc

正直に言って疲れるが、全ての書類がやらなければならないことなので甘んじて、ペンを走らせる。

途中、扉をノックする音が執務室に響く。

 

「どうぞ。」

 

ヒイロが許可を出すと、入ってきたのは今日の秘書艦である比叡だ。

 

「司令。艦娘の建造が終わりましたので、報告しにきました。」

「重巡、妙高型二番艦、那智だ。貴様が司令官だな?よろしくお願いする。」

 

黒髪のポニーテールを揺らしながらヒイロを一瞥した那智。

ヒイロは書類を書く手を一旦止め、立ち上がる。

 

「ヒイロ・ユイです。こちらこそ、よろしくお願いしますね。」

 

ヒイロが軽い感じで敬礼をすると、那智は逆にピシッとした敬礼で返してきた。

 

「貴方の部屋ですが、あいにくここにはまだ重巡が古鷹ちゃんしかいないため、彼女と同室になってしまいますが、構いませんか?」

「ああ、構わない。ふむ、どうやら随分と新米の提督のところに来てしまったようだな。」

「申し訳ないです。あいにく、指揮に関しては、まだ着任して2日の新人なので、ご容赦をお願いしたいです。」

「いや、むしろ楽しみだ。どのような成長を遂げるのか・・・。」

 

那智が楽しみであることを伝えるように軽く表情を柔らかくした。

その瞬間、急にドアが勢いよく開いた。

 

「Hey!!admiral!!」

 

手を上げながらフランクな様子で執務室に入ってきたのはアイオワだった。突然のことに固まってしまったヒイロ達3人、アイオワは思わず疑問の表情をあげるが、自分のタイミングの悪さを察したのか、

 

「Oh・・・、sorry・・・。」

 

先ほどの勢いとは打って変わって静かに扉を閉めた。パタンっと扉が閉まった音が執務室に響いた瞬間、我に帰る那智。

 

「だ、誰だ!?今のは!?明らかに米国の言葉を使ってなかったか!?」

 

那智の指摘に思わず揃って苦笑いをするヒイロと比叡。まぁ、いずれ教えなければならなかったため、遅かれ早かれ、というものか。

とりあえず、那智に対し、説明を行う。すると、那智はとても驚いた様子だった。

 

「なるほど、アメリカ艦なのか・・・。てっきり、そういう流行なのかとおもってしまったぞ。」

 

その言葉にずっこけるような素振りを見せるヒイロと比叡、どうやらこの那智という艦娘はそれなりに天然のようだ。

 

「ま、まぁ、変なわだかまりがないならいいんです・・。」

「その・・、アイオワとイントレピッドといったか?彼女ら日本語は話せるのか?」

「まだですね。昨日来たばかりですし。」

「そうか・・・。」

 

那智は残念そうな顔をした。何か交流でも持ちたかったのだろうか?

その様子にヒイロが尋ねると

 

「どうかしたんですか?」

「いや、アメリカの酒はどういうのがあるのか知りたくてな。」

 

ヒイロはここで思い出した。そういえばこの艦娘、横須賀でもすごく酒を飲んでいた気がする・・・と。

 

那智を下がらせた後、すれ違いでアイオワが執務室に入ってきた。

表情は何となく、ごめんねと言っているように感じる。

 

『どうかしましたか?』

 

ヒイロは流暢な英語でアイオワに話しかける。その様子に比叡は感嘆の声を上げていた。

 

『えっと、日本語を教えてもらおうとおもって来たんだけど・・。』

『日本語を・・・?』

『ええ、やっぱり、コミュニケーションって大事じゃない?最低限でもいいから、ニホンの皆と話せるようになりたいなって、昨日、イントレピッドと話して決めたの。』

『・・・分かりました。でも、こちらにも色々用事やら何やらがありますので、どう抗いでも、できるのは夜になりますが・・・。』

 

アイオワのお願いにヒイロは快諾したが、問題点を指摘した。それを聞いてもアイオワは構わないと言った。

 

『では、基本的に夜は開けておきますね。来たい時にいつでも来てください。』

 

ヒイロの言葉にアイオワは感謝の声を上げながら飛びついた。ちなみにであるがヒイロはアイオワより頭一つ分ほど身長差がある。つまるところ、アイオワの豊満としか言いようがない胸部装甲(意味深)に顔を埋めることになってしまった。

ヒイロは顔が胸に押し付けられてしまっているため声を出すことができない。

代わりにアイオワの腕を叩くが、嬉しさのあまりからか気づく様子が見られない。

比叡がアイオワに止めるように声をかけるが言葉がまだ通じていないため、意味を成さない。

 

「ひ、ヒエー!!し、司令が色々とアブナイ状況にー!!?」

 

比叡がオロオロとし始めたその時、若干落ち着いたのかアイオワがヒイロの苦しそうな声に気づく。そして、自分が今、何をしているのかを正確に把握すると、

 

「Oh!!sorry!!」

 

アイオワはヒイロを解放すると、英語で『それじゃあ、後でお願いね!!』と言い残し、執務室を出ていった。さながら嵐が過ぎ去ったような空気が執務室に蔓延する。その中でヒイロはーー

 

「・・・・書類、片付けますか。」

「あ、あんなことが起きても平然としてられる司令、メンタル強すぎです・・・」

「あまり、考えてないだけです。」

「・・・ちなみにアイオワさんに抱かれた時の感想は?」

「・・・言った方がいいんでしょうか?まぁ、いいですけど。」

 

ヒイロは一息、間を持つと感想を述べた。

 

「ヤワラカカッタデス。ハイ。」

 

若干、達観したような目で言うのだった。

 

同時刻、鎮守府周辺の海域では、キラが島風や古鷹といったトラック泊地組と演習をしていた。

 

「うん、今回はこれくらいかな。お疲れさま。」

 

キラがそう言うと、疲れからか、座り込む深雪と島風、ほかの古鷹や神通、それに由良は立っているのがやっとだ。

 

「ま、マジで疲れた・・・。」

「キラさん、はっやーい・・・・。」

「あはは、あれでもまだトップスピード出してないんだけど・・・・。」

「はぁ・・・はぁ・・・。それでも速すぎます・・・。」

「目で追うのがやっとなんて・・・。」

 

古鷹と神通がキラを悔しそうに見つめる。

 

「みんなには申し訳ないけど、もうすこし我慢してね。多分、演習の僕達の速度に慣れたら普段の艦載機なんて目じゃないと思うから。」

「そういえば、キラさんとかは最高速はどれくらい出せるんですか?」

 

由良にそう言われるとキラはうーん、と考え込む。しかし、答えが出てくることはなかった。

 

「そういえば、いくつ出せるんだろう・・・?出したことなかった・・・。やってみようかな・・。」

 

そう言い、何を構えるポーズを取った瞬間、キラの姿がかき消えた。その直後、巻き起こる突風。風が止んだあと、皆揃って、どこだどこだと探していると。

 

「うん、大体マッハ5〜6ってところかな。思ったより速かった・・・。」

 

キラがいつのまにか艦隊の背後にいたキラに揃って今度は驚きの表情をあげる島風達。

 

「でもあんまり最高速は出せないかな。空気抵抗が強くて体への負担が大きいみたい。」

 

キラは淡々と自己分析を行うと島風達を連れて鎮守府へ戻っていった。鎮守府への道すがら、由良と古鷹は軽く、感想を述べていた。

 

「凄かったね・・。キラさんのスピード。」

「うん。早すぎて、目で追えませんでした。」

 

一応、ヒイロの口からはモビルスーツのことやそれぞれの戦争のことは聞いていた。それでも、あのキラのスピードは驚きを隠すことはできなかった。

 

「あの人は・・ううん、提督達は私達よりひどい戦争を経験しているのかな・・・。」

 

古鷹と由良のキラを見つめる目に悲しみが入る。話では聞いていてもやはり実際に見てしまうのでは訳が違う。ヒイロ達の話も軽く聞いただけで、詳しいことは何一つ聞いていない。

 

「ねぇ、キラさん!!今度かけっこしようよ!!!」

「え、え?かけっこ?」

 

島風がキラに指をさしながらかけっこの約束の取り付けをする。

約束を請われたキラは困惑の表情をあげる。

 

「え、ええと、いいよ。僕なんかでいいなら。」

 

唐突な要求に難しい表情になりながらも承諾をした。

島風はそれを聞いて嬉しいそうだ。

 

「絶対だよ!!足の速さなら負けないから!!」

 

どうやら、島風は単純に速さで負けているのが悔しいようだ。

 

「キラさんって、案外子供に弱いんでしょうか?」

 

神通はキラの島風に対する反応を見て、そう思ったが、キラは否定の意を込めて首を横に振った。

 

「い、いや、その・・・。単純に島風ちゃん、露出度高すぎで直視が・・・・。」

 

ちなみに島風の普段の格好を初めて見たとき、ヒイロ達モビルスーツ組は揃ってしかめっ面であった。

 

 

 

 

 

 




今回も楽しんで頂ければ幸いです^_^
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