自我を手に入れた少女達の翼   作:わんたんめん

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第40話 First encounter

「主砲、斉射!!放て!!」

 

長門が『41㎝連装砲』から砲弾を発射する。綺麗な孤を描きながら砲弾は空母棲鬼に着弾する。しかし、間髪入れずに空母棲鬼の艦載機から爆弾が投下される。砲撃直後だったのもあって避けることができない長門はもろに食らってしまい艤装が中破状態になる。

 

「くっ!?敵艦隊も、中々やる・・・っ!?」

「長門さん!?頭から血が・・!!」

 

比叡が悲鳴混じりの声で言った通り、長門の頭から血が流れて顔半分を血で染めてしまっていた。

 

「なに、まだやれるさ・・。主砲もまだ生きているからな。」

「で、でも、そんな状態じゃ、攻撃もままなりませんよ!?」

「だが現状、中破や大破した者が多数いる。ここで私が退けば誰が彼女らを守る?」

「そ、それは・・。」

 

比叡は辺りを見回し、被害状況を確認する。深雪と島風は中破状態。赤城は駆逐艦の二人を庇って、艤装が大破してしまった。

北上、大井は損傷は少ないものの、魚雷管がいくつか潰されており最大火力を出すことができない。つまり、硬い装甲と火力を持つ長門が退けばもしもがあった時、対応ができないのだ。

 

「アイオワや金剛には空母棲鬼への攻撃に集中してほしい。私は負傷者の守りに回る。」

「・・・わかりました。ですが、決して無茶はしないでください。」

「無論、引き際はしっかり見るさ。勝手に沈むのは提督が許さないであろうからな。」

 

「・・・・だいぶやられているわね・・。」

 

イントレピッドは周囲を確認しながらそんな言葉を溢す。

空母棲鬼に損傷こそ与えてはいるものの、倒しても倒しても次々出てくる深海棲艦に手を焼き、じわじわとダメージを蓄積していく。

飛来する砲撃を避けながらもイントレピッドは手の中にある一発の弾丸を見つめる。イントレピッドはここでヒイロの言葉を思い出していた

 

『私たち、MS隊が動けないと判断したら使ってください。』

 

イントレピッドは空を見上げる。空ではヒイロ達が必死に艦載機を墜としつづけている様子が目に入った。

 

「・・・使うしか・・・ないわね!!」

 

弾丸を握りしめ、意を決した表情で銃に弾丸を装填する。

膝立ちで銃を握りしめ、標準を空母棲鬼に合わせる。

 

「・・・Fire!!」

 

トリガーを引き、弾丸を発射する。しかし、予想以上の反動に思わず仰け反るイントレピッド。

 

(お、重・・!?)

 

さながら普通の銃でロケットランチャーを撃ったような衝撃にイントレピッドは肩を抑えた。

 

「やっぱり規格が合わないもので撃つものじゃないわね・・。」

 

額に脂汗を流しながら放たれた弾丸を見据える。

弾丸は姿を変える。それはこれまでの艦載機のように横に大きく広がっている翼は持っていない。代わりに機体側部の四つのエンジンノズルから艦載機とは全く違う音を響かせ、空母棲鬼に接近する。空母棲鬼は当然のごとく対空砲火を行おうとするが、高度が低く上、艦載機とは類を見ない速さに対応することができない。

 

「ハリアー!!やりなさい!!」

 

イントレピッドの声に応えるように発艦した『AV-8B ハリアーⅡ』は空母棲鬼の真横を一度通り抜けると旋回し、機首を再び空母棲鬼に向け、接近する。そして、主翼にぶら下げてある空対艦ミサイル『AGM-84 ハープーン』を切り離す。切り離されたハープーンはエンジン部分が点火し、空母棲鬼に一直線に進んでいく。

対処のしようがない空母棲鬼は避けることが出来ず、ハープーンの直撃を受ける。ミサイル自身のスピードを加えた破壊力は空母棲鬼に無視できないダメージを与えた。しかし、与えただけであり撃沈には至っていない。

 

「イントレピッド!?What's that!?」

 

アイオワが驚いた表情を上げながらイントレピッドに問いかける。

しかし、当のイントレピッドは空母棲鬼に指をさすジェスチャーをする。

 

「Explainは後!!今は向こうをお願い!!」

「・・・わかったわ。主砲、Fire!!」

 

イントレピッドに言われ、主砲を発射するアイオワ。ハリアーのハープーンの直撃により混乱状態になっている空母棲鬼はモロに砲撃を喰らう。それでも空母棲鬼は沈まず、むしろ状況がはっきりとわかったのか憤怒の表情でアイオワを睨みつけている。

 

「Oh・・。ターゲットにされたわ・・。」

 

厳しい顔で空母棲鬼と相対するアイオワ。空母棲鬼と一対一で戦うのは火力に自信のあるアイオワでも厳しいものがある。()()()()()

 

「Hey!!アイオワばかりに目を向けちゃ、NOなんだからネ!!」

「撃ちます!!当たって!!」

 

金剛と比叡が空母棲鬼の右側面に砲弾をお見舞いする。態勢を崩された空母棲鬼は苦々しい顔をしながら砲撃を行おうとする。

しかし、今度は反対の左側面から衝撃が走る。砲撃とはまた違う艦底部に来る衝撃の正体はーー

 

「お、当たった当たった。いいねー、タイミングばっちりじゃん。」

「アイオワさん、さっさと決めてください!!」

 

魚雷だ。北上と大井は態勢を崩して注意が逸れた空母棲鬼に現状、撃てるだけの魚雷を空母棲鬼に叩き込んだのだ。

それほどの火力を叩き込んでも空母棲鬼は未だ健在であり、憎らしげな視線でアイオワ達を睨みつける。

 

「OK・・!!撃って撃って撃ちまくるわ!!Fire、Fire!!」

 

次発装填を済ませたアイオワの主砲が再び火を噴いた。艦底部をやられたからか満足に動けない空母棲鬼は直撃を受けた。が、アイオワの視線は未だ空母棲鬼に向けられていた。

 

(いくつか避けられたわね・・。となるとまだ仕留めきれていない。けどーー)

 

「Lastは譲るわ。But、きっちりfinishしなさいよね。」

 

空母棲鬼の視界を覆っていた爆煙が晴れると目の前に突きつけられているのは二人分の砲門。

 

「ゼロ距離射撃・・・。これならいくら装甲が硬くてもっ!!」

「これで・・終わりです。」

 

空母棲鬼の懐に入ったのは古鷹と神通だ。二人同時に主砲のトリガーを引き、空母棲鬼の頭を撃ち抜く。大きく仰け反りながら体を海上に叩きつけた空母棲鬼は動く気配を見せずにそのまま沈んでいった。

 

「た、倒した?」

「そうなってくれていると、ありがたいです・・・。」

 

お互い肩で息をしながら顔を見合わせる古鷹と神通。

 

「大丈夫デスか?」

「はい、これといった損傷は・・・。」

「二人ともないですね。」

 

心配する金剛の言葉に古鷹と神通は笑顔で返した。

そこにアイオワ達も集まり、お互いに喜びを分かち合っていると、

 

「みんな無事か?遠目から見ていたがかなり無茶なことをしていた気がしたが・・。まぁ、怪我がないのならいいのだが・・。」

 

島風や深雪ら負傷者を引き連れて長門も駆け寄って来る。

 

「神通さんと古鷹さん、最後すごかったな!あんな近距離まで近づくなんてよ!!」

「そ、そうですか?遠距離からはあまり効果がなかったので近づいたんですが・・。」

 

深雪が興奮気味で神通と古鷹に話しかける。神通は若干恥ずかしげに頰を染めた。古鷹も似たような反応だ。

 

「・・・・提督達は今どうしているのでしょうか?」

 

ボロボロになった衣服を押さえながら赤城が呟く。それを聞いた長門が辺りを見回すと戦火の中心は光の柱付近になっており、離れたところにいる

長門達の周辺には深海棲艦の姿はなくなっていた。

 

「あそこにいるのだろうが、これ以上、進んでも横須賀艦隊や呉艦隊の足枷になるだけだな。むしろ、空母棲鬼を倒せただけでも大金星だろう。」

「これが、今のMe達のlimitってわけね・・。」

「・・・ああ、今の・・な。」

「いつか、立てるといいですね。提督・・あの人達の側で。」

 

アイオワの言葉に長門含め、佐世保の艦娘全員が歯がゆい表情をする。本来は提督の立場であるヒイロは後方で艦隊指揮に集中しなければならない。しかし、現状はむしろ提督に守られているではないか。

その事実が長門達に決意を抱かせる。

 

「帰ったら、訓練の密度を一度熟孝しなければならないな。」

「そうね。いつまでもAdmiralに守られてばかりじゃいられないもの。」

「・・・ところでイントレピッド。あの艦載機は一体なんだ?見たことがない形をしているが・・。」

「・・・えっとねーー」

 

長門にハリアーのことを聞かれ、説明を始めるイントレピッド。ヒイロ達が開発で作ったという事実に長門達は軽く頭を抱えるのであった。

 

「さてと、最深部まで来ましたが・・・。」

「どういう原理でこうなっているのか皆目見当がつかないな・・。」

 

ヒイロ達MS隊は敵艦載機群と敵艦隊を突破し、光の柱の麓にたどり着いた。

いざ臨んでみるとあまりの光景に言葉を失っていた。

本当に海に半径30M以上の穴が開いていたのだ。これでは艦娘達にはどうしようもない。

 

「これって、私達しか行けないパターンか?」

「ってもこの現象を起こしている元凶っぽいのが見当たらねぇしなぁ・・。」

「そうなると、この中にいるのが必然だろう。」

 

ガロードとハイネが苦々しい表情を見せる。反面刹那はスパッと言い切った。その言葉にガロードとハイネは揃って嫌な顔をした。

ヒイロがどうしようかと対策案を考えているとーー

 

『アナタハ・・・ドウシテタタカウノ?』

 

頭の中に直接響いてくるような声が再度聞こえ、ヒイロ達は表情を引き締める。

 

「・・・この声はやっぱりあの光の柱からなのかな・・。」

「一応、意志というか・・・。そこにナニがある、ということだけしかわかりませんね・・。」

「・・・・この声、どこかで聞いたことがあるような気がしますが・・。」

 

キラ、フェネクス、アリスがそれぞれ別々の反応を示す。

「どこかで聞いたことがある、ですか・・。たしかに遠くで聞いた時はそうは感じませんでしたが・・今こうしてちゃんと聞いてみるとそのような感じが・・。」

 

アリスの言葉にヒイロが顎に手を乗せ、考える仕草をする。

 

「やっぱそう聞こえるか?なんか聞いたことのある声なんだよな〜。」

 

ガロードも薄々感じていたようにヒイロの言葉に賛同した。

 

「だが、どのみちこの光の柱に突入するしかないな。艦娘の皆には行くことはできても戻ることは不可能だぞ。これでは。」

「元凶を倒したら海がすぐ戻っていきませんかね?」

「そう都合よくは行くまい。仮になったとしてもまず消えるのは光の柱だろう。最悪、そのまま海底に叩きつけられるぞ。」

 

アムロがフェネクスに対し、穴の奥底に見える海底を観ながらそう指摘する。

 

『コッチニキテ・・。』

 

再度頭の中に響いて来た声にハイネは困った顔をしながら光の柱を見据えた。

 

「やっぱり行くしかなぇつう訳だな?」

「・・・そうするしかないですね。」

 

意を決したヒイロ達は光の柱に突入を始める。

 

「こ、これは!?」

「外見から見た大きさとここの空間の広さが違いすぎるっ!?」

 

ヒイロ達が飛び込んだ光の柱の中には真っ黒な空間が広がっていた。さながらどんどん浅瀬から深海へと潜り込んで行く感覚を受ける。

 

「なんっうーか。入口みたいだな。さっきの光の柱。」

「入口か・・・。言い得て妙かもしれないな。その言い方は。」

 

ヒイロ達はどんどん下降していく感覚を受ける。しかし、変わらず真っ黒な空間が続いていくかとおもったがーー

 

突然地面に皆揃って叩きつけられた。

 

「いっだぁー!!?」

 

突然の痛みに思わず頭を押さえながら悶えるハイネ。そのほかもぶつけた箇所をさすりながら立ち上がる。

 

「っ・・・。まさか突然地面に叩きつけられるとはな・・。」

「だが、それは目的地に着いたということではないか?」

 

予想外の痛みを抱えながら辺りを見渡すと、刹那の言う通り、暗闇の空間にぽつんと光が差し込んでいる場所があった。

 

「まずさ。ここ、どこなんだよ。」

「下降していた距離から換算すると、ここに地面があるのは不自然です。」

 

辺りを見回しているガロードにアリスは自身の気づいたことを伝える。

 

「・・・私達、どこに連れてこられたんでしょうか?」

「分からないけど、少なくともここはアイアンボトム・サウンドじゃなさそうだね。」

 

フェネクスの不安気な口調で話した言葉にキラがぶつけた額をさすりながら答える。

 

「さながら、異空間といったところでしょうか?」

「・・・異空間ねぇ・・。深海棲艦ってそんなことまで出来んのか?」

 

ヒイロの結論のような言葉に先ほどまで地面をゴロゴロ転がっていたハイネが寝ながら疑問をぶつける。

 

「・・・とりあえずあの光のところに向かいましょうか。だれか、いるようですし。」

 

ヒイロ達は光の差し込む場所に歩を進める。

その場所には少女がヒイロ達に背を向けて一人ぽつんと立っていた。

その後ろ姿に何故かヒイロ達は既視感を抱いたが、とりあえず会話ができる距離まで近づき、声をかけた。

 

「確認します。アナタが私達を呼んだんですね?」

 

目の前の少女は頷く代わりにヒイロ達に顔を向けた。

だが、その顔はヒイロ達に取って驚愕するに等しいものであったからだ。

その少女は頭に深海棲艦が持っているツノが生えていることと左腕が肥大化していることを除いて姿形がーー

 

「なっ!?ふ、吹雪・・ちゃん!?」

 

駆逐艦吹雪と瓜二つだったのだから。




なんだかんだ話を進めつつ気づけば40話・・・感慨深いものです。
今回も楽しんで頂ければ幸いです(≧∇≦)

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