自我を手に入れた少女達の翼   作:わんたんめん

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第42話 これからへの選択

アイアンボトムサウンドでの戦闘を終え、大和達横須賀と呉の艦隊と別れたヒイロ達。

無事、何事もなく佐世保鎮守府に帰還することができた。

 

「あー、帰ってきたー!!」

「ハイネ、肋骨にヒビが入っているのだから、そういうことはやめておけ。」

 

ハイネが腕を上に伸ばしながら、凝り固まった体をほぐす。

アムロが忠告した直後、ヒビに当たったのか、苦笑いをしながら胸をハイネは胸を抑える。

 

「ってぇー・・・。なぁ、ヒイロ、どれくらいで治るか分かるか?」

「私は医者ではないんですけど・・・。肺とかに折れた骨が刺さっていないのでしたら、二週間くらいで治ると思いますよ。」

 

ため息を吐きながらも自分の見立てをハイネに話すヒイロ。それを聞いたハイネは嬉しそうにーー

 

「そっか、ありがとよ。安静してればいいんだろ?」

「・・・以外です。ハイネなら大丈夫の一言で片付けて勝手にはしゃぐものだと・・。」

「うぉい、ヒイロは俺のことなんだと思ってるんだよ!?ガロードじゃあるまいし、休む時にはきっちり休むって。」

「私も休む時には休むって!!勝手に飛び火させるなよ!?」

 

艦隊の皆が笑いながら、鎮守府にたどり着くと、佐世保の艦娘達が総動員して埠頭で待っていた。艦娘達がポカーンとしているヒイロ達を見つけるやいなやヒイロ達に対し敬礼をする。

 

『お疲れ様です!!提督!!』

 

埠頭に艦娘達のヒイロ達を労う声が響く。その様子はさながらーー

 

(・・・ギャングのボス・・・ですか?)

 

そう思うヒイロであったが、当然そのようなものになったつもりは全く無い。

 

「あの・・・。この集まりは一体・・・?」

「提督の出迎えだけど?本来、私達がやらなきゃいけないのに、提督達がやっているんだがら、これくらいはいいんじゃない?」

 

たどたどしく一番近くにいた陸奥に聞くとさも当然だと言わんばかりの口調で帰ってきた。ヒイロはそれを聞くと頭を抱えるような素ぶりをする。

 

「そこまでしなくてもいいんですけどね・・・。とりあえず、休ませてほしいです・・・。あ、入渠する人は損傷の大きい人から入ってね。」

 

『了解!!』

 

そういうと艦娘のみんなは散開し、またそれぞれの日常へと戻っていった。

 

「それじゃあ、お疲れ様でした。」

「ああ、おつかれ。しっかり休んでおいた方がいい。今回は色々あったからな。」

 

アムロの言葉に無言で頷き、ヒイロは陸奥と加賀を率いて執務室へと戻っていった。

 

「ーーーーあとは、何かしらの娯楽設備がほしいって声が多かったわね。ここも結構な大所帯になってきてるからね。どうしても暇を持て余す人も多いみたい。」

「分かりました。すんなりと出てくるのはテレビやゲーム機の類ですが、陸奥さんや加賀さんは何か娯楽としておいてほしいものとかあります?」

「私?そうねぇ・・スポーツ用具はどうかしら?ここ結構広いし、場所さえ用意できればできないことでもないと思うわ。」

「私はそういったものには疎いですが・・外出許可証とかを発行するのはどうでしょうか?艦娘にも現代のものに興味を持つものを多いですから。」

 

ヒイロは執務室で陸奥と加賀から出撃していた間のことを聞いていた。

 

「陸奥さん、それに加賀さんも突然仕事を押し付けてしまって申し訳ありません。」

「いいのよ。提督達が引っ張りだされるのも無理もないからね。」

「アムロさんやハイネさんが負傷するほどの戦闘だったのでしょう。しかし、提督達に頼らざるを得ない状況にはいささか目を細めざるを得ないのも事実ですが。」

 

加賀の言葉を聞いたヒイロは気まずそうに目線を逸らした。

 

「提督?どうかしましたか?」

 

加賀に目ざとく指摘されたヒイロは特に取り繕うこともなく口を開いた。

 

「・・・申し訳ないですが、私達に頼らざるを得ない状況はしばらく続く可能性が高いです。」

「・・・何か訳ありみたいね。アイアンボトムサウンドで何があったの?」

 

ヒイロは陸奥と加賀にザムザザーやゲルズゲーと言ったMAのことを話し始めた。

ヒイロ達MSより強大なMAの存在に陸奥と加賀は言葉を失う他なかった。

 

「提督達でも手を焼く相手、ね。アムロやハイネの傷もそいつに付けられたものなのね。」

「・・・モビルアーマー。提督達の時代にはそんなものまで戦場に蔓延っていたのね。」

「蔓延るほどの物量はないと思うんですけど・・・。それでも、そういったこちら側の技術が向こうにもあるとなると、これからの戦場はかなり厳しいものになると思います。」

「そうね・・・。提督の言ったとおりのスペックだと、一度こっちが苦労して取り返したところも、そのモビルアーマー一つで返されてしまうでしょうね。」

 

陸奥、加賀の両名もこれからの戦いについて、だいぶ悩ましげな表情を浮かべる。

 

「おそらく、ですが、向こうにはどういった方法かはわかりませんが、私達の技術を確保できる手段がある、ということです。」

「・・・厳しくなっていくわね。」

「提督、少し意見具申をしてもいいかしら?」

 

陸奥が悩ましげな表情を続ける中、加賀はヒイロに詰め寄って、意見を述べる。

 

「はい、何でしょう?」

「提督達が出撃している間、倉庫に見たこともない装備を見つけました。」

「倉庫?・・・・あ、まさか。」

 

ヒイロはそれを聞いて冷や汗を流すが、加賀は気にすることもなく話しを続ける。

 

「四つの筒が土台に付けられたような装備。明石さんに聞けば、それは『トマホーク』と呼ばれる兵器でイージス艦に装備されていた兵装らしいです。」

「えっと、その・・・。」

 

加賀の詰問に言葉を返すことができないヒイロ。冷や汗をダラダラとかくしかない。

 

「そして、それが提督達が開発したことも聞きました。」

 

正確に言えばガロードとハイネが勝手にやったことなのだが、それをいっても何かが変わるとは思わなかったため、何も言わなかった。

 

「提督、開発をお願いできないでしょうか?今度、モビルアーマーのような敵が出てきても貴方がただけに任せることが無いように。」

「でも、それだと・・・。」

「それは百も承知です。ですが、私達にとって、貴方はなくてはならない人なのです。」

 

加賀達にまで危険が及んでしまう、そこまでいったところで加賀自身もわかっていたのか、割り込まれ、言葉を塞がれる。

 

「提督、貴方がたは確かにとてつもなく強いです。しかし、戦争は一人や二人でどうにかなるほど甘くはありません。それは提督だってわかっているはずです。」

 

ヒイロは加賀の言葉から自身のMSだった頃を思い出していた。

『オペレーション・メテオ』のガンダム五機による地球圏への強襲作戦。最初こそはガンダムの圧倒的な火力でどうにかなっていたものの月日が経つうちに対策が次々と取られ、最終的に自身が守らねばならないコロニーを人質に捕らえられ、パイロットが自爆の選択を取らざるを得ない状況まで追い込まれた。これはヒイローーウイングガンダムにとっても苦々しい記憶になっている。

戦争は少数の力で終わらせることは不可能である。人々が手を取り合って、声を上げることで初めて戦争への終焉へと舵をとることができる。

 

(おそらく、この先、深海棲艦の戦力にMAが加わったことで戦いが激化していくでしょう・・・。加賀さんの言う通り、戦争はちょっとや少しの人数では終わらせることはできない。それは私自身よくわかっている・・。)

 

ヒイロは目を閉じ、軽く息を吐くと、加賀と視線を合わせる。

 

(二度も過ちを繰り返すわけにはいきません・・・。ここを間違えれば、何より彼女達が危険にさらされる。)

「・・・・分かりました。私達も手を尽くしましょう。ですが、資材との要相談で構いませんか?私自身、どれほどの量を使ってしまうかわからないので。」

「ありがとうございます。・・・ですが、提督自身、アムロさん達が開発を禁止していたのも明石から存じています。その理由は、大本営に目をつけられるのを防ぐためですね?」

「ええ、そうですね。アイオワさんやイントレピッドさんは別として、イージス艦の装備はさすがに看過してはくれないでしょうからね。しかし、状況が状況です。そうはいってはられなくなりました。」

「ねぇ、加賀、見つけたら私に言ってくれたっていいのに・・。」

「ごめんなさい。明石さんからあまり言いふらさないでほしいと言われたものですから・・。」

「・・・まぁ、仕方ないわね。それじゃあ提督、しっかり休んで頂戴ね。」

「提督、今回はお疲れ様でした。」

 

陸奥と加賀が執務室から出ようとした時ーー

 

「あ、すみません、少し一ついいですか?」

「あら、どうかしたの?」

「いえ、大したことではないのですが、おふたりは明日の夜は空いているでしょうか?」

「・・・はい。空いていますが。」

「ならよかった。明日3人で外食に行きませんか?私の奢りで。」

「あら、結構太っ腹なのね。提督。でも、どうして?」

「今回のお礼ですよ。これくらいはさせてください。」

「・・・ごめんなさい。気持ちは有難いのですが・・。」

 

加賀はやんわりと断った。おそらく自身の食べる量が多いことを考慮してのことだろう。

 

「多少のおかわりでしたらどうってことはありませんよ。だから加賀さん、遠慮なくいらしてください。」

「・・・提督がそう言うのであれば・・・。」

 

加賀の承諾を受け取ったヒイロは笑顔を浮かべながら、陸奥と加賀に別れを告げる。

 

「さてと私はもう寝ますか。」

 

ヒイロはベッドに入ると程なくして深い眠りに入った。

 

次の日、ヒイロは鎮守府内の射撃訓練場に来ていた。この施設は艦娘達が装備の試し打ちや調整のために利用する所だ。

そこにはちょうどガロードとアムロがいた。アムロはバズーカを構えて海上に設置された的に狙いをつける。

トリガーを引くと爆発音とともに実弾が発射される。その実弾は艦娘達の放つ砲弾と違い、一直線に飛んでいくと、寸分狂うことなく的に着弾し

木っ端微塵に吹き飛ばした。

 

「アムロさん、どうですか?『ニューハイパーバズーカ』の具合は。」

「ああ、MSだったころの威力と変わりはない。すまないな、ヒイロ。ガロードのついでに開発を許可してくれて。おかげで戦術の幅が広がった。」

 

バズーカをバックパックに取り付けると感謝を述べるアムロ、一方のガロードは開発した武装に苦戦していた。

 

「くっそー・・装備が増えたのはいいけどよ、私これ大してつかってないんだよなぁ・・。ブースターの機能を使ったのがせいぜいだし・・。」

 

ガロードはそういいながら身の丈ほどある盾のような兵装を前面に構える。すると盾の表面部分が観音開きになり、そこからビームが複数、発射される。いくつものビームは的を破壊するどころか土台部分まで破壊してしまった。

 

「うおっ!?コイツ、こんなに威力あったのかよ!?」

「これ、連射も可能なんですよね?だとしたらかなり強力な武装ですね。この『ディバイダー』と呼ばれる武装は。」

「ああ、盾の機能を持ちながら、攻撃も可能、さらにはブースターの代わりにもなる。文字通りの万能兵器だな。」

 

ガロードの驚いている様子を尻目にディバイダーについての感想を述べるヒイロとアムロ。そうしていると試し打ちはもういいのかガロードが戻ってきた。

 

「ヒイロ、あんがとな。コイツを作る機会くれてよ。・・私自身、これほど威力があるやつとは思ってなかったけどよ・・。」

「礼はいりませんよ。資材の使用量に目を瞑れば、私達の時代の装備が作れることを知れたのは大きいです。」

「確かにな。妖精さんにも非常に驚かれていたからな。」

 

ディバイダーやハイパーバズーカを作る際、一回の開発に使ったのは実に普通に艦娘の建造を行う時に使う資材の量と変わりがなかった。それに失敗する場合も多く、容易に開発をすることはできなくなった。

 

「そういや、ヒイロ、作ってる間に副産物とかあったけどよ。それって何があったんだ?」

「えっと、明石さんがリストアップしてくれたのを見ると・・。」

 

今回の開発には副産物も多少なりともあった。ガロードにそらについて聞かれ、明石が作ってくれたリストを見る。

 

 

「・・・まずは二式大艇ですね。明石さん曰く、正式名称は二式大型飛行艇でかなりの高性能機らしいです。かなりの巨体を誇るため、輸送作戦でも重宝されるそうです。ただーー」

「・・・・大方、その巨体のせいで空母には積めない、そんなところか?」

 

アムロにいわれると。ヒイロは無言で頷いた。

 

「一様、水上機とのことだったので、千歳さんや千代田さんにも頼んでみたんですが、やはりサイズが大きすぎるとのことで・・。」

「どんだけでかいんだよ、その二式大艇。っていうか、空母に乗っけらんねぇって言うなら、誰に乗っけられんだよ?」

「公式にある文章によれば、『秋津洲』と呼ばれる水上機母艦が載せていたとしか・・・。」

「・・・倉庫行きか。」

「・・・ですね。」

 

ない袖は振れない以上、二式大艇を運用することは不可能である。現実は非情である。

 

「あとは、試製景雲の艦偵型ですね。エンジンが普通の艦載機に使われているものとは違うため、偵察機としては彩雲より質がいいようです。ただーー」

「おいおい、まさかこれも空母には載せられねぇとか言うんじゃねぇよな?」

 

ガロードにそう言われるが、ヒイロは首を縦に振るしかなかった。

 

「・・・自分達が作っておいて言うのもおこがましいかもしれないが、何か使えるものはないのか?そういえば、やけに大きい主砲ができた気がするのだが・・。」

「えっと、あ、ありました。『試製51cm連装砲』ですね。大和さんの主砲からさらにひとまわり大きいです。」

「大和の主砲はいくつか覚えているか?」

「46cmですね。」

「そっから考えるとかなり大きいな・・・。戦艦、にしか装備できねぇだろうけど、それでも人を選びそうだな・・。」

「ガロードの言う通り、サイズ合わせを行った結果、長門さんと陸奥さんでギリギリということがわかりました。ここにとっては事実上の長門さんと陸奥さんの専用装備でしょう。」

「アイオワでも無理だったのか・・。意外だな。」

 

アムロが意外そうな顔を上げる。その通りアイオワでも51cmの連装砲を扱うとは無理があった。アイオワの主砲は16inch、おおよそ、41cmである。いきなり10cm近く大きさの違う砲を扱おうとしても無理がある。

 

「やれやれ、難儀なものだ。」

 

アムロが軽くため息を吐いた。困った顔をしながらそばに立てかけてあった時計を見ると正午過ぎを指していた。

 

「ちょうどいい時間か。昼食をとりに行くか。」

「そうですね。行きましょう。」

 

ヒイロとアムロとガロードはそういい、食堂へと向かっていった。

 




今回も楽しんで頂ければ幸いです^_^
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