自我を手に入れた少女達の翼   作:わんたんめん

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第46話 作戦は一刻も争う

アイツの語ったシーブックとスウェン、二人の名前。

おそらくヒイロ達と同じMSが人間となった者なのだろうが、誰も聞いたことのない名前であった。

アイツがみんなを助けてほしいと言った。しかし、ヒイロ達には出ようにも出れない理由があった。

 

「・・・・それは、難しいお願いです。君は既に丸一日寝ていました。今から救援に行ったとしても、既に移動しているか、もしくは・・・。」

 

ヒイロはそれ以上言葉を続かせなかった。しかし、アイツが捉えたヒイロの表情は悲しげに顔をうつむかせており、何より如実に語っていた。

 

「ソ、ソンナ・・・私ハ、丸一日モ、寝テイタノカ・・・!!?」

「ええ、アムロが傷だらけの貴方を見かけたのち、すぐさま高速修復材をかけて損傷は直しました。しかし、極度の貧血状態だったため君はつい先ほどまで起きる気配もありませんでした。」

 

そう言われたアイツは自身の不甲斐なさを呪っているのか、悔しい気な表情を挙げた。そのまま彼女は顔を両手で塞いで、俯いてしまった。

その様子にヒイロ達は悼まれない雰囲気になってしまう。

 

救援は絶望的、そう思われた時。

 

「提督!!遠征の帰還途中であった天龍さん達から緊急の通信です!!」

 

大淀が切羽詰まった形相で医務室に駆け込んできた。そのただならぬ雰囲気にヒイロ達も気持ちを切り替える。

 

「内容は?」

「はいっ。鎮守府からおよそ40キロの地点にて、救難信号を確認!!提督に判断を委ねたいとのことです!!」

「救難信号?どうしてそんなーー!?」

 

大淀の話す内容にヒイロは一つの可能性を見出した。

ヒイロは深海吹雪に向き直ると、若干焦った口調で詰め寄った。

 

「ねぇ!一緒にいた人たちと別れたのはどこっ!?」

「お、おい、ヒイロ!?どうした突然!!」

 

ハイネが困惑した表情の中行われたヒイロの突然の行動にアイツは状況を掴めていないのか、驚いた顔のまま固まっている。

 

「早く!!もしかしたら、生きているかもしれない!!」

 

生きている、アイツは最初こそ理解できなかったが、先ほどまでの会話の中でその言葉が示しているのがその者たちであることを理解した時、彼女の口は自然と開いていた。

 

「確カ、50キロダ・・・。コノ鎮守府カラ、50キロ・・・!!」

 

それを聞き届けたヒイロはすぐさま大淀に向き直り、迅速に指示を飛ばす。

 

「大淀さん、天龍さん達にすぐさまその海域から離脱するように通信を!!あとのことは私達に任せて。」

「えっ!?提督が出撃するんですかっ!?」

「それほどの緊急事態です。それでいいですよねっ!?」

 

ヒイロがアムロ達に振り向くとアムロ達は待っていたと言わんばかりの顔であった。

 

「すぐ戻ります。少しの間、お願いします。」

 

ヒイロが医務室を飛び出すとアムロ達もそれに続いた。

残された大淀とアイツは呆気に取られた表情を挙げていた。

 

「もう・・・本当に提督らしくありませんね。あの人は。」

「提督、ダッタノカ?」

 

大淀がため息混じりに言った言葉にアイツは疑問符を上げながら聞いた。

 

「ええ、そうですよ。ヒイロ・ユイ。それがあの人の名前でここ、佐世保鎮守府の提督。それでーー」

 

大淀が困った表情を一転、笑顔にすると、

 

「私達の尊敬する提督です。」

 

 

「敵はおそらくモビルスーツです。モビルスーツである以上、最悪、というよりほぼ確定で載せている戦艦の存在も予想されます。そのことを留意しつつ戦闘を行ってください。」

「戦艦か・・・。厄介だな。」

 

ヒイロが鎮守府内の廊下を駆け抜けながら注意点を述べていくと、アムロが難しい表情をあげる。

 

「となると人員を戦艦とモビルスーツ、半分に分けるか?」

「母艦を叩ければ確かにいいですが、そう簡単に行くとも思えません。現状は救助を最優先事項としてください。」

 

刹那の提案をヒイロは蹴った。最優先するは救助部隊、その言葉に納得した刹那は特にそれ以上は何も言わなかった。

 

「それじゃあ、皆さん。行きますよ!!」

『了解!!』

 

鎮守府の施設を出たヒイロ達はすぐさま兵装を展開し、アイツの仲間達を助けるべく、救難信号の発信源へと飛翔した。

 

 

 

「さて、救難信号を出したはいいが、これが吉と出るか凶とでるか。」

「・・・・可能性としては凶の確率が限りなく高い。あまり期待はしない。」

「そういいながらもこれしか方法がないのが現状だ。お前だってそれはわかっているだろう?」

「・・・・否定はしない。」

「私はここで見張っている。二人の様子を見てきて貰えないか?」

「・・・わかった。」

 

煌びやかに輝く金髪をポニーテールに纏めた女性が隣にいた自身の一回りほど身長の小さい相方に声をかけると対照的な銀色のツインテールを翻しながら、無人島にあったそこら辺の葉っぱと木材で組み立てたテントに顔を覗かせる。

 

「港湾棲姫。調子はどうだ?」

「私ハ、大丈夫。コノ子モコノ様子ダカラ。」

 

そういいながら『港湾棲姫』は自身の太ももでスヤスヤ眠っている『北方棲姫』の頭を撫でた。その様子にテントをのぞいていた女性は微笑みながらも港湾棲姫に厳しい目を向ける。

 

「無理はするな。応急処置は施したとはいえ、お前は腕を負傷しているからな。」

「エエ、心配シテクレテアリガトウネ。『スウェン』。」

「・・・それは私達の至らなさが引き起こしたことだ。気にかけるのは当然のことだ。」

 

若干気恥ずかしげな表情をしながら女性ーースウェン・カル・バヤンはテントを後にした。

 

「どうだった?スウェン。」

 

再度見張りに戻ってくると金髪の髪の女性がスウェンに二人の様子をたずねてきた。

 

「問題ない。今のところは、な。」

「そうか・・・。アイツ(深海吹雪)と別れてから丸一日経ってしまったが、音沙汰なしか・・・。」

「やむを得ない判断だったとはいえ、彼女には荷が重かったかもしれないな。」

 

スウェンにそういわれ、悲しげな表情を挙げていると、二人のレーダーに反応が現れる。

 

「・・・どうやら、凶だったようだな。『シーブック』。」

「流石に速いな・・。まぁ、元々、分の悪い駆け引きだったさ。あれこれ言うつもりはない。だから今はーー」

「ああ。二人を守るぞ。」

 

シーブックとスウェン、二人の視線が見据える先にはモビルスーツが何かに乗って飛んでいた。

装甲が薄い緑色に水色のメインカメラを光らせている。シールドに十字の下に半円の弧が描かれているモビルスーツ、その名も『ジェガン』。その数はおよそ30だ。それらは揃ってフライトユニット『ドダイ』に跨って、シーブック達のいる無人島へ接近していた。

 

「彼女らの警護を最優先にして撃墜を怠ったのが今になって響くか・・。」

「しょうがあるまい。とりあえず、迎撃するしかないな。」

 

そう言うと二人は兵装を展開する。スウェンはハンドガンのサイズの二丁拳銃を手に、シーブックは体を包むようになっているマントを翻しながらさながら海賊が持つようなカトラスのような刀身を持つビームサーベルを引き抜く。

 

「クロスボーンガンダムX1、シーブック・アノー、出るッ!!」

「ストライクノワール、スウェン・カル・バヤン。出撃する。」

 

シーブックは背中から見える特徴的なX字のブースター、スウェンはノワールストライカーのブースターを蒸し、ジェガン達の迎撃に向かう。

二人が迎撃に向かってきたのを確認するや否や、ジェガン隊はビームライフルを発射する。30機ものジェガンから放たれるビームは濃密な弾幕を形成するが、

二人は平然とした様子で切り抜ける。

 

「そこっ!!」

 

シーブックが手に持っていた『バスターガン』で正確にジェガン隊の内の一機を撃ち抜く。乗り手を失ったドダイはそのまま堕ちていくがーー

 

「利用できるものは最大限利用させてもらうっ!!」

 

腰部から鎖の先端にクローが付いた『シザーアンカー』を射出し、ドダイを掴む。シーブックはシザーアンカーの鎖を掴むとそのまま力いっぱい振り回して、別のジェガンにぶつけた。

 

「そこだ!」

 

スウェンもジェガンに肉薄し、両手に持つ二振りの『フラガラッハ3ビームブレイド』で袈裟斬りをする。小ぶりながらも対艦刀でもあるビームブレイドはジェガンを胴体から斜めに切り落とした。

スウェンは切り落としたジェガンに見向きもせずに次のターゲットに目をつける。

 

スウェンが二機のジェガンに接近すると、当然迎撃としてビームライフルを発射する。対してスウェンはビームを潜り抜けているなか、両の腕からワイヤーを発射しつつ、二機のジェガンの間を通り抜ける。ジェガンは振り向いて再度ビームライフルでスウェンを攻撃しようとするが、突如として両機ともバランスを崩し、互いにぶつかり合って爆発した。

スウェンはワイヤーを二機のジェガンに突き刺し、通り抜けたあとにワイヤーを駆使して、ジェガンを引っ張ったのだ。

 

「ちっ、数が多すぎる。捌き切れないなこのままでは。」

「不味い・・・か。やはりそうなるか。」

 

スウェンが舌打ちしながら苦言をこぼす。シーブックも似たような表情を挙げたままだが、攻撃の手を緩めることはしない。

しかしーー

 

「ッ!?高エネルギー反応!?」

 

シーブックとスウェンが二人揃って咄嗟にバレルロールを行うと今までいた場所を高出力のビームが駆け抜けた。スウェンはビームの飛んできた方角を見やるとーー

 

「このタイミングでの戦艦の介入・・・。奴らは我々にとどめを刺しきたか。」

 

そこには巨大な空を飛ぶ船がいた。黒い装甲に特徴的な飛び出た二つのモビルスーツ用のカタパルト。シーブックはかろうじてジェガンは知っていたが、その戦艦の周りには見たことがないモビルスーツがいた。カラーリングはベージュとオレンジのツートンカラー、黄色のセンサーカラーをシーブック達に向けている。可変機能を兼ね備えたZ系列機『リゼル』が4機とおよそ24機のジェガンをおともにドゴス・ギア級2番艦、『ゼネラル・レビル』が悠々と飛んでいた。砲門は既にシーブック達二人に向けられていた。

 

「くっ・・・。これほどの戦力差とは・・・!!」

「このままでは・・・っ!!」

 

シーブックとスウェンの後ろには港湾棲姫と北方棲姫がいる無人島がある。

逃げるわけにはいかない。だが、目の前の戦力差は絶望的だ。

 

(くそっ・・。何か手はないのか・・・!!)

 

そのシーブックの思いは無情にも目の前に広がる無数の光に閉ざされた。

 




今回も楽しんで頂ければ幸いです^_^
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