自我を手に入れた少女達の翼   作:わんたんめん

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第49話 スウェンとシーブックのその日暮らし

「・・・・・。」

 

ここは食堂。何人もの艦娘達が間宮が作る料理に舌鼓を打つ。

和気藹々とした雰囲気の中、無表情で黙々と食べ続ける者が一人。スウェンだ。

まだ佐世保鎮守府に来てから日の浅いスウェンは割と一人でいることが多かった。

 

「隣、いいかな?」

「ああ。構わない。」

 

そんなスウェンに声をかけるものがいた。同じコズミック・イラ出身のキラだ。

キラはスウェンの隣に座るとスウェンと同じように黙々と料理を食べ始めた。

しばらくの沈黙のあとキラが口を開く。

 

「ねぇ、スウェンって僕よりあとに出来たMSなんだよね?」

「そうだな。だが、お前もその時はまだ動いていたはずだ。ときおり悪評は聞いていたからな。」

「その悪評ってどんなのがあったの?僕、なぜかヤキン・ドゥーエまでの記憶までしかないから、ちょっと気になって。」

「・・・聞くのか?」

 

スウェンが少し微妙な顔をする。キラはそれに気にしないでと言った顔をする。

 

「別にそんなに遠慮しなくていいよ。僕は連合にもザフトにも敵対していた身だからね。」

「・・・・わかった。これは私が噂で聞いた話しだ。間に受ける必要はないと先に言っておく。」

「う・・・うん。」

 

スウェンの念押しに軽く気圧されるがキラは意を決して頷く。

 

「まず、お前、もといフリーダムガンダムはアークエンジェルを伴っていくつもの戦闘に介入していた。」

「・・・やっぱり、ナチュラルとコーディネイターの?」

「ああ。ヤキンの戦いが終わった後もいくつもの戦闘行為が各地で起こっていた。」

 

キラはその言葉を聞いて悲しい顔をした。スウェンはその表情を見つめながらも話を続ける。

 

「なんとなくだが、戦闘を辞めさせたいというのは感じていた。だが、その行動によく意味がわからないことをすることもあったが。」

「い、意味がわからないこと?」

「敵のMSの武装や部位だけを破壊してそのまま放置していた。そんなことをすれば他の敵のいい的になるだけなのにだ。」

「元々不殺主義だったからね・・。僕のパイロット。僕に乗って明確に殺したと言えるのは・・・」

 

そういったところでキラの脳裏に一機のMSが浮かんだ。憎悪の塊とも言えるあのMSは本当に強かった。

 

「・・・今は考えることじゃないね。他には何かあった?」

「そうだな・・・。これが一番よくわからなかったな。」

「というと?」

「カガリ・ユラ・アスハを知っているか?オーブ首長国連邦のだ。ヤキンの戦いにも参戦していたらしいからお前ならわかると思うが。」

「ああ、うん。知ってる。金髪の男勝りな人だよね。」

「そいつの結婚式に乱入して花嫁であったカガリ・ユラ・アスハを拉致していた。」

「・・・・え?何それ。僕のパイロット、そんなことしてたの?」

「・・・こちらが聞きたいのだが。」

 

思わず表情を固めて、言葉を失ってしまうキラ。スウェンはその様子をみてため息をついた。

 

「なぜ奴が彼女を連れ去ったのは未だよくわかっていない。・・・どうした?」

 

スウェンがキラをちらりと見やるとキラの様子がおかしいことに気づく。

顔は下を向いて表情を伺えなかったが、手がプルプルしていたことに目が入る。

 

「・・・・して。」

「・・・・?」

「どうしてあの人は、そんなに人の許嫁が好きなんだァァァ!!!」

 

キラと突然の絶叫が食堂に響き渡る。艦娘達が驚いた様子でキラに視線を集中させ、スウェンも目を見開いて驚きの様子を表していた。

 

「これで三度目だよ!!1回目は友達の許嫁、2回目に至っては親友の許嫁、それにあのラクス・クラインだよ、その相手!!そしてさらに僕が見ていた限りかなりいい雰囲気になっていた!!もう親友のジャスティスのパイロットが可愛そうだよ!!にも関わらず、3回目に至っては結婚式中の花嫁を拉致するって!!どこまでやらかすつもりなんだあの人はぁ!!」

「ま、待て。とりあえず落ち着け。」

 

キラの突然の豹変にスウェンはどうすれば良いか分からなくなっていた。

止め方もわからないため、どうすることも過ぎず、キラの暴露はヒートアップしていく。

 

「それに僕が覚えている限りだと、カガリさんは僕のパイロットと血縁関係なんだよ!!姉か妹かはわからないけど肉親を寝取るつもりなのかぁ!!」

 

なかなかものすごい暴露を言い切ったところでキラの絶叫は一度なりを潜める。

収まったかとスウェンは思ったがーー

 

「・・・一度あの人ぶっ飛ばしに行こうかな・・・。」

 

潜めたところか悪化してた。キラの目からハイライトは消え失せ、虚ろな瞳がこの世界にはいないはずのフリーダムのパイロットを見つめる。

スウェンはよく理解できなかったが、少なくともこのまま放置するのはまずいことだけは直感していた。

故にーー

 

「悪く思うな。これはお前のためでもあるからな。」

 

キラの頭にスウェンは思い切りげんこつを叩き込む。ゴスッっと鈍い音が食堂に響いた後、キラは仰向けに倒れた。

 

「・・・・。食べるか。」

(スウェンさん、強っ・・・。)

 

そのまま再度ご飯を頬張り始めたスウェンを見て、とりあえずホッとする艦娘達であった。

 

 

「・・・・何か、食堂のほうで一悶着あったような気がするんだが・・・?」

「気のせいじゃねぇの?今はこっちに集中しようぜ。」

 

こちらは工廠。そこではシーブックとガロードが鋼材を用いて兵器を製作しようとしていた。

前回の戦闘で鹵獲したジェガンやリゼルのビームライフルを材料に設計図を書いて妖精さんに頼んでみるという寸法であった。

 

「とりあえず、こんなもんでどうよ?」

 

書き終えた設計図を手にとって確認するシーブック。

しかし、その表情は難しい顔に変わる。

 

「・・・む。全体的に線が不揃いだな・・・。これで出しても妖精さんとやらは正確には作ってくれないんじゃないか?」

「んー、やっぱそっか。いや、難しいな。こういうのは。」

「やはり、そういうことに精通している者が書いた方がいいんじゃないのか?」

「つってもなぁー。明石はちょいと深海吹雪達の艤装に掛り切りになってるしなぁ・・・。」

 

ガロードが手を後頭部に回し、困った様子を表しているとーー

 

「あれ?ガロードさん?それにあなたは確か、シーブックさんでしたよね。」

 

工廠の中に入ってくる人物がいた。緑がかった銀髪のポニーテールがトレードマーク、軽巡の中で比較的特異な部類に入る特殊兵装軽巡の夕張だ。

 

「お、夕張じゃん。・・・・お前って設計図とか書けるか?」

「えっ?設計図ですか?んー。明石さんほどはうまくは書けませんけど、それでいいんでしたら。」

「お、なら頼むわ。こういったヤツなんだけどーー」

 

ガロードの不完全な設計図とシーブックの説明と共に夕張は鉛筆を右手に定規を左手に持って設計図を書き上げていく。

そして数十分しないうちにーー

 

「とりあえず、こんな感じですか?シーブックさん、確認してもらえます?」

 

夕張が書き上げた設計図をシーブックが確認する。

 

「凄いな・・・、君は。私が想像した通りのものに仕上がってる。」

 

その設計図の出来にシーブックは声を唸らせる。そこにはシーブックの想像通りに特殊な形を兵装『ピーコック・スマッシャー』が描かれてあった。

 

「そうですか?ご期待に添えられたようで良かったです!」

 

夕張が嬉しそうな顔をする。シーブックも微笑みながら出来上がった設計図と材料を妖精さんに手渡す。

 

「やれるか?」

 

シーブックがそう尋ねると妖精さんはしばらく考えこむような仕草をすると、何か思いついたように工廠の一角にパタパタと走り込んだ。

そこには別の妖精さんの集団がいたが、ほかの妖精さんとは一風変わった雰囲気をしている者が多かった。

パインサラダをモシャモシャと食べている妖精さん。

何やら怪しい雰囲気を醸し出している5人ほどのおじいさんのような妖精さん。

メガネをかけ、嫁と思われる妖精さんといつも一緒にいる妖精さん。

帽子を被った子供のような妖精さん。この妖精さんに至ってはガロードにはなんとなく見覚えがあった。

 

設計図を持った妖精さんがその者たちに駆け寄るとすぐさま集まり会議のような話し合いを開始した。

 

「・・・なぁ、あんな妖精さん、いたか?」

「いや・・・。私は見たことないてすね。というか、あんなのがいたら絶対記憶に残ってます。」

 

ガロードと夕張が怪訝な表情を浮かべながら妖精さんの話し合いを見つめる。

程なくして話し合いが終わったのかその集団は工廠の奥へと消えてった。

奥から何やら鋳造したりする音が聞こえるため、なんとなく開発をしてくれていることは察せたが。

 

しばらくすると開発が終わったのか妖精さんが開発できたものを持ってきてくれた。

クロスボウのような形をした兵装に複数のビーム発射器が付いたものだ。

シーブックが操作するとビーム発射器が付いている部分がクジャクのように広がった。

 

「妖精さんの技術力には脱帽だな。」

「それは同感だな。私もこれ作ってもらったからな。」

 

ピーコック・スマッシャーの出来に感嘆の声を挙げるシーブックにガロードが自身も作ってもらったディバイダーを取り出しながら声をかける。

 

「そういえば、ガロードさんのディバイダーとシーブックさんが作ってもらった物って結構使い方似てます?」

「そうだな。結構参考にした節はある。」

「というか、こっちのが取り回しはマシだな。私のは機能が多くてだいぶデケェからな。」

「ええー。結構好きですよ、ガロードさんのディバイダー。機能が多いってことはそれだけできることがあるってことじゃないですかー。」

「肝心の私が使いこなせてなかったら意味ねーけどなー。」

 

お互いに笑い合っているとシーブックが外を指差しながら話しかける。

 

「なぁ、試し打ちできる場所はないのか?少し慣らしておきたいんだ。」

「おう。あるぞ。こっちだ。夕張も来るか?」

「えっ!?いいんですか!?」

「構わない。減るもんじゃないからな。」

 

ガロードに誘われ、シーブックにも許諾を得た夕張は嬉々とした顔で着いていった。

 

 




今回も楽しんで頂ければ幸いです^_^
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