自我を手に入れた少女達の翼   作:わんたんめん

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最近投稿スピードがクソすぎる・・・・!!


第52話 胎動するゼロ

「えーと、みんな何が好きでしたっけ・・・・。」

 

ヒイロは提督としての業務を休んで間宮さんの代わりに厨房に立っていた。

理由としては作戦に出ている艦娘やアムロたちの労いのため、高級なものをふんだんに使った料理を作るためだ。

手間がかかるものあるためゆっくりと作っていると、ふとあることに気づく。

 

「あれ・・・少し材料が足りない・・・・?」

 

自身が考えているレシピと材料を頭の中で見比べるといくつか足りない材料があることに気づいた。

 

(・・・・どうしよう。火元から離れるわけにはいかないですし・・・。)

 

どうしようかと悩んでいると、食堂にだれかが入ってくる音が聞こえた。

ヒイロが振り向くと、そこには刹那とフェネクスがいた。

 

「結構いい匂いがしますね。何を作っているんですか?」

「それは内緒で。ですが、ちょうどいいところに来ましたね。」

「ちょうどいい?一体どうしたんだ?」

 

刹那に疑問げな顔を上げるとヒイロは近くに置いてあった紙にサラサラっと文字を書いて刹那に手渡す。

刹那がその紙を見るとヒイロが足りないと感じていた材料が記されてあった。

 

「これは?」

「少し材料が足りなくてですね。二人でお使いを頼んでもいいですか?」

「お使いですか・・・。わかりました。行ってきますね。」

 

少し考える素ぶりを見せたがフェネクスが承諾すると、刹那も続くように頷いた。

 

「それじゃあ、お願いしますね。」

 

ヒイロに頼まれた二人は材料調達のために鎮守府から市街へと向かった。

それを見送ったヒイロは厨房に戻るととりあえずできるものから手につけ始めた。

 

 

「フンフフン♪」

 

鎮守府の波濤で鼻歌を歌いながら歩いているのは最近スウェンとシーブックと一緒にやってきた北方棲姫、愛称として『ホッポ』の名前が付けられている。

そして、それを微笑みながら見つめているのが同じく最近やってきた港湾棲姫。愛称は港湾の英訳である"ハーバー"だ。ちなみにアイオワ命名である。

余談だが、深海吹雪の愛称は『黒雪』だったりする。理由は吹雪が真っ黒になったようだから『黒雪』。すごく安直なのは目を瞑ってほしい。

最初こそ彼女たちには少々恐怖のような視線を向けられていたが、最近は自分からそばに近寄ってくる艦娘も増えてきた。

 

 

「そんなに走ったら危ない・・・・。」

 

波濤で走りながらはしゃいでいるホッポにハーバーは注意をするが、その表情には笑っていて彼女自身、止める気はないのだろう。

なぜなら今までこんな風に地上はを走り回るなどしたこともなかったからだ。

願わくばそれが続いてほしいと思っていたが、そう長くは続かなかった。

 

「っ!?」

 

突然ハーバーの目が鋭くなった。彼女は厳しい表情で空を見つめる。それと同時に聴こえてきたのは空を切るような機械的な音。おそらくブースター、それもモビルスーツのもの。

何か、空にワインレッドのようなものが見えた瞬間、彼女はホッポに向かって走り出した。

 

「ホッポ!!」

 

突然呼ばれたホッポはきょとんとした表情を浮かべるが、彼女はそのままホッポを抱きかかえながら地面を転がる。

その直後先ほどまでホッポがいた場所に緑色の光が叩き込まれる。

地面は簡単にひび割れ、土煙をあげながら粉砕される。

そして、その土煙が晴れてくるとハーバーを睨みつけるように緑色のデュアルアイがのぞかせる。

 

「っ・・・・!!ガンダム・・・!!」

 

ワインレッドの装甲に背部に蝙蝠のような機械的な羽を持ったそのモビルスーツの名は『ガンダムエピオン』。

エピオンは手に装着されてある『ビームソード』をハーバーに向けて構えるとブースターを蒸し、斬りかかる。

 

「っ!!」

 

ハーバーは咄嗟に避けようとするが、モビルスーツのスピードについていけるはずがなくホッポを抱えていたその巨大な爪を根元から斬り落とされてしまう。

 

「ああっ!?」

 

手が斬り落とされた痛みに思わず抱きかかえていたホッポを落としてしまう。

乱雑に落とされたホッポは地面に叩きつけられる。

軽いうめき声をあげながら、顔を上げると、エピオンがすでににホッポにその剣の切っ先を向けていた。

その恐怖にホッポは足がすくんで動けなくなってしまう。

 

「ホッポ・・・!!逃げて・・・・!!」

 

ハーバーが痛みから息を切らしながらホッポに呼びかけるが表情が完全に恐怖に呑まれていて、その声も届かない。

エピオンがホッポに斬りかかろうとした時ーー

 

「はぁぁぁぁっ!!!」

 

意気軒昂な声が波濤に響く。エピオンはその場から離れると今度は鉄拳が地面を抉る。

煌びやかに輝く黒髪をたなびかせるのは長門型一番艦、『長門』だ。

 

「無事かっ!?」

 

長門のその言葉にとりあえず頷くハーバー。それを見た長門は目の前のエピオンに視線を集中させる。

 

(っ・・・・!!よもや件のモビルスーツが鎮守府に攻め込んでくるとはな・・・!!しかし、相手は単騎・・・。さらに見たところ、あの巨大な剣の他に鞭のようなものが見えるがそれ以外のものは見当たらないが・・・。)

 

おそらく狙いはホッポとハーバーたち深海棲艦だろう。

彼女たちはアムロたちの宇宙世紀にいたモビルスーツに襲われていた。追撃部隊が出てもおかしくはなかったが、よもや鎮守府にまで来るとは想定外だった。

長門はファイティングポーズをとりながら、エピオンを警戒する。

 

「ここから先は通さん!!ハーバー、ホッポを連れて逃げれるかっ!?」

 

長門の言葉に頷くとハーバーは残ったもう片方の手でホッポを抱きかかえながらながらその場から離れようとする。

しかし、エピオンはそれを許すはずもなくブースターを蒸し、接近するが、その間に長門が立ちふさがる。

 

「先には行かせんと言ったはずだっ!!」

 

モビルスーツの加速に初見であれば面を食らっていたが、あいにくヒイロたちで見慣れていたため、反応はできる。拳を握りしめて、エピオンに殴りかかるが、複雑な機動を描いたエピオンはそれを難なく切り抜ける。

 

「くっ・・・!!早いっ!!」

 

易々と抜かせはしないと意気込み、エピオンに向かって手を伸ばすがそれも届かず、ホッポたちへの接近を許してしまう。

エピオンは左腕の『ヒートロッド』を赤熱させずに伸ばし、ハーバーの足を引っ掛ける。

バランスを崩したハーバーは思わず斬り落とされた手を地面にぶつけてしまい、その場に悲痛な絶叫を響かせる。

長門が駆け寄ろうとするが、エピオンはすでに上段にビームソードを構え、二人に振り下ろす寸前だった。

そして、ビームソードが振り下ろされる。

 

ガァンッ!!

 

エピオンとハーバーたち二人の間に再び割り込んだ影があった。金髪の髪を二つ、輪っかを作るように形作っている特徴的な艦娘の名前は『阿武隈』。

彼女はエピオンのビームソードに何かを押し当てるようにして、張り合っていた。

それは、ガロードの持っていたディフェンスプレートだった。

阿武隈の持つディフェンスプレートはビームソードとぶつかり合いあたりに紫電を撒き散らす。

 

「う・・・うう・・・っ!!コイツ・・・なんなのよ・・・!!」

 

しかし、阿武隈の力ではエピオンの出力に張り合うことが出来ずに徐々に力負けをして押し込まれていく。ディフェンスプレートもそれほど長くは持たないのか、ゆっくりとビームソードが食い込んでいく。

長門が援護に向かうがそれよりも早かったのがーー

 

「それ以上は・・・!!やらせません!!」

 

武装を展開したヒイロだった。ヒイロはそのままエピオンに向かって突撃するとエピオンにショルダータックルを食らわし、そのまま波濤から沖合の空へと戦場を移した。

 

「っ・・・。まさかエピオンが来るとは・・・。」

 

スペック的にヒイロ、というよりウイングガンダムはエピオンより下だ。だが、それで止まる彼女ではない。

なぜなら彼女の後ろには守るべき仲間がいるから。

 

「彼女たちをこれ以上傷つけさせません!!」

 

ヒイロがブースターを蒸すと、エピオンも同じようにブースターを蒸す。

そして、お互いのビームサーベルとビームソードがぶつかりあい紫電を撒き散らす。

ヒイロは全力でビームサーベルに力を込めるが、エピオンはそれ以上の力でヒイロを押してくる。

 

「っ!?ビームの出力では向こうに分がありますね・・・!!」

 

エピオンは力任せにビームソードを振り払うがヒイロはその前にその場を離れ、間合いを取って、距離をとる。

 

(接近戦では向こうに軍配があがる・・・!!なら常套手段だけど・・・。)

 

ヒイロはバスターライフルを構え、出力を抑えて単発モードでエピオンに向けて発射する。

しかし、エピオンもブースターの出力を上げ、射線から逃れることで直撃を避ける。

 

「くっ、標準が定まらない!!」

 

歯噛みするヒイロを尻目にエピオンは急接近をしてくる。

ヒイロも接近戦を避けるために後退するが、エピオンを振り切ることは叶わない。

ある程度距離を詰められるとエピオンはヒートロッドを伸ばしてくる。

鞭のようにしなって襲いかかるそれをバレルロールで避けるがそれを読んでいたのか、エピオンはヒイロの真上からビームソードを振り下ろす。

苦い顔をしながら咄嗟にビームサーベルを構えて防御するが、ヒイロは片腕というのもあり、完全に力負けをし、鎮守府の壁に打ち付けられてしまう。ヒイロとエピオンはそのまま鎮守府の中に転がり込む。

 

「う・・・!!ぐぅ・・・!!」

 

衝撃に耐えながらも目の前のビームソードを全力で抑えているが、エピオンにマウントポジションを取れてしまい、それが精一杯で反撃する余力もない。

少しだけ周囲に目を見やるが艦娘たちの姿は見えなかった。

そのことに安堵していたが、腹部に突然、何か硬いもので押しつぶされたような感覚が走る。

 

「カハッ・・・!?」

 

衝撃で肺から空気が吐き出されるがビームサーベルを持つ手の力だけは緩めずに自分に何があったのか確認すると、エピオンの左腕が自身の腹に叩き込まれていた。

 

(こっちは両腕でやってやっただというのに、向こうは片腕だけ・・・完全に力負けしてる・・・どうすれば・・・!!)

 

左腕がフリーになるほど力の差があることにきつい表情をしながら打開策を考える。バスターライフルは鎮守府に叩き込まれたときに落としてしまった。

 

「提督っ!!」

 

そこに舞い込んだ声に思わず思考を打ち切る。驚いた表情で声の聞こえてきた方角を見ると心配そうな目でこちらを見ている加賀の姿があった。

 

「来ちゃ・・・ダメぇ!!」

 

加賀に向けてそう叫びながら左腕のシールドでエピオンを殴る。

しかし、マウントポジションからは解放されたが、ビームソードを押し込まれ、僅かに胸部をかすめる。

切られた箇所から血が流れていた。

それは御構い無しと追撃としてブースターを蒸そうとしたが、なぜかブースターは作動してくれなかった。

 

(推進システムに異常・・・・!?鎮守府に激突した時にどこか壊れたの!?

でも、よりによってこのタイミングて・・・!!)

 

ヒイロの目の前には既にヒートロッドが目の前に迫っていた。

もはやこれまでかと思い、目を瞑る。そして、あたりに響き渡る肉を焼き切るような音。

しかし、ヒイロの身にはいつまでもその音に似合うような痛みは来なかった。

不思議に思って目を開くとそこには、自身の代わりにヒートロッドに貫かれた加賀の姿があった。

 

「か・・・が・・・・さん?」

 

衝撃の出来事に加賀の名前を呼ぶこともすらままならなくなる。

エピオンはヒートロッドを引き抜くと、加賀の体は重力に惹かれるように崩れ落ち、あたりに血の海を形成する。

その様子にヒイロは呆けた表情をするしかなかった。

 

「うそ・・・ですよね・・・。かがさん・・・?しっかりしてください、ねぇ・・・。」

 

自然と目から涙が零れ落ちる。それと同時に徐々に状況を理解していく、いや、してしまう。

 

(かがさんがやられたちをとめないとあいつをころさないとどうしてかがさんはいにかけているえぴおんにやられたから、ちがう、わたしが、じぶんが)

 

『弱いから』

 

「あ、ああ・・・ああああ。」

 

そこに駆けつける長門や陸奥と言った戦艦勢。彼女らは目の前の状況でまず臨戦態勢を取ったが、それよりも目を見開く光景が映り込む。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!!!!!」

 

響き渡る絶叫。思わず誰から飛んできたのか探してしまう。その音源はヒイロからだ。

ヒイロは目から涙を流しながら、これでもかというほど絶叫を響かせる。

そして、突然、電源が切れたかのように体をダランと脱力させる。

そのように少なからず恐怖を抱いてしまう。

そして、ヒイロが顔を上げるとその目に生気はなく真っ黒に濁りきっていた。

 

「ガンダムエピオン。お前を殺す。」

 

およそいつもの温厚なヒイロから飛び出るとは思えない冷え切った声に鳥肌を立たせ、冷や汗を流す。

 

(かがさんをきずつけたのはだれ、めのまえのもびるすーつ、もびるすーつはへいき、たたかうちから、ならぜんぶこわさなきゃ、これいじょうふやさないためにだからたたかうものはてき。)

 

「戦うものすべてがわたしの敵だぁっ!!!」

 

ヒイロはその濁りきった目をエピオンに向けると壊れていたはずのブースターを無理やり蒸してエピオンに突撃する。なぜかそのスピードは先ほどの比でなくあっという間にエピオンを再び沖合の空へと連れて行った。

 

「て、提督・・・。どうしちゃったのよ・・・。」

 

冷や汗をかきながら伊勢がそう尋ねる。皆、口を閉口して、その問いにだれも答えようとしない。

 

「今は、加賀の救助を最優先だ。」

「な、長門、本気なのっ!?あんな様子の提督、放っておくっていうのっ!?」

 

無情とも取れる長門の発言に陸奥が辛そうな表情を上げる。

 

「そんなことは分かっているっ!!だが、だが、あれは・・・我々では絶対に勝てない・・・・っ!!」

 

長門は悔しさに表情を歪めながら、手を握りしめる。

その様子に陸奥たちは口を閉じてしまう。

 

「だから、今は・・・加賀の治療を最優先だ・・・!!」

 

かろうじてでた長門の言葉に陸奥は頷き、ひとまず大量出血の加賀を移送させることにした。

 

 

 

 

 

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ーーーーーーーZERO SYSTEM ーーーーーー




「っ!?フェネクス!!」
「分かっています!!急ぎましょう!!」

買い物をしていた刹那たちは買い物を放り出して鎮守府へと駆ける。
空を飛んで向かいたいがあいにく人目につく以上、走るほかはない。
だが、二人の中では確実に分かっていたことがあった。
このままでは取り返しのつかないことになると。

(何があったんだ・・・。ヒイロ・・・。)
(お願い、無事でいてください・・・!!)
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