自我を手に入れた少女達の翼   作:わんたんめん

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だいぶ時間が空いてますが、ほんとに申し訳ないですm(._.)m



第53話 霧の艦隊、その正体、未だ不明ーー

「・・・・・なんだ?」

 

霧の艦隊との戦闘中でありながらもガロードは不意に視線を逸らした。その先は水平線の向こうにある自分たちの帰る場所である佐世保鎮守府であった。

ガロードはしばらく佐世保鎮守府に視線を注いでいたが、言いようのない焦燥感に駆られてしまう。

 

「なんなんだよ、この感覚・・・。アイツら、大丈夫だよな・・・?うおっ!?」

 

ガロードが咄嗟に身を翻して長良型のような艦船からのビームを避ける。

驚いた表情を浮かべながらも意識を目の前の敵に集中させる。

 

(・・・・ちゃんと集中しろ・・!!今は、やるしかねぇんだよな・・!!)

 

頭を振り回し、思考に入り込んでくる不安を振り払うと白く雪のように煌めく髪をたなびかせながら長良型へとブースターを蒸し、接近を始める。

 

接近してくるガロードに長良型の艦船は対空の弾幕を形成するが、一隻の機銃の弾幕に当たるほどガロードはやわではない上、そもそもとして機銃程度ではガロードの堅牢な装甲を破ることはできない。

 

「ディバイダー、コイツでどうだぁっ!!」

 

ある程度まで接近するとガロードは左腕に装着したディバイダーを前面に構えて、観音開きをした部分からビームを発射する。

 

「一点集中で・・・!!」

 

ビームを拡散させずに滞留させながら放った攻撃は艦船の展開する防御フィールドに弾かれてしまう。

しかし、ディバイダーの威力は絶大で展開されたフィールドにヒビを入れさせるほどの威力はあった。

 

「金剛!!そっちから狙えるかっ!?」

『OKー!!こっちでもConfirmation(確認)したワ!!全砲門、fire!!』

 

艦隊の旗艦である金剛に通信を送るとそのような返答が返ってくる。ガロードはそれを聞き届けると右手に持っていたバスターライフルを腰に提げるとリアスカートからハイパービームソードを引き抜く。

 

程なくしないうちにガロードの視界に爆発と思えるオレンジ色の光が入り込んだ。おそらく金剛が発砲したのだろう。

ガロードは広角を吊り上げるとビームソードを大きく上段に構える。

 

ドガァァァンッッッ!!!

 

霧の艦船と思われる船が展開いるフィールドに爆炎が生まれる。金剛が放った砲弾が着弾、爆発した。

その直後、ガラスの割れたような音を辺りに撒き散らしながらフィールドが破片となって消えていくのをガロードはその目でたしかに確認した。

このまま艦橋めがけて構えたビームソードを振り下ろすことで破壊しても良かったがーーー

 

「こちらアリス。これより援護します。」

 

金剛が砲撃した場所とはまた違った方角から今度は青白く、極めて細いビームが飛んでくる。長良型の真正面に滞空しているアリスのビームスマートガンによる狙撃なのだろう。ビームというよりレーザーといっても差し支えないほどまで細く搾られたビームは金剛が破砕したバリアの隙間に寸分狂いなく入り込み、艦橋を撃ち貫く。普通であれば目標を貫いたビームは水平線の彼方へ消えていくが、アリスの放ったビームスマートガンは目標を貫いた後でも、未だその青白い光線を出し続けていた。

 

「このまま艦橋を溶断します。合わせてっ!!」

「おう!!任せなぁっ!!」

 

アリスがビームスマートガンを横に動かすとビームもそれに続くように艦橋をレーザーカッターのように徐々に焼き切っていく。

ガロードはアリスが開けた穴から侵入すると、上段に構えたビームソードを縦に振り下ろす。

 

艦橋をエックス状に切り裂かれた長良型は航行不能となったのかその足自体は止めたが各武装はまだ生きているのか、その砲口から実弾やビームなどを撒き散らしていた。

 

「各艦、ストップした艦船の懐に潜り込むわよ!!Follow me!!」

 

金剛の指示で艦橋が破壊され、艦娘達が物言わぬ鉄となった長良型に密接する。

一応、盾として活用しようと考える金剛であったが、直後に盾にしている長良型が爆発を起こした。

 

「ホワッツ!?自爆でもしたの!?」

「金剛!!そこにいるのならすぐに離れろ!!考えは悪くないが、敵も容赦というのが一切ないらしい!!」

 

動揺の色を見せる金剛にアムロからの通信が入る。それは随伴艦である榛名達にも聞こえていたようでアムロの通信に耳を傾けていた。

 

「一体何が起こっているんだよ!!」

「航行不能に陥った艦船を別の二隻の艦船が砲撃を仕掛けている!!君たちでいう雷撃処分のようなものを、奴らはしているんだ!!」

 

摩耶の声に返したアムロの言葉に金剛達は顔を顰めた。雷撃処分、世界大戦中、航行不能に陥った艦船を敵への技術漏洩を防ぐために行うものであるが、それは乗員を退避などさせた上で、処分していくものだ。しかし、今目の前にいる敵はそれを間髪なく行ってきた。

 

有無を言わさないようなその行いに全員が表情を歪めるのは仕方のないことであった。

 

「早く退避してくれ!そこにいると確実に巻き込まれるぞっ!!」

『・・・了解!!』

「・・・・・奴らがその判断を下すのが早いのもうなずけるな。」

 

アムロの指示に従い、盾にしていた長良型から離れている途中、通信機から別の人物の声が入ってくる。その声の主は最近鎮守府に入ってきたスウェンであった。

 

「スウェンさん・・・?それは一体どういうことですか?」

 

艶やかな黒髪を揺らしながら疑問気な表情を浮かべた高雄がスウェンに質問をした。その表情にはどこか不安気なものも含まれていた。

 

「・・・奴らに乗組員は一人も存在しない。先ほどブリッジの中を見たが、人影のようなものをかけらとして見かけることはなかった。おそらくこの間接敵したモビルスーツ群と同じ自律機能で動いている可能性が高い。」

「・・・・要はプログラミングされている敵、ということかな?」

「推測の上での判断だ。あまり当てにはしないでくれ。」

 

スウェンとキラのやりとりが通信機の間で交わされる中、金剛達は残り二隻の長良型を見据える。

その残った二隻の長良型はアムロ達の攻撃を防御フィールドで防ぎながら機銃は砲塔から弾幕として実弾、ビーム問わず吐き出し続けていた。

 

「やはり、あの長良型のような敵の張るバリアはかなりの強度があるようですね・・・。アムロさん達もどうにか破壊できてはいますけど、そこまで漕ぎ着けるのが、中々・・・!!」

「・・・一応、ワタシ達の攻撃がパーフェクトにシャットアウトされるワケじゃないのがラッキーだけど・・・!!」

 

榛名が苦い表情を浮かべながら姉である金剛の顔を見ながら言葉を零す。

金剛も榛名と似たような顔をしながら長良型の姿を見つめる。

決して自分たちの攻撃が通用しない訳ではない。それは金剛を含めた全員は分かっていた。

だが、そこまでたどり着くのが果てしなく遠くまで続く道にどうしても思えてしまうのだ。

 

「やっぱり、このままじゃアタシ達、どーみたって提督達のお荷物になっちゃうよねー。」

 

不意につぶやかれた北上の言葉に皆重苦しい表情をしてしまう。あっけらかんのように聞こえた北上の声だが、それは同時にみなの心中を的確に表しているのが分かっていたからだ。

 

「・・・・もしかしたら私達は決断を迫られているのかもしれません。」

 

鳥海の遣る瀬無い表情を浮かべながらもその声にはある種の決意のようなものが混じっていた。

 

「大井さんが、アムロさんにおっしゃていたようにこれからは敵もアムロさん達と同じようなモビルスーツを使ってこないとは限らない、いえ、もう敢えてこう言いましょう。確実に使ってきます。その時に私達がモビルスーツの相手をできないようではずっと、アムロさんや提督達に余計な手を煩わせてしまいます。」

 

「私達は、変わらなければならない。ただ艦娘としてではなく。軍人としてではなく。人間として、無限に続く、明日という未来を、みんなが笑顔で暮らせる平和な明日を掴み取るために。」

 

その決意が宿った目を見た艦娘達はみな揃って呆気にとられたような表情を浮かべる。

その視線に気づいたのか、鳥海はらしくないことをしたとでも言うように頰を真っ赤に染めながら恥ずかしそうに俯いた。

 

「・・・・そうね、それはチョーカイの言う通りね。」

「アイオワさん・・・?」

 

鳥海の言葉に同意の言葉を最初に挙げたのはアイオワであった。その表情はどこか朗らかなものに変わっており、その星のような瞳孔がある灰色の目は納得といった形をしていた。

 

「ミーの主砲、横須賀のヤマトにも負けないくらいのストロングな代物よ。それこそ、戦後もそれなりに戦闘に駆り出された。」

 

自身の艤装である16inch三連装砲を優しげな手つきで触りながら表情を緩めるアイオワ。

しかし、その目はどこか悲しげなものになっていた。

 

「でも、時代の流れっていうのはすごくterribleなものよ。私の主砲の射程よりとてつもない距離から撃って、ミーの頭上を何食わぬ顔で飛んでいくものを見るのは、今こうして艦娘の身となってみれば、凄くvain(虚しい)なものよ。」

 

「いくら近代化してもらったところで中身は所詮時代遅れの産物。出来ることは、極めて限られていた。」

 

アイオワの言葉に思うものがあるのか、揃って表情を沈ませる一同。

 

「でも、それはあくまで艦船である話よ。今はこうして作られたとはいえ、人間としてしっかりとした命がある。生きているのなら、どんなことだってできるはずよ。日本だって、物力で圧倒的に差のあるアメリカに戦争仕掛けてきたし。」

「いや、いまの話とその話は違うような・・・・。」

 

アイオワの言葉に霧島が苦い表情を浮かべながらメガネを軽くあげる仕草をする。

 

「・・・ですが、人間、何をするのかは確かに未知数です。一見無謀なことのようにも見えて、紆余曲折を経て結局は成し遂げてしまう可能性があるのも事実です。おそらく、私達、艦娘が変わることも不可能ではないでしょう。」

「私も実は前にいた鎮守府でアリスさん達に救出されてからも、助けられてばかりでした。いつまでも助けてばかりではいられません。」

 

霧島の言葉に比叡が意を決した表情で頷きながらサムズアップのポーズをとった。

金剛は旗艦として、艦隊全員の顔を見る。その視界に入った表情に微妙な顔を浮かべるものはなく、皆決意に満ち溢れていた。

 

金剛が頷きながら言葉を述べようとした瞬間、水平線の向こうから極太のビームが走った。そのビームは海上スレスレを駆け抜け、その斜線上にいた長良型二隻をフィールド毎その船体を呑み込んだ。

突然の状況に息を呑む金剛達。

 

もしかしたらアムロ達が巻き込まれたかもしれない、そう思ってしまうほどもビームであったがーーー

 

「金剛さん、あれ!!」

 

愛宕が指差す方向に視線を向けると五体満足で滞空しているアムロ達の姿があった。

ひとまず無事だったことに金剛達は胸を撫で下ろした。

 

「・・・・まずは、この戦いを生き延びていかないとね。」

「ええ、そうね。さっきのビームを放った敵をどうにかしないと。」

 

表情は僅かに笑顔だが、額から冷や汗を流す金剛にアイオワが声をかけながらもビームを放った相手に警戒心を露わにする。

アムロ達はともかく、金剛達にも分かっていた。先ほどのビームは純粋な敵意を持った敵であるとーーー

 

しばらく様子を伺うアムロ達、なにせ残った長良型と思しき艦艇に攻撃を仕掛けようとしたら、別方向からの大出力のビームが飛来、残った二隻の艦艇をまるごと呑み込んだのだ。

 

「・・・・・援軍、なわけないよな。」

「そう願いたいものだが・・・・な。」

 

ハイネが薄笑みを浮かべるも即座にアムロの微妙な言葉の前にうなだれる様子を露わにする。

先ほどまで海域を覆っていたはずの濃い霧がなぜか晴れているのだ。そして晴れてくる海上に浮かび上がるのは怪しく輝く薄い紅。

さながら舞台が整えられているような様子に一同は警戒心を最大限にまで引き上げる。

 

『流石はガンダムの名前を冠するだけはあるじゃない。まぁあのくらいでへこたれているくらいだと倒し甲斐がないのだけどね。』

 

スピーカーに拡大されたような声がアムロ達はもちろんのこと、海上にいる金剛達の耳にも届く。

 

「ちっ・・・・一体何者だ!!」

 

アムロが声を荒げながら徐々に接近してくる怪しい光に銃口を向ける。アムロはもちろんのこと、その場にいる全員がわかっていた。

先ほどの大出力ビームはコイツが放ったものだとーー

 

『一体何者・・・ねぇ・・・・。答えはもう出ているようなものよ。貴方達の足元で蠢いている奴らに聞いてみたら?』

 

明らかにこちらを嘲るような言い方に思わず眉をひそめてしまう。

足元、というのはおそらく金剛達のことを指している。その彼女ら蠢いているなどという、さながら虫でも見ているかのような言い草であった。

 

「・・・・・金剛、そっちに何か、本能的に察していそうな人はいないか?」

 

 

 

 

「ほ、本能的に察していそうな人・・・・?」

 

アムロからの通信に金剛は疑問気な様子を見ながら艦隊のみんなを見回す。その謎の人物の言葉に全員理解していないような顔をしていたがーーー

 

「・・・・高雄?それに愛宕も?」

 

ふと視界に止まったのは、高雄と愛宕の二人だった。さながら先ほどの言葉に心当たりがあるようなーーー

 

「もしかして・・・・?」

「・・・・私だって、頭の中では否定したいわ。だけどーーー」

「私の愛宕としての記憶が囁いている。あれは、重巡、高雄よ。」

 

高雄と愛宕の言葉に目を見開く金剛。とっさに通信機でアムロ達に伝える。

あれは高雄型だとーーー

 

 

「・・・・・君は、重巡高雄か?」

『ええ、そうよ。もっとも艦娘なんていう小さい枠組みになんて入らないけどね。』

「重巡ってことは、戦艦とか空母もいんのか?」

 

ハイネの言葉にキラ達を息を呑んだ。彼女が重巡を名乗るのであれば、空母や戦艦がいるのも道理なのは確かだ。

先ほどの長良型と思われる艦艇だけど、中々手がかかるというのに、その上戦艦や空母と来れば、ジリ貧は必須だ。

 

 

『それはどうだか、真実は貴方達自身の目で見てみたらどうかしら?もっともーーー』

 

 

『貴方達はここで死んでもらうけどね!!!』

 

 

直後、アムロ達にビームが飛来する。伊達に宇宙空間で高速機動をやっていないため、突然の攻撃にも瞬時に対応し、次の攻撃に備える。

 

「・・・・・どうする?あれはおそらく先ほどの長良型と一緒にしない方がいいのは目に見えている。」

「・・・・その分、バリア強度も硬いと考えるべきか。厄介だ。」

 

アムロはたまたま近くにいたスウェンに目配せをしながらビームライフルを構える。

スウェンもショーティーを構えるが、とてもではないが効果があるとは思えなかった。

 

「さらに先ほどの大出力のビーム・・・。下手をすれば一撃でこちらに死人が出るぞ!!」

「だったら撃たせないって言うのが一番手っ取り早いんだけど・・・・。」

「そう簡単には行かなぇよなぁ・・・・。」

 

シーブックの険しい表情と共にその大出力ビームに対して警戒を露わにする。

キラとハイネも対策を考えるも、そもそもとして霧の艦隊の内部構造がよくわからない以上、そのビームの出所も不明だ。

 

「・・・・あれだけの大出力だ。多分、そんなに連射は効かないはずだと思う。」

「じゃあ、今のところは安全・・・?」

「んな、平和なこと言ってられるかよ!!どのみちあの高雄型をどうにかしないと、金剛達が危ねぇ!!あれじゃあ避けられない!!」

「そうですよね。少し、希望を持ちすぎました。ごめんなさい。」

 

ガロード自身、高出力のツインサテライトキャノンを有しているが故に出てくる言葉にアリスが期待のこもった視線を送る。

もっともハイネに即座に却下され、若干項垂れる様子を晒すことになったが。

 

 

「どのみちここで戦わなければ返って危険になるだけだ。各員、気を引き締めてくれ。」

 

アムロの締めの言葉に全員が険しい表情で頷く。それをみたアムロは通信機で海上の金剛達に通信を送る。

 

「金剛、わかっているとは思うが、この敵はかなり危険だ。私達でもどこまでカバーができるか想像がつかない。」

「・・・・こっちはこっちでなんとかするワ。だから、アムロ達は前衛をお願い、サポートくらいはできると思うから。」

「・・・・・無理はするなよ。」

「それはワタシのセリフね。アムロ達こそ、無理はしないで。」

「重々心に留めておく。」

 

 

金剛との通信を切ったアムロは視線を重巡高雄に向ける。先ほどまで怪しい光に包まれて、全貌が明らかでなかったその姿が徐々に光のもとに晒される。

船体は先ほどの長良型とはうってかわって重巡らしく巨体を誇っていた。

何より目を引くのは、船体を挟むように空中に浮いている巨大なユニットだ。

 

「・・・・なんだよ、あれ。」

 

ハイネの質問はもっともだが、その質問に答えられる人物はいなかった。

謎の上に謎で覆われたような霧の艦隊との戦闘。

アムロ達はさらなる混沌の戦場へと足を踏み入れる。そのことを何となく察しているのか、全員の表情は険しいそのものであった。

 

 




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