やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

125 / 731
妹は楽しげに、姉は嫉妬する2

side比企谷八幡

 

南船橋駅から少し歩くと、左手にイケアがある。おしゃれ家具屋さんでここも人気スポットの1つだ。昔は巨大迷路があったり、室内スキー場があったりしたが、今はもうない。

時間の流れを感じる。この人生も知らない内に大人になりつつあるようだ。

(懐かしいよな。手ぶらでスキーのキャッチコピー。今となっては手ぶらっていうと手ブラしか思い付かない。時間の流れを感じる。この人生も気付かぬ間に大人になりつつあるのだ…」

 

いろは「単純にスケベになっただけじゃあないですか。紳士はどこにいったんですか。ハチ君、それ単なるセクハラですから、全然ダメですから、その思ってること口にするクセ何とかしないといつか訴えられますよ」

 

いろはより辛辣な言葉をもらってしまった。視線もブリザードが吹き荒れてると錯覚するくらい冷たい。

ジョナサンとディオからも呆れられてしまっている。

俺はだらだら汗を垂らしながら黙ってみんなの後をついていった。

歩道橋を渡り終えると、そこからショッピングモールの入り口に繋がっている。

構内の看板を見ながら雪ノ下が考えるように腕を組んだ。

 

雪乃「驚いた。かなり広いのね」

 

小町「はい、なんかですね、幾つものゾーンに分かれてるんで目的を絞った方がいいですよ?」

 

詳しい大きさまでは分からないが、近隣でも最大級のショッピングモールだけにぶらぶらと歩いているとそれだけで一日が終わってしまう。ここで遊ぶ際はコースをきっちり考えておかなければならない。

 

八幡「いつもはいろはや小町とブラブラするだけだが、今日は効率重視で回るべきだな。じゃあ、俺といろははこっちを回ろう」

 

俺は案内板の右側を指さす。いろはは「はぁ?」という顔を俺に向ける。何故?

 

雪乃「では私が反対側を受け持つわ。ジョースターさんもお願いできる?」

 

静「OKよ、雪ノ下さん。これで手間は半分ね。あとはマーチの配置を決めて更に効率を求めれば完璧だね」

 

八幡「ならば小町はこの奥の方の」

 

俺とジョジョが指をさすと…

 

いろは「三人とも♪」

 

小町「ストップです♪」

 

ボキッ×2

 

案内板を指差した俺の人差し指をナイチンゲール・エメラルドが、ジョジョの人差し指をサンシャイン・ルビーがボッキリ折った。比喩ではない。マジで骨折させやがった!ツッコミに骨を折るなぁ!スタンド使うなぁ!

 

八幡&静「ウギャアアアアア!指が……指がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ゴロゴロのたうちまくる。

いろはが即エメラルド・ヒーリングで治してくれたが、それならば骨折させないでくれない?

涙目で睨む俺とジョジョ(と、ドン引きの雪ノ下)を見て、小町は大きなため息を吐いて、徐倫がたまにやる日本のフィンガークソッタレをやり、「こいつらわかってねぇなぁ」みたいなアクションをした。おい、いろはの方のイタリアナポリ式もわかるんですけど?何で身内からこんな扱いを受けなあかんのや。

 

小町「お兄ちゃん達?ナチュラルに単独行動を取るのはやめましょう。更にお兄ちゃんはお姉ちゃんと二人きりになってデートをしようとしているのが丸分かりですので却下です」

 

何故バレた。いろはもさすがにそれはないとジト目だ。

 

いろは「ハチ君の企みはともかくとしてですね。大体は三浦先輩から結衣先輩の好みは聞いてきているので、絞り込みは終わってるんですよー。なーのーで、みんなで回りましょうー♪その方が被りとか避けられますし」

 

小町「小町とお姉ちゃんの見立てだと結衣さんの趣味的にここを押さえておけば問題ないと思います」

 

そう言って小町は案内板の下の方にあるパンフレットを取り出して開いた。そこには「アーバンショップ・エリナ」だの「イタリアンレストラン・リサリサ」だのと言った、妙に馴染みのある名前が並んでいる。

……………っておい!

 

八幡「このエリナだのリサリサだので決めたわけじゃあ無いよな?」

 

小町「ぐ、偶然だよ?」

 

いろは「やー。すごい偶然ですねー?でもでも、実際結衣先輩の趣味的にはホントにこの区画なんですよー!信じて下さいハチくーん!」

 

いや、信じたいよ?信じたいけどさ。

少なくともリサリサはないわー。俺が同じファミレスでジョナサンを選ぶようなもんだわー。

とは言え、一応は真剣に考えてくれたであろう二人の努力を無駄にしてはいけないな。

 

八幡「じゃあ、そこに行くか」

 

俺がそう言うと、雪ノ下は異存がないのかコクッと頷き、ジョジョはホントに大丈夫か?と胡散臭そうな顔をしていた。気持ちはわかる!

が、とりあえずノープランの俺らよりはマトモに考えてくれていると信じて出発。

その女の子っぽいゾーンはここから二つ三つ先に行った区画にある。それまでは男性向けだったりどっち向けるのか一目では分からないものだったり雑貨だったりと、よくもまぁこれだけ多くの種類があるものだと感心するほどにたくさんのブランドというショップが立ち並んでいる。

行きがかり上、俺を先頭に進んでいるが、普段はこうした大型ショッピングモールはいろは達につれ回されている所を付いていっているだけなのでどうにも道に自信がない。

それは雪ノ下も同様なのか物珍しそうに上下左右にキョロキョロと忙しなく首を動かしていた。ただ、その表情は穏やかな微笑みを湛えている。最近ではわりかしよく見る表情だ。陽乃さんと関係を取り戻してからは本当に穏やかになった。

時には足を止めてじっと商品を眺めていたり。

が、店員が近寄ってきた瞬間にその気配を察して、すっと立ち去る。うん。川…川…ツェペリさんの気配察知の修行の成果はきちんと出ているな。

雪ノ下の気持ちもわかる。服を選んでいる時に話しかけるのはほんとやめてほしい。服屋の店員さんはボッチが放つ「話しかけんなオーラ」を感じとれ。

あ、殺気を出せば良いのか。と思って以前やったらいろはに怒られたし。

分岐点にきて見ると、また雪ノ下が足を止めて真剣な目で変なぬいぐるみを見ていた。

あれは東京ディスティニーランドの人気キャラクター、パンダのパンさんだ。「パンさんのバンプーハント」は長時間待ちは当たり前というほどの人気アトラクションである。

誰もが知る人気スポット、東京ディスティニーランド。千葉の誇りであると同時に、千葉にあるのに東京を名乗らねばならないという屈辱を味合わせてくるなかなかにファンキーな存在だ。こいつは舞浜にあるのだが、この舞浜の由来になったのがなんでもマイアミビーチに似ているからなのだとか。

………フロリダはジョースター家にとっては黒歴史なのだが、何故そんな名前の由来に…。

 

小町「雪乃さん、先急ぎましょう。時間はないですし」

 

雪乃「え、ええ…そうね。こ、小町ちゃん!?」

 

小町「これは小町から雪乃さんへ。猫の時と一緒なんですもん♪すぐわかっちゃいますよ!」

 

見ると小町はこの店の包みを手にしている。粋だな小町。

 

ちなみに、他の人間は気がつかない振りしてやるのがマナーだ。せっかくの小町の気遣いを無駄にしてはいけない。

 

雪乃「あ、ありがとう…小町さん。ふふふ。小町さんには解ってしまうのね?」

 

雪ノ下…。全員わかると思うぞ?

気付かない振りをしてやっているだけで。雪ノ下はその包みをバッグにそそくさと入れる。

案外かわいい物好き…と。無事にブラッディ・スタンドの件が終わり、雪ノ下の誕生日を祝うときがあったのならば、その線のものを贈るのも良いのかもしれない。

俺は心の片隅にその事を記録しつつ、みんなと共に進んだ。

しばらく進むと周囲の景色ががらりと変わった。パステルとビビッドが入り混じった色彩の空間にはフローラルやシャボンの香りが漂い、いかにも女の子な場所に来ていた。

服屋にアクセサリーショップ、靴下専門店にキッチン雑貨、そしてもちろんランジェリーショップ。この集団の中では唯一の男である俺にとってはメッチャ居心地の悪い空間が広がっている。

いろは達もこのエリアに来るときだけは俺以外で来ているからなぁ。

ていうか、ジョジョも来ているよな?

 

静「この手の今時な女らしい格好が似合うと思う?」

 

八幡「案外似合うと思うんだがな?たまには普段と違う方向で仗助に迫ってみたらどうだ?お前、カワイイと美人の中間にいるバランスの取れた顔つきだし」

 

静「そうかな?っていうか、イーハにも中々言わないよね?その手の褒め言葉」

 

八幡「まあな。言ったら言ったでコアラモードが止まらなくなるのがアイツだ。それに、俺に言われてどうこうなる関係じゃあ無いだろ?互いに兄妹みたいなもんだし。誕生日はそっちの方が早いけど」

 

静「まあね。兄妹みたいな関係としては兄さん以上に兄弟感覚だわ。それは私が拾われた日がその辺りだからね。本来の年齢って、もう少し上みたいな事を聞いたことがあるよ。城廻先輩と同い年だったのかな?」

 

まぁ、本当は今の誕生日より、半年早く生まれていたらしいが、ジョセフがジョジョを拾った日を記念日としてその日に誕生日を登録したらしい。

まぁ、俺からしてみたらクラスメイトにジョジョがいるのは嬉しいからジジイに感謝なんだがな。

 

八幡「で、何を買うつもりなんだ?ジョジョ」

 

静「私は身に付ける系を買ってあげようかと思う。事務用品とかは由比ヶ浜さんは喜ばないと思うし。格闘用のパステルカラーのリストバンドとか?」

 

八幡「…………あるのか?それ」

 

静「案外あるからビックリなんだよね。もっとも、リストバンドが喜ばれるかといったら微妙なんだけど」

 

だろうね?嫌でも修行を思い出させられるから、喜ばないと思うな。

 

静「う~ん……スマホのカワイイカバー?」

 

八幡「あいつはガラケーだし、あれだけデコデコなのに必要そうに見えるか?」

 

首都高バトルデコだしね。

 

静「いっそ、日曜大工セットとか工具セットを送ろうかしら?」

 

八幡「やめとけ…誰が考えてもドライバーやレンチやバールをもらって喜ぶ女子高生はいない。工業系女子が今後流行ったら話は別だが」

 

静「流行ったような気もしたけど、確かに由比ヶ浜さんのしゅみじゃあないわね」

 

だが、由比ヶ浜の趣味に合わせるとしたら何だろうな。

いろはと似てそうで似てないからなぁ。

まぁ、俺も小町やいろはを通じて三浦からの由比ヶ浜の趣味は聞いている。後はそれに俺らしさを加えれば良い。

雪ノ下は服屋に入って真剣にプレゼントを吟味している。俺もそれに倣って店に入りたいところだが、この女の子エリアに俺一人でいられる勇気は俺にはない。

そうか、ここに一人で入れる勇気を持てれば、小町のような強力な波紋か、ツェペリさんのような器用な波紋を修得することが出来るのか…と、錯乱しかけたところでいろはと小町が肩を叩いてくる。

 

いろは「ハチ君…わたし達と一緒にいよう。でないと、通報されかねないよ?」

 

小町「多分、その勇気じゃあ波紋は強くならないから無駄だと思うな。小町的にもポイント低いし」

 

ですよねー?

 

店員1「あ、彼女さんの付き添いだったんだ」

 

店員2「あの腐り目の人が?しかも二股?公認の?」

 

………目から汗なんか出ていないよ?でも、サングラスかけとこ。

 

いろは「ハチ君の目がまた魅力だと思うのはわたしだけでしょうか?」

 

八幡「……俺、あっちのベンチで待ってるわ」

 

いろは「何でですか?せっかくわたしが一緒にいるんですから、恋人同士で回りましょうよー」

 

小町「小町も一緒に回るから。ね?お兄ちゃん」

 

店員1「あ、片方が恋人でもう片方は妹だったんだ。納得したわ」

 

もうね、何もしていないのに犯罪者や不審者扱いをしてくるなんてふざけてるの?としか言いようがないよね?

マジで泣きそう。

 

いろは「………わたしの大切な人を傷つけて…もう二度とこの店には来ないから…」

 

小町「……お兄ちゃんの気晴らしになれば良いと思って無理矢理にでも連れてきたのに、これじゃあ逆効果じゃんか…」

 

二人は左右から俺の腕を組んで店の外へと連れ出してくれた。あ、小町達にはそういう意図があったんだね。心遣いに有り難みを感じる。

 

八幡「二人ともありがとな」

 

俺は腕から伝わる二人の温もりを感じながら、感謝の言葉を伝えるのだった。

 

ララポの上空で隼が旋空しているのを見上げながら、少しだけ目から汗が出た気がした。

 

←To be continued




今回はここまでです。
次回こそ原作における陽乃登場回までいければ良いなぁとおもいます。
本作では既に登場してますけどね。

それでは恒例のあれに。

手ブラネタは心の中だけ➡声に出していた

単独行動指示に対して小町は八幡の指を捻る➡いろはが八幡の指を、小町が静の指を本当に折る。そして治す。

小町が示したエリアにある店は「ジャッシーン」と「リサリサ」(←これマジで原作ネタ)➡「リサリサ」と「エリナ」(←検索したらホントにララポにあった)

途中小町は八幡と雪乃を二人きりにするためにわざと離脱する➡既に彼女持ちの八幡にそれはやらないでしょ。ボツ

八幡と雪乃が恋人の振りをする➡リアル恋人が一緒にいるのでボツ

上空でペットショップは待機してます。

それでは次回もよろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。