やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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妹は楽しげに、姉は嫉妬する3

side比企谷八幡

 

次に入った服屋からは以外なくらいスムーズに物事が運んだ。

普段通りだしね。いろはと小町がキャイキャイはしゃぎ、俺とジョジョが苦笑いしながら付いていくスタイルだ。今日はそこに雪ノ下が加わったにすぎない。

普段と違うのは雪ノ下がいるので周囲から見たらハーレム率が高まり、野郎共の怨嗟の声と視線が強すぎることだ。呪詛ではない。もはや怨嗟だ。

四人とも美女、美少女率が高い➡カップル連れでも男の呪詛の声が響く➡カップルのケンカが始まる➡怨嗟の声に昇華される。

イヤなスパイラルだよな!全く!

 

当の女性陣達はというと…。

雪ノ下は周囲を他人と言い切るだけあって、店員が話しかけてきても「結構です」の一言で追い返し、真剣な眼差しで物をえらんでいた。

店員よ。いろは達に助けを求めても無駄無駄無駄無駄。言い回しはそれぞれ違うものの、要約すれば「用があったら呼ぶから」の一言で追い返されるのが落ちだ。

雪ノ下は時折ピンときたものを手にとっては横にぐいぐいと引っ張り、縦に伸ばしたりする。伸びたら弁償させられるから止めときな?君の家は余裕ないでしょ?それに耐久性なの?君の審査基準。

 

八幡「なぁ、頑丈さで選んでいたら一生決まらないと思うぞ?由比ヶ浜、多分服に防御力を求めていないと思うし、むしろそれはアーシスの戦闘服に詰め込まれているから、デザインとかで選べよ」

 

布の服で良いだろ。アーシスならプロテクタースーツが一応あるわけだし。相手がスタンド使いだとあまり意味がないけど。

 

雪乃「一応、三浦さんからは大体の趣味は聞いていたのだけれど、私自身のセンスに自信がないのよ」

 

初めて出来た友達。その友達のプレゼントを選ぶことが楽しい反面、喜んで貰えなかったらどうしようと思う気持ちもあって不安なのだろう。

まぁ、そう言うのを乗り越えてこその本物だと思うし、雪ノ下と由比ヶ浜の二人の間にあるものが本物であると思いたい。

 

静「別に自信が無くても良いんじゃあないかな?雪ノ下さんが一生懸命由に比ヶ浜さんが喜ぶ事を考えて選んだ物であるならば、そこに大きく外れがないと思うよ?」

 

ジョジョが助言をする。

 

雪乃「そうかしら?」

 

いろは「そうですね。これが相手に似合いそう、喜んでくれそうとかを真剣に考えれば、自ずと相手が喜ぶプレゼントにたどり着く物なんです。例え外れであったとしても、雪乃先輩の気持ちはきっと届くものだと思いますよ?」

 

雪乃「そうであってくれれば良いのだけれど」

 

小町「大丈夫だと思いますよ?雪乃さんと結衣さんの絆はその辺にあるような薄っぺらい関係じゃあ無いと小町は思っています。小町達四人にあるような絆のように。奉仕部での活動には命に関わる戦いは少なくなかったと思いますよ?薄っぺらい関係ならとっくに切れているような事件ばかりでしたから」

 

雪乃「小町さん…そうね。由比ヶ浜さんを信じなくて、何がプレゼントだと言うのかしら。私なりに一生懸命探してみるわ」

 

相棒達の言葉で自分の直感を信じてみる気になったらしい。まぁ、真剣に選んだ末の結果が例えプレステvitaと3DSを間違えたとかの間違いくらいなら笑って喜んでくれるだろう。vita売り切れてたからPSPで良いやのような適当な理由じゃあなければ。だが、この真剣具合ならそれも恐らくはない。

なら、俺からも助言してやろう。

 

八幡「例えば由比ヶ浜の弱点を補うような物はどうだ?実用的を求めるならば、お前も得意だろ?耐久性とかじゃあなくて」

 

雪乃「そうね。そういうことなら……」

 

雪ノ下は何か思い付いたのだろうか。雪ノ下は次なる店を目指す。ちなみに、そこまでの間に他の人間はもう何かしらの物を買っていた。いつの間にっ!

服屋のはす向かいにあるランジェリーショップの前で立ち止まった。のは俺で、速攻でブリザード級の視線と共にナイチンゲール・エメラルドに耳を引っ張られ、雪ノ下を追ってキッチン雑貨の店に連れ込まれた。

痛い千切れる視線がキツイ痛い千切れる視線がキツイ!

どうせならいろはが生身でやって!スタンドでやらないで!

 

いろは「ハチ君…今日は煩悩が強すぎませんか?ハッ!もしかして遠回しに誘ってたんですか?確かにもうそろそろ良いかなとか少しは考えていましたけどここまであからさまだと逆に引きますし今は雪乃先輩の手伝いで来ているのでそう言うのは空気を読んで雰囲気があるときにやってください。ごめんなさい」

 

八幡「ここ最近それが復活してきて逆に安心する俺がおかしいのか真剣に悩んでる俺がいる。毎回よく口と頭が回るな、お前は」

 

どこまで高速お断りに命を賭けてるの?そして、何でそれを楽しみにしているジョルノの前でやってやらないの?最近寂しがってるぞ?

 

八幡「時間を止めて見れば良かった…」

 

いろは「は?何か言いました?後で正座してじっくり聞いても良いんですよ?」

 

八幡「ナンデモアリマセン…」

 

エリナおばあちゃんモードにならないでくれ。

そんなアホなやり取りをしている中、雪ノ下の入っていった店内に目を向ける。

 

八幡「料理か…確かに由比ヶ浜の弱点だな」

 

あれから満足に出来た料理が出来たという報告は聞いていない。act1の影響は無くなったようで、料理の練習は続けているようだが、杜王町に飛ぶことは無くなったようだ。

まぁ、俺達は味見できないので今の腕前がどれ程なのかは雪ノ下から聞くしかないのだが、クッキーに関しては一般レベルまで向上したものの、他の複雑な行程を踏むような料理はまだまだのようだ。

それにしてもこれはなかなか楽しい空間だ。

ツマミの部分が開いて調味料が入れられる鍋とか魅了される。こういうのが最近ではあるんだな。トニオさんのところのような本格的な器材しか見たことが無かったからビックリした。

と、思えば本格的な中華鍋まである!専門はイタリアンだから使うことは無いのに、何故か振り回して中華一番ごっこをしたくなる!

ホームセンターとか百均とかもそうだけど、こういったガジェットやツールは見ているだけでもテンションが上がる!

 

小町「粗大ゴミぃちゃん化したかと思ったらトラサルディ魂に火が付いちゃった…本気で「イタリアン料理のリサリサ」に行きかねない」

 

さっきネットで調べたけど旨いらしいよ?リサリサ。

 

静「へぇ、結構良いセンスじゃあない?」

 

ジョジョの声が聞こえたので見てみると、エプロン姿の雪ノ下だった。

黒い生地は色合いとは裏腹に薄手で、雪ノ下が羽織ると涼しげですらあった。胸元にあしらわれた猫の足跡。

何だ。センスあるじゃあないか。

 

雪乃「どうかしら?」

 

八幡「………よく似合っているとしか言えないな」

 

雪ノ下には良く似合っているエプロンだ。

すると雪ノ下も含めて全員にキョトンとした顔をされた。

 

八幡「何だよ」

 

雪乃「あなたが私にそんなことを言うなんてビックリしただけよ」

 

小町「あのお兄ちゃんが……」

 

いろは「今日は槍が降りそうですね。空を飛んでいるペットショップを避難させないと」

 

どういう意味だコラ(# ゜Д゜)

俺だって素直に感想を言うときは言うわ!

それにしても、このエプロンはジョジョにも似合いそうだな。髪質が雪ノ下とそっくりだから参考になるわ。

来月のジョジョの誕生日プレゼントの候補の1つに追加しておこう。

 

雪乃「けど、比企谷くん?私の事ではなくて、由比ヶ浜さんにどうかしら?という意味よ」

 

八幡「由比ヶ浜には似合わないだろうな。なんかもっと…そうだな、いろはのカーディガンみたいな色合いとかの方が喜ぶし、あいつに似合うと思うが」

 

小町「さすがはお兄ちゃん…。やっぱり安定のお姉ちゃん基準なんだ」

 

いろは「ハチ君のこういう不意討ちがホントにズルいと思う…」

 

静「イーハ…顔が真っ赤だよ…」

 

雪乃「いつもの比企谷君で逆に安心したわ。アドバイスをありがとう。参考にするわ」

 

雪ノ下はそう言いながら、いましがた自分が着けていたエプロンを脱いで丁寧に畳み始め、それを抱えたまま今度はポケット数だの素材等をチェックする。素材選びは大事だ。石綿とか燃えない素材とか良いと思うぞ?贈り物としては最低の部類だが、あいつには耐熱服とかでも渡さないと危ないかも知れん。

そんなことを考えていると、雪ノ下が最終的に選んだ物は薄いピンクを基調とした装飾の少な目のエプロンだった。

 

雪乃「これが由比ヶ浜さんに似合いそうね。彼女、喜んでくれるかしら」

 

いろは「大丈夫だと思いますよ?結衣先輩にはピッタリだと思います」

 

雪乃「ありがとう、一色さん」

 

そう言ってそれも丁寧に折り畳むと、先ほどのエプロンも一緒に持ってレジへと向かった。

なんだ、さっきの奴も気に入ったのか。

今日の記念にもなるし、由比ヶ浜との思い出にもなるだろう。

 

静「案外、私達とのお出掛けの記念でもあるのかもね」

 

八幡「それもあるが、奉仕部やアーシスの絆の記念でもあってほしいと願うのは俺の欲張りか?」

 

いろは「そうであったのなら素敵だと、わたしも思いますよ?雪乃先輩が変わっていく姿を、誰よりも見てきたわたし達は願わずにはいられません」

 

陽乃「そうだよねー。素敵な思い出だよねー。で、何でお姉さんを置いて行っちゃったのか詳しく聞きたいんだけど良いかな?比企谷八幡君?」

 

あっれー?背後から聞き慣れた声が聞こえるよぉ?でもおかしいなぁ?この人の登場って原作のあと20ページくらい後のシーンじゃあなかったっけぇ?何でこのページの段階で出てくるのん?(メタァ!)しかも何でわざわざフルネーム読み?

で、何でいろは達は徐々に文句なんか言い合いながら距離を取っているんですか?クレイジーノイジーを僕もしたいんだけど?導かれ小道に迷い込むグレートデイズはいらないよ?

 

陽乃「何かメタイこと考えてるなら、ここで『第3章、完!』でも良いよ?」

 

なーんか金属の冷たい感触が首筋にピトピト当たるんですけど、これって銃刀法違反じゃね?あ、スタンドだから適用されないわ。

 

八幡「は、は、陽乃さん?」

 

陽乃「何かな?八幡君」

 

八幡「何でここにいるとわかったんですか?」

 

陽乃「方向音痴の雪乃ちゃんにGPSを付けない方が無用心だと思わない?幕張メッセの各ブースで迷子になるくらいだもの」

 

八幡「そ、そうですか…ところで、さすがにアヌビス神はやりすぎではないですかね?」

 

陽乃「八幡君…お姉さんは三重の意味で嫉妬してるんだよ?」

 

陽乃さんはアヌビス神を引っ込めて俺の背中から抱きついてくる。

 

柔らかい!暖かい!良い匂い!特に背中の何かが柔らかい!暖かい!良い匂い!

 

陽乃「八幡君?長年姉の私でも無理だった雪乃ちゃんの性格をたった二ヶ月でやってのけちゃうし、今日は雪乃ちゃんとの姉妹デートを八幡君達に取られちゃうし、私も八幡君が好きなのに置いていかれた上にいろはちゃんや小町ちゃんとかとイチャイチャしてるし…ちょっと酷すぎるんじゃあ無いのかなぁ?」

 

ギ、ギ、ギ、ギ、ギ…

 

錆び付いたブリキ人形のようにぎこちない動きで振り返ると、世の男の理想を詰め込んだような魅力的な笑顔を輝かせる陽乃さんの素敵な笑顔が間近にある。

しかし、しかしだ!この人のこの笑顔に騙されてはいけない!これは別名魔王ハルノン!または強化外骨格の仮面をウルトラセブンに変身するモロボシダンのように「デュワッ!」したときの陽乃さんだ!

つまり………本心では欠片も笑っていない。むしろ、この魔王ハルノンモードは素顔を百パー見せるようになった今では最大級のお怒りモードの顔なのだ!

しかも、時を止めようが何だろうが逃げられないようにくっつく波紋で抱きしめられている。由比ヶ浜の勉強会でジョジョが俺にやったときのように。

はがそうと思えば剥がせなくもない。弾く波紋で飛ばせば良いのだから。だが、そうすれば陽乃さんがケガをする結果になる。大好きな仲間が…特に強い絆で結ばれたクリスタル・クルセイダーズの初期メンバーであるこの人に傷を負わせるなんてしたくはない。

そんな俺の心情まで利用してこの人はこうしてホールドしている。

俺はいったい何を要求されるのだろう。多分、いろはや小町でも怒れない状況を利用してくるに違いない。

 

ああ、時を止める能力ではなくて、バイツァ・ダストが今は欲しい…。

俺は、時の涙を見た…。

 

比企谷八幡(ザ・ジェムストーン)…再起不能予定

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。そろそろタイトル詐欺になるので数ページ飛ばしてハルノン登場です。
既に登場してましたが。
いったい、何を要求されるんでしょうね?
ハルノンですから、状況を利用しまくりそうですね?


それでは恒例のヤツいきます。

雪乃とカップルの振りで周りは落ち着く➡ハーレム状態により、更にカオス!

雪乃の買い物基準は八幡の後ろ向きな発言で考え方を変える(そこが原作八幡の魅力ではあるが)➡みんなの前向きなアドバイスで考え方を変える。

ランジェリーショップの前で足を止めた八幡➡…は、ナイチンゲール・エメラルドに耳を引っ張られて強制的に足を動かされた。

八幡にエプロン姿を誉められ(内心)かなり喜んでいる(男女的な意味で)➡八幡にエプロン姿を誉められ素直にかなり喜んでいる(仲間としての意味で)

数10ページ後に魔王初登場➡タイトル詐欺に我慢できずにページを飛ばして数話ぶりに魔王登場。


それでは次回もまたよろしくお願いします。
格ゲー好きな方は『THE KING OF STREET FIGHTERS』もお願いします。

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