やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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ぼーなすとらっく『例えばこんなバースデーソング』3

side比企谷八幡

 

由比ヶ浜が泣き終えた後、俺達はドリンクコーナーへ向かってそれぞれのドリンクを手に取る。

ウェルカムドリンク(エンジェルラダーの店長に依頼したら快く引き受けてくれた)で飲み物を確保してから乾杯の音頭の段階になる。

そして、みんなの視線が雪ノ下へと向く。

雪ノ下はえ?私?といった感じで戸惑う。

 

三浦「雪ノ下、飾らずに想いのまま言えし」

 

海老名「結衣を変えたのは雪ノ下さんだよ?悔しいけど結衣の今の一番は雪ノ下さんだから」

 

陽乃「雪乃ちゃん、頑張って」

 

雪ノ下は大きく息を吸って深呼吸した後に、由比ヶ浜に微笑んで口を開く。

 

雪乃「由比ヶ浜さん。あなたのおかげで私は変わることが出来た。あなたと出会ってからのこの2ヶ月。辛いこともあったけど楽しかった。勇気を持つということ、覚悟を決めるということを知ることが出来たのは、あなたがいつも隣にいてくれたから。だから、あなたに伝えたい…ありがとうって。そして、これからもよろしくお願いいたします。お誕生日おめでとう。由比ヶ浜さん。乾杯!」

 

涙を頬に伝えながら雪ノ下は由比ヶ浜に祝辞を送る。聞く由比ヶ浜「ゆきのん…」と涙を流している。

 

一同「誕生日おめでとう!乾杯っ!」

 

結衣「ありがとう!みんな!ありがとう!」

 

由比ヶ浜は感動に涙を流しながら、グラスを掲げた。

近くに立っていたものはそのグラスを合わせる。

良いな………この雰囲気。

こんな雰囲気にいつまでもいたかった。

ずっと続けば良いな。

 

乾杯が終わった後に雪ノ下が作ったケーキのろうそくに火が付けられ、ワゴンが由比ヶ浜の前に運ばれる。

それに合わせ、照明が暗くなる。さすがは一流ホテルのスタッフだ。仕事が的確だ。

 

結衣「うわぁ……キレイ。ゆきのん、ありがとう」

 

雪乃「大したことはしていないわ。でも、喜んでくれて嬉しいわ…」

 

結衣「ろうそくを消すね?」

 

由比ヶ浜がろうそくを消すと歓声が上がり、再び乾杯。

幹部達のパーティーに負けないくらいの誕生日だ。むしろ、大人達の汚い思惑とかが一切ないのでこっちの方が純粋にお祝いという意味では好きだ。

もしこれが少人数だったら沈黙が訪れ、お通夜ではしゃいじゃったー!的な空気になるのだが、それはこのお祭り大好きジョースター家とその愉快な仲間達(転生含む)。

騒がし…もとい、盛り上げるのが得意なジジイや仗助。空気を読んで立ち回るのが得意な康一さん。リアルモデルで歌手のトリッシュさんはキレイな歌声で盛り上げ、ダービーさんがトランプを使った手品を披露する。

転生組も負けていない。

戸塚が得意の回転エネルギーを使った皿回し芸、材木座の狙撃芸、波紋使い達の水芸(波紋使用)などなど。

料理も凄い!ホリィさん、朋子さん、由花子さん、小町、ミドラーさん、母さん、一色義母さん、由比ヶ浜のお母さんが腕をふんだんに奮ってそれぞれの家庭料理を作ってくれた。

一流のシェフが作ったものではない家庭料理。贅沢なものではないが、そこに込められた心が贅沢だ。心から娘や子供達の友達の為にと作ってくれた世界に2つとない物だ。一流のシェフが作ったものでは決して得られない贅沢品。心、愛情ほど贅沢な物はない。

 

結衣「楽しい…こんな嬉しい誕生日は初めてだよ…」

 

八幡「意外だな。三浦とかと年がら年中ウェイウェイやったいたのかと思っていたけど」

 

三浦「それ、戸部とかだけだから。なんとなく集まってたってだけで、ここまで心が尽くされてたわけじゃあねーし」

 

結衣「んー…そういう機会がなかったわけじゃあ無いんだけど、優美子とかはあたしを気遣ってくれていたけどね?今まではあたしが祝う側ばっかりっていうか裏方が多いっていうか、料理を取り分けたりして気付いたら終わっているっていうか……」

 

康一「わかるなぁ……僕もそういうの何回もあるから」

 

陽乃「まるで職場の忘年会とかで一番したっぱがなるポジションだよね?それ…」

 

八幡「なんかすまん……」

 

結構悲しい話だった。思わず謝ると由比ヶ浜も気まずそうに視線を落とす。

 

結衣「あ、うん。別に気にしてない……というか、広瀬さんってゆきのんのお姉さんの上司だよね?」

 

仗助「あー……康一はな?部下に逆に気を使いすぎてそういう立ち回りになっちゃうんだ。逆にしたっぱが気を使うタイプ」

 

ホントに康一さんはいい人すぎて逆に気を使うタイプなんだよなぁ。本人的にはそれで満足なんだと言っているけれど。

 

小町「何でここだけお通夜みたいな空気に…。結衣さん、取り敢えず飲みましょう、コーラを!沙希さん特製のサファイアコーラ!甘くて美味しいですよ!」

 

結衣「あ、そ、そうだね!」

 

小町「いえー!」

 

リサリサキャラ崩壊。無理矢理明るい雰囲気を醸し出していた。

その中で俺は思わずため息をついてしまった。

どうしても考えてしまう。次はあるのか…と。

赤の他人とのこの手の集まりは…例えば接待のパーティーとかは得意ではない。

皆が一様に声を張り上げ、全力で盛り上がっている。という演出をしているように見えてしまう。きっと彼らは不安なのだろう。静かにしていると自分がつまらない人間だと悟られてしまいそうで。そして、この仲間達は本物であって欲しくて…。

 

『それでも俺は…本物が欲しい!天国なんてレプリカはいらない!いろはや小町と共に進む本物の世界だけでいい!だから俺の中で見ていろ、ディオ!』

 

十二年前のあの日、花京院の墓地で暴走して前世を思い出し、比企谷八幡が俺となったあの日……。

この言葉を言ったのが比企谷八幡の中にいたジョナサンが言った言葉だったのか、それともディオを吸収し、俺となって初めて発した言葉だったのか……。

見ているか?俺となる前の比企谷八幡。ここにいるみんなを…。本物となった…もしくは本物となろうとしている人達がここに集まった…。もしこの先も………。

 

いろは「ハチ君?どうしたんですかー?ため息なんかついちゃって」

 

八幡「ああ……見知った者以外の誕生日って、何をして良いのかわからなくてな。いつも通りにすればいいのか?」

 

いろは「そう言えばわたしもこう言うのってあまり参加したことはなかったですよね?ケーキ入刀とかしますかー?ハッ!そう言うのを期待してため息をついたんですか?結婚式の予行演習とかしてみたいぜ的な考えでわたしの前でため息なんかついてケーキ入刀をしたい気持ちはわたしも一緒ですけど狙いすぎで正直引きますしそう言うのはやっぱりぶっつけ本番でやりたいので無理ですごめんなさい」

 

ジョルノ「やっと見れたよそれ。うん。長期滞在してもなかなか見れなかったから寂しかったが、やっぱり君達はそれがないとしっくりこないね」

 

すっげぇ嬉しそうだなジョルノ。お前、この高速お断りが凄い好きだもんな。

 

ジョセフ「やってやれ、いろは。良い思い出になるやも知れんぞ?のう、八幡?」

 

!!

 

ジジイ……お前も気付いて……

………心遣いに感謝するよ。

 

八幡「だってよ。やるか?いろは」

 

いろは「/////」

 

超顔を真っ赤にしながら。

 

小町「主役を差し置いてそれって……。お兄ちゃん、さすがに……」

 

三浦「小町。今だけはヒキオの思い通りにさせてやりな…」

 

沙希「由比ヶ浜もごめん……今だけは、比企谷の思い通りにさせてやってくれ…」

 

小町「むう~~。何かジョセフおじいちゃんも優美子さんも沙希さんも変だよ?」

 

ジョセフ「なぁに、お前さんも家で二人きりの時にやってもらえばええ。陽乃ものう?康穂もやるか?」

 

康穂「いいの!?ジョセフさん!」

 

由花子「ダメよ?康穂。もういい加減諦めなさい?ジョースターさんも煽らないで」

 

康一「………ジョースターさん、少し良いですか?」

 

康一さんはジジイを連れていった。

悟られちゃったかな?

 

八幡「じゃあ、行くぞ?いろは」

 

いろは「………うん」

 

俺といろはは二人の共同作業をした。良い思い出になったかな?

 

 

side広瀬康一

 

康一「そ、そんな!何で黙っていたんですか!その事をいろはちゃんや小町ちゃんは!?静ちゃんや陽乃さんも!………何より、仗助君が絶対に許すはずが無いじゃあないですか!」

 

ジョセフ「言えるか!話せるものならばワシだって言っておる!じゃが…言えるわけがないじゃろ…」

 

悲しすぎる!そんな事が………

 

ジョセフ「ワシがさせん…八幡はまだ諦めてはおらんはずじゃ……じゃから…ワシらも諦めんぞ……この事に気付いておるのはワシと沙希と優美子だけじゃ……じゃから、黙っていてやってくれ…康一くん。頼む」

 

……僕も、行こう……多分、それが起こるのはあの場所だ…今さら流れは変えられない。だから…運命を受け入れないで欲しい…絶対に、君を止めて見せる。八幡君!

 

 

side比企谷八幡

 

雪乃「気が済んだかしら?比企谷くん?」

 

ケーキ入刀を終えた俺といろはは、後は自分が切ると言ってナイフを俺から受け取った。

 

八幡「ああ……悪かったな」

 

雪乃「………何を考えてるの?比企谷くん?」

 

八幡「いや、お前は切るのが得意そうだな…と。人の縁とか堪忍袋とか」

 

雪乃「あなただって得意でしょう?縁を切られるの」

 

八幡「まあな。有象無象から切られるのは確率100%だ」

 

雪乃「ふふふ。あなたらしいわ」

 

そう言って雪ノ下はケーキを切り始めた。上手く誤魔化されてくれたな。

雪ノ下は上手く六等分に切る。そして、同じケーキがいくつか運び込まれる。

 

八幡「お前、あんなに作ったのか?」

 

雪乃「いいえ?このケーキは私が作ったけど、後は空条ホリィさんと広瀬夫人が作ってくれた物よ。このケーキの写真とレシピを見て再現してくれたわ。このケーキだけでは足りないから、後は任せてって…。もしかしたらあっちの方が美味しいかも知れないけれども」

 

いろは「味だけの問題ではありません。雪ノ下先輩が結衣先輩の為に一生懸命心から作ったケーキ…このケーキが結衣先輩に食べてもらう事に意味があるのです。そうですよね?結衣先輩?」

 

結衣「うん!そうだよ!ゆきのん!ありがとう!」

 

由比ヶ浜が雪ノ下に抱き付く。相変わらず仲が良いな。

俺は由比ヶ浜の為に用意したプレゼントを取りに一旦会場から離れた。

 

 

side一色いろは

 

誤魔化されないよ?ハチ君……

わたしとジョジョ先輩とマチちゃん、ハルさん…。それに仗助はハチ君が最近、よりおかしいことに気が付いているんだから…。あの哀しい目は…他の人は気が付かないかも知れないけど、わたしたち5人は気付いてる。

何を隠してるの?どうして何も話してくれないの?

 

 

side比企谷八幡

 

雪ノ下がケーキを切ってから、何故か話は血液型占いの話になった。ちなみに俺はA型で小町はO型で兄妹で血液型は違う。それを言ったら…

 

小町「実の兄妹じゃあなかったらどうなっていたかわからないよねー。小町のほうが」

 

とか際どい発言をしやがった。

それもありだなーとか言った日にはいろはが怖いし、何より比企谷家特有の遺伝のアホ毛が血縁を物語っている。

実際、実妹だからギリギリのところでセーブが出来ているけれど、違っていたら間違いなくジョースケに堕ちている自信がある。

 

いろは「もはやマチちゃんとハルさんは時間の問題だから半ば諦めてますよ……ハチ君のバカ……」

 

静「それに……認めざる得ないよね?私とお兄ちゃんが気付いてる所にマーチはともかく、陽乃さんが気付いているんだから」

 

いろは「うん…もし、わたしたちが懸念していることを止める事が出来たのなら、三人一緒でも良いかなって思っちゃいますよ…。ハチ君と一緒にいられるのなら…」

 

いろは………。

そうか。アレを知らなくても、なんとなく俺の変化で気付いていたのか…。

 

もし………。

 

 

←To be continued




幸せの一面の一方で、何かを感じている一部の者達。

一体、八幡はどうなってしまうのか?
何を悟り、何が起きるのか?
第3章は無事に終わるのか?


恒例の原作との相違点。

乾杯の音頭は戸塚➡雪乃。これが一番自然な気がします。

いきなりお通夜モード➡これだけのメンツでそれはないし、原作メンバーも少しは人間関係はましなはず。

ケーキ入刀は雪ノ下と由比ヶ浜➡八幡といろは。ジョセフは何故こうした?

血液型占いに関してはカット。ただし小町のブラコンシーン加筆。

ぼーなすとらっくは長くてもあと二話で終わらせます。

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