やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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新たなる…


最後の黄金の精神1

side比企谷八幡

 

本館とは別の、財団が確保しているロッジに荷物を置く。

ここは千葉村とは別の敷地扱いで、財団が買い取ったロッジだ。常に財団の勤務員が常駐し、職員の保養所として活用している。

本来なら本館に行くべきだが、あそこは汐華の本拠地である可能性もある。

そこに荷物を置くと、「憩いの広場」というところに移動する。そこで待っていたのは百人近くいる小学生の群れだった。

みな小学6年生なのだが、体格にもばらつきがあり、雑然としていた。制服姿の高校生やサラリーマン等は大量にいても統一性を見出だすことが出来るのでカオスさはない。だが、皆が思い思いの服装をしている小学生の集団はそのカラフルさも相まってかなり混沌としていた。

それよりなにより全員が同時にしゃべっているものだからやかましいことこの上ない。

きゃいきゃいスッゲーうっさい。その騒々しさは毎度の事なのだが、いつも圧倒されてしまう。毎年参加している俺達はともかく、初参加のもの達は軽く引いている。

特に女子供がやかましいのが嫌いな承太郎なんかは帽子を目深に被って舌打ちをしている。

いや、お前さ…もう良い年なんだから我慢くらいしろよ。

だが、慣れていない人間が…特に奉仕部の人間の気持ちもわからなくはない。高校生ともなると小学生の集団なんかを見ることはほとんどない。そのパワフルさに驚かされる。動物園かよここってくらいに。

この状況に慣れているのは仗助、ジョセフ、徐倫、康一さん、俺、いろは、小町、ジョジョ、陽乃さん。

隣を見れば由比ヶ浜、三浦、海老名、大志はドン引き。雪ノ下、材木座は青ざめていた。平然とニコニコしているのは戸塚と川崎、城廻先輩、けーちゃんだ。

大人組はこんな感じだ。

 

イライラ組

承太郎、露伴先生、カマクラ、サブレ

 

ドン引き組

ポルナレフさん、ミスタさん

 

平然組

ジョルノ、ミドラーさん、億泰さん、音石さん、トリッシュさん、アナスイさん、エルメェスさん。

 

逃亡組

ペットショップ(上空に逃げた。途中でイギーも俺をつれてけと吠えたので再びイギーごと上空へ。君達前世では不倶戴天の敵じゃあなかったの?)

 

そうか、億泰さんは兆が小学生だから慣れているんだ。ミドラーさん、音石さん、トリッシュさんは大勢の前でライブとかダンスをするわけだからこの程度の騒然さなどは当たり前。芸能人はメンタル強いなぁ。

アナスイさんは基本徐倫の事以外はどうでも良い。

エルメェスさんはアメリカ人だからか?

ジョルノ?こんなのでポーカーフェイスを崩すほどやわな人生を歩んでいない!思わず小町に…というかリサリサになってしまった。

生徒達の真ん前に教師が立っているが、なにもしない。

ただじっと時計を見ている。まぁ、この光景も慣れている。この行事の通過儀礼だ。

数分が経過すると生徒達もその異変に気付き始め、静まり始める。ざわざわ…ざわざわ…シーン。

 

教師「はい、みんなが静かになるまでに3分かかりました」

 

でたー!通過儀礼!全校集会や学級会などでお説教の前振りに使われるあの伝説の台詞である。

まずお説教から入り、林間学校で浮かれている児童にいっちょかまして気を引き締めさせる常套手段だ。毎回ここからいつも始まる。

お説教の後はこれからの予定が発表される。

一日目の最初の行事はオリエンテーリングだ。ウォークラリーというべきかもしれない。

みんな「林間学校のしおり」を開いてその説明を聞いている。

そのしおりの表紙にはアニメ調のイラストが書かれていた。あの画風は女の子だな?露伴先生の目が品定めするような目だ。

 

露伴「ふむ。荒削りだが悪くはない。目を付けておくべきかな?」

 

新しい弟子候補の品定めをしている!安定の露伴先生だよ!

多分、実行委員の子が書いたか、「わ、私別に書いても良いけど…」的なヤツで書いたのだろうが、幸運だったな。将来天才漫画家に弟子入りできるぞ?耐えられたらの話だけどな?

 

教師「では最後にみんなのお手伝いをしてくれるお兄さん、お姉さん達を紹介します。まずは挨拶をしましょう。よろしくお願いします!」

 

子供達「よろしくお願いしまーす」

 

あの給食の時に全員揃って言わされる「いーたーだーきーまーす」みたいな挨拶の多重演奏。

小学生達の好奇の視線が一斉に注がれる。あれ?一人だけ別の方を向いてるぞ?

雪ノ下を小さくしたような女の子…。その子の視線を追って見ると…ジョルノ達パッショーネのメンツに注がれている。もしかして…あの子が最後の黄金の精神を持つ仲間なのか…。

俺が考えていると、葉山が代表者面をして前に出た。

 

葉山「これから三日間、みんなのお手伝いをします。何かあったらいつでも僕たちに言ってください。この林間学校で素敵な思い出を作っていってくださいね?よろしくお願いします」

 

拍手が巻き起こった。

 

教師「さらに、みんなのお手伝いにすごい人達が来てくれました!SPW財団の皆さんです!スーパーギタリストの音石明さん、ヨーロッパスーパーモデルのトリッシュ・ウナさん!漫画家の岸辺露伴先生です!」

 

紹介された三人は前に出てお辞儀をする。露伴先生だけはぎこちなかった。すると、子供達もすごい勢いで騒ぎ始める。

 

子供「すげー!音石明のCD、俺持ってる!」

 

子供「トリッシュ・ウナって今は休職中なんでしょ?すごい!こんなところで会えるなんて!」

 

子供「ピンクダークの少年なら全巻読んでるよ?後でサインもらおうかな?」

 

歯止めが利かなくなった子供達が再び騒ぎ始める。中には携帯を取り出して写真を撮る子供達まで出始めた。

葉山は自分の時よりも好感触な事に歯噛みしているが、当たり前だろ。

ちょっとイケメンなお兄さんと世界的に有名な三人とでは役者が違いすぎる。

 

例の子は何かを呟く。唇を読むと…「やっぱりあれはトリッシュ…」と言っている。やはり彼女が…。

 

今度はジョセフが代表して壇上に立つ。

 

ジョセフ「先代SPW会長のジョセフ・ジョースターじゃ。毎年この林間学校は楽しみにしておってのう、みんなと一緒に過ごせることを嬉しく思う。さぁ、このおじいちゃんと一緒に良いキャンプをしよう!」

 

毎年の事だがこの挨拶はジジイが担当している。地域への融和を図って各県、各市町村のボランティアを財団の仕事にしたのはジジイだからな。こればかりは引退した今となってもジョセフが担当している。

 

八幡「今年は奉仕部の部長としての立場もあるし、お前も挨拶すれば?」

 

静「嫌よ。パパの後に挨拶だなんてどう考えても霞むじゃん?そう言うんならハッチがやれば良いじゃん?副部長だし、初代ジョジョだし」

 

俺も嫌だ。

 

教師「それではオリエンテーリング。スタート!」

 

教師の掛け声で、生徒達が5、6人のグループになる。事前に決めてあったのだろう、スムーズに班分けがされていた。おそらく、この林間学校の間、その班で行動することになるのだ。

小学生くらいだと班分けで暗い気持ちになることは多くないのかもしれない。さっきの子以外は一様に明るい表情をしている。

まだスクールカーストという概念が具象化していないんだろう。これが中学、高校と進むにつれて殺伐とした明確な区分けが行われる。小学生という時期は幸せの箱庭にいるようなものだ。まったく、小学生は最高だぜ!

……と、本来なら某ロリ小学生バスケアニメの主人公みたいな事を言うのだろうが、俺達は違った。何であの頃から社畜してんだよ!俺達の小学時代は!返せ!俺の最高であるはずだった小学生時代を返して!ジジイ!

 

オリエンテーリングが始まるとジジイ達やいろは、ジョジョは小学生の一団に付いていき、適度に相手をしながら道を外れたりしないか、有害な動物がいないかを警戒しながら歩き始める。

一方、俺と小町は初参加組達の学生組達と共に葉山達を監視していた。

 

戸部「いやー、小学生マジ若いわー。俺たち高校生とかもうおっさんじゃね?」

 

南「ちょっと、戸部やめてくれない?うちがババアみたいじゃん」

 

戸部「いや、マジでいってねーから。さがみん本気で受けとんねーで欲しいわー」

 

相模が嫌そうにすると戸部は慌てて弁解する。一瞬平塚の視線も感じた気がする。ここで仲間割れしてくれれば楽なんだけどな?

 

戸塚「僕が小学生くらいの時でも高校生は子供に見えたけど…」

 

先の会話を受けてか戸塚が懐かしそうに話す。それを聞いて小町が顎に人差し指をあてて首を傾げた。

 

小町「多分、大人の精神を持って転生したからじゃあ無いですか?小町達もそうだから。兄は今も昔も普段は子供っぽかったけど」

 

八幡「……おい。俺、めちゃくちゃ大人っぽいだろうが。愚痴をこぼしたり、汚い嘘をついたり、卑怯な事をしたり」

 

小町「自覚はあったんだ…。ゴミィちゃん。その影響を受けたのがジョジョお姉ちゃんだよ。15の夜じゃあ無いんだから」

 

盗んだバイクで走り出さないよ?

 

結衣「ヒッキーの中での大人のイメージってそんな悲しいものなの!?」

 

もと百二十才の吸血鬼ですが何か?

すると戸塚がクスクス笑いながら俺の背中をトンと叩いた。

 

戸塚「でも、やっぱり八幡はジョースターさんとディオだよ。戦いでは頼りになるし、頭の回転は早いし…覚悟を決めるのも一瞬だし」

 

八幡「と、戸塚…」

 

悲しい目で俺を見つめる戸塚。相変わらずのスピードワゴンだな……。俺を常に心配してくれる。

 

雪乃「それは話し相手がアーシスの人間しかいないからそう見えるのではないのかしら?」

 

振り返れば奴がいた。最近ではなかなかケンカを売ってこないから油断していた。よろしい。戦争だ。

 

八幡「何故教室での私を知っているのかしら。あなたストーカー?迷惑防止条例って知っているかしら?社会的に死にたいの?」

 

結衣「ゆきのんの真似が上手いね…ヒッキー…」

 

由比ヶ浜が呆れ笑いを浮かべる横で、ぴしっと枯れた枝を踏みおった音がした。

 

雪乃「………それは、…誰の真似のつもりかしら?」

 

雪ノ下が自分の前にエンジェル・ダストを出現させる。

ひきつった笑顔がなかなか怖い。良い感じじゃあないか?日々の修行の成果が出ているようだな。

 

八幡「スタンドまで出して良い度胸じゃあないか。お前が俺に勝てるのか?」

 

雪乃「粉々に砕いてあげるわ?前のようにはいかないわよ?」

 

二人で殺気を出しながらお互いに距離を詰める。

 

ゴン×2

 

徐倫「決戦の前にドンパチ始めようとするな!」

 

雪乃「冗談ですよ?空条先生。結構面白いですね?このやり取り」

 

雪ノ下が徐倫に笑いかけながら言う。

徐倫の扱いがわかってきたじゃあないか。だが、ジョジョと俺ならば更に遊ぶ!

 

八幡「あら、空条せんっせい♪わたくし、おおマジですわよ?」

 

ゴン!

 

徐倫『さっきからおねぇ口調が気持ち悪いんだよ!このバカハッチ!』

 

材木座「ぬぅ……ジョセフが女装してテキーラ酒を持ってきたことを思い出してしまったではないか!八幡!」

 

小町「やめて、材木座さん…。その当時のジョセフの姿を知ってるんだから…せっかく自然に囲まれて清々しい気分が台無しだよ。周囲に一瞬でトラウマを抉るって流石だね、生ゴミィちゃん…。ゴミィちゃんは将来大物になるよ」

 

徐倫、小町、材木座がどっと疲れた表情をしたその時。

 

葉山「そうか、見覚えがあると思ったら君はヒキタニくんの妹だったんだ。戸塚の妹にしては似てないなと…」

 

言いながら小町の前に進み出ようとした葉山だが、小町は冷たい瞳で葉山を見た。

 

小町「それ以上前に出るなら、死の覚悟が必要なり。あなたの事は前から見ていたよ?戸塚さんの件や大和さんの件は忘れない。()はあなたを認めない。これ以上私に話しかけないでちょうだい。それ以上忠告を無視するなら、綾瀬絢斗や綾瀬香澄のように私が始末してあげる」

 

小町はサンシャイン・ルビーを出して葉山を威嚇する。

小町の一人称が私となった場合は本当に嫌いな相手を前にした時。そんな相手には容赦がないのが小町だ。

 

葉山「ハハハ…物騒な。君みたいな子が…」

 

小町は一度指を空に向け…

シュウウウウ………

反対側の指からルビーレーザーを発射した。

 

葉山が立っていた場所に穴が空く。

 

葉山「ひ……平塚先生に何をして良いか聞いてくるよ」

 

バカめ。生半可な覚悟でこの場に来たのか。

威嚇のルビーレーザーでしっぽを巻いて逃げて行く葉山。

 

雪乃「ホントに殺してしまえれば良かったのに…こんな男」

 

小町と雪ノ下の視線は冷たい。

小町はもう一発さっきとは逆の指を空に向け後に反対側の指からルビーレーザーを発射。葉山の進路方向に発射する。

 

シュウウウウ………

 

相変わらずのチート攻撃だ。ザ・ジェムストーンの動体視力を持ってしても見えないのだから。

葉山はそこで腰を抜かす。

 

南「………比企谷小町………あんたは隼人くんを…許さない」

 

小町「あなたが私の相手をするつもり?別に良いよ?小町的には独神とパワー比べをしても良かったんだけどね?まぁ、敵じゃあないか。どっちも」

 

南「得意面になっていられるのも今だけだよ。うちの能力であんたを倒す!」

 

相模と葉山グループは小町を一睨みして去っていった。

徐々に対戦カードが決まりつつあるな。

葉山と相模が抜けると小町はこっそり近付いて来た。

 

小町「お兄ちゃんはあの残念イケメンだね。前にお姉ちゃんをサッカー部にしつこく勧誘していたみたいだし」

 

八幡「どうせ全員始末するんだ。この比企谷八幡がやる!」

 

このバカシスターが勝手に俺のカードを決めたが、俺としてもそろそろ葉山がうざくなってきた。

 

海老名「確かにそれしかないのかも知れない!ハヤハチの美味しいの、期待してるからね?あ、ヒキタニくんの方が断然強いのか」

 

何で味方を呪うんですか?海老名さん。和解したよね?俺ら。

 

雪ノ下「それで、私達は監督以外の何をすれば良いのかしら?」

 

八幡「ああ、いつもならゴール付近で運んだ生徒達の弁当やらお茶とかを配膳するのが役目なんだが、今回は億泰さんとトリッシュさんと音石さんと大志と陽乃さんでやってくれるらしい。いつもは俺達が波紋の修行を兼ねて人力運ぶんだけど、今回は奴等の監視もあるし、大志と陽乃さんが波紋のレベルを上げたいから修行を申し出てくれた」

 

出来れば俺も参加したかったな。弥七ごっこをしながら。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

次々と対戦カードが決まります。
呉越同舟でやるボランティア、果たしてどうなるか!


恒例の

葉山達と同じコテージで宿泊➡財団のロッジで宿泊。敵同士で宿泊はない。また、敵地でのコテージは安全上使わない。

この段階でプチ雪ノ下に気付く。

葉山の挨拶に感心する八幡➡そら世界的に有名なアーティストがいれば葉山は空気になるわ。

八幡は奉仕部の代表で雪乃に挨拶すれば?という➡次にお前は「この奉仕部の部長は静・ジョースターだろ」という。

戸部の話し相手は三浦➡敵対中。代わりにさがみん。

戸塚は小学生の時は高校生は大人に見え、小町は今でも高校生は大人に見えるという➡二人とも前世持ち。むしろ普通の高校生は子供に見える。

八幡は雪乃の真似をした際、吹雪の幻を彼女に見る。既に原作でもスタンド使いだったのん?➡雪乃がホントにスタンドを出す。

葉山と小町の自己紹介➡既に小町は葉山を知っている。三浦&海老名戦及び大和戦を参照。ドンパチのカードが決定。

作業内容は平塚先生に聞く➡既に会社の業務なので知っている。

それでは次回もお願いします。




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