やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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隠者は…


最後の黄金の精神4

side比企谷八幡

 

仗助といろはと小町と陽乃さんが一緒に歩いている。抱えたかごには野菜がもりっと盛られていた。

四人はやけに楽しそうにクスクスと笑いあっている。

なんとなく何を話しているのか察した。

十中八九、俺が小町と陽乃さんを受け入れたことだろう。基本的にクラスでクスクス笑われていると自分が笑われているかと思ってしまうほど自意識過剰ぶりを誇る俺にとって、その程度のよそくは容易い。

人気者は辛いぜ。…辛いぜ。

ジョジョに後で何て言われるのかな…。とこの後の事を思ってげっそりしてしまう。

 

静「どうしたのハッチ?元気ないよ。ハーレム王はアウトドアは嫌いかな?」

 

八幡「何だよハーレム王って…」

 

確かに三人の事は受け入れたが、ハーレムを作った記憶はない。

 

八幡「おい三人とも…」

 

小町「え?お兄ちゃんがやっと陥落して小町と陽乃さんを受け入れてくれたっていう宣伝活動」

 

陽乃「ガハマちゃんとか雪乃ちゃんとか入ってこられても困るから、牽制活動だよ?まぁ、二人とも気になる人ができたみたいだから大丈夫だとは思うけどねー♪」

 

八幡「OK。大体把握した。お前ら、泣かすから」

 

小町「お兄ちゃんの為を思って言ったのに納得いかない!」

 

八幡「昔から言ってるだろ。その前置詞は大抵自分の為に言っている言葉であって、相手の為なんてこれっぽっちも考えていないんだよ」

 

この持論だけは絶対に変えるつもりはない。

ぶーぶー文句言っている小町にデコピンをかまそうと揉み合っていると、陽乃さんが止めに入った。

く…毎度思うが小町のこの小さな体のどこにこんな馬鹿力が眠ってるんだよ。

 

陽乃「まぁまぁ。実際半分は八幡くんと社長ののろけ話のしあいなんだから。小さい頃の思い出とか交えて。わたしが知らないみんなとのエピソードをね」

 

仗助「聞いているこっちも恥ずかしかったぜ…」

 

いろは「あー…それ言っちゃうのは反則ですよ?陽乃さん」

 

みるみるうちにか~っといろは、小町、ジョジョの顔が赤くなる。小町はその朱に染まった頬を誤魔化すようにこほんとわざとらしく咳払いすると、こちらにちらりと視線を向ける。

 

小町「な、なぁんて今のリアクション、小町的にポイント高かったでしょ?」

 

八幡「バカだろ、お前」

 

怒る気も失せるわ。呆れたのと可愛すぎるのとで。

 

八幡「アホなことやってないでカレー作るぞ。米も炊かないといかんし」

 

こいつらに付き合っていたらいつまで経っても飯が食えない。小町の抱えているかごをひょいっと奪うとたったか炊事場まで運んでしまう。

小町はしばしばボケ~っとしていたが、うむうむと何事か頷いて俺の後ろに付いてきた。

炊事場と言ってもでっかい流し台があるだけだ。ここで米を研いだり、下ごしらえをしたりするわけである。

食材のバラエティはさほど充実しているわけではない。豚の三枚肉、火を人参、玉ねぎ、じゃがいも。平均的な日本のカレーライスがすぐに想像される。肉じゃがというやつはひねくれているだろう。あ、俺だ。

 

エンポリオ「小学生の野外炊飯であることを考えれば妥当なところですね」

 

雪乃「そうね。スタンダードで良いと思うわ。空条博士はどんなカレーがお好みですか?」

 

承太郎「俺は辛口のカレーが好みだな」

 

昔から飲酒と喫煙していたからな。

代わり映えはしないが、大きくは失敗しない無難なチョイス、ということだろう。

 

八幡「まぁ、そうな。実際の家カレーは作る人によって個性が出るけど。母ちゃんの作るカレーとかだと色々入ってるよな?厚揚げとか」

 

小町「お兄ちゃんはトニオさんの影響で高確率でカレードリアになるよね?」

 

雪乃「ふーん。そういうものなのね」

 

雪ノ下の答えは素っ気ない。あ、承太郎との一時を邪魔されたからか?気になる奴って承太郎なのかも。

 

いろは「うちもなかなかですけど、ハチ君の義母さんもすごいですよね?大根とか白滝とか。鍋料理ですか?」

 

静「あるある。ホリィお姉ちゃんなんかちくわとかたまに入れるんだよね。シーフードかっつうの」

 

あー、ホリィさん、たまにやるよな。意外すぎる料理。それがめっちゃ旨いから逆にタチが悪い。

 

戸部「べぇ~…ジョースターさん、お姉さんいんの?紹介して欲しいわぁ」

 

承太郎「俺のお袋が静の姉だ。何か俺の母親に用でもあるのか?そもそもお前は追い出されたはずだろ」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ………

 

戸部はベーベー言いながら逃げ出した。まぁ、もう定年迎えたのおばあちゃんが高校生の姉とは思わないよな?普通。

でも百歳間近の父親の娘がどの年齢か普通わからんか?

ジョジョが意外すぎるだけなんだよ。

因みに雪ノ下の横では由比ヶ浜と材木座が鼻歌交じりにピーラーでじゃがいもの皮を剥いている。二人の前に包丁が放り出されているあたり、1度は挑戦して諦めたのだろう。

 

結衣「でもママカレーってそういうのあるよね、こないだも変な葉っぱ入っててさ。うちのママ、結構ボーッとしてるところあるからなー」

 

材木座「いや、由比ヶ浜嬢。じゃがいもの芽はとるべきであるぞ?ソラニンという毒が含まれているから」

 

材木座に注意され、慌てて由比ヶ浜が芽をとる。

 

結衣「あ、ほらほら、ちょうどこんな感じの葉っぱ」

 

そう言って皮剥きもそこそこに由比ヶ浜が小枝に葉を1枚むしりとってきた。

おい待てやコラ(# ゜Д゜)

ミートソースとかを作るのに香り付けで欠かせないローレル…つまり月桂樹の葉っぱじゃあないか。

 

八幡「お前…それは月桂樹の葉っぱ…つまり香りつけに使われるローレルだろ、それ」

 

雪乃「あら?ローリエじゃあないの?」

 

材木座「なに?ロリエ」

 

何に反応しているんだお前は。

ロリエたん(6歳)「ふええ…カレーに葉っぱ入っちゃったよう!」ってか?あ、六歳じゃあロリじゃあなくペドだ。

 

陽乃「どっちでも正解だよ?」

 

結衣「ローリエってティッシュの事じゃあなかったんだ」

 

おい……。

 

………………

 

なんとなく分担ではあったが、カレーの下ごしらえも米研ぎも終えた。これで俺達の分の準備が整った。

飯盒をセットし、鍋の方では肉と野菜を炒める。途中海老名さんが「野菜とやおいって似ている………卑猥」とか言っていたのを三浦と承太郎がはたく。誰も突っ込まないのに唯一突っ込んであげる三浦と承太郎は、やはり強い絆で結ばれているからだと思う。でも殴るヒロインは最近は流行りじゃあないのでこれからも積極的にスルーするつもりだ。いろはも殴るけど、敵限定だし。

鍋に水を入れ、沸いたところを二種類のルーを割り入れる。三枚肉の脂が旨味をだし、二種類のルーがスパイシーさを引き立てるのだ。更にタバスコとハバネロを準備して…

 

ゴン!

 

徐倫「ハッチ…ジョルノ兄さんのせいで最近辛みに対する味覚障害になりつつあるって本当だったのね…」

 

あぶねぇ…ジョルノのわさびやらタバスコやらハバネロのせいで普通の辛さに満足できなくなりつつあるんだよ。どうしてくれる!ジョルノ!

代わりにソースと砂糖をわずかにぶちこむ。以外かも知れないが、少量のこれらは以外と逆に辛味を増したりさせる。

後はじっくり煮込むだけ。

周囲を見渡せば、炊事の煙があたりに散見できる。

小学生達に取ってははじめての野外炊飯だ。苦戦しているグループも結構あるように見受けられる。

 

いろは「暇なら見回って手伝いでもしますかー?」

 

まぁ、今は火にかけている最中だから、近いところ一ヶ所くらいって感じだろうが。

 

八幡「そうだな。ジョジョ、火を見てもらえるか?」

 

静「ん?オッケー。子育ての練習でもしておきなさいってね♪」

 

八幡「言ってろ。こちとら夫婦歴12年だ」

 

静「こっちもだよー♪」

 

そうだった。まぁ、ジョジョが見ててくれるならゆっくり見て指導に回れる。

小学生達は高校生の登場をちょっとしたイベントのように捉えているのか、「あ、飛猿だー!」とえらい歓迎のされようだった。

自分達のカレーが如何に特殊かを語られ、まだ完成もしていないのに食べてけ食べてけと田舎のばーちゃんみたいなことを言い出す。

この時ばかりは子供の方が優先となるので、いろはより先に俺が食べる事が前提で味見が許可される。毒が含まれているならばいろはのナイチンゲールで解毒できるからだ。いろはのための毒味ならば進んで俺がやってやる。他の誰にもそれは譲れない。いろはのナイトはこの俺だ。まぁ、誰が作っても一定のレベル以上になるのが日本のカレーだ。そんなおかしな物が出てきたりはしないと思う。由比ヶ浜以外は(由比ヶ浜編の「由比ヶ浜結衣は以外と空気が読めない」を参照)。

それよりも、俺もいろはも小学生に囲まれているが、小学生というのは一番大人を舐めているのだ。大人の大人たる所以を知らず、チョロい相手だと思っている。

お金の価値も、勉強の意義も、愛の意味も知らない。与えられるのが当然だと思っていて、その源泉を理解していない。世の中の上澄みを啜ってわかった気になっている年代だ。こっちは裏の世界までどっぷり啜って後戻り出来ないレベルになっていたのに。

あるいは、聡い子であればすでにそのことを知っているかもしれない。もしくは生まれ変わって知っていたか。

例えば、そこで一人だけ身を引いて、ポツンと一人きりで存在を薄くしているあの少女とか。

小学生達にとっては、彼女が一人でいることは日常的な光景なのだろう。だから別に気にしたりしない。これは俺達の子供の頃と同じだ。けれど、それがわかっていない人間の外部の人間ならば気になる。例えば…

 

葉山「カレー、好き?」

 

葉山が留美に声をかけていた。

だから何で出入り禁止になっているお前がここに入ってくるんだ!

それを見て、別のグループを見ていた雪ノ下が小さな、ともすれば聞き逃しそうなほどに小さなため息をついた。

同感。悪手、である。色々な意味で。

トリッシュさんや、毎年一度限りの忍者イベントによって霞んでしまったが、高校生の中でも目立つ存在であるはずの葉山に話しかけられることで、より彼女の特殊性が強調され、ひとりぼっちという特性がさらに引き立ってしまう。一人なら無色透明でノーダメージだが、先生と組まされるとダメージを受ける。

だから悪手。

高校生達からは好奇の視線にさらされ、同級生達からは憎悪と嫉妬を向けられる。針のむしろだ。

留美はこれで手詰まり。

葉山に話しかけられて、驚いたような表情をする留美だが、

 

留美「別に。カレーに興味ないし」

 

冷静を取り戻して素っ気なく答えると、すっとその場を離れた。

留美はなるべく人の目を集めないような場所へと動いた。人の輪の外、すなわち俺達のいるところである。

俺といろはのいる場所から1メートルほど離れた場所、ちょうど互いの小声が聞こえるか聞こえないかの距離だった。昼の反応を見る限り、俺達に何か用があるのだろう。

葉山は少し困ったような寂しげな表情を浮かべて留美を見ていたが、俺と視線を合わせると苦々しげな顔をして調理場から離れた。それで良い。

葉山の今の状況。

1つは俺達の奸計によるものだが、平塚のやらかしによって総武高校組は何もするなと先方から言い渡されており、これ以上生徒に関わることを禁じられている。これ以上余計なことをすれば取り返しのつかないことになるのはわかっているようだ。

留美を放っておけないのはわかる。肉の芽に冒されていようとも葉山隼人という人間はそういうやつだ。色々悪手に走る奴だが。

だが、根は良い奴だ…。汐華に属するにはもったいないほどに…。

 

めぐり「はいっ!せっかくだから隠し味を入れよう!何か入れたいものはあるかなー?」

 

めぐり先輩の聞いたものを惹き付け、自分へと注目を集める良い声だ。おかげで留美に張り付いていた嫌な視線がパタリと途絶える。めぐり先輩は俺に軽くウインクして、目で「後は任せて」と送ってきた。癒されるー。露伴先生は良いお嫁さんを貰ったな。

小学生達は、はいっはいっ!と挙手してはコーヒーだの唐辛子だのチョコレートだのとあれこれとアイディアを披露する。ちなみに由比ヶ浜も桃とか言っていたが、あいつは何参加してるんだよ…。さすがのめぐり先輩も顔をひきつらせたが、材木座が由比ヶ浜の肩を掴んで後ろに引っ立てた。何気に由比ヶ浜のストッパーになりつつあるな。

 

八幡「あいつ、バカか…」

 

思わずこぼれた言葉に、囁くような言葉が続いた。

 

留美「ああなる覚悟があって発言したバカじゃあないのかな」

 

留美はしれっと興味無さそうに言った。やはり、こいつはただのボッチじゃあない。鶴見…とか言ったな?前に鶴見先生から聞いた娘さんの言動。試してみるか…。

 

八幡『(イタリア語)まぁ、世の中大概の奴が覚悟なくバカを言う奴だ。あいつはそれなりに覚悟をもっている。早目に気が付いて良かったな』

 

俺が言うと、留美は不思議そうな顔でこちらを見る。値踏みするかのような視線はいささか居心地が悪い。

 

いろは『ハチ君もわたしたちもその大概ですけどねー』

 

八幡『何を言うかいろは。大概とかその他大勢の中ですら一人になれる逸材だぞ?』

 

いろは『はぁ…ボッチごっこが始まりましたね。いつになったら気が付くんですかー?』

 

俺達のやり取りを留美はにこりともせず、黙って聞いていた。

そして、少しだけ俺達に近付いてくると、声をかけてきた。

 

留美『名前は?』

 

いろは『一色いろは。前世はエリナ・ジョースターとも言うかな?』

 

八幡『比企谷八幡。前世はジョナサン・ジョースター、またはディオ・ブランドーとも言う。そして留美。やはりお前は転生者だな。それも、パッショーネに関わる…その時の名前は?』

 

留美『ジョースターは知らない。だけどDIOなら聞いたことがある。ジョルノ・ジョバァーナの父親。私は…ブローノ・ブチャラティ…元パッショーネの幹部』

 

やはり…な。ジョルノから聞いたことがある。ジョルノのギャングとしての全てを教えた人間だ。

 

ジョルノ『やはりあなたでしたか。ブチャラティ。久しぶりです。あなたが転生している事は四年前から知っていました』

 

留美『ジョルノ……。15年ぶり…かな?』

 

最後の黄金の精神が揃った……。

揃ってしまった。

ここまでは予言の通り……。やはり原石は……消えるのか?

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

留美=ブチャラティは決まっていました。
第2章のプッチ戦である「ー鎮魂歌ー」を見ていただければわかります。

ただ、ナランチャやアバッキオも捨てがたかったんですよね?


それでは原作との相違点。

平塚静が小町と話していた➡幼なじみーズと陽乃が勢揃い。この組み合わせ、重要です。

平塚静が八幡を文学少年という➡静・ジョースターが八幡をハーレム王と言う。

小町は八幡の良いところをアピール(実際は兄妹仲の良さをのろけていた)➡完全にのろけ

雪ノ下は空条家と仲良くなりつつある。

戸部に対して上方修正➡今は敵

由比ヶ浜がじゃがいもを剥いている➡プラス材木座

八幡はローリエを知らない➡ローレルで覚えている。

海老名のツッコミは三浦のみ➡スタクルでツッコミ

八幡は基本に乗っ取ってカレーを作る➡最近はジョルノのせいで辛さに対する味覚障害が…

巡回指導に回らせるのは平塚先生➡いろはが誘う

火の番は見回りをめんどくさがった平塚先生(おい顧問教師(# ゜Д゜))➡静に任せる。

飛猿大人気!

一応は葉山の本質は認めている。

隠し味を入れる提案は葉山➡めぐり

葉山が由比ヶ浜を戦力外通告➡材木座が由比ヶ浜を自分のカレー作りをさせるために引っ込めさせる。


それでは次回もよろしくお願いいたします!

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