side比企谷八幡
ロッジの食堂にみんなの姿はなく、いたのはジョジョと承太郎、ジョルノ、泣いている小町、由比ヶ浜、雪ノ下がいる。
八幡「おはよう」
承太郎「ああ、おはよう…」
承太郎は新聞をバサッとやってから答える。我が家ではよく見かける光景だ。昭和というノスタルジーがある。
空いている席にジョセフと座ると、正面には由比ヶ浜がいる。
結衣「ヒッキー…おはよう」
八幡「ああ…」
みんな元気がない。もう全員に伝わってしまったとみて良いだろう。
元気がない由比ヶ浜の挨拶は普通だ。「やっはろー」は朝の挨拶ではないらしい。多分使うのは昼以降なんだほうな。朝だったら「やっぐーもにん」?うん、語呂悪いわ。
由比ヶ浜の隣には雪ノ下、更に小町がいるが、小町は俺を見るとぱたぱたと立ち上がってどこかへ走り去った。
雪乃「罪作り谷くん。起きてしまったのね…」
八幡「残念そうに目を伏せるのはやめろ。おはよう」
雪乃「そういう意味ではないわ。あなたは結局…」
静「犠牲になるつもりなんだね。ハッチ」
雪ノ下の言葉を継いで、ジョジョがお盆を二つ俺とジョセフの席に置く。
八幡「サンキュー」
静「サンキュー……じゃあないよ!何で私に何も教えてくれなかったの!相棒だったんじゃあないの!?私とハッチは!」
ジョジョが俺の胸ぐらを掴む。
八幡「………」
静「私はイヤだからね。私とお兄ちゃん、ハッチ、イーハ、マーチは五人で1つ……なのに何でハッチは諦めちゃっているの?」
諦めている訳じゃあない。だが…予言は着実に進んでいる。
八幡「諦めてはいないよ。けど……」
静「ごまかすなっつーの!その顔は…『いつか来る別れが今日になっただけだ』っつー顔だ!ハッチ…私は認めないから。運命なんて、受け入れないから!」
ジョジョから光が出る。まただ…。
走り去っていくジョジョ。それを俺は追わない。追う資格はない。
承太郎「やれやれだ。罪作りな男だな」
ジョルノ「小町に静。いろはもさっき、沢の方で泣いているのを見た。徐倫が慰めていたけど、彼女も目が赤かった。君は愛されているね」
ただそれだけを言ってジョルノは俺の肩に手を置いて去って行く。ジョルノからも光が出た。
承太郎「八幡。俺はもう、何も言わない。見ていてとても悲しすぎて、何も言うことはない。ただ、一言だけいえと言われたら……。ありがとう。それしか言うことは見つからない。お前がいたからこそ。今のジョースター家が成り立っている。お前がいなければ、もう少しドライな関係で成り立っていただろう。お前が否定しようがな」
承太郎もジョルノを追って立ち去る。承太郎からも光が出てくる。
ジョセフ「食べようか、八幡」
八幡「ああ……」
朝食はわりとスタンダードなホテルの朝食を思い起こせる和食だった。最後の朝飯には相応しいものだった。
最後であった俺達がしっかりと朝食をとり、最後にお茶を啜る。ジジイはコーヒーだ。邪道め。
仗助「さて、今日の予定だ。といっても、お前もジジイもいつもの事だからわかるか」
八幡「まあな」
今日は小学生達は自由行動だ。夜には肝試しとキャンプファイアー。その準備をするのが俺達の仕事だ。
億泰さんが合点来たという感じでポンっと手を打つ。
億泰「ベントラー、ベントラーってやつか」
雪乃「虹村さん。オクラホマミキサーと言いたいのですか?最後の長音しか合ってませんよ」
安定の億泰さんだな。いや、安定の億泰さんだからこそ、悲しい気分が吹き飛んでくれる。天然だろうけど。
それにベントラーはやめてくれ。カーズやアレッシーが降ってきたらどうする。
後は肝試しのお化け役の準備だな。こういう時、ハーミット・アメジストは汎用性が高い。幻影の波紋の出番だ。
仗助「まぁ一応コースの確認はしておくか。な、八幡」
仗助は俺の肩を組んで立ち上がらせた。
おいおい。お前までベタベタすんなよ。仗助から再び光が現れた。
なんなんだろうな、この光。
side???
まだ足りない…あなたを包む幸せの光が…
あなたを守る光…聖痕はあと二つ
side比企谷八幡
途中、葉山達と出くわしたが、無視して大きな広場に来た。
周囲が森に囲まれているグラウンドみたいなところだ。端には用具倉庫みたいなものもある。
ジョセフ「ようし、波紋の戦士達よ!一気にやるぞ!」
八幡「おうっ!」
二人ほど波紋の戦士が足りないが、五人もいれば重文だろう。
陽乃「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」
陽乃さんがアヌビス神で薪を割る。しかも一本を空中でカットする曲芸割りだ。切れた薪を大志が投げる。
その投げられた薪をジョセフが受け止め、積み上げる。
それを俺と川崎で精密に組み上げていく。
八幡「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」
沙希「パパウパウパウパウ!」
承太郎「無造作にやってるように見せかけて生身で何て正確さで素早くやってやがる…。波紋の戦士は化け物か…」
失礼な。出来ればザ・ジェムストーンでもっと正確無比にやりたいわ。まぁ、これも一種のデモンストレーションとしてうけていた。
一種の大道芸みたいなものだからなぁ。
八幡「この調子なら、すぐに終わりそうだな」
いろは「ええ。白線もすぐに終わりますね」
八幡「ああ。とっとと終わらせるぞ」
いろは「ハチ君…後でお話が…」
八幡「わかっている……」
恐らくあの事だろう…。
ジョセフ「あっさり終わったのう。八幡はどうする?ワシらはロッジに戻るが」
八幡「俺はいろはと話がある」
ジョセフ「そうか…12年前のホテルロイヤルオークラみたいじゃの」
徐倫「どういう事?ハッチ…」
俺とジョセフは12年前の屋上の件を教える。
徐倫「あたしはそのときはいなかったんだっけ。でも覚悟しなよ。夕べ、陽乃があんたの運命をばらしていたから、静もイーハもマーチもお通夜みたいに泣いていたわ。他のみんなもショックを受けていたけど、イーハは特に泣き叫んでいたわ。ハッチ…」
徐倫は俺を抱き締める。
徐倫「あんた達はかけがえのない大事な弟分や妹分…。あんたが運命を受け入れるつもりでも、あたしは諦めない…そんな諦めの良い性格だったら、あたしは今頃水族館で死んでいた…。あたしは今でもジョジョだ。絶対に諦めないからな」
徐倫からもまた、光が出てきた。まるで勇気を分けて貰っているような気分だ。
八幡「ありがとう。徐倫」
徐倫「例を言うくらいなら、いつものように鬼か悪魔のような錯覚を起こすほどの性格の悪さを発揮しな。じゃあね」
徐倫が立ち去ると、いろはからメールが届いた。いつもの河原に来て欲しい。水着を持参で。
と書いてあった。
ま、この暑さだから元々水着は持参してきていた。
最後に見るいろはの水着……楽しみだ。辛いことを聞かれるとわかっていても。
俺はいつもの小川の所に向かって歩く。
道なりに歩いていくと用水路くらいの沢にぶつかる。
その沢から上流に歩いていけば川幅二メートル、水深も膝丈くらいの小川がある。俺達が利用する隠れた水遊びのスポットだ。
すると、小町と由比ヶ浜が水遊びしていた。その様子をいろはが水着姿で微笑ましく見ている。
小町「あ、お兄ちゃん…」
結衣「ヒッキー……」
小町に見つかった。吹っ切れたのか、小町は俺においでおいでと手招きする。途中の森の中で着替え済みなので近付いていくと…。
八幡「なんでお前らもいるの?」
小町「コオォォォォ!わっせろーい!」
…………おい、見間違えじゃあなければ小町の波紋で練られた水がンドゥールのゲブ神真っ青の拳を作ってるんだけど…。具体的には電柱くらいの高さで…
小町「ゴミィ!」
バチコォォォォォォン!
巨大ゲブ神の拳に殴らり飛ばされる俺。
なかなか痛いし冷たい…
一瞬にしてどんよりとした瞳で小町を睨み付けたが、小町に反省の色はなく、むしろプンスカした様子でさっきの質問に答える。
小町「小町達なりのお仕置きだよ。あれほど前から勝手にいなくなったら怒るからねって言っていたのに、予言の事を黙っていて…」
結衣「あたし達だって悲しかったんだからね?ヒッキー!」
いろは「なのでマチちゃんが代表して「わっせろーい!」してもらいました」
小町「お姉ちゃん達とお話しして、お兄ちゃんを責めるのはやめました。だけど、怒ってもいたからわっせろーい!しました。これで小町からはお兄ちゃんを責めるのはやめるよ。だけど、小町も諦めないから。そんなことよりも…」
小町はカットインしてくる。
小町「ほらほら、お兄ちゃん新しい水着だよ!」
小町はぐいっと見せつけるようになんだかよくわからんポーズをとった。
薄いイエローのビキニは縁がフリルで彩られ、南国トロピカルな雰囲気を醸し出している。小町が元気よく水しぶきを上げるとキラキラと輝いて見える。
小町「はい、感想は?」
八幡「う、うん。世界で二番目に可愛いよ」
小町「んふふー。照れてる照れてる//一番はやっぱりお姉ちゃん?」
八幡「ああ…それだけは譲れん」
小町の水着姿も心惹かれるが、いろはの水色のビキニが俺の目を捉えて離さない。
小町はいろはの後ろに回り込み、いろはをぐいっと前に押し出した。
いろは「ま、マチちゃん!」
小町「お姉ちゃん。いつものこといつものこと♪」
そのまま小町はいろはを俺にピッタリくっつくように押し出す。
暖かい柔らかい良い匂い!
参ったな…我慢できん。俺はそのままいろはをぎゅっと抱き締めた。
いろは「ひゃ、ひゃあ!ハチ君……」
切な気な声を出していろはは遠慮ぎみに俺の胸板に頭を預ける。
いろは「暖かい……この時間が……いつまでも続けば良いのに……何で、幸せな時間がいつまでも続かないの?新婚旅行の時も…今この時も…。ささやかなこの幸せが、わたしにとって本物なのに……うっ……うう……」
いろはは俺の胸に顔を埋め、嗚咽を漏らす。
俺はいろはの頭に手を置き、その感触を確かめるように更に強く抱き締める。
八幡「う……く……いろは……」
いろは「何も言わないで……うう……ハチ君……今はハチ君がここにいることだけを感じさせて下さい!ううう………悲しいよ…ハチ君…ううう……」
今はこの腕の中で泣いているいろは。一番のぬくもり、一番の感触、俺の一番……それを、今夜手放さなくてはならない。それだけが無性に哀しい……。
結衣「小町ちゃん…」
小町「うん。今は二人だけにさせてあげましょう。結衣さん」
小町と由比ヶ浜は気を利かせて川から出ていく。
いろは「本当は……行かないでって言いたい……ずっと一緒にいてって言いたい……だけど…そんなハチ君はハチ君自身が許さないんだよね……私達…なんでこんな哀しい運命を背負っているんだろうね……」
いろはは嗚咽を漏らしながらも言葉を紡ぐ。誰よりも俺のことを理解しているいろはだから…。俺が戦いに赴く事を止めはしない。だけれど、悲しくないわけがない。
いろは「どんな結果になっても、わたしはハチ君の全てを受け止める…でも、少しでも希望があるのなら、わたしはどんな手段を尽くしてでもあなたを救いたい。あなたと共にいたい……。エリナ・ジョースターがかつて願ったように、共に死ぬなんて言わない……でも……でもその最後の時までは……あなたと共に並ぶことを許し下さい……八幡……うううう。うあああああああ!」
八幡「ああ……やっぱりお前が最高だ……いろは……最後のそのときまで……一緒にいて欲しい……」
二人で抱き合いながら、気が済むまで涙を流し合う俺といろは。そして、涙が枯れた後に……俺達は最後の口付けをした。
ありがとう……いろは。俺が迎える最後の時まで…一緒にいて欲しい……。
いろはから出た大きな光が……俺の中に染み込み…暖かく溶け込んだ。
side????
??「揃った……これであなたの運命は少しだけ変わった……十個の本物の聖痕とあなたが真に求めた本物が、絶望しかなかったあなたの運命にわずかな希望をもたらすわ。頼んだわよ…5つの黄金の魂と、聖痕を埋め込んだ十…いえ、九つの真なる絆。比企谷八幡を救えるのはあなた達しかいないのだから…」
私は一通り泣いた後に、戻ってきた比企谷小町、由比ヶ浜結衣…そしてそこに雪ノ下雪乃、三浦優美子、海老名姫菜、鶴見留美が加わり、一緒に遊ぶ比企谷八幡と一色いろはを眺める。
??『準備は整ったのだな?○○?』
??「ええ。整ったわ。比企谷八幡とその仲間達には申し訳ないけど、彼らはそれぞれの………に必要な存在。運命は…加速させて貰うわ。協力に感謝するわよ。藤崎忍さん」
←To be continued
はい、今回はここまでです。
八幡の本物達から彼に集められた光はなんなのか?
忍の協力者らしき謎の存在の目的は?
少しだけ変わった八幡の運命とは?
次回より遂に、第三章の山場へと突入します!
八幡とその仲間達は運命を越えることができるのか!
それでは次回もよろしくお願いいたします!