sideDIO
SPW財団本社ビル。
戸塚の前世、スピードワゴンが立ち上げ、ジョセフが継いだこの会社…もっとも、この世界のジョセフは財団を譲り受けなかったようだが、スピードワゴンの遺言によってジョースター家との同盟は今でも続いているらしい。
というより、実質的にジョースター家の便利屋と化している気がする。合併してジョースター家が経営している状態よりもある意味酷い…と思うのは俺だけか?
だって自社で色々手を回す分には発生した損失や責任も経営するジョースター家が負うけども、この世界や基本世界の場合は甘い汁だけ啜っているだけで、後の事は財団負担だもんな…。
まぁ、他人の世界だからとやかくは言わないが、同じ財団の支部長としては同情を禁じ得ない。まぁ、俺もその分ガンガン利用しているが』
八幡『その辺の癖は同じだな。心の声が口にでているぞ』
DIO『おっと。まぁ、今回は聞いているのがお前だけだから何の問題もないがな』
八幡『他人の独り言を聞き続けるのはイヤだなぁ』
残りの世界の欠片もこういう風に誰かの心に入り込んでいるのだろうか?俺はこの八幡のようにたまたま嫌悪感を抱かない奴に拾われたから良いが、俺はほとんどの平行世界の自分と自分を取り巻く環境が嫌いだ。
本当に嫌悪感を抱かない『比企谷八幡』は珍しい。
八幡『どんな世界を見てきたんだ?お前は』
DIO『教えても構わんが、多分プロテクトがかかるぞ。世界の修正力ってやつだ。お前にとっての未来の出来事は記憶にブロックがかかる。かくいう俺も林間学校のボランティア以降の出来事は知ったはずなんだけど、その世界を離れると忘れちゃうんだよ。その出来事が終わると思い出すんだけどな。人間関係の好き嫌いとか、戦いのあれこれとかは覚えてるんだが……』
八幡『そうなのか…不便だな』
DIO『俺はそれで良いと思うがな。先の事を知って先に対処してしまうのは本物じゃあない』
プッチが目指している世界はそんな世界だ。前にも思ったが、奴は覚悟するものは美しいと言った。だが、それは自分から決める覚悟だ。他人から決められる覚悟は美しくない。
八幡『まぁ、お前の世界も俺の世界も本来の歴史とは大分違うって話だからな』
DIO『そうだな。八幡の世界も俺達が介入した世界としなかった世界に別れている可能性もあるしな』
多次元宇宙論を論じても無駄かも知れない。たらればの数だけ平行世界は無数に存在しているのだから。
一方、受付と話をしている陽乃さん。すると、なにやら別の職員がやって来て会議室へと案内される。
うん、めっちゃ嫌な予感がする。正確にはドンパチの予感。
八幡『あれ?空条さんが二人いる』
な、何故こいつがいる?
そいつは俺を…正確には八幡をずっと見ていた。
承太郎「………………」
あっるるるぇぇぇぇぇぇ?
おかしいなぁ、承太郎はアフリカの奥地で連絡が取れないはずだよねぇ?何でここにいるのん?ハチマンわかんなぁい♪
ヴァレンタイン「八幡君、待っていたぞ。刺客を二人倒したようだね?弥七から報告は聞いている」
あ、もしかしてホルホースとカメオを連れていったFBIと一緒にいた総武高校の奴等は弥七の手の奴等か…。
…
……
………
この短期間で手駒を用意できるってすげえな!弥七ってホントに何者だ!陽乃さんもだけど一部の奴等は俺達の世界の同一人物よりすげぇぞ!
DIO『…なあ、ふと思ったんだがこっちの世界のお前の関係者が俺たちの世界のやつよりやばい気がするんだけど?』
八幡『そうなのか?よくわからんが…。ああ、でも材木座は凄い奴だぞ?なんせ雪ノ下家のセキュリティシステムを作ったのはあいつだ。下手をしたら国家レベルのセキュリティを作り出している。あいつはラノベ作家よりもそっちの方が本気で向いているとたまに思う』
………すげえ。
まぁ、俺の世界の材木座も普段はああだが中々頼れる奴だ。ジジイの義手を改造したりとか。あいつ、どこの平行世界でも理系の才能が半端じゃあない。マジで有能なんだよなぁ…。
そんな事を考えていると、閣下が話の続きを始めた。
そうだ、今はこの状況を掌握するのが先決だ。弥七や材木座のことを考えている場合じゃあない。
ヴァレンタイン「そろそろ皆、今起きている事に疑問を持っている頃だと思う。ここにいる空条博士やその娘であるジョリーン君の事も含めてね」
徐倫「ほんと、あたしがもう一人現れた時はビックリしたわ…ヤレヤレって感じよね」
ジョリーン「あたしだってビックリしたわよ。あたしの方がピチピチだけどね。ヤレヤレだわ」
徐倫「あ?」
ジョリーン「何よ。やる気?」
徐倫同士がガン飛ばし合いを始める。どうして平行世界の自分同士って最初は険悪になるのかね?ヤレヤレだぜ。
八幡『人の事は言えないだろ…』
DIO『少なくともお前の事は嫌いじゃあない』
ホント、こいつの場合は珍しいパターンだ。
ヴァレンタイン「まずはここにいる二人に関しては私が連れてきた。空条ジョリーン君に関しては真実を撮影してきた映像を当局に渡して釈放させた。本来なら時間がかかることだが、私の権限で保護させてもらった」
その映像はどこから?
ヴァレンタイン「映像は平行世界でジョンガリ・Aが犯行に及ぶところを撮影している。余談ではあるが、その世界での私にもその映像は渡している。その世界では空条徐倫が逮捕される事は無いだろう。ロメオ君に関してはどちらも逮捕されるだろうがね?犯罪の隠蔽を行おうとしてジョリーン君に罪を擦り付けようとしたのだから」
閣下の行動力がすごすぎる!そしてロメオざまぁ♪徐倫をはめた罪はどこの世界でも絶対に許さん。
ヴァレンタイン「そしてプッチがエンリコ・プッチに関してもジョンガリ・Aとの密談の内容を押さえてある。彼は既に教会から破門され、地下に潜伏した。GDstにはいないようだがね」
ほうほう。目的の大半は既に成されていると見て間違いはない…か。
ヴァレンタイン「世界の一巡は防げたと見て良い。だが油断は出来ない。懸念は5つ。四年前に一色いろは君達が襲撃を受けたと言う二十年前のDIOの部下達の存在。DIOがプッチに渡したと言うDIOの骨の存在。GDstにあるスタンドのディスク。ウンガロ達をはじめとしたジョルノ・ジョバァーナ氏以外のDIOの息子達の存在。最後にドメニコ・プッチ…つまり君達の亡くなった仲間であるウェザー・リポートの記憶のディスク…どれも放置していては危険な代物だ」
DIO『頭いてぇ……』
ウェザーさんと言う人の事はともかく、そのどれもが俺の前世絡みじゃあねぇか。
八幡『まぁ……どんまい?』
DIO『フォローになってねぇよ!』
八幡『とりあえず説明してくれ』
DIO『二十年前の復讐者達の事はわかっているな?ウンガロ達の事も…』
八幡『まぁ、あの記録を見たからな』
スタンド能力はどれも危険だが、とりわけ奴等の能力は危険だ。
DIO『GDstのディスクとはプッチのスタンド能力であるホワイト・スネイクが集めたスタンド能力のディスクの事だ。そのディスクをスタンドの適正がある奴に差し込めばそのスタンドを使えるようになる。もしそいつが悪用されれば杜王町と呼ばれる場所のようにスタンド使いの能力による事件が多発するかも知れない。閣下はそれを警戒している』
平和なあの町ですらあんな吉良みたいな奴がいたんだ。GDstの犯罪者達の巣窟にディスクがあったのなら危険すぎる。今はF・Fさんの元になったフー・ファイターズが守っているようだが急いで回収して始末するに越したことはない。回収したら承太郎を通じて億泰さんに消して貰えば確実だろう。
DIO『ディオの骨も危険だな。あれにはディオの魂が宿っている。もしディオの日記の内容を承太郎以外が知っていたら第2第3のプッチが現れる可能性がある。あれの回収もやらねばならん』
……………もしかしたらあれが俺の切り札になるかも知れない。ディオの骨だけは八幡に回収してもらいたい。もしかしたら他の俺も何か手に入れる可能性があるかも知れないがな。
八幡『お前、何か企んでるだろ?』
DIO『安心しろよ…悪用はしない』
八幡『お前のそれ、安心できる要素が皆無なんだけどな?』
俺の中にいるディオはもう味方だ。それにあの骨に宿っている魂には…。
DIO『ウェザー・リポートの記憶も厄介だな。歴史が変わったことによってウェザーは徐倫と出会うことは無くなった。もしその状態でドメニコ・プッチの記憶が甦ってしまったら厄介な事になる。人をカタツムリに変えてしまう虹を作り出す能力なんて危なくて放置できん』
八幡『俺から言わせればスタンド能力全般が危なくて放置できないんだが』
失礼な。城廻先輩や裏返らないけーちゃんのスタンドみたいに幸せを与えるスタンドだってあるんだぞ?正直『堕龍の黒曜石』は危険なんて物じゃあないが、そのお陰で俺は救われているから何とも言えん。
ヴァレンタイン「して……君達が二十年前の復讐者達の襲撃を受けている理由だが…私のせいだな」
………………は?
ヴァレンタイン「早い話がプッチの逆恨みだ。大統領命令でプッチの計画を潰したことにより、彼が声をかけた二十年前の復讐者達を差し向けたようだ。まぁ、君達も彼らを相手にするようではあったようだから丁度良いだろう」
……何をしれっととんでもないことを言ってるんだよこの金髪ぅ!そっちで何とかしてくれよ!
ヴァレンタイン「君達には改めて依頼しよう。出来るだけのバックアップはさせてもらう。この世界の東方仗助やジョルノ・ジョバァーナにも声をかけている。彼らが到着するまで二十年前の復讐者達を引き付けていて欲しい」
簡単に言うけどな……。でも、中にはダービーさんやミドラーさんみたいに仲間になってくれたパターンもあるからなぁ…。
いろは「まぁ……世界が違うとはいえ、徐倫達を助けると思えばわたし達は賛成なんですが…この世界の先輩達は関係ないですよね?」
正直いろは達も関わって欲しくないんだが。四年前は何度死にそうになったかわかったものじゃあない。
そこなんだよ。まだ懸念はあるとしても、既に目的の世界の終わりを防ぐことは成されている。後始末は八幡達は全く関係ない。
そう思っていたところに意外な所から待ったがかかった。
雪乃「待って。私達はこのまま帰るのは納得いかないわ」
雪ノ下だ。
雪乃「あなた達も元の世界では奉仕部だったのよね?奉仕部の理念は何だったかしら?」
徐倫「……餓えた人に魚を与えるのではなく、魚の取り方を教えること……だったかしら?」
雪乃「そうですね。空条……先生。あなたが私の世界の平塚先生にあたるのは違和感がありますけど、その通りです。今のこの世界は餓えた人です。本来は空条先生達はこの世界に関係のない人でした。義兄さんの魂を持ち帰るだけが目的だったのですから。なのに私達の世界まで何とかしようとしてくれています。それ自体は非常に感謝をしていますが、このまま頼りきりではこの世界が奉仕部の理念に反します。いえ、本来はこの世界の人間が何とかしなければならなかった事」
雪ノ下………。お前は既に黄金の魂に目覚めているんだな……。俺達の世界の雪ノ下と同じように…。その目覚めた黄金の魂に…俺は尊敬する。
陽乃「よく言ったわ雪乃ちゃん!その通りよ!そうよねみんな!」
アナスイ「……陽乃……」
小町「その通りです!ここで置いていかれるのはポイント低いですよ!」
戸塚「小町ちゃんが行くのなら僕も行く!僕だって力はあるんだ!行かせて下さい!スピードワゴンさん!」
SPW「小町ちゃんにこの世界の僕…」
材木座「我もだ!八幡も雪ノ下殿も大切な仲間だ!」
エルメェス「……物好きだね。まるで間田を見ているようだよ」
風鈴「義輝さんが行くなら怖いけど行きます。八幡さんの為ならば私だって!」
沙希「勇気の讃歌は人間の讃歌…こんなところでそれに出会えるなんてね……」
いつもとは違う意味で目から汗が出るじゃあないか。
こうなったらこいつも……。
八幡「当然、俺も行く。家族が行くのに渦中の俺が行かない訳がないじゃないか!」
だよな。まったく……ヤレヤレだぜ。
いろは「ハチ君////」
いろは………。確かに八幡はカッコいいが、そいつは俺じゃあない。君の八幡は俺だ。浮気はダメ!……とか言える立場じゃあないか。陽乃さんや小町を受け入れちまったものな。
八幡『お前………それで良いのか?』
やかましいわ!流れでそうなっちまったものをどうすれば良いんだよ!
………と、皆が士気を高めるなか、水を差す奴がいた。
承太郎「盛り上がっている所に申し訳ないが、お前達で本当に大丈夫なのか?徐倫やそっちの男女はともかく、お前らの大半はガキばかりじゃあないか。それに……」
承太郎は八幡を睨む。いや、勘が告げている。八幡を見ているんじゃあない!八幡の中にいる俺…このDIOを見ている!
承太郎「比企谷八幡と言ったな。その中にいるDIO。お前が信用できない。俺と戦え…」
徐倫「父さん!ハッチを信用できないの!?確かにハッチはDIOだったけど、あたし達のご先祖様のジョナサンの生まれ変わりでもあるんだけど?」
徐倫が俺を擁護する。だが、世界は変われど承太郎は承太郎だ。決して自分の意見を変える奴じゃあない。
承太郎「そっちの徐倫。お前は黙っていろ。世界は変わってもDIOはDIOだ。俺は信用しない」
ジョリーン「丁度良いわ。こいつの尻馬に乗るのは気に入らないけど、年増のあたし。あんたもあたしと戦え。あんたがあたしの代わりをやれるのか、確かめてあげるわ」
うわぁ……確実に徐倫がキレたのがわかった。まさか自分自身に挑発されるとは…ヤーイ♪年増♪
ゴンッ!
徐倫が八幡に拳骨を落とした。いたそー。
徐倫「テメェ!余計な事を考えるんじゃあねぇ!ハッチ!」
何で俺の考えてることがわかる?ましてや表に出てないのに。
八幡『おい……何で俺が……』
うん。ごめんね…。
徐倫「いい度胸ね空条徐倫。伊達に年を重ねた訳じゃあないことを教えてやるわ!行くよハッチ!」
うわぁ……なし崩し的に向こうの空条親子と戦う羽目になっちまったよ…死ぬなよ?八幡。
八幡『お前が原因だろ!』
DIO『聞こえな~い(外道)♪』
←To be continued
はい、今回はここまでです。
いろいろ変わってしまいました!どうしよ……。
第2章…というかジョジョとの相違点
徐倫はこの後裁判、懲役15年➡大統領の策略により釈放された
承太郎はアフリカの奥地➡どジャアアアン!
プッチはGDst神父➡捕まりそうになり逃亡
大統領の依頼を受けているのはあいつ➡アーシス
それでは次回もお願いします。