side空条徐倫
仗助兄さんが言ってた事って本当だったわ。実のところ、異世界の自分と会うのって初めてだったのよね。異世界の自分同士って合わない…そう聞いていたけど、本当にそう思うわ。何て言うか…これはあたしじゃあない。気持ち悪い。ただその一言に限るわ。
いつも日本限定で動くか、またはジョースターがいない世界だったから…。毎回いがみ合うハッチとかマーチとかに何でコイツらは仲良くなれないんだ…と毎回思っていたけど、やっと理由がわかった。
まぁ、あっちのあたしは闘いとかまったく未経験だから精神とかそういうのが全然違うのもあるかも。
レディースやっていたからケンカ慣れはしてるけど、こいつはその延長線で物を考えている。ストーン・フリーもまだ糸を出す程度の能力だ。糸を纏めて人型にする発想が無いのだろう。
いや、本来ならそれで良いのかも知れない。父さんはあたしをスタンド使いの世界から遠ざけたかったようだしね。でも、こいつはなってしまった…スタンド使いに。
スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合う。ブラッディ・スタンドやウルフスはこの世界に関係ないけれど、いずれはあの空条徐倫もスタンド使いの宿命に出会う運命があるのかもしれない。ならば今、あたしが教えるしかない。スタンド使いの戦いを…ジョースターの精神を。
あたしは目の前にいる空条徐倫を通してこの頃の自分を思い出す。あの頃のあたしはジョースターとの関わりは希薄だった。
そして……父さんが嫌いだった。
今ならわかるけど、父さんやジョースター家はあたしを守るためにわざと疎遠になっていた。
決定的だったのは6歳の頃、あたしが高熱を出して死にかけていたとき、父さんはあたしの側にいてくれなかった。ただ日本で遊んでいた…。そう思っていた。
プッチとの戦いが終わり、父さんと腹を割って話すようになってから知ったことだけど、その時は仗助兄さんが当時住んでいた杜王町が大変な事になっていたのを助けに行っていたのだとか…。
だけど、小さかったあたしにはそれがわからなかった。ただ、父親の愛情が無かったことに憤り、グレていた。それはこの頃のあたしが話だけを聞いても理解できなかっただろう。
父さんの不器用な愛情を初めて理解できたのは水族館であたしを庇ってくれたときだから。
だからそれを経験していないジョリーンには父さんの助言や教えを守ることはない。
さっき、ジョリーンは言った。父さんを「あんた」と。
だからあたしが教えなければならない。歩む歴史が変わったと言っても、スタンド使いの宿命にいつ巻き込まれるともわからないから。
それに教師魂にも火が付いた。
まだ教師歴二年の新米だけど、あたしが教師を目指したのはこのジョリーンのような子が少しでも減るようにするためだ。
陽乃「何で空条先生の方はあんなに真剣なの?」
エルメェス「多分だけど、徐倫は……」
エルメェスは陽乃や雪ノ下達にあたしの過去の事を話し始めた。
まぁ、隠すような事でもなければ短い付き合いになるとは思うけど仲間に自分の事を知ってもらうのは良いことだ。あたしの過去を聞くことで何か気付くことでもあれば教師冥利にも尽きるってものじゃあない?
ジョリーン「覚悟はいい?年増」
徐倫「………」
ジョリーン「何よ。そんな目で睨んだってビビんないわよ?」
徐倫「あたしの殺気を感じろ。ジョリーン・クウジョウ。これから始まるのはただのケンカじゃあないわ。ストーン・フリー」
あたしがストーン・フリーを人型の状態で出す。すると彼女は驚いた表情をする。
ジョリーン「人の形をしているスタンド!?ストーン・フリーが!?」
徐倫「行くわよジョリーン。これからあんたはスタンド使いの戦い方を知らなければならない。スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合う。それがもし命を狙う敵だった場合、あんたは戦わなければならないの。誰でもない、あんた自身が!」
あたしはより一層殺気を濃厚にする。
風鈴「さ、寒い…鳥肌が…あのキレイな空条さんが…凄く怖い……」
小町「怖い……戸塚さんに助けてもらったときの不良の人なんかの比じゃない…」
沙希「こんなものじゃあないよ。本気の空条先生の殺気は。あっちの空条先生に教えてるんだ。恐怖を乗り越える為の勇気を持たせる為に」
あたしは殺気に飲まれている彼女の懐に一気に踏み込む。
S・F「オラオラオラオラァ!」
ジョリーン「ああああああああああ!」
ストーン・フリーのラッシュがジョリーンにクリーンヒットする。手加減はしてあるが、ダメージは確実に入る威力だ。
ジョリーン「イテェェェェェェェ!」
徐倫「テメェ!痛がってる暇があるなら次の攻撃に備えろ!反撃の体勢を取れ!ピチピチなんだろ!年増の攻撃を受けて無様に転がり回るのがあんたの覚悟なわけぇ!テメェはホントに空条徐倫か!オラオラオラオラァ!」
あたしの追撃がジョリーンに入る。
ジョリーン「ああああああああ!ちくしょう!テメェだけ人型スタンドなんてズルいじゃあないの!」
甘ったれているんじゃあない!
徐倫「実戦に卑怯もズルいもあるか!泥を啜ってでも勝たなくちゃあならないんだよ!心の力で動かし自分の身を守れ!テメェのスタンドは飾りか!その首から上に着いている脳ミソは火葬場に持っていくためだけの予備部品か!相手を罵る暇があるなら勝つための策のひとつでも考えてみせろ!それができねぇなら空条徐倫を名乗るな!それでもあんたはジョジョ!?」
ジョースターの戦いは工夫し、策を弄して敵の隙を突くことにある。考えろ空条徐倫!少なくともあたしは何度も泥を啜った!GDstの檻の中で石の壁じゃあなく、父さんの暗示を示す星を見ていた!暗い懲罰独房の中で何度血まみれで倒れても、再び星に会うために這ってでも諦めはしなかった!誰の力でもなく、自分の力で!
ジョリーン「あたしをジョジョと呼ぶな!そう呼んで良いのはママだけだぁ!」
徐倫「あんたのような女に誰がジョジョと呼ぶか!ハッチの前世のジョナサン・ジョースター!ジョセフおじいちゃん!父さん!仗助兄さん!ジョルノ兄さん!そしてあたしの後を継いだ静・ジョースター!代々受け継がれて来たジョースターの誇り高き黄金の精神の代名詞である『ジョジョ』の名を、そこで這いつくばって泣き言を言っている女が名乗って良い名前じゃあない!二度とあんたがジョジョと名乗るな!」
あたしがそう言うと、ジョリーンは体に鞭を打って立ち上がる。そうよ。そこで立ち上がれないようなら本気で
ジョリーン「言わせておけば好き放題言いやがって!誰があんたの指図を受けるかぁ!とことんやるっていうのなら受けて立つわ!アメリカ方式!フランス方式!日本方式!イタリアナポリ方式………」
立つのもやっとのジョリーン……でも、目付きは変わった。甘えが残っていたその目に、毎朝鏡で見ているあたしの目に近付いて行く。
アナスイ「あの目だ…俺がずっと見続けていたい徐倫の目はあの目なんだ…」
エルメェス「目覚めたようね。真の6代目ジョジョが」
ジョリーンはあたしのストーン・フリーと同じように糸を何重にも重ねて人の形を作る。あたしと同じ…真の姿のストーン・フリー…。
ジョリーン「世界のフィンガー……くたばりやがれよ!」
S・F(ジョ)「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
S・F(徐)「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
拳と拳がぶつかり合う!ストーン・フリー同士のパワー比べ!お互いの拳から血が吹き出すが、構わず続ける!
S・F「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」」
しかし、同じスタンド、同じスペックでの拳の押し合いは経験の差と受けたダメージの差により…あたしに軍配な上がった。
ジョリーン「ちく……しょう……負けた……もう一歩も動けねぇ…」
徐倫「やれば出来るじゃない。合格よ。6代目ジョジョ自身があんたを6代目と認めるわ。空条徐倫」
ジョリーン「次は…勝つ…」
そう言ってジョリーンは気絶した。
徐倫「まったく…ヤレヤレだわ」
ジョリーン・クウジョウ(ストーン・フリー)…
sideDIO
承太郎「成長したな…徐倫…どちらも…」
承太郎は優しい瞳でジョリーンの成長を満足げに見守っていた。
DIO『さて…次はお前だ。八幡』
八幡『凄かったな…空条さんのストーン・フリー…』
DIO『ああ。あれがジョースターだ。そして…承太郎のスター・プラチナは数あるスタンドの中でも最強と呼び名が高い。心してかかれよ』
八幡『最強のスタンド使い…か…けど、やる!あんな凄い戦いを見せられたんだ!ここで怖じ気付いていたらこれから先は何も守れない!』
八幡が闘士をたぎらせる。やるな……今日初めてジッセンヲ経験したばかりなのに、承太郎相手に呑まれていない。大した奴だよ。お前は……。
八幡「ザ・ワールド!」
承太郎「スター・プラチナ」
八幡と承太郎は互いにゆっくりと歩を進める。この光景は三度目だ。
承太郎「ほう…近付いて来るか…比企谷八幡」
思い出すな。エジプトを…
八幡「近付かなきゃ、あなたを殴れないんで」
承太郎と八幡が互いの射程内に入る。
承太郎「まずは力比べと言うわけか…良いだろう。かかってこい」
しばらく睨み合った後…二人の両目がくわっと見開く!
T・W「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」
S・P「オラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
さっきのやり直しとも言えるような純粋な拳のぶつかり合い。互いのスタンドの拳圧で徐々に体が浮かび上がる。だが、悲しいかな…経験の差が如実に現れ始める。
12年前の美浜大橋での決闘よりも…。今日初めて実戦を経験した八幡と、百戦錬磨の最強のスタンド使いの承太郎…。承太郎はスタンド使いとしては今の俺でも手を焼く。
S・P「オラオラオラオラァ!」
八幡「がふぅ!」
スター・プラチナに殴り飛ばされ、ダウンする八幡。
しかし、心は折れていない。
八幡「コォォォォォ……」
波紋の呼吸を整え、受けたダメージを高まった自己治癒力で回復する八幡。
八幡「最強と言うだけはありますね。空条博士」
承太郎「君もな。とても今日初めて実戦を経験した若者とは思えない。特にその根性は大したものだ。波紋の呼吸があったとしてもな」
八幡「使うか……あれを……」
まさか……
DIO『やめろ!承太郎にそれは……』
八幡「ザ・ワールド!時よ止まれ!」
やっちまった…教えておくのを忘れてた!承太郎相手にそれは悪手だ!完全に俺のミスだ!
時が制止した中で八幡は承太郎に近付く。
八幡「くらえ!無……」
S・P「オラオラオラオラァ!」
完全に攻撃が当たると信じ切っていた八幡は、まともにスター・プラチナの攻撃をカウンターで受けてしまい、再びふっとんでダウンする八幡。
陽乃「キャアアアア!はちまぁん!」
陽乃さんが駆け寄ろうとするが、それをいろはが止める!
いろは「ダメです!割って入っちゃダメなんです!こらえて下さい!ハルさん!」
いろはは必死に止める。
八幡「ぐ………何故……」
承太郎「スタープラチナ・ザ・ワールド。俺のスター・プラチナとお前のザ・ワールドは同じタイプのスタンドだ。俺のスター・プラチナも時を止め、止まった時間の中を動くことが出来る。DIOは教えていなかったようだな」
DIO『すまん……完全に俺のミスだ』
今ので受けたダメージも波紋で回復するが、精神的なダメージは小さくない。ギリギリまで引き付けて、最大限のダメージを貰うタイミングまでピクリとも動かないでいやがった……承太郎のやつ、相変わらず何て度胸と根性だ…。
八幡「はぁ……はぁ……DIO。貸しな」
DIO『ワリィ。こればかりは謝るしかない』
ホントに何て奴だ……決して小さくない精神的ダメージを気力と根性で起き上がる。こいつ…マジで尊敬に値する奴だ。息を乱しながらも…。波紋で直したとは言え、軽い骨折だってあったのに……今日初めて実戦を経験した奴が…承太郎相手に心が折れずに食い下がってやがる!…あの承太郎相手に…
承太郎「これ以上は弱いものいじめだ…終わらせるぞ」
スター・プラチナで止めを刺すべく承太郎は突進してくる。
承太郎。お前の……
負けだ。
八幡「コォォォォォ!」
バリバリバリバリバリバリバリバリ!
承太郎「ぬぅぅぅぅぅぅぅ!」
こいつ……教えてもいないのに騙しの手品で承太郎を欺きやがった…。
ハーミット・パープル・ネオ……。
コイツ…吹き飛ばされながらもハーミット・パープル・ネオを地面に張り巡らせて承太郎の足に巻き付けやがっていた。2つのスタンドを同時に使う俺でも長年の修行を経て習得した技術を直感でやってのけやがった…。
だからこその大した根性。俺がザ・ジェムストーンを使う時のようにバランス良くやったわけじゃあない。精神に過負荷がかかるその技を、根性で持ちこたえ、承太郎に勝ちやがった…。承太郎は気絶。まぁ、八幡もここで終わりだが…。昨日今日スタンドを使えるようになったばかりの者がそれをやればタダでは済まない。ダブルノックダウン。
だが、先に気絶したのは承太郎の方だ。実質、お前の勝ちだ…何て……野郎だ………。
八幡の気絶と共に、俺の意識も闇に沈む。だが、俺は満足していた。弟子の成長を嬉しく思う時ってこんな時なんだろうな…などと八幡が聞いたら怒りそうな事を考えながら…。
空条承太郎(スター・プラチナ)…
比企谷八幡WithDIO(ザ・ワールド&ハーミット・パープル)…勝利の後に気絶。
←To be continued
はい、徐倫同士の戦い。そして時空と中身を変えた二度目の八幡と承太郎の決闘でした。
アルスさんの八幡の覚悟と根性は読者として見ていた時も凄いです。何せ二度も車から陽乃を庇っているのですから。それを承太郎との戦いで出させて頂きました。
それでは次回は………デラウェアです。