sideジョセフ・ジョースター
八幡「なんか……お前らだけで良いんじゃね?一部の例外はあっても1つ1つがブラックトリガークラスの能力なら俺達いらねぇだろ」
コントロールをワシらの八幡から奪い返した向こうの八幡は、目を腐らせながらそう言ってきた。
んん?何か勘違いしておるな?この小僧は。
先にリサリサ先生のとんでもない能力を見せられておるからそう感じるのかも知れんが、それじゃあいかん。
戦いと言うものは能力の強弱で決まるものじゃあない。
例えばワシの能力なんかが如実に語っておる。
ワシのスタンドは本来は戦闘向きじゃあないのじゃからな。じゃが、それでも何度か敵に勝っておる。
中にはハーミット・パープルを直接攻撃に使わずともな。
ジョセフ「八幡よ。お前さん、まずは波紋やスタンドの使い方をじいさんから教えて貰えばよい。シュトロハイムやシーザーも見てくるがよい。のう?じいさん」
ワシがそう言うと、八幡は顔をしかめた。
八幡「ジョジョが言っているぞ。じいさんは止めろってな。俺もできればやめて欲しい。それに、何か黒い笑いをしてやがるぞ」
伝わったようじゃのう。流石はワシの弟子じゃ。ワシが感じたことをじいさんの方の八幡も思ったのじゃろう。
いろは「じゃあ私達も…」
ジョセフ「いろはと陽乃、めぐり嬢ちゃん、それにリサリサ先生はのこっちょれ。大事な話があるからのう」
呼ばれた者達は怪訝な顔をしながらも黙って頷いた。
SH「何かよくわらぬが、貴様が録な事を考えておらんことはよくわかった」
ジョセフ「まぁのう。お前さんらにとってはそうなるじゃろうな。まぁ、今は早く行くのじゃ」
八幡「………とりあえず模擬訓練所に行くか。一種のバーチャル空間だ」
便利な場所があるものじゃのう?そんなものがワシらの世界にあれば小町のルビーレーザーの訓練もこと欠かんじゃろうに。ままならんものじゃのう。
八幡が出ていくと、小町を除くアーシス連中もそれに付いていく。
ジョセフ「行ったか…ちょいと待っておれ」
ワシはハーミット・パープルを出して腕に出現した時計型通信機を起動させる。
改良に改良を重ねたこれは、人型スタンドを持たぬワシのようなタイプのスタンド使いがスタンドを使った場合、本体の腕にこの通信機が出現するように改良された。
ヴァレンタイン『ヴァレンタインだ。ジョセフ老。いかがされたかな?』
ジョセフ「閣下、例のゴーグルとグローブ、パットをこちらに送って貰えんかのう」
ヴァレンタイン『ふむ……あれが必要になりましたか…そう言えばそちらの世界は五つの世界では唯一、スタンドが関わらない世界でしたな。わかりました、すぐにお送りいたしましょう』
そこで通信が切られる。そして数秒もしない内に…。
ヴァレンタイン「どジャアァァァァン」
と、アメリカ国旗とともにヴァレンタイン大統領閣下が現れた。
いろは「うわっ!いきなり人が現れた!」
陽乃「誰っ!?この人」
おおっ。スタンド使いじゃあないと、この国旗は見えんのじゃな?
ジョセフ「ワシらの世界のアメリカ合衆国大統領、ファニー・ヴァレンタイン大統領閣下じゃ。スタンド使いで能力は異なる平行世界を行き来する能力。ワシらも閣下のこの能力でこの世界に来たのじゃ」
いろは「だ、だ、大統領!?ハッハー!」
陽乃「いろはちゃん……時代劇じゃないんだから…」
今回はいろはか……。閣下よ、顔が「またまたやらせていただきましたーん♪」になっちょるぞ。実は初対面のこの反応を楽しみにしておるな?
ヴァレンタイン「ふむ…楽にしたまえ。この世界は私が大統領じゃあないようだからね。ジョセフ老。とりあえず50セットくらいで十分ですかな?」
ジョセフ「十分ですじゃ。わざわざありがとうございます。いろはに陽乃よ、これを付けるんじゃ」
ワシはゴーグルとかの一式いろはと陽乃に渡す。
いろは「何か名前ネタでいじられた気がしますね」
勘のいい子じゃのう。いろはと陽乃は渡されたゴーグルとグローブ等を装着した。それを確認してから…
ジョセフ「では、ワシの右手をみるのじゃ」
ワシがハーミット・パープルを出現させる。
陽乃「え?ジョセフさんの手から紫色のつたが…」
いろは「さっき先輩が言ってたのってこれなんですね?さっきは見えませんでしたのに…」
驚いちょる驚いちょる。
ジョセフ「これはスタンド使いでなくともスタンドを見て触る事の出来る装備品じゃ。触ってみるかの?」
二人がハーミット・パープルに触る。
陽乃「へぇ……これさえあれば、スタンドでも攻撃出来る…という奴ね?」
ジョセフ「そうじゃ。ある人物がスタンド使いじゃあ無くともスタンド使いと戦える為に開発したものじゃ。以降はこういった世界での模擬戦とかの為に使っておる。そうでもないとワシのスタンドならともかく、ワシの世界のいろはのようなスタンドが相手じゃとなにも出来んからのう」
いろは「わたしのスタンド……ですか?」
ジョセフ「そうじゃ。ナイチンゲール・エメラルド。人型スタンド…と言ってもわからんじゃろうな」
ヴァレンタイン「ならば私が帰るついでに実演しましょう。D4C」
閣下が珍しく人型の状態でスタンドを発現させた。
陽乃「お化けみたいなのが出てきた。これが人型スタンドなんですね」
リサリサ「スタンドの形としてはわりとポヒュラーなタイプですね。閣下、ありがとうございました」
小町が頭を下げてお礼を言うと、閣下も頷き…
ヴァレンタイン「どジャアァァァァン」
と国旗に包まれて帰っていった。
ジョセフ「とまぁ、いろはのスタンドも人型なのじゃが、ナイチンゲール・エメラルドは射程が長くて最大500メートル先まで本体から離れる事が出来る。しかもその拳の威力はランク分けで言えばB級で、ベビー級ボクサーのパンチは軽く越えておる上に、エメラルドの宝石のような弾丸を発射できる。しかも、その弾丸には傷を治す能力もあっての、いろはは一撃でのさん限りはまず倒れん。まぁ、欠点もあるがの。完全な無敵など、どこにも存在はせんと言うことじゃ」
欠損は傷口を合わせんと治せんし、物を治す事も不可能じゃ。ましてや死んだ物はどんな能力も直せん。
ジョセフ「ナイチンゲール・エメラルドみたいなスタンド相手じゃと、スタンド使い以外は倒すのが難しいんじゃ。それ故に、模擬戦に限りじゃがこれらを貸すことにしておる。まぁ、今回のメンバーに遠隔操作型のスタンド使いはおらんがのう」
弾丸を射つタイプはおるがの。
リサリサ「ねぇ、ジョセフ?だったら何でみんなを行かせたの?これの説明だけならみんなを行かせる必要なんて無いじゃんか?」
確かにの?これだけなら人払いをする必要がない。
ジョセフ「もちろん、本題はこれからじゃ。小町はこんなしょうもないミスはせんじゃろうが」
ワシはいろはと陽乃に本題を話す。八幡には言わずとも伝わっておるようじゃし。
いろは「え……それ、良いんですか?」
陽乃「こっちとしてもありがたいのだけど…」
ジョセフ「構わん構わん。最後にワシと……」
sideジョナサン・ジョースター
訓練室。俺と八幡はトリオン体になって河川敷のある市街地の模擬訓練場に立っていた。特に目標とかは出ていない。
さて、まずは波紋からだ。
ジョジョ『まずは波紋の呼吸だ。体を借りるぞ』
八幡「あ、ああ」
俺は八幡の体を借りる。
ジョジョ「今からやる俺の呼吸を体で覚えろ」
コォォォォォォォォ……
八幡の体に波紋の力が生まれ、太陽のエネルギーが満たされて行く。
八幡『すげぇ……トリオン体に更に力がみなぎって行く…』
ジョジョ「呼吸を覚えたか?」
八幡『ああ……』
よし、ならば実演して貰おう。
俺は八幡に体を返す。
ジョジョ『なら、やって見てくれ。これはスタンド能力と違って呼吸法による技術だから俺がいなくなってもお前の技術として残る。迷惑をかけている俺からの贈り物だ』
八幡「肺の中の空気を全て吐き出すようなイメージで…コォォォォォォォォ……」
おお、流石はA級の部隊長。かなりの才能だ。
ジョジョ『そのまま川の中に入ってくれ。その呼吸を維持しながら、川に足を付けてみろ』
八幡は言われた通りに川に足を付ける。
八幡「なっ!水の上に立っている!」
ジョジョ『驚きで呼吸を乱すな。水の上に立つのは波紋の基礎だ。これを意識してやれば、身体能力のあらゆる能力が向上する。100キロを全力疾走をしても息切れ1つしないくらいで初級をクリア…って所だな。才能がある奴が真剣に1月かけて修行すればそのくらいの領域に達する。その領域で、生身でトリオンにかすり傷くらいはダメージを与えられるかな?』
小町やジジイ、俺はこれを極めてるから初めてトリオン体に生身でダメージを与えられる。上級クラスでならダメージを与えられる領域に達するかな?
今日初めて波紋を使った八幡では生身でトリオン体にダメージを与える事は不可能だろう。だが、それでも波紋を扱えるのと扱えないのでは身体能力はだいぶ違う。
トリオン体との相乗効果も望めるだろう。
八幡「なるほど。リサリサが三輪を倒せた秘密はこれだったのか。スタンドだけじゃなく…」
ジョジョ『まぁ、あいつらはそれ以前の問題だ。あの時、何故小町が戦ったと思う?何故ガードをジジイに任せたと思う?』
八幡「………強いから、じゃないのか?」
それもある。だが、そこじゃあない。
ジョジョ『ペテンに嵌められたな?正解は小町とジジイ以外にあそこまでの戦果は望めないからだ。それ以外の奴らじゃあ負けていた。と言うか、殺されていたよ。それを悟られない為に確実に勝てるペテンを仕掛けたんだよ』
八幡「何だって!?」
ジョジョ『忍田さんは騙されたんだよ。小町とジジイに見事にな。中核となるA級をあっさり倒せば敵は浮き足立つ。それも三輪隊クラスを完勝させれば。ここにいる上級以上の波紋の戦士はジジイと小町。大志で初級に毛が生えた程度、あとは波紋の適正はゼロに等しい。お前らは能力で負けたんじゃあない。戦略で負けたんだ』
騙し勝ち。小町がその圧倒的な身体能力とスタンド能力で三輪隊を徹底的に何もさせずにボコボコにする。そうなれば敵は浮き足立つ。その作戦に見事にはまる。そうなれば忍田さんも勘違いする。こいつらは全員ただ者ではない…と。
ジョジョ『これを卑怯だとは思わないよな』
八幡「引っ掛かる方が間抜け……という奴か」
ジョジョ『わかってるじゃあないか。卑怯、汚ないは敗者の戯言。実戦なんていかに相手を騙すか…そこに限る。正々堂々なんてスポーツじゃあ無いんだからな』
八幡はしばらく絶句したあとにふ……と笑った。
八幡「そこまで卑怯さを誇れるお前の神経にむしろ尊敬できるよ。いや、命のやり取りが当たり前のボーダーやお前らのアーシスなんかでは本来それがあるべき姿なんだろうな」
ジョジョ『スタンド使いの戦いなんて正攻法なんてやる奴がバカの極みと言えるまである。じゃあ、次はスタンドだ。まずはスタンドの出し方だな。ターゲットを頼んで貰え』
次はスタンドの使い方だ。
八幡「遥ぁ。ターゲットを頼む」
八幡は綾辻に頼んで目の前に的を出して貰う。
ジョジョ『まずはザ・ワールドを出して貰うところからだ』
八幡「どうやって使うんだ?」
ジョジョ『まぁ、慣れれば特に何かをする必要はない。黙って突っ立っててもスタンドは出せる。けど、まあ…さっきジジイが見せた写真の黄色い人型のビジョンを思い浮かべながら、ザ・ワールド!と叫んで見ろ』
まぁ、防衛本能なり破壊衝動なり本体の欲求に応えるのがスタンドだから、いちいち叫ぶ必要は無いんだがな。
八幡「ザ・ワールド!」
ビジュゥゥゥゥン!
八幡からザ・ワールドが飛び出す。
八幡「これがザ・ワールドか…」
ジョジョ『なんと無くつかめたか?スタンドの出し方が。スタンドの操作は簡単だ。心の命じるままに動かせば良い。すべてのスタンドがそうではないが、ザ・ワールドはそういうスタンドだ。試しに疑似ネイバーを出して貰え』
八幡「注文の多い奴だな。遥、バムスターを頼む」
遥『了解だよ。八幡』
綾辻は要求通りに疑似ネイバーを出す。
ジョジョ『じゃあ、爆裂拳でも放つつもりでバムスターを攻撃してみろ。ザ・ワールドの基本スペックを体験して見てくれ』
八幡は言われた通りにザ・ワールドのラッシュをバムスターに叩き込む。
T・W「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!無駄ぁ!」
圧倒的なパワーとスピードで叩き込まれる無駄無駄ラッシュ。
バムスターは徐々に亀裂が発生し、最後に粉砕された。弱点の目を攻撃せずに……
八幡「なんて破壊力とスピード…」
ジョジョ『ザ・ワールドは簡単に岩を粉砕できるパワーと拳のラッシュは音速、コピー機のようにスケッチできる精密性は全スタンドの中でもトップクラス。スタンドを通して音速の世界を見ることができる。だが、弱点もある。射程は1~2メートル。典型的な近距離パワー型スタンドだな』
八幡「それでも十分だと思うがな……あとこの無駄無駄とかいう掛け声は癪に障るな」
それは仕方がない。前世の口癖だ。
ジョジョ『次はこう叫べ『ザ・ワールド時よ止まれ』』
八幡「ザ・ワールド!時よ止まれ!」
ブゥゥゥゥン…
世界から色がなくなり、モノクロになる。
ジョジョ『これが時の止まった世界だ』
八幡「これが時の…」
ブゥゥゥゥン…
八幡「止まった世界……って一瞬で終わったぞ」
ジョジョ『今は不馴れだからそのくらいだろう。まずは1秒止める事が目標だな』
一瞬を止めるだけでも十分チートだがな。
ジョジョ『それよりもだ。今からお前のチームと俺のチームのルーキー達、模擬戦でもしてみないか?お前がブラックトリガー級と言っている事でも、やり方次第だと言うことを見せてやる』
八幡「は?」
模擬戦室に一色と陽乃さんが加わる。お、例のゴーグルとグローブ一式を装備している。
これでスタンド使いの有利性はなくなったな。
遥『が、頑張ってね。八幡』
頑張れよ?八幡。まぁ、見せてやるさ。戦いは能力の優劣で決まるものじゃあないってな。
←To be continued
今回はここまでです。
忍田さんを圧倒したのは小町とジョセフのペテンだったという落ちです。
次はどちらが勝つでしょうか?
それでは次回もよろしくお願いします。