sideジョセフ・ジョースター
迅「幻想郷の巫女が言っていたのはこの事か。俺が知ったことを時が来るまで黙っていろと言っていたのは。他の平行世界では起こらない、この世界が陥る危機ってのがな」
ジョセフ「ちょっと待つのじゃ」
ワシはここでその男の言葉を遮る。
どうしても見逃せん内容じゃからな。
ジョセフ「その言葉が本当ならお前さんはワシらがこの世界に介入してくることや、このアホ娘がやらかすことも知っていた…と言うことになるが、間違いないか？」
ザワザワ…
周囲から声が漏れ始める。
迅「そういうことになりますね」
「マジかよ……じゃあ迅さんは止められてたじゃんかよ」
「流石は裏切り者の玉狛支部と呼ばれてるだけあるぜ」
小町がやらかした事に怒りを覚えているボーダーの者達から悪態が出てくる。特に後者は悪意を感じるのう。
全員では無いことから一部の者達だけじゃが、その玉狛支部というのは過去に何かがあったと見るべきじゃろう。取り込んだばかりの頃のイタリア支部…パッショーネが財団で異端扱いされていたようにのう。
ジョセフ「幻想郷の巫女というのは、さっきの映像に出ていた巫女で間違いがないのじゃな？」
迅「ええ。あの巫女服なのにスカート穿いていて、しかも袖と腋を露出しているあの巫女です」
随分具体的じゃのう。一部の女性隊員から白い目で見られておる所から、日常的にセクハラとかしていそうじゃのう。まあ、そんな事はどうでもええわい。
問題なのはその中身じゃ。
ジョセフ「お前さんはどういう内容を知ったのじゃ？可能なら経緯も含めて教えて欲しいのう」
迅「そうだなぁ…俺のサイドエフェクトがそう言っていただけだからなぁ。あ、ぼんち揚、食います？」
ジョセフ「貰おうか。それで、お前さんのサイドエフェクトとはなんじゃ？」
ワシはあげ煎餅のぼんち揚を貰う。歌舞伎揚とかと同様にこれは結構好きなんじゃよ。
迅「知っている人間の少し先の未来を見ることが出来る…と言えばしんじます？」
ジョセフ「信じよう。映像にもあったトト神というスタンドがそういう能力じゃし、ワシら波紋の一族にもそういう技術があるのでな。このアホがこんなことになる事もそれで知ったわけじゃ」
ジョジョ「ジジイ……人の頭をポンポン叩くんじゃあない」
迅「前例があるだけすんなり受け入れてくれたな。ならば説明も楽だ。サイドエフェクトというのはジョースターさん達の言うところのスタンド能力に近い。もっとも、能力だけは…スタンドのように幽霊みたいな物は出せませんがね。もう一枚食います？」
ジョセフ「気前がええのう。貰おう」
食い過ぎかのう。隣のジョジョがジト目で見ておる。ああ、暗殺を気にしておるのか。
安心せい。こいつはそんな真似はせん。
博麗霊夢の名前が出てきた以上は協力者じゃろう。
ならば呉越同舟じゃ。仲間とは認めんがのう。
ジョセフ「幻想郷の名前が出てきた以上は信じるよ。霊夢は後でとっちめるとしてのう。で、結論から先に聞かせて貰うその異変の内容とはなんじゃ？ワシら平行世界の力が必要な事とはなんじゃね？」
重要なのはそこじゃ。
迅「カーズ……と呼ばれる人型ネイバーが大規模侵攻を起こして来るそうですよ。いつ、どこでまではまだ不確定ですがね」
カーズ…カーズじゃと！？
ワシらの世界で究極生命体になったあのカーズか！
迅「ああ、博麗霊夢が言うにはそっちの世界の同一人物では無いですから安心して欲しいと言ってましたよ？ジョセフさんが倒したカーズは宇宙空間で小隕石のまま漂っているみたいですから。この世界のカーズだと思ってください」
それでもカーズはカーズじゃあないか！
またしても柱の一族が絡んでくるのか！
迅「いやぁ、助かりますよ。今までとは種類の違うタイプのネイバーなんでどう伝えて良いかわかりませんでしたし、ニネスの力を借りるなんて言ったら三輪みたいなネイバー嫌いにとっては受け入れられるものじゃありませんからね」
ジョセフ「ニネス？」
ワシが聞かない単語に首を傾げると…。
ジョジョ「俺達のコードネームだよ。『near NAVER standuser』の略だ。ネイバーに近しいスタンド使いだとよ。皮肉な名前の付け方だ」
まぁ、この世界の人間からしてみたらワシらもネイバーみたいなものじゃからのう。
邪魔にならなければどう呼ばれようとも気にせんわ。
それよりも心配なのは……。
リサリサ「………」
ＳＨ「………」
シーザー「………」
八十年前に柱の一族と戦った連中じゃのう。
ジョセフ「是非とも協力させてくれ。カーズがワシらの世界と同じかわからんが、柱の一族が関わっておるなら戦うのは波紋の一族の使命じゃ。それに、この世界の敗北はワシらの世界にも影響が出るようじゃ。特にトリオンが多そうな波紋の一族はネイバーの格好の拉致対象なのじゃろう？」
ジョジョ「よりにもよってカーズかよ……。だが、形は違えど前世の借りは返せるな……。石仮面を作ったカーズ……こんな形で借りを返すことになるとはな」
おうおう、ジョジョ八幡も燃えておるわ。
確かにカーズはジョナサン・ジョースターにとってもＤＩＯにとっても恨みがある。
全ての元凶の一人といっても過言じゃあない。
菊地原「おいおい。ほとんどネイバーと変わらない奴等がボーダーと協力？冗談だろ？」
「そうだ。こいつらのせいで半数近くのボーダーがやられたんだ！そいつらに協力してもらうなんて許せるかよ！」
「俺は御免だぞ！こいつらの人生が壮絶なのはわかったが、それとこれは無関係だ！」
一人、また一人と隊員が出ていく。ふむ、まぁ盛大にやらかしたからのう。それは仕方がないか……。
迅「玉狛は動くぜ。こっちの世界の問題だからな」
二宮「結局は防衛任務だ。誰が一緒でも問題はない」
嵐山「近界民に近い者をボーダーに入れるなんて普通はありえませんが、よっぽどの敵なのでしょう。迅は意味のないことはしない男です。その判断にしたがいましょう。ジョースターさん、よろしく頼みます」
出ていく者もいれば、この場に留まる者もおる。
この際じゃ。小町の平行世界嫌いも彼らを通じて直りゃええ。
小町の平行世界嫌いは基本世界のドン底の八幡の状況を見たせいだと聞いておる。そこに基本世界の小町が深く関わっておるそうじゃ。似たような世界が多数あり、兄が大好きな小町は基本世界を始めとして平行世界を大きく嫌うようになった。
基本的に平行世界の自分同士は不仲になりやすいのじゃが、小町は特に酷いらしい。それは先程のやり取りで良くわかった。魂の共鳴がなければ置いて来るべきじゃと思うくらいには…。
この世界の八幡の人間関係は良好だ。ボーダーの中では…じゃがな。
由比ヶ浜の問題もある。
ジョセフ「ボーダーの方の八幡よ」
ジョジョ「ジジイ、今代わるから待ってろ」
八幡の鋭く厳しい目が厳しいながらも澄んだ目に変わる。戦いを基本としながらも表か裏かの差が目に出ておるな。
八幡「何です？」
ジョセフ「明日、学校に登校するか？」
八幡「まぁ……そのつもりですね」
ジョセフ「済まんが、由比ヶ浜を連れていってくれんかのう。あと、シュトロハイムもじゃ」
八幡「ガハマをですか？あんまりうちの世界の奉仕部には期待しない方が良いですよ？映像で見た最初の頃のあいつらよりも酷い状況です。いえ、そちらのあいつらはそうなった理由がわかるので、仕方なかったと思いますが、アイツらは…。ガハマが由比ヶ浜を見たら、余計に自己嫌悪に陥らないか心配ですよ」
ジョセフ「おいおいおいおい！どういう奴等なのじゃ？お前さんにこうまで言わせるほど酷い雪乃と由比ヶ浜は」
ワシが聞くと…。
八幡「雪ノ下は自分の考えていること以外は全て正しい。間違っているのは世間。すぐに人を罵倒。なのにやることなすこと中途半端。由比ヶ浜は自己中で、気に入らないとキモいとか言ってきます。事故の件に関してもお礼や謝罪はありませんね。ガハマやそちらの雪ノ下はしっかりと謝っていたようで。羨ましいですよ。映像の中の二人がどんどん成長していった姿を見たときは」
ぬうぅ。まるで初期のような二人じゃな。いや、由比ヶ浜は最初からこの世界とは違う感じじゃったか…。雪乃も成長してからは頼りになるようになったしのぅ。
閣下は言っておった。成長しなかった二人を見せることで由比ヶ浜が更に前に進めるようになると。
荒療治じゃが、賭けてみよう。
ジョセフ「八幡よ。是非とも頼む」
八幡「わかりました。良いですよ。ただし、責任は取りませんからね。それだけは了承してください」
ジョセフ「元々そのつもりじゃ。恩に着るぞ、八幡」
頼んじゃぞ？ジョジョの八幡。
sideジョナサン・ジョースター
あのジジイ。由比ヶ浜をどうするつもりだ？
今の由比ヶ浜は変な刺激を与えたら危ないんだぞ。
精神が壊れかけていやがるのがすぐにわかる。
ジョジョ『あのジジイ…妙なことを言い出しやがって』
八幡『だが、お前は言っていただろう？ジョセフ・ジョースターは意味のないことはやらない…と。今回のことで由比ヶ浜を総武高校に行かせる事に何かしらの意味があることは確かだと思う』
そうだろうとは思う。
…………
ガハマ『そんなんだから、クラスに友達が静ちゃん以外、友達がいないんじゃあないの！？キモイ！』
ジョジョ八幡『俺にとってはジョジョ以外、すべからくどうでも良い。むしろ、そんな価値が、お前にあるとでも思っていたのか。自分を知れ』
初めて会ったときの事を思い出す。
あの時は覚悟の無い奴だと決めつけ、アイツを嫌っていた。
雪乃『不思議なことに優れた人間ほどに生き辛いのよ、この世界は。そんなのおかしいじゃない。だから変えるのよ。人ごと、この世界を』
ジョジョ八幡『それを止めたのが俺達だ。お前も４年前のフロリダで起きた刑務所の件は知っているだろう？お前みたいな事を考えたテロリストがスタンドの力でそれをやろうとした。それを食い止めたのが俺達だ！もし、それをやろうとしてみろ…その時は俺達アーシスは…お前を……殺す。首謀者以下、その協力者はほぼ全員を俺達は始末した』
雪乃『殺人者……』
ジョジョ八幡『ああ、そうだ。殺らなければ逆に俺達が殺られていた。世界を変えようとするというのはそう言うことだ。本当のスタンド使いの戦いは綺麗事じゃあ済まない事を知れ。比喩でも何でもない。俺達は既にこの手を血で染めている。もし次に軽々しくその言葉を発したら、命の保証はしない…』
エリナいろは『何でもない事を言ったつもりの言葉が、相手の逆鱗に触れるんです。既に一度、血に染めた手ですから、私たちは止まりません。ハチ君が言った言葉は脅しじゃありません。私達ジョースターの血統は、この百年間、そういった闘いの連続でした。ジョースターの歴史は闘いの歴史…アーシスのメンバーは少なからず人の命を奪った十字架を背負っている』
リサリサ小町『容赦はしません。あの事件は小町達も死ぬ覚悟で戦い、小町もお兄ちゃんもお姉ちゃんも危うく死にかけました。当時十歳だった小町が、です。二度と…世界を変える…などと軽々しく言わないで下さい。小町達だって好きで手を汚した訳じゃあありません。あなたの親戚だったジョルノお兄ちゃんも、その為に自分の兄弟を３人も殺さなければならなかった辛さは、あなたにはわからないでしょうけど！』
この世界の雪ノ下はまだこんなことを考えているのだろうか？
八幡『多分、変わっていない。迅さんが言っていた。職場見学でボーダーとトラブルを起こした時、アイツは退学になってもおかしくなかった。だが、もし退学になっていたら、アイツは界渡りをしていただろうって』
ジョジョ『界渡り？』
八幡『近界に…ネイバーの世界に無断で行くことだ』
あの頃の雪ノ下と変わっていない雪ノ下…か。
そして、勘違いしていないバージョンの俺の想像通りの由比ヶ浜。
ジョジョ『場合によっては俺が出るぞ。八幡』
八幡『むしろ俺はアイツらと関わりたくない。任せるわ』
どうなるだろうな。総武高校…。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
次回はアンチ回です。
今まで避けていたからあれですが…。