やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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紅魔館到着です。


華人小娘とフラワーマスターと女教皇

sideミドラー

 

流氷が浮かぶ霧の(しかも今は赤い)湖の上空を渡りながら、あたし達は一路妖怪の山の麓にある紅魔館へと飛行していた。

ちなみにあたしは少し厚着をしている。

 

慧音「ミドラーさんは砂漠の出身でしたね?寒さは大丈夫なんですか?」

 

ミドラー「よく勘違いされるけどねぇ。砂漠は年がら年中暑いわけじゃあ無いんだよ。むしろ夜中は日本の冬よりも寒いね」

 

慧音「ふむ…砂漠は年がら年中暑いというイメージだったが…」

 

ミドラー「時期によっては凍結するほど夜間は気温が下がることもあるんだよ。幻想郷ではあまり関係ないかも知れないが、砂漠の環境の厳しさは水源が無いこともさることながら、この気温の変化の激しさにもあるんだよ」

 

幽香「砂漠か……植物が育たない環境はあまり好きではないわね。逆を言えばそんな環境でも植物が育つ環境にしてみたい気もするわ」

 

ミドラー「そういった動きもあたしの世界にはあるけどねぇ。中々上手くは行かないものさ。自然の環境に人間の力は中々及ばないってことだけど、でも悪い事では無いさ。今の地球は温暖化が進んで砂漠化がより進んでいるから上手くいって欲しいとは願っているよ」

 

まぁ、そういった動きがある一方で、やはり一度文明に染まった人間が利便性を求めて環境を破壊するのは止められないからねぇ。

幻想郷の環境は自然に寄り添う文明を発展させた昔ながらの世界の形を築いているから、地球の理想をそのままの形が広がっている。

利便性か環境か…難しいねぇ。

まぁ、その環境に身を置かない限りは所詮は他人事…というのが人間の性だ。

人の事は言えないけどね。

 

幽香「私には外の世界は馴染まないかも知れないわね。環境を破壊するなんて、私には耐えられないもの」

 

ミドラー「そうさね。承太郎のように幻想郷に永住するならともかく、あたし達みたいにちょっとだけ紛れ込んだ存在なんかはよそ様の世界の事に首を突っ込まない方がベストなのかもねぇ。場合によっては互いに不幸にしかならないからね」

 

幽香「そうね。よそにはよその都合があるのだから、幻想郷に影響を及ぼさない限りは私が首を突っ込む事では無いわね。私は花を愛でられればそれで十分なのだから」

 

アーシスも幻想郷も濃いメンバーで形成されているこのメンツの中ではどちらかと言えば良識人の方に入るみたいだねぇ。戦闘マニアとも聞いていたけど。

 

幽香「私は戦いは好きだけど、別に相手が誰でも良いというわけでは無いの。承太郎やこのメンバーのように強い相手と手合わせするのが好きなだけよ。本音を言えばアーシスの人間とは手合わせ願いたい所だけど、今はそんなことをしている場合じゃないってわかるから」

 

良識があるんだねぇ。うちのストッパーが外れた何人かに見習ってほしいものだよ。

 

そうこうしているうちに湖の畔に到着し、赤い霧の先に大きな洋館らしきシルエットが見えてきた。

らしき…と言うのは霧と同じ色な為、ぼんやりとしか見えない為だ。

 

霊夢「到着したわ。ここが紅魔館よ」

 

大きな館だ。窓が少ないのは吸血鬼の館だからだろうか?DIO様の館があんな感じだったような気がする。

その敷地を大きな柵が囲んでいるけれど…普通ならその高すぎる鉄の柵の上を飛び越えて行こうとは思わないが、この幻想郷は空を飛ぶのがほとんど常識のようなので、高い柵があまり意味をなしていない。

もっとも、あたし達はやましい理由でここに来ている訳では無い。

 

承太郎「だから魔理沙。柵の上を無断で通ろうとするんじゃあない」

 

魔理沙「あ、いつもの癖でうっかり…」

 

それは普段から盗賊のような真似をしているって事かい?

 

空条「ヤレヤレだ…」

 

三浦「そっちの承太郎。あーし達よりそっちのメンツの方が胃痛の原因なんじゃあないん?」

 

承太郎「否定できない……だと?」

 

……うん。気をしっかり持ちなよ。

で、ちゃんと敷地にお邪魔するとして、チャイナ服なのかカンフー服なのか良くわからない服装をしているあの赤髪の寝ている女が門番なのかねぇ。

立ちながら寝れるなんて器用だとは思うけど、門番が寝ているってのはどうなんだろうねぇ。

 

魔理沙「あいつは太極拳やっているか、ああやって寝ているか、たまにくる武芸者を追い払っているかのどれかなんだぜ。けど、全く仕事をしないって訳でもないんだぜ」

 

そういって魔理沙は八卦炉を取り出して門の端っこの方を目掛けて魔力の弾を発射する。

すると、チャイナ服の女は眠ったまま反応し、手から気の弾を出して相殺した。

 

魔理沙「ほら、こんな感じだぜ。あいつは寝ていながらもきっかり仕事はこなすんだ」

 

フットボールの鉄壁のゴールキーパーね。

 

ミドラー「それに、彼女の闘気…これは…」

 

あたしは彼女に向けて殺気を放つ。

 

??「!!」

 

彼女はそれに反応して目を開け、中国拳法内系の構えを取る。太極拳や八卦の構え…それも熟達の領域にいるねぇ。

 

??「殺気を放って来たのはあなたですか?じょ、承太郎までいる…」

 

ミドラー「そうさね。あたしはミドラー。ダンサーさ」

 

美鈴「私は紅美鈴。紅魔館の門番をしています。今は誰も通さないように厳命されている為、残念ながらお通しできません…。と言いたいところですが、元よりそれは承知の上で来ているようですね。それに、あなたがダンサー?ただのダンサーが私に殺気を放つわけがありません!はっ!」

 

美鈴は気の弾をあたしに放って来た。あたしはハイプリエステスの棒を作り出し、気弾を後ろにそらす。

そして、無意識の内に構えを取らされていた。

主にアラビアの軍隊などで採用されている武術。中国拳法をベースに実践的にアレンジされた流派だ。

 

美鈴「あなたも拳法を使うようですね。興味が沸いてきました。お互いのクンフーを競い合いませんか?」

 

ミドラー「急いでいるんだけどねぇ。でも、このままでは通してくれそうもないねぇ」

 

あたしと美鈴はじわじわと距離を詰める。

互いの武を競うのだ。ハイプリエステスを使うのは無粋だろう。

 

空条「おまえら、この隙に門の中に入ろう……などと考えるなよ?これはミドラーのプライドを賭けた戦いだ。入門権は勝敗のみに左右される。ミドラーの心意気を汚す奴は俺が許さん」

 

承太郎博士が静と魔理沙、そしてスター・プラチナがザ・ジェムストーンの肩をがしぃっ!と掴む。

 

静「ギクッ!」

 

魔理沙「そ、そんな事は考えてないんだぜ?なぁ?」

 

G・S(八幡)「あ、ああ。そんな外道な事、俺が考える訳が無いじゃあないか」

 

承太郎「考えてやがったな…」

 

八幡と静…あんたららしいよ。

あたしの女としての命を奪った承太郎博士の方があたしのプライドをわかってるってどういう事なんだろうね。

安定の外道ぶりに安心して良いのか呆れれば良いのかわからないねぇ。

さて……まずは腹の探り合いと小手調べだね。

 

あたしの拳が美鈴の正中線を狙う。美鈴はそれを弾いて腰を落として鳩尾を狙う掌底を打ってくる。それを弾く掌底でそらし、顎を狙う上段蹴りを放つも相手は更に姿勢を落として軸足を蹴ってくる。それを軽いジャンプで回避して相手の腹部を狙って踏みつけようとするも、美鈴は軸足の力を使って後ろに転がり最初の間合いで構えを取り直す。

 

美鈴「小手調べで中々の大技じゃない。人間にしては中々面白いよ」

 

ミドラー「全然本気を出していないのに言うじゃあ無いのさ。余裕かい?」

 

美鈴「いやいや。全くその気はないですよ?人間を侮って痛い目を見るのは懲り懲りですからね。そこに規格外がいるわけですし」

 

ミドラー「侮ってくれていた方がハンデになって助かるんだけどね」

 

美鈴「武芸者がそんな勝ち方が望むとは思えないですがね」

 

望むさね。相手は人間よりも力の強い妖怪。対してあたしは波紋の戦士でもなければ吸血鬼でもない。ただスタンドが使え、護身術として少しクンフー・トーアをかじった程度のおばさんだ。

ダンスで鍛えているお陰で実年例より若く見られるし、力もそこいらの若造よりは遥かに強いつもりだよ。

だけど、やはり歳には勝てない。体力を昔のまま維持をするのがやっとで衰えは確実に出ている。

早期決着を狙わないと負けるのはこちらだ。

 

ミドラー「踊るよ」

 

あたしはクンフー・トーアにジプシーダンスを交えた独自の動きを加えて本気を出す。

正攻法では正当中国拳法には勝てない。

躍りの回転力を加えたステップからの下段蹴り、更に回転して顔を狙った変形の裏拳、そこから胴廻し廻し蹴り…つまり縦回転の上からのキック、更にはもう片方の足でもう一発。

美鈴はそれらの奇襲のような攻撃を焦りながらもガードしていくが、流れはこちらに傾いている。

無理な体勢を倒立で支えて倒れないようにしながら更に逆立ちからの前蹴りを連続で放つ。

 

霊夢「すごい…あれが五十代の動き?」

 

G・S「ミドラーさんも戦士としてのプライドがあるからな。スタンドにばかり頼らないように訓練を重ねてきたのさ。ジプシーダンスを拳法に交えながらな。そこまで鍛えてきたミドラーさんだからこそ、そのダンスは見るものを引き寄せる美しさがあるんだと思う。内面から美しさが滲み出ているんだ。母としての強さ、プロとしてのプライド、そして戦士としての強さ……それらが合わさって年齢を感じさせない美しさがミドラーさんにはある」

 

さっきせこいことをしようとしたわりには嬉しいことを言ってくれるじゃあないのさ。

そうさ。母として、プロのダンサーとして、戦士として…あたしは負けていられないのさ。美しさを保ち、肉体の衰えを少しでも鍛えなければンドゥールやネーナ、二人の子供に母として胸を張れない。

この戦いはただの試合ではない。八幡を…二人の子供の友達を体に帰す為の露払いさ…。

考えていることは姫菜と同じさ。少しでも承太郎博士や静、優美子を無傷で先に進める為に…。

 

ミドラー「ンドゥール!ネーナ!あんたの友達を救う為ならあたしはいくらでも露払いになるさ!そして胸を張って八幡を連れて帰るために頑張ったと誇れる為に…あたしは何が何でも勝つ!」

 

あたしの気迫に押されて美鈴の動きが少し鈍る。

 

ミドラー「隙あり!」

 

ドンッ!

あたしの崩拳が美鈴の腹部に刺さる。

 

美鈴「ぐっ!」

 

ミドラー「まだまだ!はぃっ!」

 

崩拳によろめく美鈴に更に掌底を打ち、彼女を飛ばす。

 

美鈴「これが母の強さ…虹彩の風鈴!」

 

美鈴の気を練った鮮やかな弾幕があたしを襲う!

その美しさに一瞬だけ見惚れてしまった。

しまった!

 

美鈴「ハッ!思わず……」

 

ミドラー「ハイプリエステス!」

 

あたしはハイプリエステスを盾に変えて弾幕を防ぐ。

 

ドゴォォォォォォォン!

 

空条「ミドラー!」

 

ミドラー「来るんじゃあないよ!あたしはまだ負けていない!ハイプリ……」

 

盾で防いだものの、何発も同時に放たれた弾幕を完全に防ぎきる事は出来なかった。あちこち傷だらけになったあたしだが、まだ戦える…

 

美鈴「こんなつもりでは…虹彩の…」

 

再び弾幕を展開しようとする美鈴。

だけど、あたしだってまだ負けていない!少しでも食らいつこうと今度はハイプリエステスを矢の形に変えて美鈴を狙おうとするが、そこで風見幽香が間に立つ。

 

幽香「そこまでよ。この勝負、ミドラーさんの勝ち。わかっているわよね?紅美鈴」

 

美鈴「……………ええ。私はこの勝負の暗黙の了解を破ってしまった…。純粋にクンフーの勝負だったのにミドラーさんの気迫に負けて思わず弾幕を使ってしまった。これで敗けを認めなければ拳士の沽券に関わる」

 

そう言って美鈴さんは構えを解き、両手を上げて降参の姿勢を取った。

 

ミドラー「このまま戦えばあんたが勝っていた。勝てる戦いを捨ててまで、それでもプライドを優先するのかい?」

 

美鈴「ええ。誇りを捨てた拳士はもう拳士を名乗る資格はない。あなたの勝ちです」

 

ミドラー「………気に入らないねぇ」

 

あたしはそう言って構えを解き、ハイプリエステスを解く。

 

ブラッド「承太郎」

 

承太郎「ああ。クレイジー・ダイヤモンド」

 

承太郎がクレイジー・ダイヤモンドを使ってあたしの傷を治す。

 

ミドラー「ありがとう。楽になったよ、承太郎」

 

あたしは承太郎に礼を言った後にキッ!と美鈴を睨む。

 

ミドラー「とっとと門を開けな。次はスタンドを交えた本気の本気で相手してやるよ。二度とこんなマネが出来ないようにね。あんたが負けだと言った以上、今は甘んじて通るさ。けどねぇ」

 

あたしは美鈴が開けた門を潜り、先へと進んだ。

あたしはとても機嫌が悪い。なぜなら……

 

ミドラー「あんたは本当に本気を出していればあたしなんかが体術で相手になるはずがなかった…例え負けたとしてもあたしは満足だったさ」

 

あたしはすれ違いざまにハイプリエステスを剣に変えて美鈴の首筋にピトッとくっつける。

 

ミドラー「あたしだって能力は使っていない。始めから負けるつもりだったから適度に手を抜いて門番の役目を果たした…なんてあたしを道化にするような真似をしたら、今度こそ後悔してもらう」

 

美鈴「…申し訳ありません。あなたの誇りを私は傷つけてしまったことを謝罪します」

 

ミドラー「謝罪は要らないよ」

 

あたし達はずかずかと紅魔館の先へと進んだ。

次は手加減なんかさせない。ハイプリエステスの全てを出しきってでも本気を出させる…。

あたしはジプシーダンサーだ…道化など御免だ。

 

side比企谷八幡

 

美鈴「怒らせてしまいましたね」

 

承太郎「まぁな。ミドラーさんも美鈴の思惑には気付いていたが、それはそれ…という奴だったのだろう」

 

文「まぁ、立場が逆なら私もそうしていたでしょうから美鈴さんの気持ちも分かりますけどねぇ」

 

そう言って紅の肩を叩く射命丸。

 

美鈴「私もお嬢が何故今さら異変を起こすのか疑問に思っていましたが。だが、従者である以上は主に従わなければなりません。ですから…」

 

空条「適度に手を抜いて反則敗けを装った…と言うことか。ミドラーも最初からお前が手を抜いていたことは見抜いていたようだしな」

 

承太郎博士の言う「体裁を整えた上で上手く負ける」を実践した…と言うことか。だが、それがミドラーさんの堪に障った。

そう言うことだろう。

 

承太郎「ヤレヤレだぜ。お前の要望には応えよう。この異変はレミリアだけが原因ではない。レミリアも利用されている。従者であるお前がレミリアに牙を向ける訳にはいかないからな。後は俺達に任せた…と言うことだろう?全てが終わった後に、再びミドラーさんと戦うことだな。今度は本気で」

 

美鈴「ええ。是非とも…彼女が許してくれるのならば」

 

承太郎「ああ。それくらいは取り持ってやる。それにしても…」

 

承太郎は先へ進むミドラーさんの背中に目を向ける。

 

承太郎「その美しさは内面から出てるもの…か。比企谷八幡。お前達の仲間にしては、美しく誇り高い女だ。若ければ惚れていたかもな。その心に」

 

八幡『だろう?ミドラーさんは誇り高い俺の友人だ』

 

承太郎「珍しく胃に優しい戦いだった。後味は悪かったがな」

 

まぁ、後味は悪くとも、紅だとて悪気があったわけではない。

互いの都合が悪かっただけだ。ミドラーさんも、少し時間を置けば笑って許す事だろう。本当の勝負はその時にやり直せば良い。

美鈴の気持ちが分からないミドラーさんではないしな。

そうですよね?ミドラーさん?

 

紅美鈴(気を使う程度の能力)…再起可能

 

←To be continued




少し後味は悪かったですが、今回はここまでです。

美鈴の行動は「東方花映塚」における射命丸文の行動そのものです。
「手加減してあげるから、全力で来なさい」のあれですね。
今回の異変は美鈴にとってもおかしい。だが、仕事はこなさねばならない板挟み。
それが美鈴のポジションでした。
本人にとってもこの戦いは不本意だったわけです。
故に、上手く負ける手段を模索していたのでしょう。

いつかこの戦いのやり直しが出来れば良いですね。

それでは次回は建物に突入します。
よろめくお願いします。
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