やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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メイドと幽人の庭師と戦車

sideジャン・ピエール・ポルナレフ

 

冥界の扉を潜った私達は、ひとまず飛ぶのを止めて地面に足を付ける。

どこまでも続く階段。薄暗い闇が支配し、本当にあの世へと通じるように見える。

幻想郷における導かれし小道はここなのだと思ってしまう。果たして幽霊である私はここから帰る事が出来るのだろうか?

 

ポルナレフ「あの世へ導かれる道。確か黄泉比良坂(よもつひらさか)…と言ったか?」

 

空条「ポルナレフ…よくその名前を知っているな。日本神話におけるあの世へと続く道…それが黄泉比良坂だ。案外、西日本における杜王町の導かれし小道は黄泉比良坂かも知れないな」

 

杜王町の導かれし小道は聞いた。

あの岸辺露伴も敵のスタンドをあの世に送り込むのに使ったらしいし、幽霊である私はその手の事はあらかた調べてある。

この冥界の階段など、まさに導かれし小道そのものだ。

杜王町の小道のような霊的な場所は世界中の至る所に存在する。

博士の方の承太郎が言っている出雲の黄泉比良坂もそうだ。

 

承太郎「その通りだ。ここは幻想郷における導かれし小道。正確にはあの世に行くための魂が常駐する場所で、本当の意味での小道は妖怪の山の裏側にある中有の道が黄泉比良坂にあたるわけだが、死んだ魂が来る場所という意味では導かれし小道と変わらない」

 

私にとっては中有の道だろうが冥界の階段だろうがどちらも黄泉比良坂と変わらないがね。

何とも恐ろしい場所に来てしまったものだ。

 

承太郎「振り向いてはいけない場所は無いから安心すると良い。だが、あの桜はその役目を果たしているかも知れないな」

 

果てしなく続く階段の先にある桜…。

この最下層からでもはっきりと見え、禍々しい雰囲気を醸し出している巨大な桜…。

あれから出ている何とも言えない存在感と来たら…。

 

霊夢「でもおかしいわ…あれは西行妖と呼ばれる冥界のシンボル…。あれの放つ威圧はこんなものではないはず…白玉楼に何が起きてるの?」

 

静「白玉楼?」

 

咲夜「西行妖の建つ大きな屋敷よ。冥界の守り人である西行寺幽々子…正確には彼女の幽霊が住む邸宅…。幽々子が人柱になり、西行妖の妖力を押さえているけれど、だからといって西行妖の妖力がここまで弱まっているなんてあり得ない…」

 

ポルナレフ「人柱ぁ?何かおどろおどろしい話だな」

 

普段ならそんなものは迷信だと鼻で嗤っていただろう。だが、この身が幽霊であることもさることながら、この幻想郷はおとぎ話や伝説と密接に関係している世界だ。

あの桜が普通の桜では無いということがよくわかる。

 

空条「野郎が何かしたのだろう。あの野郎なら何をしても不思議じゃあない。そうだろう?八幡」

 

承太郎「…………」

 

空条「八幡?」

 

承太郎「ダメだ。反応がない。冥界の空気に充てられているのか…異変が始まってから不思議な程黙りこくってしまっている」

 

気にはなっていた。今朝から八幡は全然出てきていない。それにここまで博士の承太郎が嫌悪感を出す相手も珍しい。

真の黒幕にも見当が付いているようだし、一体何がこの先にいるのだ?

 

空条「これは……本気で急がないとヤバイかも知れないな。もしかしたら八幡が消えてしまう可能性がある」

 

ゆっくりと階段を登っていた承太郎博士が再び浮き上がる。

 

静「………あのクズ野郎。もしかしたらハッチの魂を狙って……」

 

私達も急ぐ為に浮き上がる。が、そこを一人のマドモアゼルが阻む。例の黒いしょう気をまといながら…。

 

承太郎「妖夢っ!」

 

妖夢「ここから先へは行かせません。生身では」

 

銀髪のマドモアゼル…妖夢と呼ばれた少女が我々の行く手を阻むように現れた。その手には二本の刀が握られている。

 

ポルナレフ「ボンジュール?マドモアゼル妖夢。私達は急いでいる。ここを通しては貰えないだろうか?」

 

既に異変で狂っているのはわかるが、フランス紳士としては対話で済ませたい。

 

妖夢「ここを通りたければ死んで魂となり、あのお方の糧となるか、私を倒して行くか…二つに一つです」

 

ポルナレフ「ウィ、マドモアゼル。だが、三つめの選択肢もある」

 

私はシルバー・チャリオッツを出して彼女に斬りかかる。

 

ポルナレフ「第3の選択肢は君をここで釘つけにして承太郎達を進ませる事さ。マドモアゼル妖夢」

 

チャリオッツはそのまま彼女の刀とつばぜり合いの形となって抑える。

 

妖夢「甘いですね」

 

彼女はもう一本の刀で私を斬りつけてくる。

ガキィィィィン!

その刀を咲夜のナイフが抑える。

 

咲夜「承太郎さん、博麗霊夢、空条博士、静・ジョースター…ポルナレフさんの援護は私が引き受けます。ですから行って下さい」

 

ポルナレフ「メルシー、マドモアゼル咲夜。行くんだ、承太郎達!静!マドモアゼル霊夢!」

 

空条「済まないポルナレフ!この場は任せた!」

 

承太郎「あの時とは逆になったな!咲夜!ポルナレフさんを任せたぞ!」

 

静「ポルナレフさん!必ずハッチを助けるから!」

 

霊夢「ポルナレフさん!咲夜!死なないでね!」

 

四人は体を浮かび上がらせ、一声ずつかけてくる。

 

ポルナレフ「無駄口は良い!急げ!」

 

咲夜「異変を…終わらせて下さい!」

 

妖夢「待つのです!承太郎とその一味!」

 

妖夢は一旦距離をおいて承太郎を追おうとする。かなり素早い動きだが…。

 

ポルナレフ「素早さで私のチャリオッツを出し抜こうなどと無駄な事は考えない事だ。マドモアゼル妖夢」

 

咲夜「私の時を止める程度の能力を忘れてもらっては困りますね」

 

ガキィィィィン!

 

再び火花を散らす妖夢の二本の刀と我々の刃物。

 

妖夢「く………ジャン・ピエール・ポルナレフ…。ルールを無視し、どこまでも私の邪魔を…。原作のジョジョと比べたら紳士的とは程遠い…やはり創作は創作ですか……」

 

ポルナレフ「あの漫画は気味が悪いほど基本世界を再現している。故にマドモアゼルの調査不足だな。私、ジャン・ピエール・ポルナレフはギャングだ。ジョルノの戦いを描いた物語…。確か「黄金の遺産」…または「黄金の風」だったかな?それを読んでいれば私の素性はわかったはずだがね」

 

私の素性は基本世界でも八幡達がストーン・オーシャンを改変した世界でも変わらなかった。

だから私は基本世界の私と大して変わらない。

 

ポルナレフ「ルールを無視するなどパッショーネでは当たり前だ。ルールを破った後の真実を受け入れる覚悟は私にはある」

 

妖夢「そうですか。ここで斬られるのがあなたの覚悟ですか」

 

咲夜「覚悟など、この異変に関わった段階で既に決めています。二度に渡り、妹様を救った承太郎様の力になるべく、私は身を捧げる!それが私の覚悟です!例えここで倒れても!魂魄妖夢さん!」

 

違うな、マドモアゼル咲夜。

 

ポルナレフ「ノンノンノンノン!マドモアゼル咲夜、それは覚悟とは言わない!犠牲の心だ!」

 

これは本来ジョルノの言葉なのだが、この世界には我らがジョジョであるジョルノ・ジョバァーナはいない。だから敢えて言おう。この私が!

 

ポルナレフ「覚悟とは犠牲の心ではない!覚悟とは、暗闇の荒野の中で一筋の道筋を切り開く事だ!」

 

私はチャリオッツの剣を高く掲げる。

 

ポルナレフ「我が名はジャン・ピエール・ポルナレフ!ヨーロッパのギャングの頂点に立つパッショーネのナンバーツー!我が友、空条承太郎と我らがパッショーネのボス、ジョルノ・ジョバァーナの家族である比企谷八幡の砕けた魂を元に戻す為に、魂魄妖夢!君を討ち取ろう!」

 

咲夜「カッコいいですね。さすがはポルナレフさん。ジョジョの世界のミスターナンバーツーですね。では私も名乗りをあげましょう。我が名は十六夜咲夜!我が主、レミリア・スカーレットの為、我が友、空条承太郎様の為に、今再び西行妖の異変を止めて見せましょう!」

 

幽霊の騎士と銀髪のメイドが背中を合わせ、剣先を妖夢に向ける。

 

ポルナレフ「魂魄妖夢!覚悟は出来ているか!」

 

咲夜「私達は出来ています!」

 

私達は一気に間合いを詰めて妖夢に斬りかかる。

 

妖夢「私だとて幽々子様に全てを捧げる覚悟はできています!剣で私と張り合おう等と…無駄な事です!」

 

三度交わる日本刀とサーベルとナイフ。

本来ならば…パッショーネの戦いかたならば勝つために策をろうしていた。だが、剣士として名乗りを上げた以上は策など無粋。下衆の極みだ。

力と力、技と技で斬り合うのが筋だ。

咲夜もそれがわかっているのか、時を止めずに純粋にナイフの腕だけで勝負をしている。

 

ポルナレフ「くっ!二人同時に相手をしているというのに何て強さだ!」

 

咲夜「これが本気の妖夢さん!強い!」

 

互いに傷を作りながらも激しく斬り合う私達。

 

妖夢「それがわかっていて何故時間を止めないのですか!?」

 

ポルナレフ「ならば君だとて何故弾幕を使わない!スペルカードを使えば二人がかりとはいえ、我々相手に苦戦などしないだろう!」

 

妖夢「そんな無粋な真似はしません!何故こんな楽しい斬り合いで弾幕などという無粋な真似を!」

 

徐々に高まっていく彼女の覇気。

徐々に薄れていく彼女のしょう気。

徐々に増していく彼女の黄金の精神と斬撃の強さ。

いつの間にか我々三人の顔は血だらけになりながらも気合いと愉悦に満ちた笑顔になっていた。

思い出す。千葉幕張であった十二年前の美浜大橋。

あの時の深夜で行われた八幡と承太郎の決闘…。

 

空条『いつまでも、こんな戦いなら続けていたい…だが、それも限界か…終わるのが惜しい戦いなんて…本当に初めてだった…たった一度きりのワガママ…本当に出来て良かった…』

 

八幡『俺もだ…普段なら素直にこんな事をいう柄ではないけれど、楽しい戦いだった…次の一撃で、多分もう終わる…ありがとうな…承太郎…』

 

あの時の承太郎のように終わるのが惜しい戦いをすることが出来るなんて…。死んだ後になって、今になってこんな戦いが出来るなんて…。

メルシー、マドモアゼル妖夢。

 

咲夜「……楽しかったです。すみません、ポルナレフさん…勝つことよりも…楽しんでしまいました…」

 

とうとう力尽きて倒れる咲夜。

 

ポルナレフ「良いんだ。私も同じだ。ブラボー咲夜」

 

倒れた咲夜と目を合わす。妖夢も、私も互いに満足した表情で微笑み合う。

 

ポルナレフ「メルシー、マドモアゼル妖夢…。こんなに楽しい戦いはいつ以来か…アヴドゥルと戦った時か…それとも正真正銘の初めてだったか…。感謝する」

 

妖夢「いつの間にか私にまとわりついていた嫌な気が無くなってしまいました…。邪気をも祓う楽しい斬り合いは春雪異変での承太郎さんとの戦い以来…いえ、それ以上…多分、次で最後です。どちらが承太郎さんを助けに行けるか…私の全身全霊のスピードをもって、あなたとの最後の勝負に挑みます!ハァァァァァ!」

 

妖夢が分身が出るほどに速度を増す。

 

ポルナレフ「こちらも切り札を出そう!アーマーテイクオフ!チャリオッツの本気のスピードだ!」

 

チャリオッツも分身を出す。

 

正真正銘の最後の一撃…。

切り札は奇しくも同じ…。

 

妖夢「ハァァァァァ!」

 

互いが一気に間合いを詰める…。

先に一撃が決まったのは…私の攻撃だった。

紙一重ではあったが…。

 

妖夢「私の……負けです…気持ちの良い戦いでした。ジャン・ピエール・ポルナレフ…十六夜咲夜…誇り高き剣士…」

 

そう言って妖夢は倒れた…。

そして私も…。

 

ポルナレフ「メルシー、マドモアゼル妖夢」

 

私は妖夢を横たわらせ、咲夜をココの中へいれる。

 

ポルナレフ「エンポリオ。私の体を頼む」

 

エンポリオ「そう言うと思って準備してましたよ。ポルナレフさん」

 

私の霊体は既に傷だらけだが、私の体はまだ無傷だ。

まだ戦える。私はゾンビとして体の中に入る。

妖夢には申し訳ないが、保険はかけていた。

だが、もし負けていたならば、私はここで喜んで再起不能(リタイア)していたつもりだった。

これは勝者の権利だと思って許して欲しい。

 

三浦「ポルナレフ!」

 

海老名「勝ったんだね…ポルナレフ」

 

ポルナレフ「危ない所ではあったがな。マドモアゼル咲夜はココの中で休んでもらっている…。じきに回復するだろう…それに…始まったようだ…。マドモアゼル西行寺と静と霊夢の戦いが…」

 

私は仲間と合流して階段を登って行く。

この階段を登り終えた時、奴との真の最終決戦だ。

行こう…。幻想郷最後の戦いへ…。

 

魂魄妖夢(剣を操る程度の能力)…再起不能(リタイア)

 

十六夜咲夜(時間を止める程度の能力)…一時休眠。再起可能。

 

←To be continued




剣士対決でした。

次は西行寺幽々子戦です。

あれ?承太郎達は?

それでは次回もよろしくお願いいたします!

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