やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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定められた邂逅①

side広瀬康一

 

康一「皆、どうだった!?」

 

億泰「いやダメだ。どこにもいねぇ」

 

音石「こっちもダメだった……クソッ、一体どこ行っちまったんだ? 仗助の奴……」

 

捜索から戻ってきた僕達を待ち受けていたのは、仗助君の姿が消え、異様に荒れた待ち合わせ場所だった。当初やり場のない怒りから八つ当たりでもしたのだろうと推測されたのだけど、露伴先生があるものを見つけた事で異常事態だと判明した。

 

 

露伴「見ろ、この血溜まり。あのクレイジーダイヤモンドの拳がラッシュ如きで流血するほどヤワじゃない事は皆知っているはずだ。それにこの量……ひょっとすると、あいつの身に何かあったかもしれないぞ』

 

瓦礫を退かした下に広がっていた、仗助君のものと思われる血溜まり。携帯のライトで辺りを照らしてみると、付近の路上にも塀にも飛び散った血痕が確認できた。

この事から、仗助君が何者かに襲撃を受け、今もその戦いが続いていると判断した。

遺体探しを一時中断し、先に仗助君と合流しないと。仗助君の事だから大丈夫だとは思うんだけど…。

 

それから一時間以上も捜索しているにも関わらず、僕達は未だに仗助君を見つけられずにいた。そればかりじゃあない。住宅街を照らす街灯の明かりは点いているのに、虫の音一つ聞こえてこないのはおかしい。普通であれば多少なりとも夕食の調理する音やテレビの音が聞こえる筈。なのにそれが全くしない。

こんなことはあり得ない。まるで住人達が神隠しにでもあったかのようじゃあないか。

 

康一「あっ、露伴先生」

 

一足遅れて、露伴先生も僕達と合流してきた。

 

めぐり「露伴ちゃん、どうだった?」

 

鈴美さんの転生、めぐりちゃんが露伴先生に聞く。

対して露伴先生は静かに首を横に振った。

 

露伴「駄目だ。この辺り一帯が迷路のように入り組んでいて、迷いやすいから切り上げてきたよ。加えて捜索中は全く人とすれ違わなかった。この時間帯ならば最低でも帰宅してくるサラリーマンぐらいはすれ違いそうなものだが……」

 

音石「やっぱり露伴先生もか……こっちもだぜ」

 

音石さんが苛立ち交じりに吐き捨てる。

今こうしている間にも仗助君は戦い続けているかもしれない。そう考えれば一刻も早く見つける必要があるのに。

しかしこの異様な住宅街の環境にすっかり惑わされ、焦りだけが募っていた。

 

康一「試しに仗助君に向かって音を響かせてみたけど、何にも反応が無くて……まるで先の見えない洞窟にいるみたい」

 

億泰「話に聞いた振り向いてはならない小道と同じようなもんなのかなァ〜? 俺頭悪いからよくわかんないけどよォ」

 

億泰君はお化けが苦手だから、あの小道には入らないもんね。雪ノ下陽乃ちゃんの妹、雪乃ちゃんが由比ヶ浜さんのポイズンクッキーで何度も小道に迷い混んだときは

陽乃ちゃんが死んだと思って小道に入り込もうとしてたけど。(第3章「由比ヶ浜結衣は何度導かれし小道に迷い込む?」参照。八幡がポイズンクッキーの原因を探るために鬼畜の所業をやりました)

クリスタル・クルセイダーズのメンバーは強い絆で結ばれてるからなぁ…(第二章参照。このメンバーの中では仗助と億泰がストーン・オーシャン外伝のメインメンバー)。

後で聞いたけど、あの八幡君の実検はひどい!いくらいろはちゃんが近くで待機していたとはいえ、迷いなく致死性のクッキーを何度も食べさせたんだから!

そりゃ徐倫ちゃんが何度も拳骨を落とすよ!(その徐倫もキレて「こいつはメチャ許せんよなぁ!」とアルゼンチンバックブリーカーをやり、由比ヶ浜を殺しかけたことは聞いていない)

まぁ、今はそれは置いておこう。

 

康一「多分違うと思う。あそこは所謂霊道みたいなものだから……。ここはどちらかというと異次元空間に近いものかも」

 

と、僕達が行き詰まっている時だった。

 

露伴「……? オイ、静かにしたまえ」

 

露伴先生が何かに気がついた。すると何を思ったのか、いきなり地面にひれ伏して片耳を地面に押し付けた。

 

 

康一「露伴先生!?」

 

露伴「シッ」

 

全員に静かにするよう促し、聴覚を研ぎ澄ます。

 

露伴「誰か来る……人数は二人かな?」

 

一同「「「「「!」」」」」

 

人数を聞いてもしやと顔を見合わせる一同。だがそれを見た露伴先生は即座に彼らの考えを一蹴する。

 

露伴「残念だがこの足音に仗助のものは含まれていない。両方とも音が軽い。……多分女性だろう」

 

凄い洞察力だなぁ。案外普段からやってるのかも。

リアリティー追求のためならこの程度の事は躊躇いもなくやるから。

でも仗助君ではないとするなら、一体この異様な住宅街を歩く者達は誰なのだろう?

いずれにしろこの環境下では希少な手掛かりだ。何かしらの情報をもっているようなら是非とも話を聞きたい。

状況は一刻を争うかも知れないんだから。

僕達が、起き上がった露伴が指し示す方角に目を向ける。

街灯の光が届かない脇道。確かに耳を澄ますとこちらに向かってくる何者かの足音が聞こえる。しばらく目を凝らしていると、その闇の中に微かに人間のシルエットが見えた。

 

康一「……女の人だ」

 

露伴先生の言っていたことは当たっていた。

向かって左側は塀より少し背が高めで、その隣には一回り小柄な人影。二つの人影はなにかを話し合っているのか、時折身振り手振りをしながらこちらに向かって歩いてくる。

しばらくしてその人影達は僕達の存在に気がついたのか、その場に一旦立ち止まった。

雰囲気でわかる。ただ者じゃあない。

アーシスの人間と同じように戦いに慣れた者の動きだ。

 

アーシス組「「「「「………………」」」」」

二人組「「………………」」

 

片や街灯の灯りに照らされたアーシス。

 

片や暗闇の中に佇む二人組。

 

異様で静かな見つめ合いはしばらくの間続いた。

そして、最初にその静寂を破ったのはめぐりちゃんだった。

 

めぐり「……誰、なの?」

 

彼女の問いに答えるように、街灯の明かりが届く位置に背の高い方の人影が進み出た。

どこかの学生なのか、黒を基調としたブレザーを纏ったボディラインの整った女性。美しい黒髪をポニーテールにしており、目鼻顔立ちが整った大和撫子。最もその表情は怪訝な様子だったが。静ちゃんに似てるかも。

もっとも、静ちゃんの外行きの顔に…だけどね。

 

億泰&音石「「オォー……」」

 

康一「億泰君、音石さん。鼻の下伸びてる」

 

四年前に和解して以来、こういう面で息がピッタリ合うようになったなぁ…。

でも億泰君…君は妻子持ちでしょ!京さん(億泰の嫁)に怒られるよ!?親友の妹似の人に欲情しないでよ!

僕は美人を前に見とれる億泰君にジト目を向け、すかさず小突く。すぐにハッとなって正気に戻る億泰君。止めてよね。そういうのはうちの康穂にも影響出るんだから。未だにあの子は八幡君を諦めてないし。

対する音石さんは継続して鼻の下を伸ばし続ける。

あなたはそろそろ結婚した方が良いですよ…。

ギタリストの仕事が忙しくて世界中を飛び回っているから暇がないのはわかりますけど。

 

そして一泊置き、もう一人の人影も明かりが届くところに歩み出た。

白髪のショートボブに黒猫の髪留めを付けた、隣の大和撫子とはまた違った美少女。雰囲気は雪ノ下雪乃ちゃんで、見た目は小町ちゃんに似てるかな?足して二で割ればこの子のような感じだね。

 

??「胸部の風通しは良さそうだ」

 

そうそう、風通しは二人ともそうだし。

あれ?

何か変な声が聞こえた気がした。(メメタァ!)

ついでに蛙を殴った音も聞こえた気がした。

 

少女「……語り部、あとで校舎裏」(メメタァ!)

 

まただ。あと語り部って誰だろ。

小町ちゃんだったら指を無言で向けてきそう。

数万度の光速の熱線なんて冗談じゃあない!見た目が似てるからルビーレーザーが飛んできそうで冷や冷やする!

何故だか分からないけど変に疲れた気がした。

千葉村の戦いが終わった直後にこの世界に来たから疲れてるのかなぁ…。疲れの種類が違う気がするけど。

でも、こんなことをしている暇はない。

気を取り直して、お互いを見る僕達と少女達。

向こうは怪訝な表情を見せる。僕達は暗い住宅街の一角に大の大人が人数が集まっている。怪しむのも無理はないかも。ましてや統一性無いもんね。個性だけはみんな凄いけど。僕とめぐりちゃんくらいかな?普通なのは(自分が年齢の割にはやたら身長が低いという事も結構目立つ事実に自覚がない)。

でも、僕達からすればありがたい。現地の人なら貴重な情報源だ。すると、めぐりちゃんがコンタクトを取った。この子がいてくれて助かった。一番コミュニケーションが取れる子だもの。次に僕か音石さんだものね。

 

めぐり「あ、あの。少しいいですか?」

 

女性「え、えぇ。構いませんわ。アーシアちゃんに声がそっくりですから驚きましたわ

 

大和撫子の方は多少困惑している様子だ。だけど無視するわけにもいかないと思ったのか、とりあえず話を聞く姿勢を見せる。何か声は仗助君のお母さんに似てるかも。

 

めぐり「この辺りで、体格の大きいオールバックの男の人を見かけませんでしたか? スーツ姿なんですけど……」

 

女性「男の人…ですか?」

 

少女「……見ていないです」

 

親切にもしっかりとここまでの道中を思い返してくれた女性と少女。だが思い当たらなかったらしく、代わりに少女の方が答えた。そして少女はお返しとばかりに同じような質問を投げかける。

 

女性「……それで、あなた方は? この付近が異様に荒れてますけど」

 

やっぱ気になるよね。戦争でも起きたような状況だし。

実際、戦闘した跡なんだろうけど。

 

康一「あーこれは…その、心当たりがないといえば嘘になるといいますか……」

 

仗助君、派手にやってるなぁ…。直してから行ってよ。

 

露伴「我々が今探している知り合いが少し荒れた跡でしてね。まぁ住民に危害が加わる前に確保したいところですが」

 

一応、アーシスは一般人に危害を加えないことを念頭に置いているけど…。それにその言い方…。露伴先生と仗助君の仲は相変わらずだよねぇ。

周りの方が胃にくるんだよ。半年に1回は殴り合いのケンカを始めるし、この前なんかいろはちゃんを巻き込んだみたいだし。結果はいろはちゃんが勝ったみたいだけど。というか、自分を治せるいろはちゃんにケンカを売るって…。(第3章「ぼーなすとらっく」参照)。

 

億泰「それだけ聞くとよォー、なんか仗助が害獣みたいだよな」

 

だよねぇ。

 

露伴「害獣よりもタチが悪いんじゃないかな。ありゃ狂犬の類だ」

 

康一「露伴先生!」

 

仗助君が聞いたらまたケンカになるような事を…。

僕自信もたまに思ってしまうこともあるため完全に否定はしないが、初対面の人間が誤解しそうな表現を用いる露伴に自重するよう咎める。一応は仗助君は日本支部のトップだしね。やめて下さいよ…僕は中間管理職なんですからぁ~!

僕達のやり取りに女性は上品に口元に手を添えて笑い、少女に至ってはジト目でやり取りを眺めていた。ごめんね?

 

女性「あらあら、彼とそっくりですわね」

 

音石「? 彼って?」

 

女性の言葉に音石さんが疑問を投げかける。

 

女性「私達の仲間にも、同じような人間がいるんですよ。誰よりも頼れて、一旦怒らせたら手のつけられない男の子ですわ。声はあなたによく似てますわ。雰囲気は真逆ですけど」

 

僕達の周りでは結構いるタイプの人間だね。特にジョースター家の人やその転生者はみんなそうだ。

特に沸点が低いのは仗助君と徐倫ちゃんだけど。

 

女性「……見た目は人ですが、中身は悪魔そのものです」

 

あ、僕達が探しに来た人間と合致した。八幡君もDIOの転生ってこともあって敵が可哀想になるくらい時々エグいもんね。何が酷いって戦術が酷い。サバンナ川の戦いなんて一生懸命に戦っている運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)に偽物を戦わせて自分は相手がガス欠&バッテリー切れになるまで呑気に橋の上からコーヒー飲みながら観戦し、最後は5人がかりで殺しちゃったんだから。当時中学一年生がやる事かなぁ。

あ、もう5歳の時からそうか。僕とジョルノ君も5歳の頃の彼に負けたんだし。(第1章「僕は広瀬康一のエコーズに手を焼く」~「覚悟と勇気」参照)

 

音石「聞いてるだけでヤバそうな感じだな……」

 

ちょうど同じ事を考えていた音石さんが冷や汗を流している。そっか。サバンナ川の戦いでは音石さんもクリスタル・クルセイダーズの増援で戦っていたんだっけ。

仗助君や八幡君は女性のいう男の子とは何処か似ている部分があるようだ。

 

女性「……皆さんが探している人がこれだけ暴れたのなら、大きな音ぐらいしそうな気もしますが」

 

女性「そうですわね。やっぱりこの住宅街、何かあるのかしら」

 

もしかしたら敵のスタンド攻撃かも。

 

康一「お二人は何故ここへ?」

 

女性「私達も人を探しているんです。こう……リーゼント、というのかしら? 昔の不良のような姿をした人ですわ」

 

音石「リーゼント!?」

 

言い放たれたキーワードにギョッとする僕達。"リーゼント"に"昔の不良"で思いつく人間は、世界広しといえど一人しかいない。

丁度僕達が探しているSPW財団日本支部支部長、東方仗助君が四年前までプライベートでしていた髪型はリーゼント…。子供の頃の憧れのヒーローを真似した髪型じゃあないか!高校生当時は正に昭和の不良だったし!

でも今の仗助は立場の関係上リーゼントからオールバックに直されている。というか、ストーン・オーシャン事件でのアレッシーとの戦いで髪型よりも静ちゃんの方が大事だと自覚してからはプライベートでも彼女が結う後ろ髪を纏めにオールバックにしている上に、それに合わせるように後ろ髪を伸ばすようになってからはリーゼントが異様に長くなりすぎて合わなくなったからやらなくなったんだよね。気分転換の時以外は。

別人なのか、それとも怒りのあまり髪型がリーゼントに戻ってしまったのかな。スーパー○イヤ人じゃあるまいし。(吉良戦の時に自分がスーパーサ○ヤ人のように髪の毛を逆立てた奴が言うなという突っ込みは聞かないからね?)

 

康一「(まさか…仗助君やっぱり怒りを堪えきれずに暴れだしたんじゃ…!?)」

 

億泰「(でもあの血溜まりはどう説明するんだよ康一ィ! いくら仗助が殴って勝手に負傷したって量が多過ぎるぜ!)」

 

音石「(いや殴って壊れた破片がぶっ刺さったって可能性も…!)」

 

露伴「(冷静になれよ君達。まだそのリーゼントの不良が仗助と決まったわけじゃない。この場はとりあえず知らぬ存ぜぬを貫き通すんだ)」

 

カマクラ「(ナーン…(大丈夫か?こいつら))」

 

めぐり(大丈夫…なのかな?)

 

 

速攻で円陣を組んでしゃがみこむ僕達。我ながらいきなりヒソヒソと相談するのはいささか良い行いではないと思うのだけど。現に二人は不審がっている。

露伴の意見に満場一致し、口裏を合わせた全員が向き直ろうと立ち上がったその時。

 

 

(ピピッ)

女性「!……はい、朱乃ですわ」

 

短い電子音が鳴ったかと思うと、今度は女性の方が何処かと連絡を取り始めた。どうやら耳に通信機器を取り付けていたらしく、少女も片耳に手をかざして時折頷いている。女性と相手の会話を拾って内容を把握しているようだ。女性は朱乃って言うのか。ジョルノ君の本名…あの汐華の一族やその親族の雪ノ下家が付けそうな名前だね。

 

めぐり「一体誰と話しているんだろうね、露伴ちゃん」

 

露伴「多分他に捜索にあたっている仲間じゃないかな。こんな遅い時間に女性二人だけで人探しをしているなんて不用心すぎる」

 

めぐり「ってことは、その中にいるのかな? あの人が言ってた男の子って…」

 

朱乃という女性は黙々と内容を聞いていたが、途中少女と共に驚いた表情で僕達に視線を向ける。そして顔を見合わせ頷くと、通信を切ってその内容を僕らに伝えた。

 

朱乃「あなた方、さっきオールバックの男の人を探していると仰っていましたわよね?」

 

康一「ええ、そうです」

 

朱乃「先程私達の仲間が、その方が私達が探している人と揉み合っている現場を目撃したらしくて……。今その座標を送ってもらったので、その人があなた方の探している人かどうか確認してもらいたいんですけど、一緒に来てもらえますか?」

 

めぐり「本当ですか!?」

 

なんと仗助君と思しき人物が見つかったというじゃあないか!詳細は不明であるが、今はこの誘いにのるしかない。

 

 

康一「お願いします! 案内してください!」

 

全員の答えを代弁して、僕が朱乃さんに頼んだ

 

朱乃「わかりましたわ。小猫ちゃん、行きますわよ!」

 

小猫「……了解!」

 

少女の方は子猫さんだね。

二人は彼らと電柱の前を通り過ぎ、灯りの届かない闇の中へと駆けてゆく。

 

露伴「よし、僕たちも行くぞ!」

 

その姿を見失うまいと、僕達はすぐさま二人のあとを追った。

 

康一「待っててね……! 仗助君!!」

 

(←To Be continued…)




どうなる!?
大怪我を負った仗助は?!
そして八幡は!?
こちらの書き方に直しているだけで本城も先は知りません!
果たしてどうなるか!?

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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