やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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奇しくも俺ガイル屈指の賛否両論のあのシーンに似てしまった…(^_^;)

いや、第4章の始まりからしてそうなんですけどね?


仲直り

side比企谷八幡

 

リアス「……とりあえず落ち着いたかしら?」

 

八幡&仗助「「ハイ、スイマセン。チョーシノリスギマシタ」」

 

アーシア「ジョジョさん、大丈夫ですか?」

 

丈城「前が見えねぇ、Part3」

 

あれからしばらく経ち、丈城やリアスの通う高校・駒王学園旧校舎の一室、オカルト部。

 

ここの生徒会役員の一人、匙元士郎を再起不能に陥らせた犯人・ニセ東方仗助を追っていたオカルト研究部メンバー。その道中巡り合った、別世界より俺を探してやって来た仗助と共にニセ仗助を撃破。ようやく情報交換が出来るかと思われた。

しかし次元の狭間から帰って来たオーフィスが持ち込んだ右足のミイラ(つまり俺)が、突如丈城の中に取り込まれるという異常事態が発生。取り込んだ俺が豹変 (?) してしまうアクシデントが起こった。まぁ、DIOモードだったし。

 

康一「でも驚きましたよ。まさか丈城さん以外の皆さんが全員悪魔だったなんて……」

 

億康「本当だよな。見た目が人間と相違ねぇし、初見じゃ絶対わかんねぇぜ」

 

露伴「だが感じるオーラは確かに人間のものとはかけ離れている。特にあのリアス・グレモリーだ。彼女からは他の悪魔とは並々ならぬ波動が見受けられる。上級悪魔というのは伊達ではなさそうだ」

 

これには同意。例えるならディオや柱の一族みたいな気配だ。

アクシデント後、気を取り直して俺達は学園へと場所を移した。まぁ今に至るまで一悶着あったのは言うまでもない。互いに自己紹介と情報交換を交わし、その後のちょっとした交流を楽しんでいた(俺を含む約一部を除いて)。

 

めぐり「でも…一番は丈城さんだよね。一人の人間の体に普通は幾つもスタンドは宿らないはずなのに、いっぱい持ってるんだもん」

 

康一「加えて僕たちのスタンドまで持っているなんて……一応見せてもらったけど、やっぱり信じられないなぁ」

 

丈城「Replayしようか? 今度は能力実体験つきだぜ」

 

木場「ジョジョ君、争いの火種になりそうだからいつもの流れは抑えてくれると嬉しいな」

 

何故か顔面がひしゃげている丈城は、アーシアに膝枕してもらいながらも、目の前にある意味ご本人がいるにも関わらずいつものテンションを崩さない。

 

逆に言えば、彼としてもいつものテンションでなければいけない理由もあったりする。

 

どうやら丈城は目の前の康一さん達が、原作キャラと言われる者が年を重ねた姿であると気づいていたのだ。

先程確認のために『エコーズ』や『ヘブンズ・ドアー』を出した時も、彼らは共通して自分や仲間のスタンドだと口にしていた。そして安直ではあるが、この世界にはスタンド使いが自分一人しか存在しないことも根拠の一つ。その他容姿の微妙な相違から、彼は上記のような解釈をしたわけである。

 

まぁ簡潔に言うと、ご本人ズを目の前にしてどうすればいいかわからずパニクって、悩んだ挙句いつも通りを貫こうと決めたわけだ。

 

そしてお気づきになられたであろうか。何故聖なる遺体と化した俺が入り込んだにも関わらず、丈城の意識がはっきりとしているどころか、二人もいるということに。

 

順を追って説明しよう。

 

(バイツァ・ダスト!)

 

丈城の中に俺が取り込まれ、意識が前面に押し出された。見た目 (肉体) は兵藤丈城、頭脳は俺 (精神) というどこぞの探偵みたいな状態となったのだが、直後ある人物によって事が起こってしまう。

 

八幡「フハハハッ、この肉体は実にいい! 内側から迸るスタンドパワー! そして鍛え抜かれたボディ! 器としては最ッ高のブフェアッ!?」

 

久し振りに体を得た事でハイになる俺。直後流れるように塀を駆け上がり、その頰を殴り飛ばす仗助の姿が。

お前、案外波紋の適正があったんだな?エア・サプレーナ島に行く?小町(リサリサの転生)が鍛えてくれるよ?

無論肉体は丈城のままなのだが、そんな事など頭に血が上った仗助の中にはない。

 

仗助「こンの…大馬鹿野郎がァァァ────ッ!!」

 

丈城「俺の身体────ッ!?」

 

俺は塀から落ち、路上をゴロゴロと転がる。

やべ、むしろこの体が波紋に慣れてねぇ!でなければいくら仗助のパワーでも俺がここまでダメージは受けん!

怒りに身を任せて仗助が追撃に出るが、それよりも一同の意識は別の場所に向けられていた。

コォォォォォ…ふう、これならクレイジー・ダイヤモンドにやられん限りは大丈夫だ。

ところで、さっきの声はなんなのん?

 

康一「……って、あれ?」

 

音石「お、おい…嘘だろ? なんでだ?」

 

露伴「彼が……茶髪の男が"二人いる"!?」

 

兵藤が立っていた路上。そこにあったマンホールの蓋から這いずり出るように上半身を覗かせるもう一人の兵藤が。

何か承太郎がこんなことをしてたなぁ。ここはもう満員だぜ?ってか?

 

八幡「ブガッ! ゴハッ! ちょっ、ちょ! タンマタンマ! 仗助ストップ! やめてこれ一応他人の身体だからッ! 他人と書いて"ひと"の身体だから! あでっ!?」

 

仗助「うおおおおおおォォォォ────ッ!」

 

野郎……仗助。人が考え事してるのにプッツンしやがって…そろそろ反撃すっかな?

馬乗りになってメチャクチャに殴りつけられているのは、確かに俺のミイラが入り込んだ兵藤の肉体である。では康一さん達の背後にいるもう一人の兵藤は一体何なのか。

 

その答えは当人とリア達が解き明かした。

 

リアス「……あなたはそこで何をしているのかしら?」

 

丈城「あぁ、いや。アレ見た瞬間からなんか妙な気配してたから、ミイラに視線が集中している隙に平行世界の俺とすり替わってた」

 

………無茶するなぁ。

 

木場「僕初めて見たよ? 自分自身を盾にする人間って。しかも平行世界から呼び出した自分を」

 

子猫「……それって、この間の合宿前に使ったスタンドですよね?」

 

朱乃「確か、『Dirty deeds done dirt cheap』でしたわね」

 

閣下のスタンドじゃあないか!あぶねぇな!『時計』がなければ対消滅してるぞ!

 

丈城「Exactly(そのとおり)」

 

お前はテレンスかぁ!

天の声『自分だってやるだろが!』

滅多にやらんわ!

 

オーフィス「ジョジョ、お腹すいた」

 

猫草『ニャッ』

 

丈城「話の腰を粉砕骨折させてんじゃねぇよオメーは」

 

アーシス(((((ディ、D4C!?)))))

 

この時彼らの認識としては、あのモヤモヤを倒したあの赤い籠手がスタンドだとばかり思っていた。ところがどっこいあいつは全スタンドが使用可能というチート仕様であるため、当然『D4C』も使えるのである。

いちいち閣下の手を煩わせないのは羨ましいな。

いつも申し訳なく思うからな。

承一郎『嘘つけ!』

やかましい!お前の出番は次だろ!メメタァ!

兎に角、康一さん達の中でこの事実に直面しているのは仗助しかいない。

兎にも角にも聞きたいことや各自の事情があるのは双方も同じことである。その前にまずは代表者であるSPW日本支部の社長を…仗助(バカ)を止めないといけない。

 

ゼノヴィア「しかしどうする? あれ抜きで話をしようにも気が散って集中出来ん」

 

露伴「僕も同意だ。再会の喜びを殴り合いで表現するバカ共を先に止めた方が賢明だと思う」

 

露伴先生…。信じてたのに!盟友だと思っていたのに!

案外怒ってます?

 

めぐり「露伴ちゃん、あれのどこを見て喜んでるって思ったの?」

 

こうして満場一致で結託した一同は、最初の難関である戦いに臨むことに。

ほぅ…来るか?この比企谷八幡に対して!

嘘です。この面子に勝てる気がしない。

 

億康「でもよォ〜、どうすんだ? 一度ブチ切れた仗助を止めるのは難しいぞ。下手すりゃ巻き添え食らうし……」

 

音石「反省して強くなっても勝てねぇって、ありゃ。何しろ周りが見えてねぇんだから」

 

丈城「ふーん、ようは勘づかれねぇ程度に止められればいいんだな?」

 

そう言ってマンホールから出てきた兵藤がザッザッと前に出てきた。

そして康一達の目にはハッキリと見えた。あぁ殺るのかと遠い目をしたリア達の哀愁漂うオーラが。

………何する気!?

 

丈城「……とりあえずアーシア、『聖母の微笑』の準備しておいて。精神面で治さないといけない可能性が高いから」

 

それってナイチンゲール・エメラルドみたいなやつ?

何でいろははいないの?会いたいのに…。

は?精神面?

 

アーシア「へ? あぁ、はい……?」

 

めぐり「精神…面……?」

 

城廻先輩が呟いた一言は、このあと起こる悲劇のキーワードであった。

 

康一さん達を通り過ぎるその過程で、彼らは兵藤の肩に腰掛ける、うっすらとしたヴィジョンを目撃する。徐々に浮かび上がるその姿は、ロボットのような外見をした人型をしており、完全に康一達を通り過ぎると顔を上げて、不気味な声色でこう呟いた。

 

シビル・ウォー『『人ハ何カヲ捨テテ前へ進ム』……ソレトモ、『拾ッテ帰ルカ』?』

 

これは……スタンド?観たことのないスタンドだぞ?

もしかして一巡した世界のスタンドか!?

 

「「「「「……!?」」」」」

 

兵藤はヒタヒタと音を立てずに、暴走する仗助の背後に接近。そして最終ポジションに到達すると、肩に乗るそれを下ろして能力を使用した。

 

丈城「『シビル・ウォー』」

 

刹那……

 

仗助「!? う、ウワアアァァァ─────ッ!!」

 

八幡「ギャアアアァァァァ─────ッ!?」

 

 

動きを止めた仗助が突如ビニールのようなものに包まれ、頭を抱えて苦しみ始めたのだ。と同時に俺もムンクの叫びのような形相になり、仗助と同じ状態になって仲良く路上をゴロゴロとのたうち回る。

やめろジョルノ!ワサビだけは…ワサビだけはやめろぉ!小町ぃ!さらにルビーレーザーを上乗せするなぁ!

デュオロン・オブシディアン?なんで!導かれし小道の手が迫ってくるぅ!

無条件であの世に連れ込まれるぅ!

 

八幡「やめてくれェッ!! それだけは……それだけはイヤだァァァッ!!」

 

仗助「なんじゃこりゃぁぁっ!! 寄るな触るなっ!! オレのそばに近寄るなああ─────────ッ!!」

 

あ、同じ幻覚見てるな?

 

丈城「やはり怒りよりも恐怖が勝ったか……。でも俺の姿でこのリアクションはないわー。スッゲー複雑だじぇ」

 

言ったな?後で俺の記憶を見せてやるよぉ!

顔中にワサビ(最近ではハバネロ)を塗られる辛さを!

数万度の光速のレーザーで貫かれる辛さを!

無条件であの世に連れ込まれる『手』を召喚するデュオロン・オブシディアンに迫られる恐怖を!

 

それをヤンキー座りで傍観する兵藤。

 

兵藤が使用したのは対象の人間が抱える心の闇、いわゆるトラウマを悪意ある悪霊として具現化させるアクセル・ROのスタンド『シビル・ウォー』というスタンドらしい。

俺が予想した通り、プッチの『メイドイン・ヘブン』の阻止を失敗した一巡した先のスタンドであった為、俺が知らないのも当然だ。

本人に罪悪感がある限り襲い掛かるという精神に対して非常に残虐性の高い能力のため、たとえどれだけパワフルな相手であろうと関係なくダメージを与えられるらしい。ザ・ロックの上位互換みたいなスタンドだな。

 

八幡「みょえええッ!!」

 

仗助「ぐわあああッ!!」

 

丈城「一体どんなトラウマに襲われているのかねぇ……ちょっと見てみたいかも」

 

見せてやるよ!後でハーミット・アメジストと催眠術で追体験させてやる!

 

康一「……あれそろそろ止めたほうがいいよね? 見てるこっちが辛くなってくるよ……」

 

康一さんはもうそろそろやめ時だとして全員に同意を求めてくれる。ワサビを知ってるから?

とにかくデュオロンは嫌だぁぁぁぁ!

露伴先生達も苦笑や微妙な表情を浮かべている。

頼むから止めてぇぇぇぇ!

 

リアス「そうね、これだと減速どころか加速させてるから意味ないわ。……そろそろ終止符を打つとしましょうか」

 

すると一同を代表してグレモリーが前に出ると、指を鳴らして空間に魔法陣を展開した。そこへ手を突っ込むと、中から一本のハリセンを取り出した。

お前ウィ◯ードかよと一瞬でも思ってしまった人、手を上げなさい。先生怒らないから。徐倫先生を除く。

 

話を元に戻して、手にしたハリセンに何らかのオーラを纏わせたグレモリーは紅の髪を揺らめかせながら兵藤の元へ歩み寄る。そして彼の肩をポンポンと叩いた。

 

丈城「ん?」

 

兵藤はそれに気がついて振り返る。その視界に入ったグレモリーの表情は、ニッコリとした爽やかな笑顔だった。由花子さんや小町やいろはを思い出す。あとジョルノも。

対する兵藤の表情も見慣れた物だった。

それはやり過ぎた俺やジジイやジョジョが空条親子やジョルノに肩を叩かれたときにする表情。

 

 

 

 

 

 

あ、やり過ぎた。オラオラや無駄無駄が飛んでくる……的な。

 

 

 

 

 

リアス「話が全ッ然……進まないでしょうがァァァ──────ッ!!」

(バッシーンッ!)

 

丈城「アリバ◯・サ◯ージャァァァァァッ!?」

 

ハリセンのフルスイングが丈城の下顎を確実に捉え、その姿は夜空の彼方へと消えてゆくのだった。

ざまぁ♪

 

 

 

そして時は動き出す…。

 

 

 

丈城「ったく、背後も『シビル・ウォー』の射程距離内だったはずだぞ? なんでトラウマ攻撃が効かねぇんだよ」

 

それは同意。

 

リアス「確かに色々見えたわ、私にとって嫌なものがいくつもね。でもあなたの暴走運転にいつも付き合わされているせいで妙な耐性がついちゃったから何にも感じなかったのよ。自業自得ね」

 

案外空条親子やジョルノには効かないかも。

多分、俺にももう効かない。

ジョースター家の家訓の1つ、同じ戦法で挑む事はそれすなわち既に凡策。

解っているなら対策は取れる。モード、錠前(ザ・ロック)。開き直れば良いんだね♪(違う)

既にあのスタンドは俺達には効かないし。

 

音石「なんか…普段からあんな調子に慣れちまってるから、あの場面でも落ち着いていられたんだな。……今更だけど」

 

 

しみじみと、案内されていた時の疑問を思い返す音石さん。兵藤の持つ能力が対処にあたったのであれば勝率は極めて高い。故にあのように冷静でいられたのだ。

 

その根源はひしゃげた顔面を気合いで戻すと、膝枕を切り上げてアルジェントの頭を撫でる。手を動かしながらも、その視線は正座で真っ白になる自分の姿をした俺と仗助に向けられている。

 

丈城「………………………」

 

暫く動けなかったとはいえ、大体の内容は耳にしていたようだ。

 

兵藤の記憶を盗み見れば似たような経験があるようだ。

『神の子を見張る者』幹部・堕天使コカビエルが襲撃してきた際のこと。最終戦で兵藤とコカビエルの一騎打ちの末に勝利。その前に兵藤はグレモリーに必死で止められた。人間が聖書に記された堕天使に勝てるわけがないと。その制止を振り切り勝負に臨んだ結果、戦績は辛勝。だが勝ったとはいえグレモリー達に大きな心配をかけてしまったようだ。

 

 

 

 

もし、あの戦いで命を落としていたら……

 

 

 

 

グレモリーや姫島、アルジェントに搭城。木場、金髪、駒王学園の皆、自分の両親……。こんな自分でも慕ってくれる人達を悲しませてしまうだろう。

似た者同士…か。

 

平気な様子をこれまで保ってはいたが、その心の中ではしばしば葛藤が起きていた。このまま無茶をし続けるべきなのか、それとも今一度認識を改めるべきなのか。

 

 

比企ヶ谷八幡の経緯を聞いた時、丈城は一つの決意を固めていた。

 

 

丈城「比企ヶ谷八幡」

 

 

その声色はこれまで聞いた事がない程落ち着いていた。その場の全員が見守る中、ゆっくりとした足取りで兵藤は俺に歩み寄る。

 

 

八幡「なんだ?」

 

丈城「一つ聞く。お前が散る要因となった戦いで、お前が選んだ選択はあっていたと思うか?」

 

 

この選択とは、消える可能性がある暗示を無視してレクイエムに至った事だ。

合っていたかなんて…わかるかよ。それしかなかったんだからな。コカピエル…とやらとは違う…。

敵は……柱の一族に覚醒した由比ヶ浜だったんだ。

由比ヶ浜本人の意思を無視して覚醒させられた由比ヶ浜だったんだ…。

 

結衣『お願い……ヒッキー…あたしを殺して…』

 

殺すことは楽では無かったが、可能だった…。

出来るかよ…。バカだけど能天気で笑い、みんなに受けいられたあいつを…。

そして…既に殺されていた材木座…。俺がやらなければ全滅していたアーシス…。

俺を除いて全てが円満に片付く方法は…あれしかなかった。

 

八幡「選択…」

 

模索したよ。それ以外の方法をな…結果は由比ヶ浜と材木座の死以外無かった。

 

丈城「確かに危機的な状況だったのは話を聞いててもよくわかる。俺自身、ここまで来るのに色んな敵と戦ってきたからな。この間もそうだったよ。危うく死ぬかもしれねぇ戦いを経験したばかりだ」

 

そんなのは日常だ。

 

八幡「……覚悟を決めていたから、それを貫き通しただけだぜ。お前はどうだったんだ? 兵藤丈城」

 

世間一般論は聞かんぞ?お前ならどうしてた?

やろうがやるまいが、結果は誰かの死だ。

それが由比ヶ浜と材木座(+平塚&葉山グループ)か、それとも俺1人か…。

なんとかできていたのはレクイエムのみ。

絶望のレベルが違う…。

 

丈城「一緒さ。仲間を傷つけたくなかったから、自分の力を信じて挑んだ。聖書に記された堕天使相手に一人でな」

 

八幡「……勝てたのか?」

 

木場「なんとかね。辛勝ってやつかな、ほぼゴリ押しだったし」

 

違うんだよ……。どれだけ強かろうが、それはただの敵だった…。由比ヶ浜がただの敵だったのなら、どんだけ強かろうがレクイエムなんか使ってねぇ!

 

兵藤の言葉にリア達は思わず顔を見合わせる。事件に対応した当事者なだけあって、記憶に新しいのだ。

 

八幡「良かったじゃねぇか。強敵に勝てたんだから」

 

知ると識るでは違う…絶望の質が違う…。

 

丈城「……本当に良かったと思うか?」

 

八幡「は…?」

 

丈城「後で俺めっちゃリア達に説教食らったんだぜ。心配をかけさせないでくれとか、自分を大切にしてくれとかって。そん時は状況的に余裕がなくて考えられなかったけど、改めて思ったんだ。確かに戦況を変えるには敢えて危険に飛び込む時もある。だけどそういうときこそ、仲間の存在を忘れちゃいけないんだなって。仲間の為だったとしてもまずは己が身を第一に考えなきゃいけないんだなって」

 

これでも反省してるんだぜ? 日頃の行いが悪いからそうは見えねぇかもしれねぇけど、とバツが悪そうに頭を掻く。兵藤の場合は運が良かっただけなのだ。下手をすれば死ぬ可能性だってあったのである。

それ、俺にも言えるんだがな。しょっちゅういろはには泣かれてるし。逆にいろはや小町も死にかけるけどな。

綾瀬絢斗のクリームを相手にしたときは何度もいろはも小町も陽乃さんも欠損だらけで死にかけていたからな。

承一郎を相手にしたときも致命傷をもらったか。

一度視線を外して上を見上げると、若干声を張って宣言するように言葉を繋げた。

 

丈城「この言葉は未来の俺への戒めを含めて言わせてもらう。命に関わるような大きな選択を突きつけられた時、真っ先に仲間の存在を思い浮かべてくれ。Ifの可能性を心配しても仕方ないとは思う。でも自分の事を思ってくれる仲間がいることは素晴らしいことなんだ。そいつらが悲しむようなことは絶対にやめてほしい」

 

気がつくと康一さんや城廻先輩、仗助や億泰さんの目にはうっすら涙が浮かんでいた。アーシスの仲間は本気で俺の事を心配している。嘘ならここにはいないはずだ。

 

丈城「お前の隣にいる、東方仗助の顔を見てみろ。あそこに座ってる仲間の顔を見てみろ。やったな八幡って言ってくれると思うか? おかえりって笑顔で言ってくれると思うか? ……俺にはそう見えない」

 

八幡「……そう、だな。そうだよな」

 

今でも自分の選択には後悔はしていない。ベストでは無かったかも知れないが、由比ヶ浜や材木座が死という真実から逃れる事は出来た。

だが、それは俺の自己満足だった…か。

仗助達にとっては由比ヶ浜よりも俺だったんだろう。

例え後味の残す結果だったとしても…。

どうすれば良かったんだろうな…。俺は…。

こうなった事を取るべきか…由比ヶ浜を含めて見殺しにすれば良かったのか…。ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムなら良かったのか?

 

丈城「なら……掛ける言葉は一つしかないな」

 

悪いが………あの時の状況をどうすれば良かったか…なんて他者からはわからん。

恐らくは、その記憶を後で見せれば兵藤も苦悩するだろう。柱の一族に覚醒したのがここにいる誰かだった時、兵藤は躊躇いなく太陽(サン)を使えるだろうか…。

いや、こいつの場合なら手はあるだろう。

それこそゴールド・エクスペリエンス・レクイエムとかを使ってな。

知った気になっていて、識ってはいない。絶望の質が違うという事には気が付いていないだろう。

だが、何を言いたいかは理解できた。

 

ユイ(基本世界の由比ヶ浜)『もっと人の気持ちを考えてよ!』

 

基本世界の比企谷八幡が、由比ヶ浜に言われた言葉。

何が起きたのかは記憶にプロテクトがかかって見えない未来の出来事。

兵藤の言葉は恐らくはこれだろう…。

ならば…俺はどうすれば良かったんだろう…。答えが見えない無限の応答…。

解決策はこれしか無かったのに…。解決してもしなくても結果は………。

だが、一つだけ言えることはある。

俺は家族やそれと同じくらいと思う本物達を悲しませてしまったこと。その事実は確かなんだ…。

俺はチーム、ダイヤモンド・アンブレイクの前へと移動し、膝をつく。

どんなに理屈をこねても、これだけは…この事実だけは変わらない。家族を泣かせてしまったことだけは…。

 

八幡「仗助、康一さん、億泰さん、露伴先生、音石さん、城廻先輩、カマクラ、そして……心配をかけちまった家族や仲間達全員に向けて」

 

 

力強く両手を床につき、誠心誠意の謝罪を大声で叫んだ。

 

 

 

 

 

八幡「迷惑をかけて……本っ当に、ごめんなさいッ!!」

 

 

 

 

 

叩きつけるような速度で頭を下げる八幡。

暫しの静寂を置いて、最初に仗助が立ち上がる。そのまま頭を下げる俺に近寄ると、片膝をついて彼の肩に手を置いた。

 

 

仗助「───────顔を上げろよ、八幡」

 

 

そう促されて顔を上げる八幡。その視界に映ったのは……

 

八幡「!」

 

ジョジョが……静がアレッシーの罠にはまり、自棄になったとき以来、見ることの無かった…

 

仗助「色々とよォ〜、言いてぇ事沢山あるし…まだまだ殴り足らねぇ……! でも、一つだけ…一つだけ言わせてもらう……!!」

 

あの時以来…いや、あの時以上に涙を流す仗助。

滝のように涙を流し、肩にかける手に力を入れる仗助の顔。そしてもう片方の手も肩にかけ、震える声で絞り出した言葉が俺の心に深く突き刺さった。

 

 

仗助「………おかえり……!」

 

 

アーシスを代表して、漸く本心を見せた仗助。康一さん達も席を立って歩み寄り、安堵の笑みを浮かべている。全員が俺の帰還を喜んでいた。

 

 

八幡「………ありがとう」

 

 

容姿は兵藤のままではあるが、だからこそ兵藤とグレモリー達にも理解できるのだろう。あの表情は本気で反省し、再び仲間の元に戻ってこれた喜びに満ちている。本当の意味ではないものの、一先ず仲間の一部と仲直りできただろう。

 

木場「……元に戻るといいね。ジョジョ君」

 

丈城「戻れるさ。『クレイジーダイヤモンド』を使わなくてもな」

 

グレモリー達は邪魔にならないよう、離れてその様子を静かに見つめている。

 

自分たちの他にも、慈愛や仲間の絆に溢れた彼らならきっと大丈夫だと信じて。

 

お前は間違えるなよ?

俺と同じ状況に陥った時…お前ならどうするか…。

 

sideなし

 

ジャガーノート・ドライブ…。

サマエルの毒…。

『赤龍帝』の基本世界の出来事が丈城の身に起ころうとした時、丈城は八幡の事を思い出すだろうか?

それはまた、別の話である。

 

(←To Be continued…)

 

おまけ♪

 

八幡「さて、丈城君♪」

 

丈城「ん?何だ?感謝の言葉ならいらないぞ?」

 

八幡「確かに感謝はしよう……だがな、想像を絶するトラウマを刻んでやる……(波紋の応用の催眠術発動)」

 

丈城「何だ!スタンドが使えん!え?何だ?何だこのJCはっ!体中にエイジャの赤石があるスタンドだと!?それに波紋を当てるな!……ぎゃー!見えない!本当の光速って見えないんだ!溶ける!体が溶ける!えっ?ジョルノ・ジョバァーナ?何で俺が生首に!?ボールネットに俺を入れて何するの!?その取り出したハバネロは何!?ぎゃーーーー!瞼に塗るなぁ!口に突っ込まないでぇぇぇぇ!ガムテープを口に貼るなぁぁぁぁ!」

 

丈城「ふむーーーーー!(更にハバネロを鼻に突っ込むなぁ!肌という肌に塗るなぁ!せめてガムテープだけでも…………ギャァァァァァァァ!ガムテープの裏にまでハバネロがぁぁぁぁ!助けてぇ!…………何でオカルト部の奴等はギャングダンスを踊ってるんだぁ!やめて!あのシーンは好きなんだから!それをトラウマにしないで!え?その幼女は何っ!?デュオロン・オブシディアン?何で振り向いてはいけない小道の手が迫ってくるの!?俺は………どこに連れていかれるんだ……)」

 

八幡「そろそろデュオロン・オブシディアンが出てくる頃かな?」

 

リアス「似た者同士ね……性格も鬼畜さも」

 

仗助「似た者同士だな……性格も外道さも」

 

リアス「そろそろ止めるべきかしら?」

 

八幡(チラッ)

 

リアス「バレてる……って消えてく!」

 

仗助「一度それを見てるからなぁ…。それに、波紋の免許皆伝だから気配でばれるぞ?アクトン・ベイビーまで使いやがった…気配を消されてるからわからん…」

 

この日、丈城に新たなトラウマが刻まれた。

少なくともデュオロン・オブシディアンとパッショーネの鬼畜さだけは。




奇しくも修学旅行編の状況に似てしまいましたね。

原作と違い、八幡は直ぐに謝りましたがしこりは残りました。
もし第3章のー鎮魂歌ーに突入した時、他に解決策があったのでしょうか?

私には考えが浮かびません(^_^;)


また、申し訳ありませんが、ストックの関係により、4-4の途中ですが、先に4-5を明日から更新します。

楽しみにされている方には申し訳ありませんが、4-4は4-5が終わり次第、更新を再開します。

誠に申し訳ありません。

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