やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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バトル再び!


襲撃

第9話『襲撃』

 

side広瀬康一

 

「……?」

 

雪ノ下雪乃さんに匹敵する美味しい紅茶を口にしつつ、僕がふと目の前のテーブルに目を向ける。するとその視界に文字が描かれていた。

 

"兵藤丈城"

 

それは丈城のフルネームだった。

 

康一(何だろう? コレ……さっきまで無かったぞ)

 

文字はデカデカと書かれていた。これだけの大きさならば気づいてもおかしくないと思うけど…。

僕の挙動に違和感を覚えた露伴先生が話しかけてる。

 

露伴「どうした、康一君」

 

康一「あぁいや…こんな文字、さっきまでなかったはずなのになぁって思って……」

 

露伴「どれ」

 

席を立った露伴先生が僕の背後に回り、その文字を眺める。しかし露伴先生が見た文字はそれではなかった。

 

露伴「"許さない"……何の事だろう」

 

康一「えっ?」

 

露伴先生が口にした言葉は"兵藤丈城"ではなく、"許さない"という全く別の単語だった。もう一度確認してみると、確かに最初に見た単語の下に"許さない"とある。僕の体中に汗が吹き出て来る。

 

露伴「君がいいたいことはわかる。あそこの彼の名前が書いてあることだろう? だが僕の席からここにくるまでにもうひと単語書き加えられているんだ。……おや、あれもそうかな?」

 

露伴先生が向かいに座る明の紅茶の受け皿あたりを指差す。

 

康一「……"絶対に、許さない"」

 

露伴「何やら恨み節のような内容だね。だが不可解なのは、この文字がいつ書かれたという事だ。三番目の文字の位置は我々のいる場所からよく見える。誰かが書いたとしたらその人物を特定するのは容易な筈なのに」

 

リアス「どうしたの? 康一君に露伴さん」

 

康一「実は変な文字が……あっ、まただ!」

 

リアスさんが座る部長専用の卓。その全面にまたも文字が書かれていた。内容は"私は兵藤丈城に殺された"とある。

全員の視線が丈城くんに向けられる。

 

露伴「どれも君に対する恨みが篭った内容だ。鵜呑みで信じるわけではないが、何か心当たりはないかね?」

 

丈城「ねぇどころかあり過ぎるんだよなぁ。ガキの頃から何かしらのトラブルには巻き込まれてたから……」

 

子猫「……私たちが知る限りでは、悪魔と堕天使、教会の強硬派に勝利しています」

 

音石「というか、そもそも誰なんだよ。こんな落書きを書きやがったのって……」

 

音石さんが順繰りに落書きに目を向けていく。更に彼は僕が座っていたソファに視線を移し、目を丸くする。

 

音石「オイ、そこにも!」

 

露伴「"『聖母の微笑』を返せ"…だと? 確か『聖母の微笑』はアーシア・アルジェントの神器だった筈では…?」

 

丈城「……成程、思い当たるフシが一個あるぜ」

 

腕を組んで目を細める丈城くん。そしてアーシアさんも何かに怯えるように自らの肩を抱きしめる。

 

そして丈城君はポツリポツリと語り出す。

かつて、丈城君がリアスさん達と共に対応した『聖母の微笑』強奪未遂事件。結末は生活費をゴッソリ持ってかれた丈城のレッ◯ファイトにより、主犯格の堕天使レイナーレが惨殺。リアの手によって配下の堕天使三名が滅殺されるという形で収束させたらしい。

丈城君とリアスさんはこの出来事を簡潔に僕達に話す。しかし企てた堕天使達は既に死亡している筈。何故それを仄めかす落書きがいきなり書かれていたのか。そしてそれを書いた者は一体誰なのか。

 

康一「レイナーレって堕天使は確かに死んだの?」

 

木場「死んだよ。他ならぬジョジョ君の手によってね。共謀していた堕天使達の方は部長が。遺体の片付けも確認したし」

 

康一「遺体の片付け?」

 

丈城「『クリーム』で消したでゲス」

 

八幡「いや俺的には『リンプ・ビズキット』で蘇らせて雑用させるとかするな」

 

丈城「やだよあんな元カノのゾンビなんて。しかも黒焦げだし役に立たねぇだろ」

 

は?

 

アーシス組「「「「「元カノだったの!?」」」」」

 

 

side比企谷八幡

 

しれっと丈城がカミングアウトしたところで本題に戻る。

 

スタンド使いや悪魔に堕天使がいるこの中で目を盗み、意図不明な怪文を書いた犯人。露伴先生や億泰さん、カマクラに音石さんは周囲に目を配りながら落書きを書いた犯人を探す。木場達も慎重に辺りを警戒する。

 

リアス「アザゼル。あなた何か見なかった?」

 

アザゼル「いいや。さっきの俺の位置からじゃ見えなかったし、立ち位置変えても何も変わらねぇや」

 

朱乃「でも不思議ですわねぇ。なぜ康一君の周りにしか落書きが無いのかしら?」

 

言われてみれば確かにそうだな。落書きはどれもこれも康一さんの手の届く範囲に書かれている。では落書きの犯人は康一さんなのか?いや、康一さんは落書きなんて真似はしない。

アーシスの中でも常識人ランキングトップを走る康一さんはこんなことはしない…

 

八幡(増える落書きか……ん? 落書き?)

 

待てよ?確かジョルノが残したスタンド資料の中には…

 

兵藤の使えるスタンドの中にもあれ(・・)はある。

だとしたら兵藤も知っているかもと思い、俺は兵藤に目を向ける。彼もまた察したらしく、肯定の頷きをする。

二人は困惑する康一さん……ではなく、彼のある一部分に視線を集中させる。やがてその疑念は確信へと変わった。

やっぱりか!

 

丈城「全員、康一から離れろ……っ!」

 

八幡「ゆっくりだ……ゆっくりこっちに来るんだ! 速く動いてはいけないッ!」

 

臨戦態勢に入り、グレモリー達や露伴達に注意を呼びかける。彼らはその意図が読めず、離れるよりもまずその真意を聞いた。

 

億泰「ど、どういう事だ? いきなりでわからねぇよ」

 

億泰さん!あんたはパッショーネに頼まれてそれをザ・ハンドで消したじゃあないですか!波と戦い続けていたあれを!

 

ゼノヴィア「それに、速度を指定する意味はなんだ? ジョジョ」

 

丈城「落書きを書いた犯人は、速く動くものに過剰に反応する。だからだ。それが今……」

 

兵藤が一旦言葉を切り、俺と共に犯人の居場所を突きつける。

 

丈城&八幡「「康一(さん)の腕を"喰っている"!!」」

 

その言葉に驚愕した一同は康一さんの腕を見る。彼自身も自らの腕をおそるおそる確認。そこには……

 

「ッ!? うわぁアアアアアア──────────ッ!!」

 

康一さんの着ている服の袖から、ペンを持った第三の腕が伸びていた。

 

めぐり「キャアアアッ!?」

 

露伴「こっ、康一君! なんだその腕は!?」

 

丈城「『ノトーリアス・B・I・G』だッ。そいつはよりスピードが速いものに同速度で襲撃するスタンドなんだ! 反射で走ったらそっちを優先して襲って来るぞッ!」

 

そう、かつてミスタさんが始末したディアボロ親衛隊のカルネ。スタンド能力の中でも異色である、死んでから発現するという本体の亡霊ともいえるスタンドがある。それが兵藤が口にした『ノトーリアス・B・I・G』というスタンドだ。

最終的にはトリッシュさんが海に落とし、波と戦い続けることになり、ストーンオーシャン事件の後にジョルノの依頼で億泰さんが消したスタンド。

仗助の偽物がいたんだ。ノトーリアスを使うスタンド使いがいてもおかしくはない。

分析は終わった。後は行動だ。

まず康一さんから謎の腕の持ち主を引き剝がさなければならない。だが彼の腕が喰われているこの状況や『ノトーリアス・B・I・G』の性質上、下手に動くことが出来ない。

 

康一「どうすればいいんですかァ! これじゃあ僕の腕が!」

 

対策ならある。

 

丈城「八幡、確か『ザ・ジェムストーン』は時止めが出来るんだよな!?」

 

八幡「あぁ、つっても10秒未満だ……まさか!」

 

俺のザ・ジェムストーンの時間停止は8秒が成長限界。

それ以上は残念ながら成長しなかった。

 

丈城「10秒未満か……All right! その間なら出来ることは出来る! 八幡行くぞ!」

 

八幡「おう! 『ザ・ジェムストーン』ッ!』

 

案を導き出した兵藤。彼の機転を読み取った俺が自身のスタンドを発動し、時を止める。

その間丈城はソファを踏み台にテーブルを乗り越えて康一に接近。

一巡した世界の杜王町の東方常秀の『ナット・キング・コール』を用いて腕を切断した。康一さんを小脇に抱えたまま、続けて『ハーヴェスト』に切り替えて周囲の人間を運搬。俺もそれを手伝い、リミットの8秒が経過した。

スタンドを2つ同時に扱う技術の応用だ。さしずめ『ナット・ワールド』と『ハーヴェスト・ワールド』か?ハーミット・アメジストは要らないだろうからそっちを消した。

自覚すればオンオフは切り替えられる。兵藤の体と一体化しているからこそ出来る芸当だ。

 

康一「……? あ、あれ? なんで……?」

 

丈城「問題ねぇよ、切除はできた。もうこれ以上喰われる事はない」

 

康一「ええっ!? ……あっ、腕が!」

 

八幡「心配しないで下さい。兵藤、治せるか?」

 

丈城「パーツ生成には時間がかかる。代わりに平行世界の俺の腕を取り付けるよ。この状況じゃ応急手当ぐらいしかできねぇ」

 

戸惑う康一さん達だったが、すぐに意識を目の前に向ける。ソファの背の向こうでは骨をかじるような気味の悪い音が響く。

やがてソファの背を掴み、第三の腕の持ち主が姿を現した。

 

レイナーレ『KU……UO、G…GYYYAAAAAAHHHHHッ!!』

 

女の声で奇声を発する、女体の『ノトーリアス・B・I・G』。だがその姿は兵藤に覚えのある存在であった。

 

アザゼル「あいつは……レイナーレなn (ゲシッ!) ドワッ!?」

 

丈城「ブゥゥゥンッッ! 堕天使レイナァアアアアレェェエエエッッ!!」

 

冷静に見定めようとするアザゼルを踏み倒す兵藤。こいつ、十万円を無駄にさせられた事をまだ根に持っていた。

まぁ、十万円は学生にとっては大金だ。

え?関東支部の支部長だから十万円なんて小銭感覚だろう?だって?

俺も一般的な学生の金銭感覚を失わないように自分の意思で月の小遣いは一万円って制限してるんだよ。それから鑑みるに10ヶ月分の小遣いを無駄にされた事になる。そりゃ頭に来るだろう。それが生活費ともなればなおさら頭に来る。

 

リアス「落ち着いてジョジョ! 怒りのあまり何処かの神になってるわよ!」メメタァ!

 

丈城「新ジョジョだぁっ! 十万円のォ……恨みィィ─────ッッ!!」

 

リアス「落ち着きなさい!」

(スパァーンッ!)

 

丈城「ブッ!? ……ハッ! お、俺は何を……?」

 

マジで理性が飛んでいたのか。気持ちはわかるがな。

帰ったら貯金の一部で金塊を贈るか?

 

露伴「こんな時に下らん私情を挟むな。君の今すべき事は康一君の応急手当だろう」

 

いやいや下らなくはないですよ?露伴先生。

学生にとっては十万円は大きいです。

無理矢理下げられた兵藤と康一さん、踏み倒されたアザゼル以外のメンバーがそれぞれの得物や能力を手に警戒する。

 

すると、校内放送を介して何者かの声が轟いた。

 

??『フハハハハッ。どウダね、襲い掛カラれる気分ハ? 最高だロウ……』

 

リアス「誰!? 放送室にいるの!?」

 

??『私ハ今、校庭かラ君達と会話をしテイル。こノ駒王学園は、我々が乗ッ取らセてもったヨ』

 

朱乃「魔法で放送室のシステムをジャックしているようですわね……」

 

仗助「一体誰だテメーッ! 名を名乗れ名を!」

 

仗助が天井に向かって叫ぶ。

 

ドーナシーク『我が名ハ"ドーナシーク・ロックド・アップ"! リアス・グレモリーによっテ一度は死ンデしまッたが、強大なる力ニよりこの世に舞い戻ッタのだ!』

 

アザゼル「ドーナシーク! お前なのか?」

 

ドーナシーク『コレはこれハ、アザゼル総督殿。お久しブリですナぁ。しカシ今の私ノ主ではナイ! ナゼなら私はこノ力を授ケテ下さったお方に忠誠ヲ誓っタのでス!』

 

アザゼルの呼びかけに、"ドーナシーク・ロックド・アップ"と名乗る人物は若干機械染みた声色で意気揚々と語る。あの方とは一体誰のことだ?

 

アザゼル「あの方……?」

 

ドーナシーク『私だケではアリマせん。"ミッテルト・リゼントマント・オブ・エイジ"、"カラワーナ・フロント・オブ・ザ・バック・フー"、そしテ目の前の"レイナーレ・ミューチュアル・ハスティラティ"モあのオ方に忠誠を誓いマシた……最強ト呼ぶに相応シイ力を手にシテネ!』

 

スタンド能力か。力に魅入られた奴の陥りそうなことだな。

 

億泰「よくわからねぇが……とりあえずぶっ飛ばしゃあいいんだろ? あのドーナシークとかいう奴がいる校庭にいってよォ!」

 

めぐり「忘れちゃダメだよ億泰君! 私達の目の前には、あのレイナーレって堕天使が!」

 

城廻先輩の言う通りである。下手に部室を飛び出せば『ノトーリアス・B・I・G』と化したレイナーレの餌食になる。これでは動くことができない。

 

木場「なら簡単だよ。僕らが分担して当たればいいんだ。あの口振りだとレイナーレとドーナシーク以外にも蘇った堕天使がいるみたいだから、全部で四つの班に分かれることになる」

 

ゼノヴィア「裕斗の案なら私も賛成だ。全員で一人の相手は効率が悪い。お互いそれなりの腕があるのなら問題ないだろう」

 

仗助「よっしゃ、そいつで決まりだな!」

 

木場の案により、ここに残ってレイナーレと戦う班。そこから三方向に分かれ、復活した堕天使達を迎え撃つ班に分かれる事に。

最初の要であるレイナーレ迎撃班は……

 

丈城「『ノトーリアス・B・I・G』は厄介なスタンドだ。俺達でなんとかする。なぁ? 八幡」

 

仗助「あぁ。康一、お前は皆と一緒に行け。俺はここに残る」

 

康一「気をつけてね、仗助君」

 

アーシア「ジョジョさん……」

 

丈城「アーシア、お前も皆と一緒に行け。なんかあった時の回復要員は必須だ」

 

仗助「任せろって。俺だって治す力があるんだ。心配はいらねぇ」

 

アーシア「……わかりました。お気をつけて、皆さん」

 

丈城&仗助&八幡「「「あぁ! (All right!)」」」

 

話し合いの末、丈城・八幡・仗助が残る事となった。

 

カラワーナ、ミッテルトの居場所は分からないものの、最低ドーナシークの居場所だけは判明している。ひとまず残りのメンバーで校庭に向かう事に。

 

丈城「さァてと、リベンジマッチと洒落込もうじゃねぇか? ついて来やがれ『ホワイト・アルバム』!」

 

レイナーレ『WOOOOGYYAAAAHHHッ!!』

 

背後の窓をアズ◯エルよろしくブチ破って外へ駆けてゆく丈城。その速度に反応したレイナーレは俺達を飛び越え外へ。先を越された俺と仗助も窓枠の向こうへと飛び出していった。

 

八幡「じゃっ! あの…ドーナツシックだっけ? 任せたぞ!」

 

仗助「ドーナシークだっつの! 皆、またあとで!」

 

リアス「気をつけてね! 三人とも」

 

風のように去って行く俺達の背中を見つめ、一同は改めて決心する。

この戦いは絶対に勝たなくてはならないと。

 

リアス「それじゃあ、私の可愛い下僕達。そしてアーシスの方達。あと小山◯也。今回の相手は一筋縄ではいかない相手よ! あの三人に負けずに、心火を燃やしてぶっ潰すわよ!」メメタァ!

 

オカルト部「「「「「はい!」」」」」

アーシス「「「「「おーっ!」」」」」

 

アザゼル「おいコラ! しれっと俺を混ぜるなよ! つーか中の人なんざいねぇッ!!」

 

やかましい、吉良。

リアの一喝に全員 (約一名を除く) の士気が上がり、我先にと部室を飛び出してゆく。

モード・ノトーリアスB・I・G発動。アーシス、スクランブル。

 

今。オカルト研究部とアーシスの合同チームによる、復活堕天使迎撃作戦の火蓋が切られたのだった。

 

(←To Be continued…)




さぁ、次なるドンパチです!

果たしてどうなる!?

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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