やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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ラーメン回の続きです。


将来の楽しみ

side比企谷八幡

 

ようやく店内に入れたので券売機で食券を買う。

レディーファーストの精神を発揮し、徐倫を先に…と思ったら、承太郎が先に行き、迷わず豚骨のボタンを押す。さすがはオラオラの承太郎。

 

承太郎「ここは俺が出そう」

 

八幡「いや、自分で払うぞ?」

 

承太郎「遠慮するな。叔父貴分の顔を立てさせろ。それに、俺が奢らなくても徐倫がお前に奢っていただろうが、いくら家族同然の間柄とは言え、徐倫はお前の教師だ。特定の生徒に奢るのは良くないが、俺ならば問題は無いだろう」

 

そういうことなら素直に奢られることにする。

さすがは承太郎。仗助の兄貴分だな。しっかりと娘の立場を考えているところも八幡的にはポイント高い。

俺も承太郎に倣って豚骨を選択。

 

徐倫「あたしはラーメンって良くわからないから同じものを注文するわ」

 

承太郎「わかった」

 

むむ、これはいけない。国籍はアメリカだが名前は日本人の徐倫がラーメンをよく知らないのはよろしくない。

これはちょくちょく連れ出す必要がありそうだ。

カウンターに徐倫を挟んで並んで座り、承太郎は食券を出すや麺の固さを指定する。

 

承太郎「コナオトシで」

 

徐倫「ヌードルの事は良くわからないから同じので」

 

八幡「あ、じゃあハリガネで」

 

俺も徐倫も追随した。それにしても思ったのが…。

 

八幡「あれ?生まれが日本の承太郎はともかく、生まれも育ちもアメリカの徐倫は『啜る』って出来るの?」

 

欧米人が『啜る』というアジア独特の食べ方を忌避するのはよくある事だ。実際に徐倫が麺類を啜る姿を見たことはない。

 

徐倫「ジョジョがよくソバやウドンを家で出すからね。もう慣れたわ。ほら、箸だって普通に使っているでしょ?」

 

言われてみればあまりにも自然すぎて気が付かなかったが、普段でもわりと箸を使っていたような…。

ちなみに徐倫のホームステイ先は東方家だ。

それにしても徐倫の見た目は欧米の血の方が濃いはずなのに日本人のようなアジア系の顔立ちをしている。

ラーメン屋でパリッとした美人がいるというのはなかなか趣深いものがある。

店内でも妙な注目を集めているが、徐倫はそれを気にする様子もなく、カウンターに備え付けられている紙エプロンをウキウキした様子で用意したり、胡椒や白ごま、高菜に紅しょうがを興味深げに見ている。

承太郎はそんな徐倫を微笑ましげに眺めていた。

ホントに数年前までは考えられない光景だな。

麺の茹で時間が短いお陰かラーメンはすぐに来た。

 

八幡&徐倫「いただきます」

 

承太郎「いただこう」

 

汁や麺を一通り味わう俺達。

 

承太郎「うまい。料金以下のまずいラーメンだったら返金してもらおうかと思ったが、これなら文句なしだ」

 

そういえば高校時代から料金以下のまずい食事は金を払わずに帰っていたみたいだが、今でもやってるのかよ。

 

徐倫「濃厚で脂ばかりね。でも、たまにはいいわ」

 

八幡「あー……女性にいきなり豚骨はキツかったか…」

 

徐倫「大丈夫よ。アーシスの訓練のお陰で運動量が多すぎるから並の男性よりもカロリー高めに食事しないとむしろ体が持たないから」

 

八幡「あー……下手なアスリートよりもハードだもんな。それよりも徐倫。ラーメンは伸びる前に食べるのがポイントだ。おしゃべりしながら食べていたら一番美味しい時期を失するぞ。な?承太郎」

 

承太郎「特にこだわりはないがな。だが、コーンフレークがふにゃふにゃになる前に食べるのと同じようなものだ」

 

徐倫「そういうことなら」

 

そこからは三人が無言でズルズルとラーメンを啜る。

麺を4分の1ほど残して替え玉を注文する。

 

徐倫「替え玉?」

 

八幡「豚骨ラーメンの独自のシステムだ。早い話が麺のお代わりだな」

 

承太郎「替え玉には替え玉の楽しみかたがあるようだ。俺も博多に行って初めて知ったがな」

 

同じ豚骨でも久留米にはそのシステムがないらしい。

 

徐倫「せっかくだからあたしも替え玉をいただくわ。楽しまないとね」

 

徐倫は実に楽しそうにしている。

偶然とはいえ、今日は一緒に来れて良かった。

 

承太郎「昔は東京風のあっさりしたラーメンしか許容出来なかったが、各国を歩き回ったせいか?今では色んな食べ物を食べるようになった。お前もいつかはトマトが好きになればいいな」

 

八幡「別に苦手じゃあない。トニオさんのところで本当のトマトを食べたせいかな?まずいトマトが嫌いなだけだな」

 

徐倫「トラサルディは良い食材しか使わないからね。トマト料理でイタリアンに勝てる所はないわ。それにしてもそんなところまで本物嗜好のハッチって…」

 

替え玉がきてチップにんにくを投入する。

生にんにくは胃に良くない。にんにくが食後の息を臭くするのは実は生にんにくが胃を荒らしているからだという説もある。

にんにくが滋養強壮になると言われているのは火で加工したにんにくだ。生のにんにくは逆に刺激が強すぎて毒になる。エクセスって奴だ。

 

徐倫「ところで父さん…」

 

承太郎「ん?」

 

徐倫が高菜野菜や紅しょうがを投入してより冒険しながら徐倫スペシャルを作りつつ、承太郎に語りかける。

 

徐倫「いつ再婚とかするの?」

 

ぶふっ!

承太郎がむせ帰り、ゲホゲホと咳き込む。

承太郎のこの姿は滅多に見られんな…。

 

承太郎「突然何を言い出す」

 

徐倫「娘のあたしが良いって言ってるんだから。ママだってそろそろ再婚するみたいだし?いい人がいるみたいよ?なら父さんもそろそろ自分の幸せを見つけたら?」

 

徐倫がやや呆れながら言う。

確かに承太郎はぶっきらぼうなところがあるから誤解されやすいが、ジョースター家の血統らしく人一倍家族愛が強い。それに、ジジイという例外はあれど、ジョースター家は生涯一人の女性しか愛さない…という気運もあるのかもな。

 

承太郎「俺は一度結婚に失敗している。お前にも苦労させてしまったしな。俺なんかが家庭を持つべきでは無かったと後悔している。お前という娘が生まれてくれたのは幸せだがな」

 

この顔には見覚えがある。

罪悪感に囚われている時の俺の顔と同じだ…。

 

徐倫「まったく…こういうところはハッチにそっくりよね。けど、あたしもアナスイも老後の面倒を見れるタイプじゃないわよ?エンポリオに押し付けるのもなんだし、エルメェスもそろそろ結婚するかもね。間田とは良い感じになっているようだし」

 

承太郎「おい。いきなり話が現実的になってきたぞ?」

 

老後の心配とか話がいきなり生々しくなってきたな。

 

徐倫「そうね……身近なところで三浦や海老名、川崎、雪ノ下なんてどう?基本的に女嫌いの父さんでもあの辺りはかわいがってるじゃない」

 

承太郎「ぶふっ!」

 

すると再び承太郎がむせかえる。

おいおい。教え子を自分の義母候補にするな。

………まぁ、ジョジョと仗助の光源氏計画を完成させる家系だから今さら驚かんがな。

 

承太郎「ヤレヤレ……とんでもない教師だな。自分の生徒を父親の再婚相手に奨めるなんて、どういう神経をしているんだ?」

 

八幡「それを言ったら養子を自分の息子に嫁がせようとしているジジイなんてどうなるんだよ。エリナもリサリサをジョージに嫁がせたしな」

 

承太郎「……そう言われてみればそうだな」

 

まぁ、リサリサもジョジョも自分の意思だからなんとも言えないけどな。

むしろ仗助の場合は外堀を完全に埋められたからだし。

考えてみれば小町の奴は前世も現世もブラコンかよ。

魂レベルでブラコンなの?

ヤバくね?主に俺が。

 

承太郎「バカを言うな。アヴドゥルと花京院は親友のつもりだ。大体、親子ほど年が離れているじゃあないか」

 

徐倫「それを言ったらジョセフおじいちゃんと朋子さんだってそうじゃん。仗助兄さんと静、露伴先生と城廻だって」

 

承太郎「俺の身の回りは何でそういうやつしかいないんだ……ヤレヤレだ」

 

とは言え、承太郎と三浦や海老名、雪ノ下、川崎……ねぇ。

あ、下手したらミスタさんと留美とかも……さすがに無いよな?無いよね?

フーゴさんとシーラさんの噂も最近あるからなぁ。

お?小町や陽乃さんという手もあるか!」

 

承太郎「八幡……流石に小町や陽乃はない。あの二人といろはは俺の中では娘同然だ。それどころかあの三人がお前以外を選ぶとは到底思えん。ジジイも諦めているみたいだしな」

 

ダメかー。いろは助けてぇぇぇぇぇぇ!

 

徐倫「まぁ、とにかく考えてみたら?あたしや静も身が固まっているようなものだし、そろそろ自分のことも考えても良いんじゃない?」

 

承太郎「そういう相手が見付かったらな」

 

承太郎は話は終わりだと言わんばかりにズゾゾゾゾゾっと麺をすすり始めた。

 

承太郎「八幡、チャーシューをやろう」

 

八幡「ありがとよ。代わりにメンマをやる」

 

承太郎「ふ……ありがとう」

 

八幡「歳なんだから食物繊維は取らないとな」

 

承太郎「前言撤回だ」

 

ゴンッ!

 

八幡「イテッ!」

 

殴られた頭をさすりつつ、俺はラーメンを啜る。

 

承太郎「しかし、旨いラーメン屋を教えてもらったのでは俺も今度は連れて行かないとな」

 

八幡「アメリカではしょっちゅう連れてもらっているじゃあないか。酒が飲めるようになったらジジイや仗助やジョルノやジョジョも交えて一緒に飲みに行くってのはどうだ?歴代ジョジョ会とか」

 

承太郎「悪くないな」

 

既に楽しみになったのか、承太郎が優しい笑顔で返してくる。

あ、俺も楽しみになった。エンジェルラダーのような酒場で

 

徐倫「あたしもラーメンは気に入ったわ。お礼にあたしもエルメェスと飲み歩いた店を紹介するわ。イーハと雰囲気あるデートの〆に最高なお店をピックアップしておくから3年後に行ってみたら?」

 

八幡「それは是非!」

 

今さら雰囲気とかに流される関係ではないが、そういう店でいろはと静かに飲む酒か……。

すっっっっっっっっごく楽しみだ!

誰かと食べるラーメンも悪くない。一人で食べるのも誰かと食べるのもうまいラーメン。

やはり最強の食べ物はラーメンであるのはまちがいではない。

異論は認めない。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。
承太郎の再婚?
今のところは考えてません。


それでは恒例の原作との相違点。

一緒にラーメン屋に行ったのは平塚先生➡……のポジションに収まった徐倫とついでの承太郎

平塚先生はラーメンを奢ろうとしたが、奢られる理由がないので八幡が自腹で食券を買った➡承太郎がジョースターの家長として全員分出した。そういう理由なら奢られる理由があるので素直に奢られた。

迷わず豚骨を頼む平塚先生に男らしさを感じる➡徐倫は初ラーメンなのでよくわからないから承太郎に追随。

ラーメン屋での平塚先生の会話は八幡が事故のことについてのモヤモヤを感じている事に食べ物で例えた内容でいつかは許せると言った内容➡それは既に解決済みなので承太郎に再婚を奨める徐倫

八幡はトマト嫌い?➡まずいトマトが嫌い。トニオさんのお陰で克服してる

八幡はサラダに入っているキュウリが苦手➡まるまるカット。任務中の食事がどれだけ貴重かを知っている八幡は半ば好き嫌いはない

平塚先生が卒業後は取って置きのラーメン屋に連れて行く約束をする➡ラーメン屋自体を知らなかった徐倫にそれは無理。なので良い感じのバーに連れて行くと約束する

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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