やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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五巻のクライマックス、花火大会です。


材木座と由比ヶ浜

side材木座義輝

 

『しーずーまーのぉー♪そーこーかーらー♪』

 

露伴先生のウィークリーマンションで俺の携帯がなっている。

露伴先生が漫画の執筆を止め、うるさそうに眉をしかめる。

そう思うなら俺の携帯を取り上げなければ良いと思うのだが、安易なパクりを防ぐために小説を執筆中は取り上げられてしまう。

まぁ、楽な道は人を堕落させてしまうからな。

ピッ!

 

露伴「何の用だ。ん?違う。僕は岸辺露伴だ。義輝くんは小説を書いている」

 

露伴先生は勝手に俺の電話に出て通話を始めた。

相変わらずこの辺りはゴーイング・マイウェイな方だな。

しかし誰からの着信だろうか。

格ゲー仲間とかとは今は交流がない。以前の遊戯部とのトラブルで奴等は所詮本物の友人ではないと悟ってしまってからは彼らとの交流が寒々しく感じてしまったからだ。

なんだかんだで露伴先生や城廻先輩、ジョジョ(ジョセフ)とのやり取りの方が俺には性に合っていると思う。

八幡の魂を回収する旅だとて、格ゲー仲間のきゃつらは決して共に来てはくれぬだろうしな。

 

露伴「花火大会?………ふむ、良いだろう。僕は許可するよ。彼にも休息は必要だろうしね。今代わる」

 

ふむ?花火大会とな?

俺を花火大会に誘う者など誰かいたか?

八幡やジョセフか?だとしたら露伴先生も誘われておるだろうし、露伴先生の反応もこんなぶっきらぼうではないだろう。

まるで一色嬢等を相手にするような反応だ。

露伴先生は通話中の電話を持って俺の所に歩いてくる。

 

露伴「由比ヶ浜結衣君からだ」

 

材木座「なんと!由比ヶ浜嬢からか!」

 

俺が気になっている女子、由比ヶ浜結衣嬢。

最近では俺をヨッシーと親しみを込めて呼んでもらっている。

 

露伴「どうした?早く出たまえ。嫌なら切るぞ?」

 

材木座「すいません!出ますので切らないで下さい!」

 

慌てて露伴先生から携帯を受け取り、耳に当てる。

 

材木座「済まん!由比ヶ浜嬢」

 

結衣『良いよ良いよ♪頑張ってみたいだね?あ、この前は宿題の手伝いありがとね♪』

 

あの時も散々礼を言ってきたのに、また感謝されてしまう。これだけでも手伝った甲斐があるというものよ!

 

材木座「なんのなんの。一緒に異世界を旅した仲ではないか!異世界の由比ヶ浜嬢とのやり取りもしたしな!」

 

結衣『うう~……ヨッシー酷い!あのあたしはあたしじゃあないし、思い出させないでよ……』

 

むむっ!これは失言であった!

確かにあの由比ヶ浜嬢は酷かったからな。

 

材木座「して、用向きは?」

 

結衣『う、うん……あのさ、ヨッシー。ポートタワーの花火大会さ……一緒に行かない?宿題を見てくれたお礼もあるしさ……なんか奢るし』

 

材木座「ふむ?だとしたら八幡や静嬢や康穂嬢、エンポリオ殿も一緒か?」

 

それでも由比ヶ浜嬢と出掛けられるならば嬉しい。

 

結衣『え?ううん、二人きりで……だけど、ダメ?ほら、ヨッシーにはさ、千葉村でもあの世界でも助けて貰ってるし、いつもお世話になっているし、夏休み中はずっと露伴先生の所で修行していたんだよね?息抜きにもどうかなって…』

 

ぬぬっ!二人きりでとな!これは……デ、デ、デートというやつなのか!

俺にもそんな事が出来る日が来ようとは!

 

結衣「あ、あはははは…やっぱ…ダメ……だよね?私なんかじゃあ……」

 

材木座「そ、そ、そ、そげなことなかとですわ!いきますたい!行けんことなかばい!」

 

露伴「君は九州出身者なのか?」

 

めぐり「あははは……たまに材木座君って言語がおかしくなるよね。それが小説に活かせればすごいんだけどなぁ~」

 

ぬぬぬっ!これは恥ずかしい!

由比ヶ浜嬢もさぞかし呆れて……

 

由比ヶ浜『え?ホント!?やったぁ!ありがとう!ヨッシー!』

 

え?俺と出掛けるのにこんなに喜んでくれるとは思わんかったでヤンス!まずいでヤンス!緊張して余計に言語がポンコツになってしまっているでゴワス!

あ………でも………

俺は一気に冷静になって露伴先生の方を見る。

すると……

 

露伴「その日は休みにしよう。というよりも、デートというリアリティー追求の為に一度君はデ経験するべきだと考えている。むしろ行くんだ。これは師匠としての命令だ」

 

おおっ!これは幸運!露伴先生のお許しが出たのなら行くしかないではないかっ!

 

材木座「我で良ければ是非ともご一緒させてくれ!」

 

由比ヶ浜『うん!詳しくは後でメールするね!約束だよ?』

 

声を弾ませて由比ヶ浜嬢は電話を切った。

我がデートか……デート……デートォォォォ!

 

プシュウ……バタン。キュウ……。

 

 

side岸辺露伴

 

露伴「情けない。女性とデートというだけで緊張して目を回すとは…」

 

たかだかデートするだけで目を回すとは情けない。

だが、現実でこんな場面に出くわすなんて僕はついている。脈拍は?真っ赤になっている顔の赤みは?緊張して汗が出ているな?光を当ててテカり具合も確かめなければ。

 

めぐり「むぅぅぅ。じゃあ露伴ちゃんはデートしたことがあるの?」

 

しゃがんで義輝くんを観察している僕の探求心を一気に冷めさせる冷たい声が聞こえた。

見ると城廻めぐり君が頬を膨らませて僕を不満そうに見ている。

なるほど……これが嫉妬心を向けられる、という奴か。

僕の漫画家としての成功をやっかむ嫉妬心は何度も向けられたが、色恋沙汰の嫉妬心を向けられたのは初めてだ。これも未知のリアリティーだな。

それに僕がデートしたことがあるかだって?

ふん、バカにするんじゃあない!デートなんて……

おや?僕は自分の記憶を振り替えってみる……

ハハハ。バカを言うなよ?岸辺露伴。デートの1つや2つなど……この岸辺露伴に……

え?この岸辺露伴ともあろうものが……

…………

 

露伴「…………………………ない」

 

なんて事だ……僕の青春時代は……いや、青春時代が過ぎた後ですらも僕はデートなんておろか、女性とまともに恋愛したことも…それどころか恋すらしたことがないとは!

この歳になるまで僕の生活は全て漫画に注がれていただなんて!これでは義輝くんの事を笑えないじゃあないか!

僕の人生でまともに女性を意識した事なんて…杉本鈴美くらいしかない……だと?それも初恋とも言えない幼い子供の頃の一回だけが?嘘だろ?

つまり………僕が意識した人って……。

僕は杉本鈴美の転生である城廻めぐり君を見る。

それこそ汗だくで。

 

めぐり「じゃあ露伴ちゃんも一緒じゃない。材木座君の事を笑えないと思うなぁ~。あ、じゃあ当日は私たちもデートだね♪」

 

おい、君が僕の予定まで勝手に決めるんじゃあない!

花火大会のデートというリアリティーの為に義輝くんを尾行して観察する予定ではあったが、何で僕までデートなどしなくてはならないんだ!

だが、鈴美お姉ちゃんの生まれ変わりのこの娘を逃したら……僕は一生結婚できない?

そう思うと、急にこの娘が大事に思えてくるから不思議だ。

いや待て!岸辺露伴!ジョースケになるつもりか!?

いや、だが、この娘は妹ではない……この娘と結婚しても僕がジョースケと言われる事はない…。

あの東方仗助と同じ扱いになるわけではない!

ジョースターさんだって63の時に当時短大生だった東方朋子さんと不倫の末に東方仗助が生まれたわけだから、あの年齢差に比べたら………

 

めぐり「あ、じゃあ早速浴衣を用意しなくちゃだね~♪どうして今まで考えなかったのかなあ~。もうほとんど夫婦みたいだからかなぁ~?比企谷君と一色さんや、仗助君と静ちゃんみたいに」

 

露伴「待て。彼らと僕たちでは全然違うぞ?君の場合は押し掛け妻というか、勝手に居座っているだけだからな?」

 

めぐり「そんな!」

 

やっと現実が見えたか……

 

めぐり「妻だなんて~♪」

 

露伴「都合の良いところだけを拾う便利な耳だな、君の耳は!ダメだ……抵抗するだけ無駄な気がしてきた。東方仗助……僕はジョースケになるみたいだ…」

 

僕はオフィスチェアーに座り込み、脱力してしまう。

そんな僕にお構い無く、城廻めぐりは後ろから僕の頭を抱いてニコニコしていた。

はははは……これが人生の墓場のリアリティーという奴か。

何でも思い通りにならないと気がすまない僕ではあるが、城廻めぐりには敵う気がしなかった。

この娘の天然は…最強だ。

 

 

side由比ヶ浜結衣

 

良かった……ヨッシーはあたしの誘いを受けてくれたんだ。心の底から嬉しいという気持ちが込み上げてくる。

そう言えばいつからだろう?

あたしがヨッシーを意識しはじめたのは…。

 

あたしがヒッキーへの憧れを恋だと勘違いしていたことに気が付き、たまたま近くにいたのがヨッシーだったから?

だって、それを自覚したときの戦いはヨッシーのガンズ・アンド・ローゼズとの戦いの時だったし、あれがきっかけでヒッキー達との距離が縮まったわけだし…。

ううん、それは絶対に違う。だって、あの時のあたしはヨッシーなんて全然意識していなかった。

むしろ、気持ち悪い中二って感じで、今のあたしが当時のあたしをひっぱたきたくなるくらいヨッシーの事を…それこそヒッキーに知られれば軽蔑されると思うけど、彼の事を下に見ていた気がする。

でも、それが変わっていったのは……。

彩ちゃんとの戦いの後のテニス部の特訓?

あの時、葉山くんや戸部っちのテニス勝負の時は負けたあたしを励ましてくれた。

それは彩ちゃんも、ヒッキー達も同じだったけれど。

優美子や姫菜との決闘の時……はあたしもヨッシーも何もしなかった。

続く大和っちのザ・フラックの時?

確かにあの時は広瀬さんや露伴先生を呼んで勝利の立役者になっていたと思うけど……その時でもない。

勉強会の時はヨッシーも別の部屋で露伴先生に缶詰にされていたから行動は別々だった。

マリンスタジアムの決闘では特に何もなかった。

あれ?じゃあ……いつなのかな?

遊戯部の時にはむしろトラブルを運んで来ただけだったし、誕生日の時?柔道部のトラブル?平塚先生が放置していた結婚についてのレポートの件?

 

……なんか何でもない小さな事の積み重ねがヨッシーをだんだん意識するようになった…そんな気がする。

でも、徐々に気になっていたヨッシーの事を本気で好きになったのはやっぱり千葉村の事。

あの時、ヨッシーは命を投げ出してでもあたしを助けようとしていた……。

更にはあの世界での、もしかしたらなっていたかも知れないあのあたしのトラブルの時、ずっと側にいてくれていた。

更には未熟なあたしの特訓にも付き合ってくれたし…。

 

ヨッシーが露伴先生の元で一生懸命夢に向かって努力をしていることをあたしは知っている。

実は葉山くんなんかよりも成績が良くて、ゆきのんや彩ちゃんに次いで学年のトップクラスにいることをあたしは知っている。

太っていたとは思えないほど、実は運動神経が良くて、テニス部の特訓で一番努力をし、成長していたのもヨッシーだったってことをあたしは知っている。

ヨッシーが苦手なゆきのんや優美子に頼み込み、冷気や熱気に対する耐性の限界を知り、その上で対策を練ろうと頑張っているのをあたしは知っている。

あの世界のヒッキーに負けた原因……水に沈んでしまった時の対策を真面目に考えている事をあたしは知っている。

ヨッシーはあたしなんかよりも断然素敵な男の子。

見た目はイケメンとは全然違う。

今でも中二病とかという趣味丸出しで周囲をドン引きさせている。

女の子に話しかけられただけでキョドってしまう。

 

女子の間では影で笑われてしまっている。

声を出して叫びたい。

あなた達なんかにヨッシーの何がわかるの!?って。

あたしの本物をバカにしないでって…。

でも、わかる人はわかる。

いろはちゃんが行った世界でも、あたしが行った世界でも、材木座義輝という人はそれぞれのヒッキーに認められていた。

いろはちゃんが行った世界の材木座義輝には結婚を前提にした彼女もいたらしい。

あたしだけがヨッシーの良いところを知っている訳じゃあない。

ウジウジ悩んで待っていたら、いつかはヨッシーが取られちゃう。そんなのはイヤだ。

だから、精一杯アタックするんだ…。

アーシスが育ててくれたあたしなりの黄金の精神で。

だから……花火大会ではあたしも頑張るんだ!

 

←To be continued




今回はここまでです。

今日は祝日の法律が改正される以前の体育の日です。
運動、してますか?

今回の花火大会のメインは材木座と由比ヶ浜でお送りします。
いろはと八幡、陽乃でも良かったですが、八幡は第4章で(特に4-1で)強くなりすぎたので…。

八結ならぬ義結。
多分ですが、あまりないカップリングだと思います。
単に私が知らないだけでしょうが。
ついでに露伴とめぐりん。略して露めぐ回もやってみました。
普段はあまりスポットの当たらない材木座とめぐりを中心に今回の話を組み立ててみましたが、いかがでしたでしょうか?

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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