やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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材結劇場の続きです。


そうして花火大会デートは過ぎて行く

side材木座義輝

 

駅前から花火大会会場までの道のりは近い。公園全体が駅に隣接していると言っても良い。

だが、大勢の人でごった返しているせいで容易には進めぬ。格ゲー大会が行われる会場でもこんな感じだしな。

普段は閑散としており、だだっ広い印象しか受けない広場が、遠目にも人波で埋まってるのがわかる。

人いきれの中で、海からの風が心地よく吹き抜けておる。

時計を確認すればまだ18時過ぎ。確か開始は19時半とかだったはずだ。

それまでの間、なにするものか……。

ちょっと確認しておこうと、横におる由比ヶ浜嬢に顔を向けると………。

 

露伴「まだ時間はあるみたいだ。どうする?帰る?」

 

めぐり「もう!露伴ちゃん!せっかくの初デートなのに!何でそんな自然に帰宅提案できるの?」

 

なるほど、露伴先生も城廻先輩とデートか。あまり乗り気ではないみたいだな。八幡のような事を言っておる。

露伴先生なら人混みのリアリティーとかを取材しそうなものだと思っておったが、地元の七夕祭り等で十分取材済みなのであろう。人混みでげんなりしておるのが遠目からでもわかる。

 

材木座「由比ヶ浜嬢。我は恥ずかしながらデ、デ、デートなるものは初めて故、この場合はどうするかわからぬのだ。エスコートとかがわからぬ……すまん!あっちの露伴先生ではないが、帰る?とか言い出しかねん!」

 

そう言うと、由比ヶ浜嬢も先ほどの露伴先生達のやり取りを見ていたのか苦笑いを浮かべておった。

 

結衣「あー……あれはないよねー。でも、露伴先生のああいったたじたじの姿ってめぐり先輩にしか見せないから新鮮かも。あの二人ってお似合いだよ♪それに、大丈夫だよ?こういう時の為にいろはちゃんやステッチからデートの定番を聞いてきているから♪」

 

むむ?それって早い話が性悪コンビのデートの日常よな?大丈夫なのか?それは。

 

結衣「ええっと……金魚すくいでは波紋をポイで固定して根こそぎすくいきって店を閉店に追い込む。SPW財団以外のを………って波紋あたしら使えないし!」

 

材木座「明らかに他社潰しではないか!しかも波紋を使う段階でイカサマであろう!」

 

いきなりアウトではないか!どちらの提案だ!

一色嬢も商売が絡むと常識などすぐに捨ておるから油断ならん!

 

的屋「お客さーん!もう勘弁してください!金魚が…金魚がぁぁぁぁぁ!」

 

仗助「おー、コレが波紋を使った金魚すくいか!おもしれぇじゃあないか!」

 

東方社長ぉぉぉぉぉぉ!波紋を習得したからって修行の成果をライバル店潰しの為に使って悪用しておるぅぅぅぅ!しかもリーゼントのかつらまで被って何しておるんじゃぁぁぁぁぁ!

 

結衣「えっと……こうすることで他の祭りの出店での金魚の調達が安上がりで済んで、ライバル店も潰せて一石二鳥です♪これで千葉の治安もよくなります♪………だって」

 

一色嬢ぉぉぉぉ!

 

結衣「他にもスーパーボールすくいとか水風船ヨーヨー釣りとか……一般人に見えないからスタンドを有効利用いたしましょう♪とか書かれてるよ(汗)」

 

材木座「ドンパチ売られる為の口実作りに我らを利用しているとしか思えんぞ……」

 

まぁ、一般人のヤクザ程度ならどうとでもなるがな。やることがえげつないと言うべきか。

 

的屋「うちのスーパーボールがぁぁぁぁ!」

 

静「オーッホッホッホッホ!」

 

的屋「うちのヨーヨーがぁぁぁぁ!」

 

八幡「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」

 

あちこちから釣り系の出店から悲鳴があがっている。

全て知り合いの性悪な高笑いが聞こえている気がするのは気のせいだと思うことにした。

 

結衣「他には射的に波紋を伝わらせて……」

 

的屋「バかな!バランス的には絶対にあり得ないニンテ○ーのゲーム機本体が落とされたぁ!」

 

沙希「良いからそれを寄越しなよ。下の弟が欲しがっていたんだ。ラッキーだったよ(波紋悪用)」

 

…………

 

結衣「紐くじで絶対に当たらないハズのものを上手く波紋で繋ぎ合わせて………」

 

的屋「何でこれに当たり紐が付いているんだぁ!何かの間違いだぁ!」

 

徐倫「あ?おじさん、何か言った?(ストーン・フリー悪用)」

 

的屋「いえ、ナンデモアリマセン」

 

徐倫「そう。じゃあそれをちょうだい。スージーちゃんのお土産にするから」

 

…………………

ネイティブ教師、お主もか……。

 

結衣「かたぬき…」

 

めぐり「露伴ちゃんすごーい!」

 

的屋「何でかたぬきにプロの漫画家が参加しているんだぁ!」

 

露伴「連れがやっているところを見てみたいと言ってきてね。別にプロの漫画家だからと言ってやってはいけないと言う事は無いだろう?」

 

客「こんなところで岸辺露伴に会えるとはぁ!」

 

客「かたぬきなんてどうでも言い!色紙を買いにいくぞ!サイン会だぁ!」

 

露伴「やれやれ、いつもこうなるから祭りは嫌いだ」

 

的屋「商売がぁぁぁぁぁ!」

 

………露伴先生まで。

 

結衣「ねぇ、ヨッシー……」

 

材木座「うむ……奇遇だな。我も提案があるのだが」

 

結衣&材木座「一刻も早くここを離れよう!」

 

こんなところに来てまでジョースター家無双など見たくないわ!

祭り荒らしに参加するつもりなどない!

我と由比ヶ浜嬢はゲーム系の出店からなるべく遠ざかるべく逃げ出した。

 

ちなみに一色どのの出展リストにはこうも書かれていた。

いろは『SPW財団系に寄れば格安で提供しますよ♪焼きそば、わたあめ、ラムネ、たこ焼き♪でも、一番の出し物でお土産になるのは花火を見た思い出ですよ♪頑張ってくださいね?材木座先輩♪』

 

なんだこの最後のは…。

一色どのがどや顔でこれを打ったのかと思うと、我は仲間として恥ずかしく思うぞ…。

我の表情がうんざり気味だったのを由比ヶ浜嬢も見てとったのか、あははは…と苦笑いを浮かべている。

ほんと、仲間内には余計なほど気を回しよるな。まぁ、一色どのの気の回し様は有りがたく思う。さすがにこれだけお膳立てされて何もわからぬほど鈍感ではない。

むしろ敏感な方だ。一軍の将校たるもの、軍略であろうとなんだろうと、人の機微や裏を読むのは得意な方だ。

まぁ、その気持ちだけは受け取って置こう。

 

材木座「取り敢えず、買い食いを楽しもうではないか。八幡達では出来ぬようだしな」

 

結衣「そうだね♪楽しもう!ヨッシー♪」

 

一色どのの気の抜けるようなメールのせいか、それとも祭りの陽気に当てられたのか、由比ヶ浜嬢はからころと下駄を鳴らして楽しげに歩く。

鼻歌混じりりの足音は雑踏の中でも…的屋のおじさん達の悲鳴の中でも耳に届いた。

人の流れは広場へと続いている。

いくつもの出店が軒を連ね、そのいずれも大盛況だった。ここはSPW財団エリアか…。

商売敵を軒並み潰してればこうもなるか。ブラック企業よな。

味はそれなりとわかっているのに、裸電球の灯りに照らされ、いざ目の前に並べられると存外食欲をそそられる。焼きそばなんてソースと油の照り返しが素晴らしくジューシーに見える。

由比ヶ浜嬢も、おおーと瞳を輝かせて我の袖を引く。

 

結衣「ね、ね、何から食べる?りんご飴?りんご飴かな?」

 

材木座「うむ!こうして見てみると甘くて美味しそうではあるな!」

 

せっかくだから楽しまなくては損ではないか!

りんご飴を頬張り、色々と見て回る我ら。

 

結衣「あ、宝釣りの目玉のニン○ドーゲーム機が取られてる」

 

材木座「さっき空条先生がかっさらって行っておったからな」

 

結衣「アーシスに目を付けられたのが運の尽きだね…」

 

卑怯汚いは敗者の戯言と抜かす奴らだからな。我々も段々染まっていっておる気がするが。

 

材木座「本来ならこれ見よがしに目の前に良いものが置かれておったらまず罠なのだがな。自分に都合が良いことには裏がある。常識よ」

 

結衣「それ、どこの世界の常識?裏社会の人?」

 

材木座「由比ヶ浜嬢よ。我らもある意味では裏社会の人間になりつつあるぞ」

 

そんな会話をしているのに、宝釣りのおっさんは涙目のルカだ。そりゃ、ヤクザも裸足で逃げ出す迫力の奴等に根こそぎ宝を持ってかれたのだ。涙目にもなろう。

あまりの哀れさに合掌しつつ、他の屋台の前へと行く。

一色どののリストにはわたあめがあったな。

わたあめの屋台にはピンクダークの少年やDB、プリキュアのキャラクターやヒーローなどの袋に詰められておった。

露伴先生はこんなところでも小金を稼いでおるようじゃの。

 

八幡「露伴先生のは確実として、プリキュアも捨てがたい。間田さんへの土産になるな」

 

エルメェス「ハッチ。お偉いさんへの挨拶はいいの?」

 

八幡「もうとっくに(バックレて)終わらせた」

 

いろは「そうですよ♪真っ先に(承太郎に押し付けて)終わらせましたよね♪」

 

八幡よ……結局おるではないか。

取り敢えずお互い不干渉であることが取り決めで決まっておるので互いに軽く手をあげる程度の挨拶をかわして買い物を済ませて行く。

というか、屋台あらしをやっておる連中と今だけは他人でいたい。

やの付く商売の片方とトラブルなど御免だ。

 

結衣「次は、焼きそばかな?」

 

材木座「そうであるな。さっきあっちの方にあった気がする…」

 

くるりと踵を返したとき、こちらを見ている者に気が付いた。すると、その者は小さく手を振って近付いてくる。

あやつは……相模南………

我の顔が強張るのを感じる。

 

南「あ、結衣ちゃんだ!」

 

結衣「さがみん……」

 

由比ヶ浜嬢は顔を固くする。普段の彼女ならばコミュ力を発揮して手を振り返し、似たような行動をとるのであろうが、彼女は別のようだ。

相手と同じ行動を取ることで共感を得やすくするミラーリングという技術だと露伴先生から聞いた行動だ。

だが、彼女は葉山グループとして千葉村で戦い、最終的に由比ヶ浜嬢は柱の一族として覚醒してしまった。そして八幡は……。

我は由比ヶ浜嬢の前に一歩踏み出る。

 

南「あれ?うちら、一年の時は仲良くしてたじゃん。なんか表情固くない?それに千葉村では一緒にあの鶴見先生の娘さんのいじめ問題で協力しあったじゃん?それに誰?」

 

相模南は我を見て言ってきおった。

我の事を覚えておらぬのか!

と思ったところで思い出す。

そうだった。葉山グループは露伴先生の能力でブラッディ・スタンドの事に関する記憶を失っておるのだった。それに、八幡のレクイエムによってスタンド能力も消滅させられたはずだ。

その結果、こやつらは自分の都合の良いように記憶を改竄したのだったな…。

 

南「結衣ちゃん。この人は?」

 

結衣「あ、うん。C組の材木座君」

 

南「結衣ちゃん。うちの紹介は?」

 

材木座「知っておる。F組の相模南であろう?」

 

その時、我と目が合う。ふっ……と、相模南の表情に一瞬、笑みが浮かぶ。その笑みの種類は……。

 

南「あ、そうなんだ!一緒に来てるんだね!うちなんて女だらけの花火大会だよー。良いなー。青春したいなー」

 

結衣「さがみん。そういう事だからもう行くね?行こ?ヨッシー」

 

由比ヶ浜嬢は少しむっとした反応で返す。普段なら調子を合わせる彼女ではあるが、今は違う。我のために怒ってくれておるのだ。

先刻、相模が浮かべたあの笑顔。あれは少し前まで我に向けられておった周囲の笑顔……。

微笑でも爆笑でもない。

厳然たる嘲笑。

この女は、『由比ヶ浜結衣の連れている男』を見て、確かに嘲笑を浮かべたのだ。

由比ヶ浜嬢はそれに怒ってくれた。その事が嬉しい。

 

南「えー、何で?冷たくない?」

 

口元の微笑は崩さず、視線だけが刹那我を値踏みする。それだけでさっきまであった由比ヶ浜嬢との間にあった温かさが嘘のように、心が凍てついて来るのがわかった。心が冷えれば頭も冷える。

また心得違いをするところだった。

我と相模南は敵と言うこと以外は関わり合いはない。対峙した時以外はまったく知らない相手だ。

知らない相手を理解するのに手っ取り早い方法は何か?

それはレッテルだ。

彼女が我という人間を把握する材料は「我の属している表向きのカースト」だ。別に相模に限った話ではない。誰だってそうだ。

個人を知る前にまずその人物の所属する組織で、場所で、位階で、肩書きである程度のあたりをつける。学校や会社、そうしたもので人間性を判断されることは多々ある。最近ではあまり聞かぬが、就職活動時にまことしやかに囁かれる学歴フィルターなどその最たるものだ。

由比ヶ浜嬢は越境的な人間で忘れがちになるが、本来的にはクラス、校内でも最上位のカーストに属する人間だ。

我はカースト最底辺。カースト外に位置するアーシスのほとんどの面々はともかく、傍から見れば我と由比ヶ浜嬢の交流など慈善事業か何かにしか見えぬだろう。

ドジこいたな。こんな大きな花火大会なら近隣の高校生はこぞって集まるだろう。我の配慮が足りなかった。

言ってみればこの状況は淑女の社交場みたいなものだ。連れている男子というのはひとつのステータスなのかも知れぬ。さながら持っているバッグや身に付けている服のブランドで人間の価値が測られるが如く。

例えばこれが我ではなく、八幡なら、最近では総武高校都市伝説に深く関わっていると目されており(実際都市伝説の体現者だが)、怖がられておる八幡なら周囲の反応は全然ちがったであろう。極道の彼女的なあれだが。だが、我では軍法会議で銃殺刑ものだ。

我はいくら笑われても良い。だが、一緒にいて由比ヶ浜嬢が笑われるのは我慢ならん。

 

材木座「焼きそば、並んでおるみたいだから先に行っておる」

 

結衣「良いよ。あたしも一緒に行くよ。もうさがみんに用はないし、あたしはヨッシーと一緒にいたいし」

 

我がそう言うと、由比ヶ浜嬢は我の腕をとって一緒に歩き出す。

 

南「ちょっと。それどういうこと?」

 

結衣「あたしにとってヨッシーはさがみんよりも遥かに大切な人。ヨッシーがあたしを気遣って、どこかに行ってしまうのに、あたしがヨッシーを軽く見た人と話を続けるなんて真似は出来ない」

 

由比ヶ浜嬢………。

 

結衣「さがみん。あたしを軽く見るのは良いよ?でも、ヨッシーを………ううん、あたしが大切に思っている人達をバカにするなら……相応の覚悟はして。あたしはいくらでも相手になるよ。何度何かに負けても…それでも心は負けない」

 

怒気を強めて相模を睨む由比ヶ浜嬢。

これは………殺気…だと?あの由比ヶ浜嬢から?

 

南「ひっ!」

 

由比ヶ浜嬢の殺気は我々からしてみたら弱い。だが、一般人にはきついであろう。

 

結衣「いこ?ヨッシー」

 

怯んでいる相模を無視して由比ヶ浜嬢は我の手をとって焼きそばの列に並ぶ。

 

結衣「ごめんね?楽しい気分を壊しちゃって……」

 

材木座「壊れてなどおらぬ。我も………その………嬉しかった」

 

結衣「え?」

 

材木座「大切な人達の中に我を入れてくれて……嬉しかった。ありがとう」

 

冷えていた感情や思考は、先ほど以上に温かみに満ちておった。我にとっても………由比ヶ浜嬢は大切な人だ。

少なくとも、屋台で我らを待っておる焼きそば以上に、今の我の心の温かさは上であろう。

 

花火はもうまもなくだ。時計を見なくとも、人々のざわめきがそれを教えてくれた。

 

 

side城廻めぐり

 

めぐり「心配は消えた?露伴ちゃん」

 

露伴「ああ。結衣君は強くなった。義輝くんと結衣君の絆はより強くなっただろう。それが何よりの結果だ」

 

 

 

 

 

 

←To be continued




今回はここまでです。

今の由比ヶ浜なら相模よりも材木座をとるでしょう。

それでは恒例の原作との相違点

しつこいようだが原作でのデートの相手は八幡

帰宅提案は八幡から由比ヶ浜へ→露伴からめぐりへ

八幡達が露店を荒らしまくっている

買い物リストは小町作成のお土産リスト→いろは作成の露天リスト(ライバル店潰しリスト含む)

宝釣りの目玉はP○3→ニンテ○ドー

宝釣り目玉は罠発言に対して店の親父が睨んでくる→徐倫がイカサマでかっさらって行ったので泣いている。

相模南との遭遇で由比ヶ浜は調子を合わせる→微妙な空気になる

八幡が嘲笑されても調子を合わせる由比ヶ浜→ちょっと怒りを見せる由比ヶ浜

八幡が自分との比較したのは葉山→材木座が自分との比較したのは八幡

焼きそばは八幡が一人で買いに行く→材木座が一人で行こうとするが由比ヶ浜が相模との会話を打ちきり一緒に買いに行く

それでは次回もよろしくお願いいたします

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