やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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では比企谷八幡はー第5巻エピローグ

side比企谷八幡

 

カレンダー上でだけ、夏が終わろうとしていた。

夏休みの最終日を迎え、明日には学校が始まる。ホキホキと蜩が鳴くが、未だに暑気は残り、秋めくにはしばらく時間がかかりそうだ。

8月最後の太陽が沈んでゆく。その残照に照らされながら、俺は明日から始まる学校の準備……と、休暇という名の謹慎が解ける会社の準備をしていた。

そういえば、露伴先生から連絡があった。

なんと材木座と由比ヶ浜が付き合い始めたらしい。やっとくっついたか……と、俺達は特に驚く事もなく、報告を聞いていた。

今までくっついていなかった事にむしろ驚きだったくらいなまである。

鞄の中には初日に終わらせていた夏休みの課題を鞄に詰める。

その課題の中に、小町の自由研究が混ざっていた。提出用にプリントアウトしておいたのを一緒くたにしていたらしい。

炎色反応についてまとめたそのレポートをパラパラと読み返して見る。

花火に色が付くのは炎色反応のおかげだ。

炎の中に金属や塩類を投じれば、各元素特有の色を示す。青白い炎も触れる元素によって見え方を変じる。

ではスタンド使いは?

俺達が持つ通常のスタンド。

柱の一族に変化を生じさせるブラッディ・スタンド。

そしてアンチ知的生命体スタンド。

例えば通常のスタンドは宇宙ウイルスを克服するような強靭な精神力を持つものが、そのご褒美として与えられた物がスタンド能力だとポルナレフさんは仮説した。

ブラッディ・スタンドは汐華や柱の一族との適性が高いものが目覚めさせる物だと言うのがじじいの見立てだ。

ではウルフスは?それは分からない。

世に絶望したり、呪ったりするものが目覚めるものなのか、それともブラッディ・スタンドと同様に特殊な血筋だったりするのか……現段階ではなんとも言えない。

 

ただ1つだけ分かることは……

 

物語が始まってしまった。

 

奪われたままの時が動き出した。

 

俺達は今、それを終わりを告げるための最後の局面が始まったと言うことを実感した。

 

終末の最終ページにその拳を叩きつけるべく。

 

走り続けなければならない。

 

知りたいとは思わない。

ジョースター家が戦い続けてきた因縁。その根元たるアンチ知的生命体。それが何を意味し、何をなそうとしているのかなど興味はない。

 

きっと……もうすぐすべてが終わる。

そのカーテンコールの先には何が待っているのか……。

 

俺の視線の先にある自由研究のレポート。

けれども俺はその内容を一切見ていなかった。

 

 

ーキングクリムゾンー

 

8月31日と9月1日。

連続している時間の流れでありながらこうも明確に断絶される瞬間もあるまい。

日常と非日常の境目。

いつもの朝が上っ面で笑う平日と休日が交差するとき、比企谷八幡の物語は幕を閉じたくなる。

もっとも、それ以上に俺達の日常と非日常は突然入れ替わったりするわけなのだが。

そんなわけで(どんなわけだ?)今日からまた学校が始まる。

久しぶりに制服を着て猛ダッシュで走る通学路は、運命を乗り越える前の2ヶ月前と比べると少し輝いて見えるが、学校に近づくにつれて増してゆくガヤガヤとした騒々しさにそんな幻想も霧散してしまう。夏休み明けで積もる話がたくさんあるのだろう。誰も彼もがゆっくりとした足取りで連れだって歩く。

俺も一年以上この高校に通っているだけあって、見知った顔も1つや2つではない。が、連れだって走っているのはほぼ毎日顔を合わせているいろはやジョジョだ。積もる話は毎日のようにしている。

戸部を見かけても、葉山を見かけても会話も挨拶もない。完全に忘れているのだろう。

 

三浦「ジョジョ達じゃん。おはよ、花火大会の事を聞かせろし」

 

静「ほーい」

 

海老名「ハロハロー♪いろはちゃん達~。花京院の家の事、ありがとね~♪」

 

いろは「いえいえ~♪」

 

沙希「比企谷。雪ノ下の波紋の件はいつにする?」

 

八幡「互いの都合で頼むわ」

 

……それなりに積もる話があった。

相変わらず有象無象の人間の肩を叩いたり、元の肌の色を知りもしないのに「焼けた?」と聞いてみたり、そうした白々しい人間に混じるくらいなら視線も合わせもしない事の方がよほど誠実だろう。

俺達は俺達で独特の雰囲気を出しながら歩く。

 

大和「…………」

 

無事に矯正施設から出所した大和ともすれ違うが、特に互いに話すことは何もない。

既に高校生活の半分を過ごした校舎。

見慣れてしまい、いずれは忘れてしまう光景。

そんな煤けた視界に、多分永久的に付き合いがあろう立ち姿を見つけた。

ガラス張りの階段に陽光が差し込み立ち上る中、凜然とした雰囲気を放ち、周囲に誰も寄せ付けない。されど俺達には少し柔らかい雰囲気を見せる少女。

雪ノ下雪乃だ。

 

雪乃「先日はどうも。あれから少し落ち着いたわ」

 

静「それはよかったわ。ジョルノ兄さんもひと安心ね」

 

柔らかい彼女の表情にも最近慣れつつある。

雪ノ下は歩調を合わせるかのように、俺達と同じ速度で階段を上る。

 

雪乃「比企谷くん」

 

八幡「ん?」

 

振り返ることなくかけられる背中越しの声に、短音一つで応えた。

 

雪乃「言いそびれたけど、無事に戻れて良かったわ」

 

そういえばあれからきちんと会ったのは今日が初めてだったかも知れない。

多重平行世界との交流の後も、互いに忙しくて会社とかで顔を合わせても会釈程度。花火大会の時はウルフスの出現でそれどころではなかった。

 

八幡「ああ。雪ノ下達のお陰だ。その節は世話になった。ありがとう」

 

俺の声はしっかりと届いたようで、振り向いた雪ノ下の顔には柔らかい笑顔が浮かんでいた。

互いに一度視線を合わせた後に階段は終わり、二年の教室に繋がる廊下に出る。

ここを左に行けば雪ノ下の所属するJ組とI組。右へ行けば雪ノ下H組みからA組へと続く。

俺達の距離が詰まった分かれ道で、雪ノ下が立ち止まる。

 

雪乃「ジョースターさん?今日から部活、始めるのかしら?」

 

静「ん~……まぁ、そのつもり」

 

雪乃「そう。ではまた放課後に」

 

いろは「ハチ君♪また後で♪」

 

八幡「おう」

 

互いに少ないやり取りで歩き出す俺達。いろはともここで別れる。

必要最小限……それが俺達にはちょうど良い心地良い距離感だ。

通りかかるどの教室も再会を喜ぶ活気に溢れている。

F組も例外ではなかったが、俺とジョジョが教室に入ると、一瞬だけ静かになる。

いつもの事だ。気にしない。

いつも通りの俺だ。鍛練で鍛えられたスペックも、前世からの貯蓄で蓄えられた知識も、目の腐った俺も、どれもがいつも通りだった。そして、罪悪感に満ちた自分が少しだけ嫌いだった。

だが、少しだけマシになったのだろう。

相変わらず俺の目は腐っている。だが、今はその腐り目すらも受け入れよう。

なぁ………黄金の精神達……。

俺の高校二年の二学期が始まった…。

それは波乱に満ちた四ヶ月になるのか、それとも植物のような平穏で終わるのか………。それは分からない。

 

←To be continued




波乱の二学期になるでしょう。鬼門の文化祭、体育祭、修学旅行、生徒会選挙、クリスマスイベント……
相模の本格登場

相模「うち、既に出てるし!」

戸部の告白依頼

戸部「べー。既にフラグをバッキリ折られてる気がするわー」

いろはの登場

いろは「ちょちょちょちょ!メインヒロインなんですけどー?第1章から出てますけど~?あと、原作時系列的には柔道部とのトラブルの時に一応でてるんですけどー?」

……………………あれ?
全てのフラグをバッキリ折ってね?
べー、どうすっべー……。ないわー、これないわー。

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