やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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文化祭編に不穏な空気が……。


そして彼女は歪に笑う

side比企谷八幡

 

俺といろはと雪ノ下は揃って記録雑務を希望することに決めた。

それが済むと、周りを見る余裕が出てきたので軽く見回してみる。だいたいどの人も結論は出たのか、ぼーっとしていたり携帯弄くっていたり、雑談に興じていたりする。

その中でもひときわ大きい声が近くにあった。

 

相模「ノリで実行委員長になっちゃったよー!どうしよー!」

 

まぁ、大抵はそんなもんだろう。

 

ゆっこ「大丈夫だよー。さがみんなら出来るって」

 

いるんだよな?他人事だと思って軽々しくそういう事を言う奴が。

 

相模「そうかな~、出来るかなー。でも、うちのあのセリフって…まんざら嘘じゃあないんだよねー。なんか知らないんだけどさー。このままじゃあいけないっていうかー。だからうち……」

 

ん?微かながらに覚えてるのか?千葉村の本当の事実を…だから相模は…。

変わりつつあるのか?相模も…雪ノ下や由比ヶ浜のように。

 

ゆっこ「そうなんだー。すごいねー。大丈夫だよー。うちらも手伝うからさー」

 

ね、と返すと、一緒にいた女子も賛同を返す。

 

遥「だよだよー」

 

相模「ほんとにー?ありがとー」

 

うすら寒さすら感じる心温まるやり取りが聞こえてきた。相模の決意は本物だろう。だが、それを支える二人の即席友人は果たして本物なのかな?

クラスでの葉山達のやり取りでも見た予定調和な会話。

 

いろは「今が分水嶺……ですね。相模先輩の…」

 

八幡「そうだな。ここが正念場なのかもな」

 

雪ノ下「思い出すわ。材木座君との戦いを」

 

ガンズ・アンド・ローゼズとの戦いやテニス勝負…あの時を境に雪ノ下は変わっていった。

相模はどうだろうか……。

 

めぐり「そろそろ良いかなー?」

 

城廻先輩の声は聞き取りやすい。ほんわかというか、ふんわりというか、わんにゃかぱっぱゆんぱっぱしているが、そのせいか意識の端にひっかかりやすい。

怒鳴り付けたりがなりたてる声の立て方とは違い、皆が自然と穏やかに先輩の方へと顔を向ける。技術ではなく、人間性というのもあるだろう。

それが露伴先生の頑固さを貫通できる秘訣なのだろうか?それでいて城廻先輩自身も頑固というか、初志貫徹の精神を持っているからな…。

露伴先生も陥落寸前だっていうし。ご祝儀は弾むか。

 

めぐり「みんな何となく決めたかな?それじゃ、相模さん。ここからよろしく」

 

相模「え?うちですか?」

 

相模は突然の指名に目を丸くする。

 

めぐり「うん、ここからはもう委員長さんの仕事だと思うし」

 

相模「はい………」

 

あちゃー。これは城廻先輩のミスだな。ジョジョも片手で顔を覆う。

さっきの段階で打ち合わせておけば相模も心の準備くらいは出来ていただろうに…。これではキラーパスに近い。

ジョジョは相模にこっちこっちとばかりに手招く城廻先輩にアクトン・クリスタルのact1で何やら耳打ちをする。

そこで城廻先輩も気が付き、ハッとなっていた。

だが、覆水盆に返らず。やってしまった以上は相模にやってもらうしかない。

生徒会の一団に紛れる形となった相模。初めて議長の役割をやることになった相模にはプレッシャーだな。

 

相模「そ、それじゃあ、決めていきます…」

 

消え入りそうな声も静かな中ならちゃんと聞こえる。

ただ、この静けさは安定感のある静けさではない。

城廻先輩の失敗に気付いている者は少ない。ほとんどがこういうものとしてオドオドしている相模を攻めているような感じだ。

いやに刺々しく、誰かが失笑しようものならたちまちに罵詈雑言の嵐に変わるであろう危うい静けさだ。

さっきまで楽しげに、前向きにお喋りしていた相模とはまるで別人に見えた。

切り離された個はかくも弱々しい。

事前に覚悟が決まっていればまた結果は違ったのだろうが。

 

静(スッ……)

 

ジョジョがメモを渡す。相模がそれに目を通すと

 

相模「……!ま、まずは宣伝広報やりたい人!」

 

しゃべる台詞をあんちょこにしたな?

さすが長年、日本支部の副支部長兼仗助の秘書をやっていただけはある。先程とは打ってかわって元気な声で役員を募る相模。

だが、それと実行委員のやる気が合致するとは限らないのか、挙がる手はない。

 

相模「宣伝広報だよ?いろんなところに行けるよ?ラジオやテレビに出れるよ?」

 

おお、良い誘い文句だ。千葉でテレビと言えばまずチバテレビ。ラジオと言えばベイFM。チバテレビでときどき流れる『ファイト!ファイト!千葉!』が名曲過ぎる。

相模(実質はジョジョ)の謎の誘い文句が効いたのか、ちらほらと手があがり、人数と氏名が確認されると、次の役職決めへと移行していく。

 

相模「次、有志統制!」

 

有志は文化祭の花形の為か、結構な勢いで手が上がった。明らかに想定されている人数よりも多い。

が、ジョジョはそれをしっかりと予測していたようで、相模は取り乱す事はなかった。

 

相模「多いから!じゃんけんで決めて!」

 

めぐり「じゃあ私の号令に合わせてじゃんけんだよ~」

 

ぴかぴかぴかりんとばかりにおでこを光らせてめぐめぐじゃんけんがスタートした。

 

ーキングクリムゾンー

 

ジョジョのフォローが上手くいってか、相模は次々に場を捌いていく。ジョジョのフォローによって安心した為か、時々噛んだりしていたものの、騒がしいながらも順調に取り回していた。

城廻先輩も詰まり気味になったときは上手くフォローし、つぎつぎと役割分担が決まっていく。隠れたMVPはジョジョだ。ジョジョの手腕によって、まず妥当といって良い割り振りになった。

ちなみに俺達は記録雑務にきちんとおさまっていた。

この記録雑務、決めた順番のせいなのか、それとも楽そうに見えたのか、ほとんど積極性の墓場となっている。中にはガタガタ震えながらお経を唱えるものや十字を切っている奴もいた。

各担当部に分かれての顔合わせなんて、見ていられないレベル。

 

いろは「それではどうしますか?」

 

雪ノ下「私達三人は知り合いだけれども、ここはやはり自己紹介をするべきかしら?」

 

八幡「そうだな。では誰から?」

 

上級生「(色即是空、空即是色、ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー)……」

 

下級生「(祓いたまえ清めたまえ…かしこにかしこに)」

 

八幡「とりあえず先輩達から始めません?」

 

上級生「(さ、先にした奴が目を付けられるのか…)」

 

下級生「(何で噂のヒキタニ先輩が文実に…それも記録雑務にぃ!)」

 

雪乃「あの……先輩?」

 

上級生「は、はい!私からさせていただきます!」

 

……何でめっちゃ緊張してんだろ?このせんぱい。

クラスと氏名を言うだけの自己紹介を終えると、皆さんお待ちかね、担当部の部長を決めるじゃんけんである。

 

下級生「え?ヒキタニ先輩が部長でいいです!」

 

上級生「そうです!僕なんてヒキタニさんなんかの上司なんてとても務まらないです!」

 

八幡「いや何でですか。普通にじゃんけんで決めましょうよ。そんなに難しいことじゃあないんですから」

 

上級生(それは「こんな簡単な物に俺を引っ張り出すな!無能が!殺すぞ!」って意味ですか!?)

 

下級生(これは「こんな簡単な仕事でミスしたら殺すぞっていう意味で言ってるんですね!」)

 

…………?

とりあえず負けた人がやる、というどうにも後ろ向きなじゃんけんでさっきの有志部を決めたときとはまるで意味合いが違う。

3年生のなんとかさんという先輩が担当部長に決まると、その先輩は世界が今にも終わるようなくらいまで大袈裟に嘆き始め、「神は私に死ねと申されるか!どこに行かれるのですか!」と叫び出す始末。プッチですか?先輩。

とりあえずは顔合わせくらいで良いんだよな?解散すっか?

 

比企谷夫婦「お疲れ様でした」

 

雪乃「お疲れ様でした」

 

埒が明かないので儀礼的な挨拶を済ませ、バラバラと解散していく。とりあえず流れでそのまま会議室を後にしようとしたときだ。

会議室の生徒会役員達の中に、ジョジョの両手をとってぶんぶん上下させている相模がいた。

 

相模「ジョースターさん!いい人だと思っていたよ!ありがとう!うち、ジョースターさんを誤解してたよ!」

 

ジョジョがめっちゃ相模に懐かれていた。実行委員長としての最初の仕事を上手く乗り切れたのはジョジョのフォローのおかげだったからな。

あのままだったら醜態を晒していたところだっただろう。

その傍らにはつるんでいた二人組も相模を労っている。

さらに、何故か徐倫と城廻先輩もいた。なんか今後のことでも話しているんだろうか。

横を通りすぎる時、ジョジョと目が合う。

 

バチコーン☆とウインクが飛んできて、ばいばーいとばかりに手を振られてしまった。

俺は知っている。整った容姿のジョジョが異性を虜に出来るほど魅力的に振る舞っている素敵な笑顔と態度が出ているとき……

 

 

………それは間違いなく碌でも無いことを考えているときだ。

きっと満面の笑顔の下には……

真っ黒に陰で顔が覆われ、目と口だけがやたらと白く光って見える。口の形は三日月だ。

 

( ゜∀ ゜)

 

口の∀は耳まで届かんばかりに見事なスマイリー・クレセントムーンが見える。

………やろう、巻き込む気満々だな!?

ジョジョォォォォォォォ!

 

←To be continued




はい、サブタイトルで歪に笑っていた彼女は静でした。

相模が歪に笑っていたと思った人は見事に騙されましたね?
相模ではなくめぐりか徐倫と思った人もいるでしょうか?


それでは原作との相違点。

相模はノリで実行委員長になった➡のは変わらないが、成長したいというのも本当

めぐりのキラーパス!➡静フォローが入りました!

相模はたどたどしく司会、めぐりがさらに顔を潰してしまった➡抜群の静フォロー!

めぐりがテレビやラジオに出れると言う➡相模が静フォローによって自分らしく言う

記録雑務はやる気が墓場➡更に八幡がいるのでやる気がお通夜

部長が決まると記録雑務は即時解散➡部長、嘆く。気持ちはわかる!

相模が部屋の隅でしょげかえっている➡静を大リスペクト!

ウインクをして手を振るのは平塚静➡ウインクして手を振るのは静・ジョースター。されどその笑顔の仮面の下には悪魔の笑みが!


それでは次回もよろしくお願いいたします!

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