やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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これでもまだ6巻の序盤です。


やはり海老名姫菜は腐っている

side比企谷八幡

 

文化祭まで一月をきった校舎の中は慌ただしい。

本日をもって、文化祭準備の為の教室残留が解禁された。他のクラスではめいめいに段ボールを運んできたり、絵の具を用意したり、気が早いやつは差し入れと嘯いてお菓子だ飲み物だと持ち込んではどんちゃん騒ぎを始めている。

うちのクラスも文化祭に向けて準備が進められていた。葉山は教卓に立つと皆に呼び掛ける。

 

葉山「じゃあ、スタッフとキャストを決めていこうか。脚本は姫菜」

 

海老名「はい?」殺気込み

 

海老名…殺気込めるな。嫌なのはわかるけど。

 

葉山「……海老名さんとして、他は……」

 

必要になりそうな役割を黒板に板書していく。

結果。

 

 

監督 海老名姫菜

演出 海老名姫菜

脚本 海老名姫菜

 

という、悪夢のスタッフィングが完成していた。他にできそうな奴いなさそうだしな。制作総指揮というか、超プロデューサーというか…。

材木座がいたら余計にカオスになりそうだ。

こうしたクリエイティブ面以外だと…

 

制作進行 由比ヶ浜結衣

宣伝広報 三浦優美子

 

主要スタッフが決まっていく。今回、女子が出演しないとなれば、このあたりの仕事の多くを女子がやることになるのは至極当然だろう。

さて、問題はここからだ。

演劇というからには当然役者が必要なわけで、しかも今回は男子メイン…。というか、男子しかいない。ドキッ!男だらけの『星の王子さま』である。

一応人道的な配慮から、希望を募りはするものの、やりたがるものは一人もいない。そりゃあ、あのプロットを見てやりたがる奴がいるはずもない。

 

葉山「えーっと、こないだのキャラの説明文はみんな気にしなくてもいいからな?そういう描写をあからさまにはしないから」

 

葉山が取り繕うものの、一度ついたイメージはなかなか拭えず、男子の間で妙なちんもくが垂れ込めている。

 

海老名「仕方ない…」

 

そう言って、彼女は腐敵に眼鏡を光らせながら、教壇に立った。

地獄のキャスティングボートを握るのは海老名姫菜。

ざわつくクラスを無視し、役名を書き出していく。制作トップの権力をフルに行使していく姿は正にスタンドの暗示を示す法王!むしろ暴君とまである!

まずは、脇役から埋まっていく。

薔薇や王様、うぬぼれ屋などの役名の下に、海老名がカカッとチョークを鳴らしながら名前を書く。

 

「いやだぁ!」「地理学者だけはやめてくれ!」「俺のマッターホルンが!」

 

その度に各所から巻き起こる断末魔の声。阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

あの世界は女だらけだったからか、かなりフラストレーションを溜めていた反動か?全ての世界に呪いの呪腐を送ってきたしな。

そして、待ちわびていないメインキャストの発表である。

 

王子さま…東方仗助

 

静「待てやコラ(# ゜Д゜)さらっとお兄ちゃんを巻き込むんじゃあない」

 

ジョジョがお冠である。そりゃそうだ。クラスの出し物なのに何でPTA会長を巻き込むんだ?お前、SPW財団をどうしたいんだ?

それにそんな事をお兄ちゃん大好きなジョジョが許すはずがない。

 

海老名「チッ!」

 

次に書いたのは……

 

ジョルノ・ジョバァーナ

 

三浦「海老名……流石にジョルノさんもポルナレフも黙ってないと思う……」

 

恐ろしいことを企む女だ。始末されるぞ?

それに、雪ノ下姉妹が絶対に黙っているはずがない。

というか、PTA会長の仗助でもアウトなのにパッショーネは完全にアウトだろ。

 

海老名「贅沢だなぁ…ならこの際、仕方ないかな?」

 

王子さま…葉山隼人

 

葉山が固まっていた。心なしか顔色が青白い。だが、女子達からは色めき立つような声がちらほら聞こえる。まぁ、メインどころだし?集客のある人間を使おうというのは正しいだろう。

海老名はテニスの時とか千葉村の時の事で葉山を嫌っているから、本気で仕方なし…という感じだが。

さて、残るもう一人の主役だが…。

海老名の手元をじっと見ていると、白い線がとても見覚えのある字画へと変わっていく。

 

ぼく…比企谷八幡

 

ザ・ワールド!時を止まれ!

 

承太郎か?承太郎が時を止めたのか?俺にはやたらと時を止めるなとか言っておきながら、自分は突然時を止めるなんて……まさか承太郎の前にウルフスが現れたのか!?

 

そして時は動きだす……

 

って固まっている場合じゃあない!

 

八幡「いや、無理だから」

 

海老名「え?でもジョジョハチは薄い本ならマストバイだよ?っていうかマストゲイだよ?」

 

だから仗助やジョルノの名前を出したのかよ!ジョジョハチするなら静・ジョースターがいい!じゃあなくて、俺を主軸に考えてやがったのかよ!そう言えばプロットの主旨には「総武高校の都市伝説のあの比企谷八幡」とか書いてやがったような覚えがあるぞ!

野郎……どこまで俺を恨んでやがるのか?この女は!

 

海老名「やさぐれた感じの飛行士を王子さまが純真無垢な温かい言葉で巧みに攻める!それがこの作品の魅力じゃない!いっそこんなのを消して戸塚に変えるから!ある意味ではトツジョジョ!」

 

葉山を消して王子さまを戸塚彩加に変えた。

 

戸塚「ちょっ………待っ………八幡との絡みは嬉しいけど、それは……」

 

戸塚……お前まで何言ってんの?

いや、キャスティングの問題じゃあないから。そんな作品じゃあないから。フランス人が怒るぞ?ポルナレフさんとか。

 

葉山「こんなの……」

 

一方、海老名の扱いに葉山の背中から哀愁が漂う。

流石にこんなの扱いは可愛そうじゃね?

 

八幡「いや、俺、文実だから」

 

葉山「そ、そうだな。ヒキタニ…」

 

八幡「ギロッ!」

 

海老名にならともかく、てめぇにヒキタニ呼ばれる謂れはない!

 

葉山「…彼は文実やってもらってるわけだし、演劇だと稽古とかも必要になるからあんまり現実的じゃあないな」

 

フォローには感謝しとく。

 

海老名「チッ!残念」

 

あからさまな舌打ちをして黒板から俺の名前を消す。

そして使えねぇな、こいつ…的な視線を向けて来やがった!いい度胸じゃあないか!やっぱりこいつは敵だ!

 

葉山「そう、だからさ、一度全体的に考え直した方が良いんじゃあないか?王子さま役とか」

 

海老名「葉山くん?」

 

葉山「なんだい?」

 

海老名「邪魔だよ?」

 

葉山再び固まる。なんだろう?一瞬だけいろはが見えたような…前世が親戚だからか?

葉山が固まっている内に海老名は書き直す。

 

王子さま…戸塚彩加

ぼく…葉山隼人

 

 

海老名「やさぐれ感は…というか顔以外は全て劣るけど、まぁこんなところかな?」

 

それは誉めてる?貶してる?

 

葉山「顔以外って………それに俺は、結局でなきゃいけないんだな……」

 

海老名「お?そのやさぐれ感はヒキタニ君に迫ったよ?」

 

オッケー。とことんまでケンカ売ってんだな。ひゃくパーケンカ売ってるんだな?

一方でがくりと肩を落とす葉山の事などどうでも良いのか、そのまま放置する海老名。ホンの少しだけ同情したが、それ以上に腐の餌食にかかった戸塚に同情した。しかも相手役は敵対していた葉山だ。

文化祭の時だけでも良いからエンポリオがうちに転校してきてくれないかなぁ…。

 

戸塚「これ、すごく難しそうだけど……僕で良いの?」

 

ああ、スピードワゴンもイギリス人だったから戸塚には馴染みがないか。

 

沙希「合っているとは思うよ?内容はともかく」

 

うっぺりさんがTS転生していなければヤサグレ的には合格だったんですがね?海老名はあれで見る目はある…かも知れない?俺とは別の意味で目が腐っているが。

 

戸塚「ツェペリさんがそう言うならそうだと思うけどさ…何だかイヤな予感するんだよね。やるからには一生懸命やるから調べるけど」

 

八幡「調べなくても良いと思うぞ?むしろ原作読んだ方が多分理解しやすい。そのプロットはかなり曲解しているからな」

 

スピードワゴンもそうだったが、戸塚は真面目だ。それゆえに知らなくてもいいことはたくさんある。調べてしまった結果、戸塚がその道に目覚めてしまった場合、ただでさえカオスな俺の身の回りが更に加速する。それはもうメイド・イン・ヘブンばりに。

是非ともやめていただきたい。

 

戸塚「八幡は、これ読んだことあるの?」

 

八幡「ああ…」

 

戸塚が…スピードワゴンが知らないのは無理もない。スピードワゴンの没後に星の王子さまが出版されたからな。

俺は星の王子さまの話としては嫌いなものではない。どちらかと言えば好きな作品である。ただ、いくつか腑に落ちない点があり、それだけに手放しで誉める気にはならない。どうにも判断に困る作品ではあった。

 

静「読むなら貸すけど?数冊しか販売されなかった露伴先生が挿し絵をやった奴」

 

戸塚「本当に?ありがとう!」

 

八幡「なっ!あのプレミア版を持ってたのか!?」

 

俺ですら手に入れられなかった幻の一冊を!?

 

静「露伴先生のサイン入りで。元々ハッチに渡す予定だったらしいけど、私がもらったの♪何故か露伴先生って私のお願いは聞いてくれるんだよねぇ♪」

 

そう言えば聞いたことがある……。

露伴先生はジャンケンおじさん(当時はジャンケン小僧)と敵対した時、当時赤ん坊だった頃のジョジョを露伴先生は利用して勝てたのだとか。

だからプレミア版の星の王子さまを持っていたのか…露伴ファンなら喉から手が出るほど欲しい逸品だ。

その事を負い目に感じており、ジョジョの事を冷たくあしらえないどころか、何かをお願いされると逆らえないのだとか…。この事は俺と露伴先生だけの秘密だ。

 

そうこうしている内に戸塚がキャストの打ち合わせに呼ばれる。

 

戸塚「じゃあ行ってくるね。八幡」

 

三浦「あーしらも行ってくる。部活は休むし」

 

八幡「おう」

 

静「御愁傷様というべきか……」

 

周囲ではキャスト達の打ち合わせの他、さっそく衣装の打ち合わせだったり、宣伝プランの話し合い、キャスト達を偲ぶ会などが各所で行われ始めた。

 

静「ハッチ、部活寄ってから文実に行こっか?イーハもいるだろうし」

 

八幡「まぁ、ジジイと仗助がいるから部活自体は閉店していても部室は動いているからな。つうか、会社で仕事した方がよくね?」

 

静「ウルフスが動き出したし、当初の狙いはハッチみたいだから総武の守りは必要みたいだよ?」

 

また俺がターゲットかよ……。

俺とジョジョは連れ立って歩き出す。その後をパタパタと騒がしい足音が追いかけて来た。

俺もジョジョも気配でわかる。由比ヶ浜だ。

 

結衣「スタッチ達、部室いくの?」

 

背中に声をかけられ、性悪コンビは歩調を緩める。

 

静「ええ。まだ委員会まで時間あるし。それに、これからしばらく部活は出られないでしょうからマーチや材木座にそれを伝えようと思ってね」

 

結衣「そっか、そだね。あたしも行く」

 

言いながら由比ヶ浜も俺達の後ろに追随してくる。

 

静「仕事は良いの?」

 

結衣「うん、あたしが忙しくなるのって実際に動き始めてからだと思うし。それにヨッシーにも会いたいしね」

 

そ、と短く答え、部室までの廊下を歩いた。

ラブラブな事で結構結構。

 

←To be continued




今回はここまでです。

相変わらず海老名さんは腐ってますね♪
とある異世界人も彼女だけはなんとも出来ないでしょう。
……………奴が文化祭当日に混じって来そうな予感が。



それでは原作との相違点

海老名は葉山グループで、葉山は海老名をしたの名前で呼んでいます➡抜けています。おまけに嫌っていますので名前呼びは許しません。修復できるかな……これ。

幻想郷は女ばかりでしたから暴走に拍車がかかってる?

いきなり王子さまに葉山の名前を書いた➡仗助、ジョルノの名前を書いた。

ぼくに八幡の名前がのったときはすかさず突っ込んだ➡ザ・ワールド(の幻覚)がかかった。

海老名のベストゲイは八幡と葉山➡ジョジョハチ(男限定で誰でも可だが、仗助とジョルノが一番おいしい)

ポルナレフはフランス人なので加筆した

八幡は葉山に同情するが、ヒキタニ呼びは許さない

後のいろはの「戸部先輩?邪魔ですよ?」ネタを海老名が実行

一応海老名は葉山がイケメンであることは認めている

最近は川崎が空気なので八幡のセリフを川崎が言った

本を貸すのは八幡➡静。ジャンケン小僧のエピソードを入れたかっただけです

教室を出たのは八幡一人➡性悪コンビで出た


それでは次回もよろしくお願いいたします。

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