やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

353 / 731
人という文字

side比企谷八幡

 

文化祭のスローガン、これにイチャモンがついた。

そら言われるわ。言われん方がおかしいだろう。

 

『面白い!面白すぎる!~潮風の音が聞こえます。総武高校文化祭~』

 

なんでこれを通してしまったんだ?やっぱり俺は疲れてたのか?やけになりすぎたのだろうか?問題になるとわかっていたのに放置してたもんな。まぁ、自作自演してSPW財団の名義で俺が指摘したんだけど。

これ、十万石饅頭じゃん?埼玉じゃん?千葉的にこれはどうなんだ?これなら俺のマッカンのキャッチフレーズの方がましじゃあないか。

まぁ、千葉は置いておくにしても、どこぞで使ってるものをまんま流用って言うのはどうなのという話になり、最終的な協議の結果、NGということになった。

そうなるように城廻先輩を動かしたんだけど。

 

朋子「あんた、ホントに大丈夫?」

 

と、朋子さんに心配された。

怒られるよりも堪えたわ。

 

これについて対策すべく、急遽人が集められた。

オブザーバーとして、最近協力してくれている陽乃さんと葉山も出席している。その事自体が既にこの文実に秩序が失われつつあることの証でもある。

まぁ、敢えて目を瞑るけどな。

生徒会を主体とした執行部、そして真面目に取り組んだわずかな人間達の疲弊が出ており、誰でも良いから手伝って欲しいという渇望である。葉山効果が必要になるくらいにまで減ってしまった人。そこからくる不満。いつ爆発してもおかしくない状況に投じられた今回の出来事はまさに追い打ち。止めの一撃になりえる。

会議は一向に始まらない。

ざわざわと雑談の波が会議室中に行き渡っていた。場を取り仕切る相模が注意を促しても相模にはその力は失ってしまっていた。

覆水盆に返らず……。

相模が書記に任命した友達すらも「なに言ってんの?こいつ」と言うような目を向け、ホワイトボードの前でお喋りをしている。

 

八幡「みんな揃ったな。なんだお前ら。モンキーの集団か?いや、それは失礼だったな。モンキーに」

 

言われて全員がお喋りを中断。そして俺を見る。

その目は敵意に満ち、不満を口にする。

群衆心理で強気になっている。自分達の方が正義だと言わんばかりに。

良いだろう。ならば群衆心理につけこんでやる。

それがお前らの正義ならば、その流儀に強制的にさせてやれば良い。

 

ズンッ!

 

殺気を放出する。

実際の体感温度よりも一気に下がった心理的な温度。

炎上していた場が嘘のように静まり返る。

 

いろは「はい、みんなが静かになるまで10分かかりました♪………林間学校の小学生の方がまだましですよね?」

 

静「高校生が小学生以下って言われてどんな気持ち?ねぇ、どんな気持ち?」

 

雪乃「一色さん?ジョースターさん?失礼よ?小学生に対して。小学生だってこの人達に比べたらましだわ?ああ、ごめんなさい。モンキーだったわね?あら?モンキーにも失礼だったかしら?」

 

陽乃「雪乃ちゃん?ダメよ?そんなことを言ったら。猿は賢いわよ?オラウータンだってもっと賢いかもね?」

 

フォーエバーかよ。

 

一気にたたみかけるアーシスの面々。

頭に血が昇った人間が立ち上がり、何かを言おうとするが……。

 

ギロッ!

 

生徒「…………っ!?」

 

一睨みで黙らされる。

そういった人間が何人も続けば、反論しようとする人間も動けない。

 

八幡「始めるぞ。今日の議題だが、城廻会長から連絡があったとおり、文化祭のスローガンについてだ」

 

自分でも傲慢だと思える態度で議事進行を始める。

まずは挙手でアイデアを求めるが、積極性のない上に俺の殺気にやられている集団ではそれも難しい。誰もやる気などないのだ。真剣な会議もお喋りのネタ程度にしかなっていない。

俺の隣に座るいろはが挙手する。

 

いろは「いきなり発表と言うのは難しいでしょうし、紙に書いて出してください。説明は後で良いですから。モンキーでもそのくらいは出来ますよね?」

 

殺気を出しながら全員を見渡すいろは。

 

八幡「そうだな。時間をやるからない頭をしぼりだせ。モンキーども」

 

各自に紙が回される。ちゃんと行き渡っているのだが、書いているのは数えるほどしかいない。

 

静「なに?アイデアが出ないの?それとも字が書けないの?モンキーだから仕方ない?」

 

雪乃「小学生からやり直した方が良いのかしら?それとも保健所で処分すべきかしら?社会の害悪だわ?これが県下一の公立高校の生徒なのかしら?どうやってこの高校に入学できたのかしら?その前にこの程度の事が出来なくてよく中学を卒業出来たわね。親にどれだけお金を使わせたの?」

 

八幡「ハハハ。裏口しか方法無さそうだもんな」

 

いくら俺達でも普段ならそこまでやらない。今回は徹底的にだ。

ここぞとばかりに罵倒する俺達。くすくす笑いながら嘲笑する。その間も殺気は継続して噴出させる。

慌てて書き始めるが、いざ提出となったらそれを出してはこない。

俺は適当に見回りをし、ただの落書き程度しか書いていないものを1枚取り上げ……

 

八幡「幼稚園児からやり直せよ。クズが」

 

くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ捨てた。その距離5メートルにホールインワン♪

睨んでくるそいつに対して睨み返す。

 

八幡「誰が悪いんだ?お前のアイデアはしっかり処分してこの世から消しておくべきクズ。この俺がゴミ箱へ投げ捨ててやったんだろ?それとも地獄の穴に書いた本人の背中を押してやるべきだったか?」

 

わざわざあと数センチの距離まで顔を近付ける。

汗をかきながらも目を逸らす先輩。

徐倫が「ここまで怒るのは近年稀ね……往生しなさい」と十字を切っていた。

この状況を何とかしようとしていたのを俺達は止めたもんな。

 

一方でこんなに舐めきった集団でも、真面目な人間、というか表には出さないがきちんとやる人間というのは一定数いる。人前に出るという障壁さえ除けばちゃんと仕事をする人もいるのだ。これまでもそうした人達に支えられてやってきている。今回もお世話になりそうだ。

ちなみにいろは達も含めて真面目に出席してきた人間は区別して席を分けて座ってもらってある。

回収された紙の内、スローガンが記入されているものはホワイトボードに板書される。

 

・友情・努力・勝利

 

うん、だいたいそんな感じのスローガンが並ぶ。

ジャ○プのスローガンがきました。

………確かこちらがわの原作は小○館出版だよな?ジョースターが出てくる側は集○社だけど、原作大丈夫なの?はやく続編も期待してるんだけどな。メメタァ!

1つやたら異質だったのが目に付いた。

 

『八紘一宇』

 

うわぁ、前世の所属とかの諸々の理由を含めて書きそうな奴に心当たりがある。アーシスだし。

そしてもう1つ、みんなの目を引いたものがある。

 

『ONE FOR ALL』

 

板書されると、たまたま近くにいた葉山が「お」と小さく声をあげた。

 

葉山「ああいうの、ちょっといいよな?」

 

どうやら葉山のお気に召したらしい。ああ、お前、そういうの好きそうね?横文字だし。

 

八幡「はっ!」

 

俺があからさまな鼻笑いで返事をしてやる。『スクール○ォーズ』……ねぇ。昭和臭漂うなぁ。

それに葉山は肩を竦める。

 

葉山「一人はみんなの為に。俺は結構好きなんだ」

 

八幡「なんだ、そんなことか。簡単だろ?」

 

葉山「何か嫌な予感が…」

 

この二日間で俺の性格の悪さに慣れてきたのか?よござんす、あっしが解説してしんぜやしょう。

 

八幡「一人に仕事を押し付け、そいつに負担を強要させる。一人に傷を負わせてそいつを排除する。一人はみんなの為の犠牲になる。よくやってるだろ?」

 

ーーー今まさに。この文実がな。

 

葉山「比企谷………、お前」

 

葉山は出し抜けに打たれた表情をしたが、その視線が次第に鋭くなった。体ごとこちらに向け、相対する姿勢になろうとするが……。

 

八幡「違うとは言わせねーよ。少なくとも、この文実に関しては誰にも……絶対に言わせん」

 

はたから見たら睨み合っているようにも取れるだろう。

周囲のお喋りが一瞬止まった。

俺達の声が小さかったおかげか、ひそひそと言われる程度にとどまっている。

葉山との静かな対峙はものの数秒で終わる。互いに目が前方に集まったからだ。

俺達だけでなく、全員の注目が前方に集まった。

相模がラスト・ノートで話しかけてくる。

 

L・N「ほ、ホントにやるの?」

 

G・S「やらんと最終的な悪意がお前に集まるからな。こっちとしても都合が悪い」

 

L・N「学校の悪意よりも、あんたらの方が怖いんだけど…」

 

S・F(徐倫)「激しく同意だわ」

 

相模は涙目のルカでジョジョと相談すると、立ち上がった。

 

相模「じゃあ、最後。う、うちの方から……(ガタガタ)ウウ……『絆~ともに助け合う文化祭~』っていうのを……」

 

八幡&いろは&静&雪乃&めぐり&徐倫

「ぶふっ!」

 

相模は涙目でキッ!と俺達を睨んだ。そりゃあそうだろう。その理由は…

 

葉山「お前ら……自分達でやらせておいて酷くない?」

 

そう、これは俺達がやらせた。

やらせたんだけどさ……。

相模もこれを聞いたときは、「この文実でこれを言う勇気が無いんだけど…どうしても?」と嫌がった。

そりゃあ横牛がやったことだとはいえ、このスローガンを相模の口から発せられてはならんだろう。真面目にやっていた人からしたら、「こいつ、脳内お花畑牧場?生キャラメルでも作るの?」という目を向けている。

吹き出した俺達の反応に周囲がざわついた。本当はここでジョジョが嘲笑するはずだったのだが、あまりの滑稽さ加減に我慢できなかった。結果的には同じだったのでその流れに乗っかる。

相模はひきつった笑顔を俺に向けた。

 

相模「……何かな?何か変だった?」

 

見ようによっては笑顔で取り繕いつつも、大分頭にきているように見える。本当は自分達でやらせておいて吹き出した俺達にそれは無いでしょ……的な意味だろうが、下手な演技よりもこちらの方が説得力がある。

乗っかるぞ……乗ってやるんだ……この流れに。今だ…乗るんだ。ジョジョ!

 

静「いや?別に」

 

ジョジョは意味ありげに蔑んだ目を向けながら、いいかけてやめる。これが一番腹の立つ反応であることは確定的に明らか。何度も意図的にやって敵派閥の役員を煽って仕掛けさせてきた俺達が言うんだから間違いない。

言葉では伝えられないものを伝える。態度や目は言葉以上に意思を伝える。

休み時間に寝た振りとか、頼みごとをされたら嫌そうな表情をする、仕事中にため息とか。

言葉以外でも意思表示方法はいくらでもある。俺といろはは目だけでも通じ合える!

 

八幡(目で)「愛してるよ♪いろは」

 

いろは(目と表情で)「うっわ……空気読め…」

 

通じすぎて逆に怒られました。

 

相模「何か言いたいことあるんじゃあないの?」

 

静「いや、まぁ別に」

 

相模は不機嫌そうに(だけど近くで見ていると涙目で足がガクガク震えてる。俺、ジョジョ、いろは、雪ノ下が継続して殺気を放出しているからか?)ジョジョを睨んで言った。

 

相模「ふ~ん、そ、そう。嫌なら何か案出してね」

 

予定調和だ。だから言ってやるのさ。

 

雪乃「『人、~よく見たら片方楽している文化祭~』とか」

 

………あれ?俺が言うはずだったのに何故あなたがしゃしゃりますか?

 

←To be continued




今回はここまでです。
さぁ、文化祭編中盤の見せ場です!

メリー苦しみます!
ケーキは食べましたか?チキンは食べましたか?七面鳥を食べたセレブはいませんよね?

今日はクリスマスですね?え?私は仏教なので特には…


それでは原作との相違点!

十万石饅頭ネタに対してマッカンネタを追加

葉山と陽乃参加はカオスの現れ→原作同様だが、もはや一蓮托生状態なので意図的な部分もある

会議が始まらない理由の一端に相模の雑談もある→相模は雑談に参加していない

副委員長雪ノ下は疲れが抜けきれておらず、ぼーっとしている→最初から文実のサボり組に対して喧嘩腰。悪意を集める気、満々です。更に千葉村ネタ追加。

雪ノ下は丁寧に議事進行→八幡は傲慢に議事進行。悪意を集める気、以下略

紙に書いて発表させるのは葉山の案→いろはの案

くすくす笑うのはふざけてネタを考えてる者→を蔑んだ目で見ている八幡達プラス挑発追加。悪意を…以下略

ジャンプネタなど多数は原作通り。さらにメタりました。

『八紘一宇』(共産主義の発言)は原作小説版を採用。アニメ版の『一意専心』よりも心当たりがある奴(材木座)が原作以上にイメージに合う。

葉山と八幡のにらみ合いで更に八幡が一言。原作以上に怒っています。

相模は本気で絆のスローガンを掲げる→八幡達が言わせてる

お花畑牧場?ネタは八幡が思う→お花畑牧場?ネタは真面目な役員達(想像)

八幡の嘲笑→八幡達の吹き出し

相模は本気でお怒り→やらせておいてそれはないだろ…的な呆れ

八幡の煽る「いや、別に」→静

八幡の過去の「いや、別に」で友達を無くした→敵派閥の重役を煽って消した

アイコンタクトネタを追加(生徒会シリーズより流用)

『人』のスローガンを出したのは八幡→…の役目のはずだったのに雪ノ下が横取り


それでは次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。