やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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ある日の比企谷家

小町「お兄ちゃん。パソコンで何してるの?」

八幡「いや、別に。文化祭のスローガン、決めるとかで、なんかねーか調べたんだよ」

小町「意外だね。ジョジョ名言から流用するかと思ってたよ。あと、『履歴、削除』で調べた検索ワードも消しておかないとダメだよ?こないだお母さんとお姉ちゃんが『履歴 削除 復元』で調べてたよ?」

八幡「母ちゃん何やってんだよ……つーか、そういうのやめてくれよな…信頼してんだからさ」

小町「なんか変なの出てきたって呆れてた」

八幡「冤罪だ。俺じゃあない!というかそんなの調べるのは親父しかいない!その昔、よくわからん国際電話の請求が来て死ぬほど怒られていたからな。詐欺グループだったみたいだからパッショーネと協力して潰したけれど」

小町「聞きたくないことを聞いちゃったよ……というか、お兄ちゃんじゃあないって何で言いきれるの?」

八幡「………その手のやつを調べたい時はハーミット・アメジストで見るからな。いろはの入浴とか……」

小町「スタンド悪用もどうかと思うよ?ゴミいちゃん。あ、小町のなら生で見せてあげるよ?」

八幡「ノージョースケ、ノーシズカ!………ハッ!」

いろは「……………」(⌒‐⌒)

八幡「逃げるんだよォォォ!」

いろは「ナイチンゲール・エメラルド!エメラルド・エクセス!」

八幡「ギャアアアア!」

小町(見たいなら直接頼めば見せると思うのに……何やってるんだか………)



今まさに総武高校はフェスティバっている。

side比企谷八幡

 

暗闇の中、生徒達のざわめきが響く。一つ一つの声はきっと意味があるのだろうが、それが集まると意味をなさない。

張り巡らされた暗幕は隙間が出来ないよう、周到に目張りされている。誰かの携帯電話や非常口の灯り程度の頼りない光源程度ではせいぜい掌程度しか照らせない。

真っ暗で何もはっきりとしない。

もっとも、吸血鬼の頃の経験や、波紋の気配察知、アーシスやパッショーネの暗所での訓練や実戦のお陰で昼間ほどでは無いにしても一般人よりは見えている。

ジョジョやいろは、来賓で混じっているジジイや仗助でも見えているだろう。

そんな一部の人間以外の心は1つだ。

太陽の下では自分達の違いが照らし出されて、どうしようもなく別物だと思い知らされてしまうけど、互いの輪郭がぼやけている彼我を分かつ境界線が曖昧だ。

なるほど、行事の前で暗くするのは理にかなっている。

であるならば、漆黒を引き裂くようなスポットライトを浴びる行為は、その者がその他大勢大勢とは違うことを示唆する。

ゆえに、そこに立つべき者は特別な存在であるべきだ。

生徒達の声が1つ、また1つと消えていく。

手元の時計では9時57分。そろそろ時間だ。

ちょうど無線から『ふっ』と息を吹く音がする。

無線技士が使う測音という技術だ。軍隊でも使われる通話法で、トークボタンを押してからマイクが音を拾うまでにタイムラグがあるので、頭切れを防ぐ為に使う技術だ。また、これから喋るから傾聴しろという意味も兼ねている。

アーシスのメンツはこれがクセ付いているので、これから喋るのはアーシスの誰かだろう。

 

雪乃『開演開始三分前、開始開始三分前。終わり』

 

俺はザ・ジェムストーンの腕から通信機を兼ねた時計を見る。当然、電波時計だ。

俺も無線のブレストークを押して測音を入れてから喋る。

 

八幡『ふっ!比企谷だ。各員に通達。オンタイムで進行する。問題があれば即時報告せよ。終わる』

 

アーシス訓練のせいなのか、終わり、どうぞ……という事を語尾に付けてしまう。無線通信士の資格は当然、取らされた。本格的な無線機を使うには資格が必要だから気を付けよう。運転免許や船舶免許、航空機と同じで規模に応じて試験の難易度が変わるから、どの程度の規模で必要なのかは調べてから取るべきである。

ちなみに俺は丙種陸上無線と海上無線だ。そのうちもっと上の資格を取ろうかどうかは検討中だ。

俺の発声の後に次々と報告が上がってくる。

 

『照明、問題なし、どうぞ』

八幡「了解。終わり」

『こちらPA、問題なし、どうぞ』

八幡「了解。。終わり」

「了解、どうぞ」

八幡「通話終わりは『終わり』な。どうぞは返答を求めている時だから。終わり」

 

「楽屋裏、キャストさんの準備がややおしです。けど、出番までには間に合うそうです」

 

八幡「…………」

『比企谷?』

八幡「返答が欲しいときは『どうぞ』を付けてくれね?返事して良いのかどうか迷うから。無線通話では結構常識だから」

 

『リンゴのり、吉野のよ、上野のう、為替のか、いろは大好きのい、東京のとに濁点、上野のう、そろばんのそに濁点』

 

八幡「誰だ通話表を理解しているマニアックな奴は。めんどくせぇから普通に話せ。あとお前、なにサラッと人の彼女を口説いてやがる。というか、それを言うために通話表を使っただろ。後で校舎裏な。終わり」

 

いろは『ふっ。副委員長。私事を無線で流さないで下さい。あと、告白については副委員長の言うとおりなのでお断りします。どうぞ』

 

八幡「了解。終わり」

 

おい、俺が怒られただろ。

通話表なんてマニアックな!

通話表とはノイズなどで聞きにくい無線通信における確実な通話を行う為の技術だ。

今の場合は「了解どうぞ」となる。ちなみに「い」を発生するのは『いろはのい』で間違っていない。もちろん、俺の脳内の中での『いろはのい』は当然ながら『一色いろはのい』だ。異論は認めん!

あと、俺のいろはは誰にも渡さん!絶対にだ!

 

いくつもの部署から連絡が入る。油断していると把握しきれなくなるな。まぁ、いろはとジョジョと相模と協力して担当を決め、それらに関することだけを把握しているが。

正直、雪ノ下にもそちらに入ってもらいたいのだが、雪ノ下の記録雑務は今日が忙しい日だ。贅沢は言えん。タイムキープ…要は舞台上の巻きや引きを示す役割だ。これはお堅い…もとい真面目な雪ノ下に適任だったりする。最近では融通がきくようになったとはいえ、根っこの真面目さは変わらないからな。

 

相模「委員長より通達。キューだしまで各自待機。終わり」

 

相模も俺達に倣って通話法で指示をだす。『通達』や『放送』を事前にかけておけば『了解』の嵐が押さえられる。要は返信不要という意味だ。

舞台袖では俺は時計とにらめっこしている。

デジタルが進むごとに、静けさを増していく。

 

雪乃『10秒前、9、8、7、6』

 

八幡「五秒前」

 

いろは「ザ・ワールドネタは今は良いですから」

 

こういうカウントダウンにはやりたくなるんだよ。

 

2、1……

 

八幡「ゼロ、そして時は動き出す……じゃあなくて、ステージ開始!」

 

俺と相模の合図と共にステージに目が眩むほどの光がはぜる。

 

めぐり「お前ら、文化してるかー!」

 

明らかに普段のホワホワとはキャラが違う城廻先輩。

 

「うおおおおおおお!」

 

だが、祭りのハイテンションにそんなものは関係ない。

 

めぐり「千葉の名物、踊りとーーー!」

 

「まつりーーー!」

 

スローガンは浸透しているようだ。

 

めぐり「同じアホなら、おどらにゃーーー!」

 

「シンガッソーーーー!」

 

文実のいざこざは今は関係ない。

 

八幡「正に同じアホならおどらにゃ」

 

いろは「シンガッソー!ですね♪」

 

相模「そうだね。感謝するよ。比企谷」

 

八幡「礼を言うのは全部終わってからだ。次は出番だから、スタンバっとけよ?」

 

相模「うん」

 

相模はマイクを持って緊張した面持ちになる。ここまできたらなるようにしかならない。成功しても失敗しても……。

 

相模「失敗したって踊らにゃシンガッソーでしょ?」

 

言うようになったじゃあないか。

城廻先輩のコール&レスポンスから間をおかず、爆音で流れるダンスミュージック。

オープニングアクトが始まる。協力はダンス同好会とチアリーディング部の皆さんです。城廻先輩のマイクパフォーマンスの熱狂をそのままに、生徒達は冗談混じりに踊ってみたり、手を大きく振り上げたりと盛り上がっている。

……うわ、バカだなー。うちの学校。

何だよ文化してるかって。してねーよ。あ、露伴先生に後で送っとこ。

 

「ーこちら、PA。間もなく曲あけます。どうぞ」

 

八幡「了解。相模委員長。スタンバイOK。終わり」

 

ダンスチームが下手袖へはけ、上手袖に立った城廻先輩が呼び込む。

 

めぐり「では、続いて文化祭実行委員長よりご挨拶です」

 

ジョジョが相模の肩を叩く。

 

静「踊ってこい。アホ」

 

相模「踊ってくるわよ。アホ」

 

今ので緊張が解けたのか、ステージ中央に進む相模。ウルフスによって危うく死にかけた事に比べれば、こんなもので失敗しても死ぬわけじゃあないから怖くなんてない。相模はそう言っていた。

そして相模が一声放つ。その瞬間、きーんと耳をつんざくハウリング……。おいしいな……(芸人的な意見)

あまりのタイミングの良さに観衆はどっと笑いさざめく。

観衆も笑いのツボを押さえているな。

相模はハウリングが終わったのを見計らって喋り出す。

 

相模「なんだってハウリングが起こるかなぁ……千葉の名物踊りと祭りの総武高校文化祭!生徒会長の城廻先輩がカッコ良く決めた後の落とし役になっちゃいました。これがうちの役目?まぁ、いっか。みんなのお陰で今年も無事に文化祭を開くことが出来ました!さぁ、みんなで盛り上げて行こう!総武高校文化祭、千葉の名物踊りと祭り!同じアホなら踊らにゃsing a song!開幕します!」

 

「わあああああああああああ!」

 

頑張って練習してきたのだろう。噛む、とちる、そんな事も一切なく、ハウリングのハプニングも利用して上げ上げの、それでありながらシンプルな開幕宣言。

オープニングセレモニーの委員長挨拶はつつがなく終わり、次の進行に移る。

滑り出しの良い幕開けだ!

 

←To be continued




ハッピーニューイヤー!明けましておめでとうございます!
おせち食べましたか?お雑煮食べましたか?

さて、こちらは文化祭編のクライマックスです!

こんな『sing a song』があっても良いのではないか!俺ガイルの文化祭編の滑り出しが明るくても良いじゃあないか!
元旦に合ったオープニングで進めていきます!


それでは恒例の!

八幡と雪ノ下のポジションチェンジ

陸上無線通信のシーン

通話表のやり取りで他の文実から怒られるシーン前倒し。

ザ・ワールドネタを追加

オープニングセレモニーをとちる相模➡️それすらもノリに変えた相模

前途多難な文化祭の始まり➡️滑り出しが良好な文化祭の始まり


それでは次回も、そして今年もよろしくお願いいたします。

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