やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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八幡と材木座が似だしたのはまちがっている。

side材木座義輝

 

ふむ、八幡のクラスは大盛況のようだな。

我は今、受付をしておる。結局は我のシナリオは露伴先生に却下され、新しいシナリオを執筆している間に別のシナリオが採用されてしまった。

我のやっておる受付は留守番的な意味合いもあるらしく、クラスメイト達は休憩していたり、他のクラスの出し物を見に行っている間も、我は出入り口のパイプ椅子に座っておった。

明日は別の者が担当するようなのだから構わないのだが、やはり我の脚本が採用されなかったのは残念でもある。まぁ、クラスでも八幡達の悪口が溢れかえっており、同じカテゴリーに所属しておる我もクラスの方ではあまりよい顔はされておらぬ。

我がクラスの文実の男子は真面目に仕事をしておった関係で、どれだけ八幡達が頑張っていたのかを知っておったので、その友である我を逃がすためにこの役職に配置してくれたのはありがたい。

あのままならば我も我慢できぬところだったからな。

 

結衣「ヨッシー、お疲れ」

 

机にドサッとビニール袋が置かれた。見上げると結衣どのがいる。

壁に立て掛けたままのパイプ椅子を広げると、よいしょっと言いつつ座った。

 

結衣「うちのクラスの劇、見てくれた?」

 

材木座「うむ。良かったと思う。だが、印象的だったのはアーシスの皆が涙しておったところだな」

 

結衣「何か、前世に思い入れがあるシーンがあったらしいよ?空条博士が関わってるっていってた」

 

材木座「我の前世より50年後の話か……ジョセフ老も関わっておったらしいな」

 

結衣「うん……姫菜や優美子も泣いていたよ…」

 

スターダスト・クルセイダーズの時代か。柱の一族との戦いと同じくらい壮絶だったのだろう。何せあの八幡の前世との決着だからな。陽乃殿やペットショップの前世とも戦ったと聞いておるし、さぞかし大変だっただろう。

劇は完成度は置いておくにしても、観客の盛り上がり具合はかなりのものだった。海老名殿のプロデュースというが、かの者の思惑は当初は趣味全開だったので、想定外ではあったのだろうが、面白さを強調した内容だったと思う。

特に高校生の文化祭の出し物としては文句のつけようがない。それに、葉山殿や戸部殿、大岡といった交遊関係の広い人間をキャスティングしたことで、内輪乗りを最大限に活かしていたと思う。

普段仲良くしている者が別のキャラクターを演じるギャップの面白み、そこから漏れ出る普段のキャラクターを垣間見た時の面白みというのは既成の娯楽とはまったく違う楽しさを作り出すからな。

それらの意味合いにおいて確かにあの演劇は良かったと評することが出来る。露伴先生は「八幡くんならば僕にシナリオを依頼すれば無料でもっと良いものを書けたのに」とぼやいておったが、仲間内で作った台本でやるからこその面白みが今回はあったと我は思う。

 

結衣「みんな頑張ってたからね」

 

結衣殿は「ん」と背中を反らし、身体を伸ばしながらいう。その感慨深げな言い方はこれまでの苦労が見て取れた。我は見当違いの場所を探しておったから参戦できなかったが、ウルフスとの戦いにも加わっておったみたいだからな。本当にヤバい相手だったようで、参戦できなかったのは悔やまれて仕方がない。本当にお疲れ様だと結衣どのには言いたいが、それよりももっと今は言いたいことがある。クラスTシャツで背中を反らすと…その、胸やへそが気になるのだ。大事な彼女のそういったところは…我以外の男子に見せたくない。

 

材木座「頑張っておったな。我もウルフスとの戦いに参加できなかったのは悔やまれて仕方ない」

 

結衣「でも、それは別の場所でポルナレフさんを探していたんだから仕方がないよ。ヨッシーはヨッシーなりに頑張ってたのは知ってるよ?」

 

人差し指を付き合わせて上目使いでこちらを見る。結衣殿が遠慮がちにものを聞くときの癖だな。どうでもいいことで気にしおるな。

 

材木座「結果を残せなかったのは同じではあるがな。結衣殿が傷つけられた場に我がいなかったのは悔やまれて仕方がない」

 

本当にそれが悔しい。結衣殿に限らず皆に対してそう思う。アーシスの者達は得難い友人達なのだからな。

 

結衣「そ、そう……あ、あたしが傷つけられて怒ってくれてるんだ…」

 

材木座「当たり前であろう?か、彼女を傷つけられて怒らぬ我ではない」

 

結衣「そっか……ありがと。ヨッシーらしいな」

 

材木座「我らしい……か?」

 

結衣殿は椅子の背もたれにとんと背中を預ける。するとパイプ椅子がキャハッとはにかみの笑みのような音を立てた。

 

結衣「そりゃね。ヨッシー、変なところでひねくれているけど優しいし、見てればわかるよ?」

 

材木座「見てくれておるのか……」

 

結衣「彼氏なんだから当たり前でしょ?」

 

材木座「我だけではなかったのだな」

 

結衣「うん…………」

 

もじもじ……うん、もう付き合い始めて二月は経つというのに、この甘酸っぱいような照れ臭さはお互いに直らんな。

お互い、つい黙ってしまうが悪い沈黙ではない。

そうしていると、E組とG組の騒がしさが際立つ。盛況のようであるな。

特にE組はジェットコースターだとかで長蛇の列が出来ておる。

長い順番待ちに痺れを切らした数人がぶーぶー文句を言い、E組の生徒が困っているのが見て取れた。

不思議なもので、列というのはさらなる列を呼ぶ。列に限らぬのだが、売れているものは売れているという事実自体が新たな宣伝要素となってさらに売れていくものだ。

ナチス時代では社会主義という政治体系がそうであったようにな。

E組もその例に漏れず、群がる人々の後方に更に人が集まってくる。

 

結衣「うわー。大変そうだね」

 

材木座「このままでは収集が付かなくなるぞ」

 

E組は人が足りておらぬのか、明らかに客を捌ききれておらぬ。廊下がパンパンになるのは時間の問題であろう。

その時だ。

ピーッ!と甲高い笛の音が聞こえた。

音がした方を見ると、城廻先輩がおる。

 

めぐり「アクアちゃん!よろしく!」

 

ジョセフ「微笑みの爆弾じゃ!スージー!」

 

京華「はーいっ!アクア!よろしく!」

 

ジョセフ老とスージー殿は何故ここにおる……

 

R・A「いっくよー!微笑みの爆弾!えーいっ!」

 

ポーン!

スージー殿のスタンド、リーシャウロン・アクアマリンが漫画爆弾を投げ、それが爆発する。

 

めぐり「すかさずその微笑みの力をシンデレラ・ハーヴェスト!」

 

C・H「集めるんだど」

 

C・H「微笑みの幸せを撒き散らすんだど」

 

城廻先輩のスタンドが爆弾から生まれた星をイラついている客達に投げていく。

 

ニコニコ(⌒‐⌒)

 

イラついていた客達はほんわかしてきたのか、先ほどまでとは打って変わって落ち着きを取り戻し、ニコニコして談笑を始めた。

 

めぐり「今だよ!みんなよろしく!」

 

誰もいないのにそう言うと、どこからか生徒会役員達がわらわらと現れる。瞬く間に列を整理し始め、後ろの方の人達はどこかへ移動させられた。お主らはコミケスタッフか!それに、リーシャウロン・アクアマリンの力によるものか、特に混乱が起こることもなく、列の人達は苦情を言うこともなく、快く指示に従っていた。

 

結衣「上手いね。スタンド能力ってこういう使い方もあるんだね……」

 

材木座「シンデレラ・ハーヴェストやリーシャウロン・アクアマリン、パール・ジャム、サマーハプノ・サファイアなんて使い方次第で人が幸せになれるという典型的な能力であるな。結衣殿もシンデレラ・ハーヴェストと連携して合体技を使ったではないか」

 

結衣「あれは……あまり良い使い方じゃあ無かったけどね?上手いのはめぐり先輩だよね」

 

八幡「おい、E組の代表者はいるか?」

 

生徒会に混じって八幡と静殿、一色殿もいた。

 

結衣「ヒッキーにスタッチ!いつの間に!もう仕事に戻ってるし」

 

材木座「さすがは社畜オブ社畜だな。動きが早い」

 

八幡達は代表者を呼び出すと、事情を聞き、対策を話し合っている。と思ったら、すぐに対策法が思い浮かんだようで、E組の代表は礼を言って戻り、すぐに伝達を始めたようだ。

 

結衣「さすがは支部長……。慣れているっていうか」

 

材木座「まぁ、E組の奴は明らかにビビっておったがな」

 

我々からすれば普段の八幡と変わらぬが、あまり関わりのない者からすればあの目付きの悪い威圧感は恐怖そのものだ。ヤクザ顔負け……と言うよりは、ギャングの幹部みたいなものだしな。パッショーネの幹部と同列の扱いであるし、実際にパッショーネの准構成員扱いであるし。

おまけに普段は緩和材である一色殿や静殿、城廻先輩は文実の悪評もあってその役を果たせておらぬ。

だからリーシャウロン・アクアマリンを使ったのやも知れぬな。

 

結衣「あたし達も、ヒッキー達の辛さを肩代わり出来たら良いのにね」

 

材木座「……なに。いずれは収まる。人の噂も……」

 

結衣「49日?」

 

材木座「………75日だ。49日は法事であるぞ?」

 

仏教の教えでは死んだ者の魂は49日で輪廻転生を果たすと言われておるからな。我々からすれば他人事ではない。というか、今は関係なかろう。

 

対策を終えたジョセフ老、八幡、静殿、一色殿、城廻先輩、スージー殿は軽く拳を合わせて労を労い合う。どっちが生徒会役員なのかわからぬほど息が合っておるな。生徒会役員も苦笑いしておる。

そして、我らに軽く手を上げた後に颯爽と去っていってしまった。またすぐに次の仕事やトラブル対処に駆けつけているのだろう。

 

材木座「財団に行った後に何か話をしたのであるか?」

 

結衣「なーんにも」

 

材木座「は?」

 

結衣「何て言うの?トランスモード?ヒッキー達は一心不乱に仕事を始めちゃって、あたしがいても仕方ないからジョセフさんにご飯をご馳走になって、そのまま帰った。だから東方社長が通達したこと以外は何の話も無かったよ?」

 

材木座「そうか……皆で犠牲になろう、と言うことだけか。八幡のあれは直ったのかわからぬままか」

 

結衣「うん。多分だけど、あれはもうヒッキーの性分だよ。だからまた繰り返しちゃうんだと思う。だけど、いつかはその性分も直ると信じていろはちゃんやスタッチも待ってるんじゃあないかな?いつかは罪の意識を持つ必要なんてない。もう自分が犠牲になる必要なんてないって。だからあたしも待つの」

 

その答えが結衣殿らしかった。

それまで歩み寄ろうとしておった結衣殿だから。黄金の精神を自力で育てた者だから。だから待てる。

 

結衣「だけど、ジョースター家は多分、待たない。待つだけの人達じゃあない」

 

材木座「そうであるな。ジョセフ老を始め、ジョースター家の者達は待つだけの性分ではないな」

 

結衣「でしょ?そして、それはあたし達もだよ?あたし達アーシスは、知らない間に根がそういう人間になっちゃってるんだと思う。だから、待つんじゃあなく、こっちから攻める。ヒッキーを守るために、ヒッキーが自己犠牲をしそうになる芽を潰しちゃうんだよ。そういう人達じゃん?ジョースター家は。それに……ヨッシーに対してもだよ?」

 

材木座「ん?」

 

結衣「多分、ジョースター家以外ではヨッシーが一番ヒッキーに近いよ。千葉村でも、あの世界でも、花火大会の時でも。サンタナへの罪?ってやつ?ヨッシーもどこかそういうところがあるよね?だからあたしはヨッシーを守る。二度と…ヨッシーを犠牲になんてさせないから」

 

結衣殿……。

そうか。我は八幡に似ておるか。

だとしたら………。

 

材木座「なら、その時は一色殿のようにひっぱたいて止めて欲しい」

 

結衣「もちろん!ね?リバース?」

 

R・T「はい。覚悟してください。ヨッシー様」

 

結衣殿とリバース・タウンは楽しそうに、そして照れたように笑って頷く。このはにかみ笑いがこの話はもうおしまいと言っているようにとれる。

お互い、少し短い吐息を漏らして視線を外した。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

最近出番のなかったけーちゃんを少し活躍させました。
リーシャウロン・アクアマリンだって素敵なスタンドですよね?


それでは原作との相違点

由比ヶ浜と話すのは八幡→材木座

八幡が円陣に加わらなかった事について話す由比ヶ浜→材木座は横牛戦に加われなかったことを悔やむ

めぐりは速攻で生徒会を呼ぶ→京華に微笑みの爆弾を使わせ、シンデレラ・ハーヴェストでニコニコさせてから生徒会を召喚

E組代表と話すのは雪乃→八幡達幼なじみーズ

E組の代表は雪乃の冷たい表情にビビった→半パッショーネと化している八幡の鋭い視線にビビった。

最近、八幡が動けないときの語り部が静と材木座になりつつあるような気がする……。
それでは次回もよろしくお願いします。

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