やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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柔道部編

side比企谷八幡

 

昼の授業をやっつけて部室へ向かう。

時代の流れなのか、うちの高校は冷暖房が完備されており、夏でも授業そのものは快適に受けることができる。だが、教室の外はまた別だ。さらにいえば放課後もまた別である。

特別棟の廊下を足音を消しながら歩く。

こんな暑い日でも、特別棟の奥、奉仕部の部室へと向かうたびに、気持ち涼しく感じてくるのは、この部室が日陰に入りやすく、また風通りが良いからなのだろうか。それとも、その部室の部員が放つ雰囲気ゆえなのだろうか。胸元も涼しいしね!

………いや、むしろ寒気すら感じてきたんだが?

どうでもいい特別棟の涼しさに関する考察をしながら、部室の戸を開けると……。涼しいを通りすぎて寒さすら感じる冷気が部屋から漏れでた。

 

ジョセフ「おー、雪乃よ。その調子で頼むぞ?」

 

雪乃「スタンドってこういう使い方をしていいのかしら?」

 

惜しい!八幡ニアピン賞!

ジジイが雪ノ下を使ってスタンド冷房をかけてました!

原因が雪ノ下なところまでは合ってたよ!

 

八幡「………雪ノ下。お疲れさん」

 

冷やしすぎてもはや寒さすら感じるまでに頑張った雪ノ下に労いの声をかける。

頼まれたらとことんまでやるなぁ。それが雪ノ下の真面目さ故か、単に負けず嫌いが変な方向にぶっ飛んだ故なのかわからないが、雪ノ下が頑張ったのは確かだ。

すると、雪ノ下は射るような眼光を向けてきた。

なんで怒ってるの?この人。さっきの思念が通じてしまったのだろうか。エスパー的な能力がエンジェル・ダストにあるとは聞いてないけど?

 

雪乃「………何故かしら。あなたを氷像にするべきだと思ったのだけれど?えらくじめっとした顔をしているから両生類に見えるからなのかしら?」

 

八幡「若さ故に潤ってるからか?徐倫には言うなよ?気にしてそうだから」

 

実際には徐倫も潤ってるだろうがな。まだ20代前半だし。

いつものように軽口を叩く挨拶をして、俺は関東支部支部長席に座る。

雪ノ下は相変わらず不機嫌そうながらも、再びエンジェル・ダストで部屋を冷やし続ける。

………………。

 

八幡「って待て!ジジイ!冷やしすぎだ!廊下との温度差が半端じゃあ無くて風邪をひくわ!」

 

ジョセフ「そうかのう?かー!日本の夏は暑いのう!」

 

お前、もう10年以上日本に住んでるんだからいい加減に慣れろよ!そりゃニューヨークに比べたら暑いだろうが、限度があるだろうが!

 

八幡「雪ノ下!頼むからもうやめろ!仗助はどうした!あ、今日は会社か……承太郎も止めろよ!」

 

承太郎「ん?いや、俺にはむしろ丁度良いが?」

 

八幡「そりゃそろそろ夏本番なのにくそ暑そうなコートを着てりゃあそうだろうね!つうか、脱げよ!聞けば20年前の砂漠でも長ラン着てたらしいけど、何で長ランやコートに拘るんだよ!」

 

承太郎「………」

 

八幡「都合が悪くなったからって黙るんじゃあない!」

 

もうホントなに?何でこいつは夏なのにコートを着込んでるの?宮本武蔵は生涯風呂に入らなかったと言うけど、それは入浴中の襲撃を嫌ったからだとか。承太郎のコートにも何か理由でもあるのか?

ないよな?あと、室内で……それも自宅の書斎でも帽子を脱がないことも小一時間ほど問い詰めたい。

ガラガラ!

扉が乱暴に開かれる。

ジョースター家のお姫様がお冠の表情で入ってきた。

 

静「ハッチ!おいてくなっつー………なにこの部屋!さむっ!雪ノ下!?いくら暑いからってこれは寒すぎ!」

 

口癖の『つーの』が不発に終わる。そりゃあここまで寒けりゃな…。

 

雪乃「私の意思ではないわ。ジョセフさんの指示よ」

 

静「パパ!暑いの苦手だからってこれは寒すぎだから!風邪をひくから!」

 

ですよねー。

 

いろは&小町「こんにち……さむっ!」

 

おくれてやってきたいろは達も入ってくるなり悲鳴をあげる。

 

いろは「み、三浦先輩呼んできます!これは寒すぎですよー!」

 

いろはがダッシュして三浦を呼びに行った。

その手があったか。

 

ジョセフ「このくらいが丁度良いと思うんじゃがのう」

 

小町「限度があるでしょ限度が!暑いの苦手なら家から出てこなきゃ良いじゃんか!」

 

早く三浦、来ないかな………。

 

キングクリムゾン!

 

三浦「部屋を暖めろとかこの暑い日に我慢大会でもやるのかと正気を疑ったけど、ジョースターさん。あれはやりすぎだし」

 

八幡「三浦は冬場は気を付けた方がいいな。ストーブ代わりにされるぞ」

 

三浦「ジョースターさんならやりかねないし」

 

徐倫「ヤレヤレだわ」

 

GDstジャケットを羽織った徐倫もガタガタ震えている。それ寄越せ、俺も寒い。

部屋の温度を下げるために窓を開けるのはよくやるけど、逆は滅多に聞かないよな…。

一方、雪ノ下は不機嫌そうに建設学の論文を見ていた。

みんなに責められたからという訳でもなさそうだが…。

まぁ、いきなり冷蔵庫のような部室に放り込まれた俺達全員が不機嫌なのだが。

あー!結露で書類がぁぁぁ!

 

結衣「やっは……さむぅ!なにこの気温!」

 

室温な?

普段なら真夏みたいな暑苦しい挨拶も、今日は不発に終わる。

 

結衣「暑いところから一気に寒い所に入ったから寒すぎるよー!」

 

席に着くなり由比ヶ浜は肩を抱いてガタガタ震える。いや、これでも三浦のお陰でさっきよりはだいぶマシになってるんだぞ?

結露で濡れた書類をプリントアウトしようとするが…ダメだ。部屋の紙という紙が全滅だ。今日は仕事になりそうもないな。ラッキー♪

………な訳がない。ノルマがこなせなくて困る!

ああ、雪ノ下が特に不機嫌な理由はこれか。

 

結衣「ゆきのんどうしたの?っていうか、ヒッキーもスタッチもいろはちゃんも小町ちゃんもどうしたの?」

 

いろは「仕事にならないんですよー!ジョセフのバカーーー!」

 

結衣「この寒さはジョセフさんの仕業だったの!?」

 

八幡「それと雪ノ下な。ただでさえ湿度が高いのをエンジェル・ダストで温度を下げたから結露を起こして紙が全滅したんだが、それで本がふにゃふにゃになったから機嫌が悪くなってるんだよ」

 

結衣「あー、湿気ね。あたしも髪がうまくまとまんなくてさー。ホントウザい」

 

論文の本をそっとなで、ため息を吐く雪ノ下。半分はお前のせいなんだからな?あと、由比ヶ浜。紙と髪を間違えるなんてコテコテなボケを……。

 

雪乃「まとまらない?私は逆ね。紙が湿気でたわんだりくっついたりして……すごくストレスを感じるわ」

 

お前もか…ブルータス。

 

結衣「えー?そんなことないよー」

 

言うと由比ヶ浜は立ち上がり、雪ノ下の背後に回る。怪訝そうな雪ノ下をよそに、雪ノ下の髪をさらりと撫でた。

 

結衣「超さらさら。あー、でもちょっと暑そうかも」

 

今は寒い……いや、三浦のお陰でだいぶマシになったか。

雪ノ下の髪はさらさらなのか。確かにジョジョといい勝負かもな。

 

雪乃「……由比ヶ浜さん?何をしているのかしら?」

 

結衣「んーっと、あった」

 

由比ヶ浜はポケットをごそごそやっていたが、何かを見つけ出した。ヘアゴムか。

さらに鞄に手を伸ばしてブラシを取り出し、丁寧にゆっくりすく。鼻歌を歌いながら雪ノ下の髪を纏める光景は、仗助の髪を手入れするときのジョジョに似ている。

最後に雪ノ下は雪ノ下の髪をお団子に纏める。

 

結衣「完成!…ちょっとお揃いっぽいかも」

 

八幡「お揃いっていうかパチモンくさいな」

 

いろは「言い方にトゲがありません?」

 

特に悪意は無いんだけどね?

 

結衣「よし!同じ髪質っぽいスタッチも……」

 

同じようにジョジョの髪を弄くろうとする由比ヶ浜だが、そこはジョジョ…。

 

いろは「ジョジョ先輩、徐倫っぽいですねー。似合ってますよー?」

 

静「そう?ありがと♪ダブルお団子で徐倫お姉ちゃんっぽくやってみた。後ろに編んだ三つ編みがポイントだよねー」

 

徐倫「似合ってるけど、複雑な気分ね……」

 

先手を打って徐倫っぽく纏めていた。ジョースター家の人間はヘアスタイルに拘りがあるからな。

 

八幡「由比ヶ浜。ジョースターの人間の髪型を勝手に弄ろうとすると地獄を見るぞ。特に仗助やジョルノ。かくいう俺も拘りがある」

 

結衣「そうなの?ちょっとボサボサ気味なのに?」

 

ふ……甘いな。

 

八幡「アホ毛の形には常に気を配っている!承太郎スタイルの場合でも滅多に帽子は被らん!」

 

結衣「そこ!?拘るのはそこなの!?」

 

バッカ!俺の最大の特徴じゃあないか!下手にアホ毛に触れてみろ!ただじゃあおかないからな!

ちなみに小町もアホ毛の形には拘りがある。いろはもただのセミロングっぽいが、何気に長い時間をかけて整えている。

時折エリナスタイルに変えてるくらいか?あま色の髪が光に当たると金髪っぽく見えると、ホントに綺麗なんだよ。

……と、浸っていると、承太郎が絡んできた。

 

承太郎「バカ野郎。その帽子がポイントなんじゃあないか」

 

八幡「バッカ!アホ毛が隠れるだろうが!かと言って帽子に穴を開けたくないしな……。レプリカの方は穴を開けてるが」

 

むしろ承太郎学ランの魅力は襟から垂れている鎖にカッコ良さを感じる。

 

雪乃「髪型に拘りがあるジョースター家の人達は放っておくとして……由比ヶ浜さん?何故髪を?」

 

問われて由比ヶ浜がパチパチと目をしばたたかせる。

 

結衣「え?髪が鬱陶しくてイライラーって話じゃあなかった?」

 

雪乃「私が話していたのは、これのことよ」

 

雪ノ下は机の上の論文集を指差して続ける。

 

雪乃「湿気で本が痛むし、そのうち虫干しするのも手間だし」

 

三浦「へー。本の管理って大変なんだね」

 

半月後、異世界の魔法使いに図書館の司書に説教する時にこの知識が役に立つが、それは別の話だ。

 

結衣「あ、そうだったんだ。てっきり……」

 

由比ヶ浜がたははと笑いながら頭を掻いた。

紙と髪だけに噛み合ってなかったと。神よ、お陰で下らん事で承太郎とケンカになったじゃあないか!

 

S・P「オラオラオラオラオラ!」

 

G・S「無駄無駄無駄無駄無駄!」

 

そして俺達は殴り合いに発展している。多少の失礼が加味されていたとしてもこれは発展しすぎじゃね?

そんな時だった。扉がノックされ、一人の来客があったのは。だが、殴り合いに夢中で誰も気付いていない。

 

男「しれっしゃっす」

 

S・P「オラァ!」

 

G・S「無駄ぁ!」

 

男1「げふぅ!」

 

男2「タコス!」

 

男3「アベシ!」

 

スター・プラチナとザ・ジェムストーンの拳が来客の男の顔面をサンドイッチにする。

誰だ。一人だけ北斗してるのは。

 

承太郎「む?一般人を巻き込んでしまったか」

 

八幡「ったく、承太郎のせいで……」

 

承太郎「あ?」

 

八幡「お?」

 

いろは「いい加減にしてくださいよー!エメラルド・ストライーーク!無理無理無理無理!」

※この頃はまだエメラルド・エクセスは編み出していません。

 

承太郎&八幡「ぐはぁ!」

 

比企谷八幡(ザ・ジェムストーン)…再起不能(リタイア)

空条承太郎(スター・プラチナ)…再起不能(リタイア)

依頼者の男たち…再起不能(リタイア)

 

←To be continued




今回はここまでです。


それでは原作との相違点

特別棟が涼しいのは日照の問題と雪ノ下の雰囲気→ジョセフの依頼で雪ノ下がエンジェル・ダストで冷やしていた

雪ノ下の不機嫌な様子にたじろいで八幡はお疲れさんという→純粋にジョセフにこきつかわれてる雪ノ下に労いの声をかける。

若さゆえの潤いの引き合いに平塚先生を出す→この頃は休職中。代わりに徐倫を出すが、徐倫だってまだまだ年頃です。

由比ヶ浜は暑さで制服の胸元をパタパタとやる→エンジェル・ダストによって寒くなっているので肩を抱いて震えている。サービスシーンはカット。

由比ヶ浜の服装はカット。ヒロインじゃあないですし。

由比ヶ浜は雪ノ下の髪をお団子に纏め、お揃いにする→更に静の髪をお団子に纏めようとしたが、静は先手を打って徐倫っぽく纏める。

八幡はあまり髪型に拘っていないようにみえる→アホ毛に拘りを持っている

男のノックに返事をし、雪ノ下は普通に返事をする→八幡と承太郎の殴り愛でそれどころではなく、勝手に入ってきた男は近距離パワー型スタンドの拳にサンドイッチされる

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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