やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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アウトソーシング

side比企谷八幡

 

窓の外では夕日が輝いていた。

秋も深まり、日が短くなっているのだ。

人間、日が短くなると気も短くなるようで、会議室の空気はいつの間にやら最悪になっていた。長時間の会議で一同ぐでっとなっている。

わかる!わかるぞ!だって会社でもそうだもの!しかもこんな風に一向に活路が見出だせない時なんて特にね!

しかも、締め切りが近い別の仕事がある時にこれだったりすると、もう何でも良いから早く終われよ!となるものな。こんなことをしている場合じゃあない……て。

飽きて携帯をいじったり、虚ろな目でボーッとしてたり、プリントでパタパタ扇いでたりと、運営委員会の面々は不機嫌そうである。

 

めぐり「うう……もし、他に意見あったら、ど、どうですかぁ……他に無いですかぁ?」

 

めぐり先輩が疲れきった声で言うが、皆の反応も鈍い。

相模の「他にありませんか~」という声にも誰もリアクションを返すことが出来なかった。進行役の二人が切れ切れの声を出している中、担当の朋子さんや徐倫はずっと沈黙を守っていた。何だよ徐倫!元気なのはツッコミの時だけなのか?

俺の失礼な思念が届いてしまったのか、徐倫は俺の方をちらりと見てくる。

どうにかしろってことなのだろう。

思わずため息が漏れる。

 

静「こりゃ、決まんないね」

 

ジョジョに続いたのはいろはだった。

 

いろは「思っていた以上にアイデアが貧困でしたね」

 

結衣「何か言っても反対する意見の方が多いくらいだし、ヒッキーやスタッチの意見は論外だし」

 

そりゃあ、俺達の場合はあれすぎる小中学生の体育祭だったしな。

何度も提案していた由比ヶ浜だが、そのたびに各所から否定的な意見が相次いでいた。

俺達奉仕部側もこの会議には諦めモードである。ドンパチなら結構、色んな手を考え付くが、こう言うのは中々出てこないんだよなー。

これなら、いっそ打ち切る事も視野に入れるべきなのだろう。ダメな会議はそうすることも手だ。

 

いろは「わたし達が考えるのは無理無理無理無理」

 

八幡「考えるだけ無駄無駄無駄無駄」

 

結衣「うわぁぁぁぁ……完全に諦めモードだ」

 

静「もう打つ手が思い浮かばないのドラララララ」

 

徐倫「オラオラオラオラ、少しは考えなさいよ!」

 

朋子「空条先生までふざけないで下さい!」

 

スタンドの掛け声で気分転換するくらいには本気で諦めモードに突入していた。

だが、考えるんだ。ドンパチでもそうだろ?相性が悪い相手が敵だとしたらどうするか?味方の適任の奴に任せるのである。例えば二度目のストーンオーシャンの時でのデラウェアではどうしたか…。俺は雪ノ下を見る。

あの世界のラバーソールにはあの世界の雪ノ下が相性良かった(4-1参照)。四年前からの付き合いのアイツとは相手が悪くても、俺だったら相手が良かったあの上院議員の例もある(4-5参照)。

アイデアや仕事でも同じだ。出来る奴に任せれば良い。親鸞上人も言っていたではないか。他力本願…と。

 

八幡「あれだ。適材適所という奴だな」

 

雪乃「確かに大事な考え方ではあるわね」

 

そうそう、この考え方は大事。

強いからといったって、毎回小町やジジイが勝てる訳じゃあない。一切合切を押し付けられたところで何度死にかけたかわからない。それに、出来るからと言ったって、やりたい訳じゃあないということをもう少し考えるべきだと思う。特にSPW財団や奉仕部。

そんな溜まりに溜まったストレスがつい口からまろびでる。

 

八幡「まぁ、できる奴は組織に使い潰されるのが世の常だ。そのくせ大して給料上がんねーんだからアホらしくなる」

 

徐倫「わかる!わかるわよ!いくらアホ二人を止められるからってやりたい訳じゃあ無いんだよ!」

 

いきなり徐倫が頭を抱えて嘆き始める。

 

八幡「だろぅ!?組織ももう少し考えて欲しいですよね?空条先生!」

 

静「空条先生がここまで嘆くなんて……そんな問題児がいるなんて世の中どうなってるんですか!」

 

徐倫「お前らの事だ!お前らの!」

 

雪乃「何故かしら……共感してはいけない事なのに、激しく共感してしまうのだけれど…」

 

他の生徒が徐倫に同情の眼差しを向けるなか、雪ノ下も徐倫に同情し、俺達に冷たい視線を突き立てる。ちゃんと優しい心を持っていて偉いなぁ。誰か早く徐倫を楽にさせてあげないと胃が壊れるよ?早く誰か代わってあげて!俺達が性格を直せ?そんな事は考えるのは無駄なんだ。徐倫いじりはもはやライフワーク!つまり俺達は直す事を考えるのは止めた…。

そんなことよりもだ、この状況を打破するのが先じゃあないか?(問題点の意識ずらし)

 

八幡「出来ないことを出来ない奴がやっても無駄なんだ。無駄無駄。その道のプロを呼んだ方がいい」

 

静「ああ、そういうことね?ワークシェアリングってやつでしょ?アウトソーシングとも言えるね?」

 

元々アメリカ育ちのジョジョが横文字を羅列する。

 

結衣「なんか良くわからないけど凄そう」

 

お前、すぐに人に騙されそうな奴だな。一方で他の奴等は頭を抱える。

 

いろは「何か違うと思うような気がするんですけど…口が回るのはジョセフゆずりですかね~……」

 

雪乃「よくもまぁ、それっぽい単語を次から次へと…ジョースターさんか言うと更に補強されるから不思議に思えるわ。物は言いようね」

 

ため息をつくいろはと雪ノ下の横で、がばちょっとめぐり先輩が起き上がった。

 

めぐり「でも、露伴ちゃんもそんな感じだし、時には東方会長とも上手くやるよね!信じて任せる事も大事だよ!」

 

力強い賛成をいただき、俺もコクりと頷き返すと、相棒の方へ向き直る。

 

八幡「ジョジョ!」

 

静「ベネ!」

 

声をかけるとすぐさまジョジョが答えた。わずかなやり取りであったものの、俺の考えていることは十二分に伝わる。だからこその相棒だ!

 

静「めぐり先輩。外部スタッフとしてアドバイザーを召集したいと思います!」

 

そう言われためぐり先輩が目をしばたたかせる。

 

めぐり「アドバイザー?」

 

結衣「……ばいざー?」

 

由比ヶ浜……お前、そこまでアレなのか?

 

八幡「俺達だけで結論出せない会議しても無駄無駄無駄無駄ぁ!ここらで専門家の意見を聞いてみるってことで良いんじゃあないですか?」

 

俺が言い添えるとめぐり先輩がにこっと微笑んだ。

 

めぐり「そうだね。手伝って貰えるなら嬉しいかも♪ね?相模さん?」

 

委員長の相模に意思確認をするめぐり先輩。相模もそこで頭を巡らせ、めぐり先輩に頷く。

 

相模「はい。そうですね?あんまりいい意見も出ないですし……」

 

相模も現状の認識はできている。ここで断る理由もない。この会議に参加していた者ならば大抵の人間が同じ事をいうはずだ。

だが、相模が言った後、ひそり、と。

水に一滴の墨汁を落としたような囁きが聞こえた。声帯を震わせない無声音。決して響くわけでは無いが、俺の耳には確かに残った。

波紋の戦士ゆえか、それともわずかな音すらも聞き逃すことが命に直結するから故か…

小さな音すらも、俺達は聞き逃さない。

 

めぐり「東方先生」

 

が、それもめぐり先輩の声で掻き消される。めぐり先輩は視線を朋子さんの方へとスライドさせた。

それを受けると、朋子さんはええと頷く。

それを受けて、俺は由比ヶ浜へと向き直る。

 

八幡「いろはと由比ヶ浜」

 

いろは「はい?」

 

結衣「はぇ?」

 

呼ばれて由比ヶ浜は自分の事を指差して目をパチクリさせた。

ちょいちょいと手招くと、二人は椅子を横に動かして上体を俺の方に寄ってくる。

案外近いな。由比ヶ浜一人でもよかったが、いろはを同時に呼んで正解だった。由花子さん召喚は避けられたか…。

俺は二人に要件を話す。

 

結衣「え?だったらあたし一人でもよくなかった?って言うか、ヒッキーが呼べば良かったじゃん」

 

面倒なんだよなー…二人とも。

特に未来の親戚が。

 

いろは「おじさんを?まぁ、良いですけど…」

 

携帯を片手に二人が会議室の外へと出ていく。

俺はそれを見送ると、疲れた体を椅子に深く沈み込ませた。

 

←To be continued

 


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