その事にも触れていこうと思います。
side比企谷八幡
康一「大変だよ!相模さんに付いていた護衛から連絡が来た!奉仕部の面々が船橋駅周辺で突然姿を消したんだって!これは絶対にウルフスのスタンド使いの仕業だよ!」
陽乃「八幡君!雪乃ちゃんが!雪乃ちゃんが!」
突然扉を開けて支部長室に飛び込んで来た康一さんと陽乃さん。
いろは「ハチ君……」
八幡「ああ……落ち着いて下さい。康一さん、陽乃さん。慌てても始まりませんよ」
康一「わかってるよ!でも康穂も今日は一緒だったんだ!心配するのは当たり前じゃあないか!」
気持ちはわかる。俺だっていろはや小町がそんなことになったら、とても焦るだろう。
それに、康穂だって大切な本物の一人だ。
……が、陽乃さんがこうまで慌てると、逆に一回りして冷静になってしまう。
八幡「敵は神隠し系の能力かも知れませんね」
いきなり始末される系の能力ならば、本丸であるここを攻撃してくるだろう。そうはしなかったのは、恐らくは敵をどこかに隔離するタイプの能力である可能性が高い。楽観視は出来ないが、俺はそれほど焦ってはいなかった。
いろは「だとしたら、康穂ちゃんがいたのは幸運かも知れません」
そう、康穂の存在だ。
康穂がいるならば、その手の能力は意味を成さなくなる。
小町「でも、大丈夫かなぁ……康穂ちゃんの能力って、普通の人にはあまり理解されないよね……」
だろうな。だからこそ、スタンド使いの仲間同士でも、康穂は中々理解されなかった。
康一「そうだね……親である僕達でも、最初は理解出来なかったっけ……」
特に気が長い方じゃあない由花子さんなんては、康穂の能力ほ余計理解できなかっただろう。
それ故に康穂は子供の頃は心を閉ざしていた感じがある。ある種の諦めにも近い感情があった。
もし康穂が力を使っているのならば、今頃奉仕部の面々はイライラしている頃だろうな。
side戸塚彩加
P・P「ヤスホ…コッチ…」
康穂「わかった」
海老名「………流石にイライラしてきたかな?」
口には出さないけど、僕もイライラしていた。
だって、同じ所をぐるぐる回ったり、来た道を引き返したり、選択肢が出てきたと思ったら、鈎爪を選択した康穂ちゃんの前に人数分の鈎爪が出て来て建物をロッククライミングさせられるし、かと思えば今度はそれをトランポリンで飛び降りたり……。
何がしたいのかまるっきりわからなかった。
康穂「……な……………う」
戸塚「え?」
小さくて聞き取れなかったけど、
康穂「みんな……いつもそう。あたし、言ったよね?どんなに無意味と思える行動でも信じてって。ペイズリー・パークの能力はね、その時、その目的に応じた場所までリアルタイムに、安全にナビゲーションする能力。ハッチだけが信じてくれた能力。ハッチがその観察眼で解き明かしてくれた能力。そして、それがあたしがハッチの事を諦めきれない理由」
八幡が………?
康穂ちゃんが八幡に固執する理由が……スタンド使いの理解されない理由の他にもあった?
康穂「ついでだから話してあげるよ。どうせ理解されないだろうから、話さなかったあたしとハッチの出会いを……」
そこから康穂ちゃんはポツリポツリと話し始めた。
side広瀬康穂
「やすほちゃんのほうこうおんち~!」
「なんでもどるの~?やすほちゃんってバカなんだ~」
康穂「だって、ペイズリー・パークがこっちだって」
「またぺいずりーぱーく!やすほちゃんのうそがはじまったー!」
「もうおいていこーよ!やすほちゃんなんてほうっておいてさー!」
いつもこうだった。
あたしのスタンド、ペイズリー・パークがいう道を行こうとすると、みんな怒って最後には置いてきぼりにされちゃっていた。
パパやママも、あたしがペイズリー・パークの事を言っても……
康一「康穂のスタンドの道って、よくわからないんだよね。それに、変なところを通らされるし」
由花子「康穂?ダメよ?スタンド能力ばかり頼っちゃ」
と、スタンドの事をわかっていても、ペイズリー・パークの事はわかってくれない。あたしもペイズリー・パークが何でその道を示すのか、当時はわからなかった。
そして、こんな思いをさせるペイズリー・パークの事が嫌いだった。
今のペイズリー・パークでも戦闘能力は無いに等しい。それが子供の頃のペイズリー・パークの基本スペックなんて推して知るべしってやつだよね。
パパのエコーズやママのラブ・デラックスみたいに強くないし、意味もわからない。見た目も気持ち悪い。
もう消えてなくなりたい…そんな事を思っていた頃のある日の夜、パパ達が話しているのが聞こえた。
由花子「ねぇ、康一さん。康穂の事だけど、最近前にも増して暗くなっちゃったわよね?」
康一「うん……ペイズリー・パークの事で悩んでいるんだと思う。ほら、ジョースターさんや承太郎さんもスタンドが発現したばかりの頃は苦労したって言ってたでしょ?康穂もそうだと思う」
由花子「あたしのラブ・デラックスは分かりやすかったし、便利な能力だったし、何より同じスタンド使いの康一さんとすぐに出会えたから悩まなくて済んだけど…」
康一「僕もだよ。スタンド能力を得る前から仗助君達と関わっていたから、わりと直ぐに受け入れられたし、能力も分かりやすくて助かった。だけど、康穂のは…」
由花子「壊れたカーナビって感じよね…」
パパとママがため息をつくのがわかった。
あたしがスタンド使いじゃあなければ、みんな幸せのままでいられたのかな…。
康一「でも、このままじゃあいけないんだ。今のままじゃあ、康穂は壊れちゃう。僕達のかわいい娘が、閉じこもってしまう。あの承太郎さんだって、スタンドを制御出来なかった頃は留置所に入ってオカルトの事を研究しつくすまで外に出ようとしなかったんだ。幼い康穂じゃあ、いずれ押し潰されてしまうかも知れない。仗助君だって、幼い頃はスタンドの悪影響で熱を出して死にかけていたんだ。DIOのせいってのもあったけれど、スタンド能力は強い意思を持っていなければ、死んでしまうケースもある……」
そうなっても良い。あたしがいるからパパ達は悲しむんだ。あたしがいなくなればきっと……。
由花子「康穂が死ぬ!?そんなの嫌よ!どうにかならないの!?康一さん!」
康一「一か八か……だけど、一つだけ……承太郎さんに相談した時に提案されたんだ」
由花子「流石は康一さんね!既に承太郎さんに連絡していたなんて。それで、どんな方法なの?」
康一「………比企谷君に……比企谷八幡君に会わせてみようと思う」
由花子「比企谷八幡……って、あのDIOの転生の!?ダメよ!康穂が悪に走ったらどうするの!?承太郎さんは何を考えているのよ!承太郎さんか、ジョースターさんが康穂を見れば良いじゃない!」
DIOって、パパの友達の仗助さんが死にかけた原因っていう人?話を聞く限りではとても怖いイメージしかなかった。
後で聞いたところ、当時はジョースターの人達は誰も日本にはおらず、そういうのが得意そうなのはハッチだけしかいなかったみたい。
康一「でも、比企谷君は悪い子じゃあないよ?少なくとも、今は……。それに、あの子なら……DIOだったあの子なら、康穂の能力の本当の意味を見出だしてくれるかも知れない。だってDIOは、ラバーズやバステト女神のような一見何の意味も無さそうなスタンドだって、その使い方を思い付く人間だったんだ…そのDIOの生まれ代わりなら……康穂の事を救ってくれるかも知れないと思う。康穂よりも2つしか変わらないのに、仗助君や僕を負かしちゃった凄い子供なんだから」
由花子「………そう。康一さんが言うなら、信じてみるわ。その比企谷八幡君を……でも、それで余計に康穂が壊れてしまったら……あたしは比企谷八幡を殺すわ!」
康一「ゆ、由花子さん……落ち着いて……ね?」
パパに勝っちゃうような人に会う。あたしは凄く怖かった。だけど、そんな人ならばあたしを消してくれるかも知れない…。それほど、当時のあたしは壊れていた。
…………
康一「比企谷君、小町ちゃん、いろはちゃん。紹介するね?僕の娘、康穂だよ?」
その次の日曜日。あたしはパパに連れられて、千葉の稲毛にある比企谷家にお邪魔した。
八幡「比企谷八幡だ。よろしくな?広瀬」
小町「カワイイ!友達になろうよ!康穂ちゃん!康穂ちゃんもスタンド使いなんだよね!小町は比企谷小町だよ?よろしね!」
いろは「わたし達もスタンド使いなんですー。わたしは一色いろは。よろしくね?」
比企谷家にいた3人、ハッチ達があたしを見る。マーチとイーハは女のあたしから見てもカワイイ女の子だった。だけど、あたしはハッチは…怖かった。
今でこそ愛嬌ある目だと思うけど、ハッチ本人も嫌がるあの腐った目が……あたしは怖かった。
康穂「ぅぅ……」
八幡「康一さん。あと、由花子さん…でしたっけ?だから言ったじゃあ無いですか。俺なんかに会わせたら、普通の女の子は怖がって近付かないって」
康一「まぁ、そうなんだけどね?」
由花子「あんた、使えないわね」
八幡「由花子さん、思っていてもそれ言う!?普通、わずか六歳のいたいけな子供にそんな辛辣な事を言っちゃうって何!?虐待!?俺の精神が子供だったら、そのまま心に傷を負って引きこもりますよ!?ヒッキー谷ニート幡になっちゃいますよ!?」
ハッチが泣きながらママに抗議した。あ、何かシンパシーを感じる。
康穂「……はちまんくん。あたし……やすほ」
八幡「お?おう……で、これが俺のザ・ワールドだ。それともうひとつはハーミット・パープル・ネオな。広瀬のスタンドは?」
ハッチが黄色いバケツを被ったような黄色いスタンド、ザ・ワールドを出す。クレイジー・ダイヤモンドに似てなくも無いけど、本人同様に目付きが悪かった。
康穂「ペイズリー・パーク……」
あたしもスタンドを出してみる。どうせ気持ち悪がられるだろう……そう思ったけど……
八幡「これは……地図?地図が書いてある人型スタンドか?……なるほど……」
ハッチは興味深げにペイズリー・パークを見る。
康穂「気持ち悪くないの?ペイズリー・パークが」
八幡「ん?いや?もっと気持ち悪いスタンドなんていくらでもいるからな。ヴァニラアイスのクリームとか。そんなのに比べたら普通のスタンドじゃね?パープル・ヘイズとかヤバいスタンドだっていくらでもいるし」
美味しそうな名前だった。後で資料で知ったらマーチを殺しかけた酷いスタンドだったけど。
それに、こんな変な形のスタンドなのに、ハッチは普通といってのけた。
八幡「広瀬。もしかしたらお前、自分のスタンドが嫌いなのか?」
康穂「………うん……」
八幡「康一さん……そういう事ですか……俺に会わせた理由は………」
由花子「察しの良すぎる可愛いげの無いガキね?」
八幡「だから何で普通に子供の心を折りにかかるんですかねぇ!やめて下さいよ!俺だって人並みには傷付くんですからね!?」
普通なら怖がってツッコミなんて入れる人なんて大人でもいないママに全力でツッコミを入れるハッチ。それだけでも当時のあたしは興味を惹かれる。
八幡「取りあえず、遊びに行こう」
ハッチがそう言った。パパが…
康一「よろしくね?比企谷君」
八幡「あまり期待しないで下さいよ?そういうの、今の俺は得意じゃあ無いんですから」
康一「君の本質に…だよ?期待してるのは。君の観察力には、僕も一目置いてるんだ」
八幡「よくわかんないんですけど?」
康一「とにかく、よろしくね?」
八幡「はぁ………」
返事ともため息とも取れる返事をした。
そして、あたしたちは遊びに出掛けた訳だけど…。
何て言うか、マーチとイーハはパパやママと同じだった。道の歩き方とか、そういうので…戻ったり回り道をしたりするあたしの行動が理解できなくて困っている…という種類の愛想笑い。だけど、ハッチだけは違った。深く、何かを考え込んでいた。
八幡「………なぁ広瀬。お前、これまで帰るときとかに転んだりとかしたこと、あったか?」
康穂「??無いよ?何で?」
八幡「…なるほど……もしかしたらお前の能力は…」
康一「比企谷君?わかったの?」
八幡「確信は持てないから何とも言えないですが…もし予想通りなら、無敵ですよ。広瀬の能力は…」
康一「無敵?ペイズリー・パークは強くないよ?」
八幡「そう言った意味での無敵じゃあ無いんですよ。本当の意味での無敵と言うのは」
一同「???」
八幡「杜王町の吉良吉影と言う男は……キラー・クイーンではなく、こういう能力だったら…植物のような平穏な人生を送れたかも知れませんね。そして……ディオも」
康一「比企谷君?」
八幡「わかるまで、頻繁に会わせてもらって良いですか?康一さん」
珍しい…と思った。あたしのペイズリー・パークのこれを知って、また会いたいと思う人がいるなんて…。保育園の先生だって、気味悪がるのに…。
いろは「ハチ君?……まさか浮気?」
由花子「浮気?浮気ですって!?浮気は許さないわよ!」
八幡「ちげえから!あと何で由花子さんは態度が豹変してるんですか!怖いですから!あと怖いです!」
ママ……いつも浮気はダメとかいってたけど、何だろう?と、当時は思った。だけど、この変なお兄ちゃんには、あたしも強く興味を持った。だって、同じスタンド使いでも変に思われるあたしの能力を…こんな弱いスタンドを「無敵」なんて言う人がいるなんて…あたしは知らなかった。それがお世辞とかじゃあないってのも、子供の直感でわかった。
それからは何度かパパはハッチと会わせるようになった。そして、どこか苦手意識を持つイーハとマーチはあたしと遊ばなくなったが、ハッチだけは付き合ってくれた。そして、あたしがどんなに回り道をしても、元来た道を戻っても、時には他人の家の屋根を伝っても、いきなり走ったり、止まったりしても、文句の1つも言わずにそれに付き合ってくれた。
嬉しく思う反面、どうして?とも思う。その度にハッチは笑って、「そこに意味がある。広瀬にもわからない何か重要な意味があるんだ。多分、コントロールが出来てないから些細な事でも反応してしまうんだろうな。安心しろよ。ペイズリー・パークは素晴らしいスタンドだ。本当に無敵のスタンドだよ」と言う。
わからない。だけど、ハッチは一生懸命にあたしのペイズリー・パークの事を考えてくれている。そして、あたし以上に理解してくれている。
それが何故だか、嬉しかった。
そんな時だ。事件が起きたのは。
当時はまだ東京にあった日本支部。パパが仕事に行っていた時に、日本支部に立て籠り事件が発生した。
スタンド使いによるビルジャック事件。
そこにパパが巻き込まれた。
康穂「パパ……」
八幡「広瀬。康一さんを助けたいか?」
康穂「八幡君…。うん。助けたい…パパを助けたい!」
八幡「そうか。助けてやる。それにはお前の力が必要だ。ペイズリー・パークの力がな」
康穂「ペイズリー・パークの?どうして?」
八幡「ペイズリー・パークの能力はな…目的の場所まで、確実に、安全に康穂や仲間をナビゲーションする能力だと思っている。それがペイズリー・パークの無敵の力なんだ」
康穂「???わからない……あたしには何を言ってるのかわからないよ!何でそれが無敵の能力なの?」
八幡「無敵というのは、最強……っていう意味じゃあない。敵に会わない、危険を回避する……そういうのが本当の無敵。文字通り、敵が無い…故に「無敵」。ある漫画で言っていたがな?敵がこうしてきたから、こうする。対処する…なんてことは、護身においては下の下。真の護身というのは、そもそもそういう事態に遭遇しない、危険と言う場所に辿り着く事がない。身を護る事態にそもそも陥らない。それが究極の護身なんだ。ペイズリー・パークの力は、どんな些細な危険からも、広瀬を安全に進ませる道を、どんな時でも示していたんだ。こんな究極の守り神はいないぞ?広瀬。躓いて転んだ事なんて1度も無かったんだろ?そんな子供、世界のどこを探したってないぞ?」
康穂「ペイズリー・パークはいつもあたしを守っていたの?あの変な道案内も?」
八幡「ああ。俺達みたいな子供はな?転ぶんだよ。例え波紋の戦士でもな。なのに、広瀬は転ばなかった。変な道を進んで遠回りしても、転ばなかった。さっきまでは安全だった道も、ペイズリー・パークが引き返せと言った段階で、それは安全な道じゃあ無くなっていた。どこまでの危険かはわからない。だが、少しでも広瀬が痛い思いをすることがない道を広瀬のスタンドは選んでいたんだ。それを今度は康一さんと、俺の為に使うんだ。その力がペイズリー・パークにはある!」
康穂「八幡君……できるの?ペイズリー・パークに…あたしにパパを助ける力が……」
八幡「ある。何、違っていても俺が広瀬や康一さんを守ってやるさ。さぁ、どうする?広瀬」
康穂「康穂…」
八幡「ん?」
康穂「広瀬じゃあない。康穂だよ?八幡君はパパやママを名前で呼ぶくせに、何であたしは広瀬なの?康穂って呼んでよ」
八幡「いや……俺は」
康穂「康穂!いろはちゃんや小町ちゃんのように名前で呼んで!じゃないと、覚悟が決められない!あたしに勇気をちょうだい!ハッチ!」
あたしは前に会ったことがある静・ジョースターちゃんが八幡君をそう呼んでいた事を思い出した。
その時から、あたしは八幡君をハッチと呼ぶことにした。
八幡「わかった。康穂。覚悟は出来たか?俺は出来ている」
康穂「うん!あたしも勇気が出てきたよ!ハッチ!」
八幡「良い覚悟だ。覚悟を決めた者は美しい。お前は今、美しいくらいに輝いているぞ?康穂!」
康穂「え?」
八幡「行くぞ!最初はどういく?」
康穂「う、うん……こっち!こっちだよ?ハッチ!」
そこからは凄かった。階段を降りたり登ったり、無意味にトイレに入ったり、ダクトを通るとかは当たり前。それも普通ならはしごとか使わないと無理な場所を…
八幡「あそこを通るんだな?しっかり捕まってろ?ハーミット・パープル・ネオ!」
と言ってスタンドをロープ代わりに使って登った。いばらのスタンドの応用力にビックリした。
八幡「壁を伝って一気に二階分登るんだな?ザ・ワールド!康穂を抱えた俺を……あそこまで投げる!」
と言って自分のスタンドで自分を投げた。近距離パワー型の力を初めて知った。
八幡「隣のビルの窓を通れ?距離は10メートル程か。楽勝!ピょっ!」
っと言って助走なしで道路を挟んだ隣のビルにジャンプした。波紋の戦士は化け物だと思った。
八幡「50メートルを一秒で走れ?任せろ!ザ・ワールド!時よ止まれ!」
と言って次の瞬間には指定された場所まで瞬間移動していた。きっちり一秒後に。時を止める能力というのを初めて体感した。
康穂(凄い……ハッチ凄い!この人こそヒーローだ!あたしの王子様だ!)
もうこの時にはハッチに恋していたのかも知れない。
そして……パパ達が捕まってるオフィスに到着すると…
八幡「おや?捕まってる人質の見張りが誰もいない」
康一「比企谷君!康穂まで!」
八幡「康一さん。敵は?」
康一「いま、トイレに行ってる」
八幡「アホな犯人だな。さては素人だな?オムツぐらい付けとけよ。付けてなくとも、ここで済ませろよ。じゃあ、もうここは大丈夫だな?凄いな、俺の思った通りだよ、康穂。お前のペイズリー・パークは……無敵のスタンドだ。後は俺が犯人を始末してやる……仗助の親友をひどい目に遭わせたツケは…払ってもらう!」
そう言ってハッチは鍵を内側から掛け、パパの拘束を解く。やった!パパが自由になった!
八幡「康穂。最後に敵を倒すの為に最適な道は?」
康穂「う、うん…あれ?ハッチにペイズリー・パークが取りついた?」
八幡「ありがたい。遠隔操作型でもあり、他人の道まで示すことができるのか……凄いな、ペイズリー・パークは」
康一「比企谷君……いや、八幡君。僕のエコーズも一緒に行くよ。囮なら任せて!」
八幡「助かります。じゃあ、行ってきま~す♪」
ハッチはパパのエコーズact1を伴ってペイズリー・パークが示す道…ダクトを通って部屋から出て行った……
康一「康穂……どうしてこんな危ない事を?」
康穂「ハッチに頼まれたんだよ?ハッチがパパを助けるためにペイズリー・パークの力が必要だって!」
康一「ペイズリー・パークの力が?わかったの?康穂の能力が」
康穂「うん!ハッチが教えてくれたんだ!パパ!ありがとう!ハッチに会わせてくれて!あたし、ペイズリー・パークが嫌いだった!だけど、ハッチのお陰で好きになった!あたし、もう自分のスタンドが嫌いじゃあないよ!」
康一「そうなんだ……流石は八幡君だよね……って、ちょっとぉ!?八幡君!?」
遠くから、ハッチの声が聞こえた。
T・W「WRYYYYY!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無敵無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!無駄ぁ!」
康一「やり過ぎだよ……。八幡君………」
こうして、ハッチの活躍でパパの救出作戦は、犯人全員が謎の全身複雑骨折により再起不能という形で逮捕され、解決した。
犯人は仗助さんが次期日本支部支部長となることに反対した内部の人間の依頼を受けたテログループの犯行で、後の調査でそれが判明し、ジョルノさんによって連れていかれた。
そして、犯人を複雑骨折させた謎の人物は、表向きには現在も逃亡中の屈強な大男……という事になっており、警察は一応暴行犯として追ったものの、当時の法律では時効事件として迷宮入りをした。
もっとも、真相を言っても当時は6才だった小学校に上がる前の幼児の犯行だなんて誰も思わないだろうけど。
康穂「ハッチ!ありがとう!」
あたしはハッチに抱きつく。
八幡「いや、ほとんど康穂の能力のお陰だろ。俺はその手伝いをしただけだ。だからお礼を言われる筋合いなんてないし、そんな資格はない。お前の覚悟の結果だよ」
そう言ってハッチは気にするな。と、言って迎えに来たハッチの家族と一緒に警察署から出ていこうとする。
イーハも一緒だった。
康穂「ハッチ!」
八幡「ん?」
あたしはハッチを呼び止め、また抱き付くと……
チュッ!
っとその頬にチューをした。
八幡「え?」
いろは「なっ!」
あたしはイーハに向けてニヤリと笑う。そして…
康穂「大好きだよ!ハッチ!あたし、諦めないから!今日からライバルだからね!イーハ!」
宣戦布告。
こんな人は多分、もう絶対に現れない!前世が邪悪の化身とか、初代ジョジョとか関係ない!もう……絶対に諦めないから!覚悟してよね!ハッチ!
由花子「八幡君?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ビクゥ!
ユラユラとラブ・デラックスで髪を揺らしたママが鬼の形相でハッチに迫る。
八幡「なっ!こ、コレが噂の由花子さんの豹変……これはマズイ!とんでもない事が起こるのは確実だ!コーラを飲んだら確実にげっぷが出るのと同じくらいに確実にとんでもない事が起こる!逃げるんだよォォォ!」
由花子「逃がさないわよ!八幡君!殺してやるわ!良くもうちの康穂をたぶらかしてくれたわね!」
八幡「知らないっすよォォォ!何でこうなるんだァァァァ!」
ハッチはものすごいスピードで逃げていく。
いろは「逃がしませんよォォォ!わたしにもどういうことか説明してくださぁぁぁぁい!」
八幡「俺が知りたいわぁぁぁ!」
結局、この後ハッチはママに捕まって一週間もの間、監禁生活を送ったのだとか…。
そして、今では陽乃さんやマーチまでも加わり、ハッチ争奪戦を繰り広げている。
千葉と東京……離れているから後から参戦した二人にすら遅れをとっているけれど、あたしだって負けないよ!陽乃さんじゃあ無いけど、順番なんてどうでも良い!
あたしは……絶対に諦めないから!
……………
side戸塚彩加
戸塚「八幡らしいね………」
最強ではないけれど、弱いかもしれないけど、無敵のスタンド能力か…。
そんな風に解釈するのは、後にも先にも八幡くらいしかいないかもね。
海老名「無自覚たらしだね。あの5人の事、言えないじゃん?」
そうだね。
救われないのは八幡はただ贖罪のつもりだったんだと思う。間接的とはいえ、自分の運命に杜王町を巻き込んでしまったことによる贖罪を広瀬夫妻に返しただけ。
康穂ちゃんの事は、本当に下心なんて欠片もなかった。
でも…
康穂「コレが……ペイズリー・パークの能力。そして、ハッチとあたしの出会い。ペイズリー・パークを貶されるのは…ハッチとの思い出と…ハッチの優しさを踏みにじられるのと同じ……二度とバカにしないで」
海老名「そうだね。ごめんね?康穂ちゃん。そして、信じるよ?その無敵の力を……みんなで、生きて帰ろうね?この空間から」
康穂ちゃんは見つけてしまった。
罪の意識により、ほとんどDIOに傾いているように振る舞っている八幡の内面の、僅かに見せた普段は圧し殺しているジョースターさんの気質を……。
そして、身内と思ったら優しい一面を見せるディオの友愛と孤独を……。
報われない想いだけど、許されない恋だけれど……それでもそれは、レプリカじゃあない、本物の1つなんだ。
だから……一緒に進もう。
この太陽の精神と共に…ウルフスを倒すんだ!
←To be continued
はい、事件の最中なのに、何故か康穂編を展開してしまいました。
なぜこうなった……。
それでは、次回は一方他のメンバーは?のお話です。
次回もよろしくお願いいたします!
八幡「待て本城。肝心な事を忘れているぞ」
はて………何かあったっけ?
アーシス一同「昨日、3月3日は小町の誕生日!小町、誕生日おめでとう!」
小町「ありがとう!みんな!最近は出番が少ないけど、小町頑張るよ!」
3月3日のひな祭りは小町の誕生日です!